「人事部トレンド定量調査2026」を発表 人事課題の重心は2021年調査から人材の「定着・活躍支援」へシフト 経営課題では、人材確保・育成、DX・AI活用など「人材と組織の変革」が上位
人事部が経営戦略へ関与する企業では、売上高・利益率が増加した割合が高い傾向
株式会社パーソル総合研究所(本社:東京都江東区、代表取締役社長:岩田 亮)は、企業の経営・人事課題と主要な人事領域のトレンドを把握することを目的に、「人事部トレンド定量調査2026」を実施し、結果を発表しました。
労働力不足を背景に経営課題が「ヒト」に集中する一方、AIの普及や働き方改革など、人事部を取り巻く環境は大きく変化しています。調査の結果、人事課題の重心は2021年調査(※1)と比べ、既存人材の「定着・活躍支援」へシフトしていることが分かりました。一方、人事部の多くが人員・専門性不足に悩み、経営戦略やDX推進といった「攻め」の領域に十分関与できていない実態も明らかになりました。
また、人事部が経営戦略へ関与する企業ほど売上高・利益率が増加する傾向がみられ、こうした戦略人事(※2)の実現には、「処遇の市場化」や「職務範囲の脱・属人化」など5つの要素(5 Essentials)が重要であることが分かりました。
人事部の戦略的パフォーマンス(※3)が高いと財務パフォーマンスも良好

※1 2021年パーソル総合研究所「人事部大研究」
※2 戦略人事とは、経営戦略と連動した人材戦略のもと、人と組織を通じて事業成果に貢献する
人事のあり方を指す。
※3 本調査では、戦略人事の発揮度合いを「人事部の戦略的パフォーマンス」と定義し、それを
高める要因と阻む要因を分析した。
■主なトピックス ※トピックスの詳細については「主なトピックス(詳細)」をご確認ください。

【経営・人事課題と人事部の実態】
1. 経営課題は「人材と組織の変革」が中心、人事課題の重心は「定着・活躍支援」へ:経営課題の上位は「人材の確保・採用競争への対応」「人材育成・リスキリング・最適配置」「DX・AIを活用した業務変革・新たな価値創出」に集中した。人事課題では2021年調査と比べ、従業員全体の能力向上や企業理念の浸透などへの課題感が低下し、既存人材の定着・活躍支援へと重心が移っている。
2. 人事部は実務運用を主導する一方、戦略・DX領域への関与は限定的:人事部は採用や人事考課などの実務運用では高い関与を示した一方、経営戦略やDX・AI推進など戦略領域への関与は低水準だった。また、人事部の課題として「人員不足(45.2%)」「専門性不足(44.6%)」「企画構想力の低さ(39.3%)」などが上位にあがった。
【戦略人事の実現と企業業績】
3. 人事部の「戦略的パフォーマンス」が高い企業では、企業業績も高い:人事部の戦略的パフォーマンスが高い企業は、低い企業と比べて、直近1年間で売上高・利益率ともに増加した割合が高かった。人事部が経営戦略へ関与することと、企業業績との関連が示された。
4. 「戦略的パフォーマンス」を引き上げる5つの要素(5 Essentials)を特定:「職務範囲の脱・属人化」「処遇の市場化」「タレントデータの一元化」「自律的キャリア選択」「社内/外の雇用流動化」の5つが、人事部の戦略的パフォーマンス向上に重要な要素であることが確認された。一方、「企画構想力不足」や「事業部門とのコミュニケーション不足」などが阻害要因としてあげられた。
【人事領域の最新トレンド(AI・賃上げ・働き方改革)】
5. AI活用企業は「デジタル人材増員・一般事務削減」を見込む:AI活用度が高い企業ほど「一般事務職」を削減見込み(42.5%)とする一方、「デジタル・IT系」は増員見込み(56.3%)とする傾向が顕著。なお、人事部自身のAI日常活用は約4割にとどまる。
6. 賃上げ予定企業は73.0%に拡大、判断基準は「業績」から「人材確保」へ:賃上げ実施・予定企業は2022年調査(※)から73.0%へ増加した。また、賃上げの判断要素では「業績・予算の達成度」の重要性が低下する一方、「戦略的人材の採用強化」など、人材確保を意識した判断が重視される傾向がみられた。
※2022年パーソル総合研究所「賃金に関する調査」
7. 働き方改革は浸透するも、約4割が「管理職の負担増」を課題視:フレックス勤務やノー残業デーなどの施策は広く普及する一方、約4割の企業が「管理職への負担増」を弊害としてあげた。働き方関連施策の実施が進むほど、管理職の負担感も増加する傾向がみられた。
■主なトピックス(詳細)

【経営・人事課題と人事部の実態】
1. 経営課題は「人材と組織の変革」が中心、人事課題の重心は「定着・活躍支援」へ
経営課題の上位5位の中に、人材の確保、人材育成、人材高齢化、組織風土改革が入る。人と組織の変革は、現在の経営全体の課題の中心になっている。

人事課題は、「従業員満足度・エンゲージメントの向上」、「最適な人員配置」、「従業員の定着/離職防止」が上位にあがる。人材を確保するだけでなく、既存人材の活躍・配置・定着をどう高めるかが、人事課題の中心になっている。

