株式会社Scalar、「ScalarDB 3.19」をリリース — マイクロサービスにおけるデータ整合性管理を大幅に強化
~新コンポーネント「ScalarDB Saga」と新たな分散トランザクションインターフェースにより、AI駆動開発時代の迅速で信頼性の高いシステム開発を支援~
株式会社Scalar(本社:東京都新宿区、代表取締役CEO:深津航、代表取締役CTO:山田浩之)は、複数・異種のデータベースを仮想的に統合し、トランザクション処理と分析処理を両立するUniversal HTAPエンジン「ScalarDB」の最新版となるバージョン3.19をリリースしました。

本バージョンでは、AI駆動開発(AI-Driven Development:AIDD)の進展に伴い重要性が高まるマイクロサービスアーキテクチャを、データ整合性の面から支える機能を大幅に強化しました。
その中核として、複数のサービスをまたぐSagaやTCC(Try-Confirm/Cancel)のワークフローを実行・管理する新コンポーネント「ScalarDB Saga」の提供を開始します。これにより、従来の2PC(二相コミット)ベースの分散トランザクションでは扱うことが難しかった、外部APIやSaaSとの連携、長時間にわたる業務処理、非同期更新を含むシステムにおいても、複数サービス間のデータ整合性を維持することが可能となります。
また、複数のScalarDB Clusterをまたぐ2PCベースの分散トランザクションを、アプリケーションから1フェーズで実行できる新しいインターフェースを追加しました。アプリケーション側における分散トランザクションの制御やエラーハンドリングを大幅に簡素化し、信頼性の高いマイクロサービスの開発・保守に要する負担を軽減します。
さらに、統合監視ツール「ScalarDB Manager」の刷新や、ScalarDB Analyticsにおけるクエリ処理の高速化を行い、マイクロサービスを支えるデータ基盤の開発、運用、分析を包括的に強化しています。
新バージョンリリースの背景
生成AIを活用したソフトウェア開発が急速に進展し、AIはコードの補完にとどまらず、設計、実装、テスト、改修といった開発プロセス全体で活用されるようになりつつあります。こうしたAI駆動開発を企業の競争力向上につなげるためには、高性能なAIモデルや開発ツールを導入するだけでは十分ではありません。AIが対象となるシステムを正確に理解し、安全に変更できるよう、AIによる開発に適したシステムアーキテクチャを構築することも重要です。その有力な選択肢の一つとして、マイクロサービスアーキテクチャの重要性が高まっています。
マイクロサービスアーキテクチャでは、システムを業務や責務ごとに分割することで、それぞれのサービスが扱うコードやコンテキストの範囲を限定できます。これにより、AIが一度に理解すべき情報量を小さく保ち、より正確なコード生成を促すとともに、意図しない範囲への変更を抑制しやすくなります。また、サービス単位で変更やセキュリティパッチをリリースできるため、新機能の市場投入や脆弱性への対応を、システム全体のリリースから切り離して迅速に行うことが可能になります。このように、マイクロサービスアーキテクチャは、単なる技術上の選択肢から、AI駆動開発による開発生産性の向上や事業スピードの加速を左右する、経営上の重要な選択肢へと変化しつつあります。
一方で、システムを複数のサービスに分割すると、それぞれのサービスが独立したデータベースや外部システムを利用することになり、サービスをまたいだデータ整合性の保証が難しくなります。あるサービスで処理が成功した一方、別のサービスでは処理が失敗するといった部分的な不整合は、決済、在庫引き当て、受発注、契約などの重要な業務処理に直接的な影響を与えます。
ScalarDBはこれまでも、2PCをベースとした分散トランザクションによって、複数・異種のデータベース間で強い整合性を保証してきました。しかし、外部APIやSaaSを含む処理、長時間にわたる業務プロセス、非同期処理など、2PCへの参加が難しいシステムを含むユースケースには、異なる整合性管理の手法が必要でした。また、従来の2PCベースの分散トランザクションインターフェースでは、複数のScalarDB Clusterをまたぐ場合に、アプリケーション側で複数フェーズの処理や障害発生時の制御を実装する必要があり、開発者に一定の知識と実装負担を求めていました。
