海士町の新庁舎プロジェクト「あま丸」の取り組みが「2025年度グッドデザイン賞」を受賞しました
島の価値観を反映した“共創の場”として設計した点や、離島という制約を逆手に取った柔軟な公共空間のデザインが評価 https://www.g-mark.org/gallery/winners/33738

海士町役場(町長 大江 和彦)は、「新庁舎プロジェクト『あま丸』の取り組み」で2025年度グッドデザイン賞を受賞しました。
2024年11月に竣工した海士町役場 新庁舎では、「ないものはない」「承前啓後」という地域のアイデンティティを大切にし、今あるものを活かしながら未来へつなげる庁舎づくりを実施。離島特有の課題として、家具の廃棄コストやメンテナンスの難しさがある中、シンプルで柔軟な設計を採用し、組織改編にも対応できる空間を実現しています。家具は古着や廃材を活用し、住民参加型のワークショップで制作することで、地域への関わりと愛着を育みました。
新庁舎1階の未来共創スペース「しゃばりば」では、海士守(あまもり※1)を配置したコミュニティづくりや140回以上の大小様々なイベント・展示等の開催により、人が自然と集い、交流が生まれる場として機能し始めています。
こういったプロセスと取り組みが評価され2025年度グッドデザイン賞の受賞に至りました。なお、海士町役場でのグッドデザイン賞の受賞は、2010年の第四次海士町総合振興計画(※2)に次ぐ、15年ぶり2度目の受賞となります。
※1:海士守:「しゃばりば」に来館する利用者が、居心地よく過ごせるコミュニティづくりや運営を行うコミュニティーオーガナイザー。庁舎内の案内や町民の活動支援(イベントスペースやチャレンジショップの利用支援、活動相談など)を行います。
※2:第四次海士町総合振興計画: https://www.g-mark.org/gallery/winners/9d73f674-803d-11ed-862b-0242ac130002
グッドデザイン賞 審査員評価コメント
新庁舎を単なる行政機能の場ではなく、島の価値観を反映した“共創の場”として設計した点が特徴的。家具や空間を住民参加でつくり、廃材や古着を活用する工夫も印象深い。離島という制約を逆手に取った柔軟な公共空間のデザインは、今後の庁舎のあり方を考えるうえでも参考になる。
グッドデザイン賞 受賞ページ
プロジェクトについて
名称
新庁舎プロジェクト 海士町「あま丸」の取り組み
概要
海士町は「ないものはない」「承前啓後」という地域のアイデンティティを大切にし、今あるものを活かしながら未来へつなげる庁舎づくりを目指しました。離島特有の課題として、家具の廃棄コストやメンテナンスの難しさがある中、シンプルで柔軟な設計を採用し、組織改編にも対応できる空間を実現。家具は古着や廃材を活用し、住民参加型のワークショップで制作することで、地域への愛着を育みました。さらにカフェコーナー、イベントの開催により、人が自然と集い、交流が生まれる場として機能し始めています。

新庁舎エリア「あま丸」について
新庁舎、隣接する隠岐開発総合センター、旧庁舎を取り壊し後、建設予定の交流棟。これらをあわせた新庁舎エリアの愛称を「あま丸」と名付けました。海士町がたくさんのつながりを生み出し、未来へ漕ぎ出す船であるということを表現しています。


海士町役場 新庁舎について
海士町役場新庁舎は、「つながる×つなげる 時とともに進化するだれにも開かれたチャレンジシップ」をコンセプトに、50年先を見据えて設計。伝統、文化を大切にしながらも新しい人、コト、交流を積極的に取り入れ、型にはまらないチャレンジを続ける 「海士らしさ」 を大切にした建築を目指しました。 シンプルで明快な内部空間を特徴的なデザインとし、 「木」「コンクリート」といった時とともに味わいを増す素材を採用したおおらかな空間を目指しました。
3階建ての庁舎は、2階を執務エリア、3階にサーバー室と書庫を設置。津波対策としてかさ上げされた1階は、住民の意見を行政に幅広く取り入れ、住民同士の交流を促す“未来共創”の場として、誰もが気軽に訪れることのできる空間となっています。将来の変化にも柔軟に対応できるシンプルな平面計画と高い耐震性を備え、安心して長く使えるデザインとしています。





