ispace-U.S.、Agileと共同で新型エンジン「VoidRunner」を発表 ミッション3の打ち上げは2027年以降に変更
株式会社ispace(東京都中央区、代表取締役:袴田武史、以下ispace)(証券コード9348)は、当社米国法人であるispace technologies U.S., inc(以下ispace-U.S.)が、チャールズ・スターク・ドレイパー研究所(以下ドレイパー)との連携のもと、ミッション3において、米国コロラド州デュランゴに拠点を置くAgile Space Industries(以下Agile)とともに開発した高推力・簡素化エンジン「VoidRunner」をAPEX 1.0ランダーに搭載することを本日、発表しましたのでお知らせいたします。

これに先立つ内部検討の結果、ドレイパーを中心としたチームはAgileとispace-U.S.が共同で開発する新型エンジン「VoidRunner」の適用が、ミッション3における技術上・スケジュール上のリスクを最小化する最適なソリューションであると判断しました。当初のエンジン案から「VoidRunner」への仕様変更により、エンジン部品点数は4分の1に削減され、結果的に機体構造の大幅な簡素化が可能となります。一方でこれに伴う機体設計の再調整が必要となることから、ミッション3の打ち上げ時期を2026年から2027年以降へと変更することにいたしました。
ispace-U.S.が独自開発したバルブにより「VoidRunner」エンジンのスロットル制御を実現し、高い信頼性を持った推進システムの構築が可能となり、ミッション成功の確度がより一層高まることが期待されます。
当初、APEX 1.0にはAgileのA2200エンジンを搭載する予定でしたが、社内検討の結果、予定されていた調達スケジュール内での供給が難しいことが判明しました。その後、ispace-U.S.に加え、ドレイパー、およびAgileの間で複数回にわたり協議を行い、簡素化した構成の新型エンジン「VoidRunner」を開発する方針を決定しました。
「VoidRunner」は、既存のエンジンアーキテクチャをベースに推力とノズル効率を最適化し、APEX 1.0向けに再構成されたものです。このエンジンはすでにAgileの真空環境下でのエンジン燃焼試験を通じて検証され、設計の簡素化とシステムの信頼性向上が実証されています。また、推進系のサブシステムの簡素化は開発スケジュールの実現性を大きく向上させました。今後、「VoidRunner」のクリティカル・デザイン・レビュー(CDR)を2025年秋に予定しており、その後、グローバルCDRを2025年冬に実施予定です。
■ ispace-U.S. CEO エリザベス・クリストのコメント
「今回の変更は、単なる戦略的変更ではなく、私たちのミッションへの揺るぎないコミットメントの表れです。私たちは様々な角度から検証を行い、そこから学び、ミッション成功に向けた最善策を導き出しました。新しい推進システムと新たに強化されたAgileとの連携に、強い自信を持っています。」
■ Agile Space Industries CEOクリス・ピアソンのコメント
「『VoidRunner』は性能要件を満たすだけでなく、長期的な効率性向上にも寄与するエンジンです。私たちの技術が、ispaceのミッション3成功に最大限に貢献できるようコミットいたします。」
■ ispace technologies, U.S., inc ( https://ispace-us.com ) について
コロラド州デンバー郊外に位置する、株式会社ispace のUS法人。地球から月への輸送サービスを政府及び民間顧客に提供する米国の月開発企業。月の資源活用に着目し、月、および地球と月の間において人類の生活圏、経済圏を構築することを目指している。ispace U.S.は米国で設計・製造・打ち上げが行われるAPEX1.0ランダー開発の中心地であると同時に、北米における事業の拠点としての役割を担う。
■ 株式会社ispace ( https://ispace-inc.com/jpn/ )について
「Expand our planet. Expand our future. ~人類の生活圏を宇宙に広げ、持続性のある世界へ~」をビジョンに掲げ、月面資源開発に取り組んでいる宇宙スタートアップ企業。日本、ルクセンブルク、アメリカの3拠点で活動し、現在約300名のスタッフが在籍。2010年に設立し、Google Lunar XPRIZEレースの最終選考に残った5チームのうちの1チームである「HAKUTO」を運営した。月への高頻度かつ低コストの輸送サービスを提供することを目的とした小型のランダー(月着陸船)と、月探査用のローバー(月面探査車)を開発。民間企業が月でビジネスを行うためのゲートウェイとなることを目指し、月市場への参入をサポートするための月データビジネスコンセプトの立ち上げも行う。2022年12月11日には SpaceXのFalcon 9を使用し、同社初となるミッション1のランダーの打ち上げを完了。続くミッション2は2025年1月15日に打上げを完了し、最短2025年6月6日に、月面着陸へ再挑戦の予定。ミッション3およびミッション4(旧ミッション6)は2027年に[i]打ち上げを行う予定。
ミッション1の目的は、ランダーの設計および技術の検証と、月面輸送サービスと月面データサービスの提供という事業モデルの検証および強化であり、ミッション1マイルストーンの10段階の内Success8まで成功を収めることができ、Success9中においても、着陸シーケンス中のデータも含め月面着陸ミッションを実現する上での貴重なデータやノウハウなどを獲得することに成功。ミッション1で得られたデータやノウハウは、後続するミッション2へフィードバックされている。更にミッション3では、より精度を高めた月面輸送サービスの提供によってNASAが行う「アルテミス計画」にも貢献する計画。
[i] 2025年5月時点の想定
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