ScalarDB 3.19では、外部サービスや非同期処理を含む業務ワークフローに対応するScalarDB Sagaを新たに提供するとともに、2PCベースの分散トランザクションの利用方法を簡素化しました。これにより、企業は業務要件に応じて適切な整合性管理方式を選択しながら、迅速で信頼性の高いマイクロサービスを構築できます。
ScalarDB 3.19の主な機能強化
1.新コンポーネント「ScalarDB Saga」により、外部APIや非同期処理を含む業務ワークフローに対応
マイクロサービスにおけるSagaやTCCのワークフローを実行・管理するエンジンおよびオーケストレータとして、新コンポーネント「ScalarDB Saga」を提供します。
Sagaは、複数のサービスにまたがる一連の業務処理を管理し、途中で処理が失敗した場合には補償処理を実行することで、業務全体の整合性を維持する方式です。TCCは、在庫や予約枠などのリソースを事前に確保し、処理結果に応じて確定または取り消しを行う方式です。ScalarDB Sagaは、これらのワークフローの実行状況や状態遷移を一元的に管理し、障害発生時の再実行や補償処理を制御します。
これにより、従来の2PCでは扱うことが難しかった、以下のようなユースケースに対応できます。
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外部APIやSaaSを含む複数システムにまたがる業務処理
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人による承認やバッチ処理を含む長時間の業務ワークフロー
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非同期処理やリソース確保を含む複数サービス間の処理
企業は、複数のデータベース間で強い整合性が求められる処理には2PCを、外部サービスや非同期処理、長時間にわたる処理を含む業務ワークフローにはSagaやTCCを利用するなど、業務要件に応じて適切な方式を選択できます。これにより、マイクロサービスによるシステムの柔軟性を確保しながら、重要な業務に必要なデータ整合性を維持できます。
2.新しいトランザクションインターフェースにより、2PCの実装を簡素化
マイクロサービスでは、システムの規模、組織構造、可用性、セキュリティなどの要件に応じて、複数のScalarDB Clusterを利用する構成が想定されます。従来、複数のScalarDB Clusterをまたぐ2PCベースの分散トランザクションを実行する場合、アプリケーション側で複数フェーズの処理を制御し、通信障害や一部処理の失敗を考慮したエラーハンドリングを実装する必要がありました。
ScalarDB 3.19では、これらの制御をScalarDB側で管理し、アプリケーションからは1フェーズのシンプルなインターフェースで分散トランザクションを実行できるようになりました。これにより、アプリケーション開発者は2PCの複雑な制御を意識することなく、複数のサービスやデータベースをまたぐ処理を、通常のトランザクションに近い形で実装できます。
アプリケーションコードとエラーハンドリングが簡素化されることで、実装ミスのリスクを抑えるとともに、AIによるコード生成や改修においても、処理内容を理解しやすく、変更範囲を限定しやすい実装が可能になります。これにより、マイクロサービスの開発期間の短縮と、保守・運用負担の軽減を支援します。
3.「ScalarDB Manager」を刷新し、分散データ基盤の状態を一元的に可視化
ScalarDBの統合監視ツールである「ScalarDB Manager」を刷新しました。新しいScalarDB Managerでは、ScalarDB Clusterの稼働状況やトランザクション性能に加え、システム設定、データベーススキーマ、接続先となるバックエンドデータベースの稼働状況などを、一つの画面から確認できます。
マイクロサービス環境では、サービスやデータベースの数が増えることで、障害の発生箇所や性能低下の原因を特定することが難しくなります。ScalarDB Managerによって分散データ基盤全体の状態を一元的に把握できるようになることで、問題の早期発見と原因特定、迅速な復旧を支援し、運用に伴う複雑性や管理負担を軽減します。
4.ScalarDB Analyticsのクエリ処理を高速化
複数・異種のデータベースを横断した分析を実現するScalarDB Analyticsにおいて、検索条件をバックエンドデータベースで処理するプッシュダウン処理に対応しました。