未来共創スペース「しゃばりば」(新庁舎1階)
「しゃばりば」は「つながる×つなげる~時とともに進化する だれにも開かれたチャレンジシップ~」というコンセプトの象徴となる場所として、新庁舎の1階に生まれました。住民の意見を行政に幅広く取り入れるための場、住民同士で様々な交流を行い未来共創を目指す場、誰もが気軽に集える場所として運営しています。また、あま丸のモチーフとなっている未来へ漕ぎ出していく船は、しゃばりばの家具によっても表現されています。



未来共創スペース「しゃばりば」は、コワーキングスペースのような作業場や打ち合わせスペースとしてだれでも利用することができ、ときには展示・イベントスペースとしても活用されます。海士弁の「しゃばる(引っ張る)」と「場」から「しゃばりば」と名付け、そこにいる誰かを「しゃばる(ひっぱる)」場、新たな視点で物事が進み出す、みんなで団結して「しゃばる(島を引っ張る)」ことで未来を共に創っていく、という想いを込めています。
2024年11月23日から運用を開始しておよそ11ヵ月の間、大小さまざまなイベントが140回以上実施されています。中学校の文化祭や住民の結婚式、展示活動、イベント、ワークショップなど、多種多様な使い方がされ、住民の集う場になりはじめています。

今ある資源を再活用し、住民とつくる再生家具
新庁舎に置かれる家具の多くはサーキュラーデザイン(※3)を重視し、新品の家具を買うのではなく使われなくなった椅子や島内の廃材を活用し、再生家具(リメイク家具)を設置しています。庁舎の建て替えに際し、処分するはずだったおよそ360点の古くなった備品はワークショップ等を通してリユース・リメイクされ、ほとんどの備品(300点)は処分せずに再利用。さらに、島内に眠っていた家具などを回収してリユース、回収ボックスにて着なくなった服を約80kg回収し、繊維に戻して利用するなどの取り組みも実施しました。
※3サーキュラーデザイン:製作時に、環境への影響を最小限に抑えることを目指す。消費するだけではなく、長く大切に使うことを重視し、リサイクルやリユースを行うことで、製品、利用、リサイクルを循環させるサーキュラーエコノミーに基づいたデザイン。


新庁舎プロジェクトでは、広く住民を対象として新庁舎に設置するリメイク家具のワークショップを行いました。また、小学校でのワークショップの開催や、島内の職人やものづくりの経験がある住民向けに家具職人と一緒に専門的な作業を行う機会も設けるなど、多くの住民が制作に参加し、新庁舎には多くのリメイク家具が設置されています。制作の過程は下記の動画やnote記事からご確認いただけます。
リメイク家具に関するnote記事一覧
プロジェクトメンバー
-
プロデューサー:海士町役場 総務課 五島 典英
-
ディレクター:AMAホールディングス株式会社 石原 紗和子
-
デザイナー:
-
〔建築デザイン〕 有限会社IMU建築設計事務所 山根 秀明
-
〔WS空間デザイン〕 隠岐サーキュラーデザインラボ 足立 妙子
-
〔家具デザイン〕 SUKIMONO株式会社 葛西 日向子
-
〔ロゴ・コンセプト〕 株式会社ようび
-
※敬称略
プロジェクトメンバーからのコメント
海士町長 大江 和彦
「承前啓後」の言葉に込めた想いを胸に、海士町の歴史と文化を受け継ぎながら、未来への扉を開く庁舎づくりに挑みました。町民と共に築いたこの空間が、世代を越えてつながりを生み、島の希望を乗せて進む“あま丸”として、これからも力強く航海を続けてまいります。
プロデューサー:
海士町役場 総務課 魅力化・還流特命担当 五島 典英
海士町新庁舎は、役場・民間企業・住民団体がそれぞれの誇りと敬意を持ち寄り、心を重ねて築き上げた挑戦の結晶です。行政とは何か、町の未来とは何かを問い続けたこの庁舎は、私にとって娘のような存在です。地元の方はもちろん、海士町に関わるすべての方に使っていただき、愛されながら、災害時には強く、日常には美しく、育っていくことを心から願っています。
ディレクター:
AMAホールディングス株式会社(https://amaholdings.co.jp)
取締役 石原 紗和子
50年前に想いを馳せ、50年後に意志を継ぐ。自分たちの手で島の未来を共に創っていく象徴であり、実践の場となる。建物は育てていくものだと思っています。島で生まれた人も、島に来た人も、これから出会う人も。だれもが当事者になれる「みんなでしゃばる(ひっぱる)」海士町のキャラクターをこれからも表現していきたいです。
デザイナー〔建築デザイン〕:
有限会社IMU建築設計事務所(http://www.imu-co.jp)
代表取締役 山根 秀明
伝統、文化を大切にしながらも新しい人、コト、交流を積極的に取り入れ、型にはまらないチャレンジを続ける 「海士らしさ」 を大切にした建築を目指しました。 シンプルで明快な内部空間を意匠とし、 「木」「コンクリート」といった時とともに味わいを増す素材を採用したおおらかな空間を目指しました。未来共創スパース「しゃばりば」 。大きな庇を受ける回廊のある外部空間。この場所が様々な活動を促し、 「みんなの船『あま丸』 」としてさらなる進化を続けることを期待します。
デザイナー〔WS空間デザイン〕:
隠岐サーキュラーデザインラボ(https://wawawa.today)
足立 妙子
廃材、古着、使わなくなった家具。一見「すてる」ものに宿る記憶や手ざわりを庁舎の空間に取り入れることは、海士町の暮らしそのものを“つなぐ”試みでした。使い捨てではなく、活かし合う。資源のめぐりと人のつながりが交差する空間を、島民のみなさんと一緒に作り、共有できたことを誇らしく感じています。「ないものはない」という島の精神と循環を問い直し、実践する場として、次の50年の種となることを願っています。
デザイナー〔家具デザイン〕:
SUKIMONO株式会社(https://sukimono.co.jp/)
葛西 日向子
離島・海士町の制約下では、非合理に見えるプロセスにこそ創造が生まれます。限られた資源と人口でも豊かに生きていくために、発想の転換と楽しむ気持ちと、形を実現する確かな知識・技を、海士町の方たちと育めた時間でした。このプロジェクトが若い世代や子どもたちにとって学びの場となり、私たち大人のクリエイティビティを越えていくことを願っています。
デザイナー〔コンセプト〕:
コンセプト・ブランディング担当
熊谷 雅樹
あま丸は、みんなでつくった船です。そして、これからも、みんなでつくっていく船です。そこで、起こる出来事も、行き先も、、、良い時も、悪い時も。みんなで話し合いながら、しゃばり合いながら、航海する。想像力を働かせて。未来にも、共に創る人々が居続けることができる場所であるように。心から祈っています。
グッドデザイン賞と展示について

1957年創設のグッドデザイン商品選定制度を継承する、日本を代表するデザインの評価とプロモーションの活動です。国内外の多くの企業や団体が参加する世界的なデザイン賞として、暮らしの質の向上を図るとともに、社会の課題やテーマの解決にデザインを活かすことを目的に、毎年実施されています。受賞のシンボルである「Gマーク」は優れたデザインの象徴として広く親しまれています。
展示:GOOD DESIGN EXHIBITION 2025
11月1日(土)~5日(水)に東京・六本木の東京ミッドタウンで開催される「2025年度グッドデザイン賞」の全受賞作を紹介するイベント「GOOD DESIGN EXHIBITION 2025」にて、受賞作を展示します。
海士町について( https://www.town.ama.shimane.jp/ )
持続可能な島づくりを目指して海士町は、「自立・挑戦・交流 × 継承・団結」を町政の経営指針に掲げ、「ないものはない」を合言葉に、島国であるが故の価値や生き様を島内外に発信しながら、様々な分野で島の生き残りをかけた挑戦を続けています。

これからも引き続き、島の歴史や伝統文化を「継承」し、島に根付いた半農半漁の暮らし、地域の絆や信頼から生まれる支え合いの気持ちを大切にしながら、「団結」して、みんなでしゃばる(方言:強く引っ張るの意)島づくりを目指していきます。
■海士町らしい価値観
「ないものはない」(なくてもよい、大事なことはすべてここにある)
https://naimonowanai.town.ama.shimane.jp/
海士町公式SNS
島との距離は離れても、気持ちはいつも近くに。海士町に関する様々な情報を配信中!
LINE(@amacho): https://page.line.me/929kznku
note: https://ama-town.note.jp
X(旧Twitter): https://twitter.com/town_ama
Instagram: https://www.instagram.com/town_ama
このプレスリリースには、メディア関係者向けの情報があります
メディアユーザー登録を行うと、企業担当者の連絡先や、イベント・記者会見の情報など様々な特記情報を閲覧できます。※内容はプレスリリースにより異なります。
すべての画像