ScalarDB 3.19では、SQLのWHERE句に指定された検索条件を、可能な限りバックエンドデータベースへプッシュダウンします。これにより、ScalarDB Analyticsへ転送するデータ量を削減し、複数のデータベースを横断する分析クエリを高速化します。また、ネットワークやコンピューティングリソースの使用量を抑え、データ基盤の利用効率と運用コストの改善にも貢献します。
開発責任者コメント(代表取締役CTO 山田浩之)
AI駆動開発が普及するにつれて、マイクロサービスアーキテクチャは、単にシステムを柔軟に構築するための技術的な選択肢ではなく、AIを活用して事業やサービスをどれだけ迅速かつ安全に進化させられるかを左右する、経営上の重要な選択になりつつあります。
一方で、システムをサービス単位に分割すれば、データや処理も複数のシステムに分散します。サービスの独立性を高めながら、業務全体としてデータの整合性をどのように維持するかは、マイクロサービスを採用する企業にとって最大の課題の一つです。
これまでScalarDBは、2PCをベースとした分散トランザクションによって、複数・異種のデータベース間における強い整合性を提供してきました。しかし、現実の企業システムでは、データベースだけでなく、外部APIやSaaS、非同期処理、人による承認などを含む業務ワークフロー全体の整合性を考える必要があります。
ScalarDB 3.19では、こうした課題に対応し、企業がマイクロサービスの利点を享受しながら、重要な業務データの信頼性を損なわないための基盤を強化しました。AI時代における開発スピードと、エンタープライズシステムに求められる信頼性の両立を支援してまいります。
今後の展望
今後も、ScalarDBにおけるマイクロサービス向けの機能強化を推進します。
ScalarDB ClusterおよびScalarDB Sagaについては、QuarkusをはじめとするMicroProfile準拠のマイクロサービスフレームワークとの連携を進めます。また、2PC、Saga、TCCなどの異なるトランザクション管理方式を、業務要件に応じて容易に設計、開発、運用できる環境の実現を目指します。
ScalarDB Analyticsについては、分析処理のさらなる高速化に加え、AIを活用したデータカタログの生成・管理機能の開発を進めます。複数のデータソースに分散するスキーマやメタデータを効率的に把握・管理できるようにすることで、企業におけるデータ活用の迅速化を支援します。
これらを通じて、企業がAI駆動開発を活用してシステムやサービスを迅速に進化させながら、重要な業務データの信頼性を維持できるデータ基盤を提供してまいります。
【ScalarDBについて】
ScalarDBは、複数・異種のデータベースを仮想的に統合し、一貫したトランザクション処理とリアルタイム分析を実現するUniversal HTAPエンジンです。
既存のデータベースやクラウドサービスを活用しながら、データベース間の整合性を保証し、複数のデータソースを横断した分析を可能にします。特定のデータベースやクラウドベンダーに依存することなく、マイクロサービス、システムのモダナイゼーション、マルチクラウドなど、多様なエンタープライズシステムのデータ基盤として利用できます。
詳細は以下を参照ください。
ScalarDB(GitHub)
https://github.com/scalar-labs/scalardb
ScalarDB(ドキュメントサイト)
https://scalardb.scalar-labs.com/docs/latest/
【株式会社Scalarについて】
株式会社Scalarは、「データマネジメントの未来を創る」をビジョンとし、東京とサンフランシスコに拠点を持つ、2017年設立の日本発グローバルスタートアップです。
複数・異種のデータベースを仮想的に統合し、トランザクションや分析問合せを実現するUniversal HTAPエンジン「ScalarDB」と、データの真正性の課題を解決するデータ改ざん検知ソフトウェア「ScalarDL」の開発・販売をしています。
詳細はウェブサイトをご覧ください。
https://www.scalar-labs.com/ja/
※記載されている会社名および製品・サービス名は、各社の登録商標または商標です。
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