2. 人事部は実務運用を主導する一方、戦略・DX領域への関与は限定的
人事部が主導する割合は、「新卒採用」「中途採用」「人事考課・評価の調整」の領域で高い。一方、「経営戦略・事業戦略の策定」「組織戦略の策定」「DX・デジタル化・AI活用の推進」では関与が少なく、人事の主導領域は実務・制度運用に偏っている。

人事部の内部課題:人事部の内部課題は、人員不足や専門性不足が上位にあがる。業務量に対して十分な体制を確保しきれていないことに加え、企画構想力やビジョン・目的の共有にも課題が見られ、結果として人事部門は攻めよりも守りの機能に偏りやすい状況にある。

【戦略人事の実現と企業業績】
3. 人事部の「戦略的パフォーマンス」が高い企業では、企業業績も高い:人事部の戦略的パフォーマンス(※)と、財務パフォーマンスとの間には正の関係が見られた。また、人事部の戦略的パフォーマンス高群では、売上高・利益率ともに増加企業の割合が低群を大きく上回ることも確認された。
※戦略人事とは、経営戦略と連動した人材戦略のもと、人と組織を通じて事業成果に貢献する人事のあり方を指す。その発揮度合いを「人事部の戦略的パフォーマンス」と定義し、それを高める要因と阻む要因を分析。

4. 「戦略的パフォーマンス」にポジティブに影響している5つの要素(5 Essentials)を特定
人事部の戦略的パフォーマンスにポジティブに影響している要素を解析。ポジティブに関連している要素は、大きく分けて「職務と処遇」、「キャリアと異動配置」、「働き方」の領域の影響が示された。

上記結果より、戦略人事のための5つの重要な要素(5 Essentials)をまとめた。人事・従業員の2つの観点に分けられ、職務範囲の属人性を脱すること、処遇を市場水準と照らして差をつけること、タレントデータの一元化、自律的キャリア選択、社内/外の雇用の流動性が重要な要素である。

5つの重要な要素の細目について、実態を見た。特に、管理職の等級の属人性(57.1%)は半数超が該当する一方、昇降格基準の明確な共有(22.2%)、評価のメリハリ(26.6%)、社内公募中心の異動(25.9%)は2〜3割の企業しか実現できていない。

人事部の戦略的パフォーマンスにネガティブに影響する要素:人事部の戦略的パフォーマンスにネガティブに関連している要素は、人事部門の企画構想力の低さ、事業部門とのコミュニケーションが不足していること、人事部門全体に共通するビジョンや目的がないこと。全体で3-4割の企業でこうした特徴が見られる。

【人事領域の最新トレンド(AI・賃上げ・働き方改革)】
5. AI活用企業は「デジタル人材増員・一般事務削減」を見込む:人員増減の見込みを、AI活用度別に見た。AI活用度が高い企業は、「一般事務職」を減らす見込みが42.5%と高い。一方で「デジタル・IT職」は56.3%が増員見込みであり、IT職の代替までは想定していない可能性が考えられる。「中途採用」はAI活用度にかかわらず増やす見込みの企業が多い。

人事部内のAI活用:人事部でAIを日常活用している企業は約4割。活用業務は「一般的な事務・デスクワーク」が最も高く、「人事評価・タレントマネジメント」「研修・人材開発」が続く。まずは文書作成・要約・確認、評価コメント作成、研修資料作成など、既存業務を支援する領域から活用が広がっている。

賃上げ予定企業は73.0%に拡大、判断基準は「業績」から「人材確保」へ:賃上げについては、2026年度で引き上げ予定/済の企業が22年度(※)よりも11.2ポイント増加して73.0%。「未定・分からない」回答も増加する一方、「改定を実施しない」が激減しており、賃上げ決定まで至らずとも検討を続けている企業が多い。
※2022年パーソル総合研究所「賃金に関する調査」

賃上げ判断のための要素:「物価動向」が29.7%で最上位。次に「従業員の離職防止」「優秀人材の採用強化」が続く。小サンプルのため参考だが、4年前と比較すると、「予算達成度や業績の良し悪し」の要素が大きく減少した。

7. 働き方改革は浸透するも、約4割が「管理職の負担増」を課題視
働き方改革関連の実施施策を見た。1位に「フレックス勤務制」、2位「ノー残業デー」、3位「残業が多い個人への指導・公表」が続く。「特に対策はしていない」企業は16.3%であり、多くの企業が何かしらの施策を実施している。

働き方改革関連施策の弊害:「管理職への負担が増えた」が4割を超え、圧倒的に高い。さらに、残業施策の数が多い企業ほど、「管理職への負担が増えた」「アイデアを練る/品質を高めるための時間が減った」の回答がさらに多くなる。

■調査結果からの提言

今、労働力不足の中で、企業の経営課題はますます「ヒト」の課題に集中してきた。そうした中、人事課題の重心は既存の人材が長く活躍し続けるための「定着・活躍支援」へとシフトし、「攻めより守り」という姿勢がより鮮明になりつつある。
AIの組織普及や次世代リーダー育成など、経営戦略的な領域への関与が限定的で、昨今のビジネス戦略に人事が取り残されつつある側面が垣間見える。また、過去の調査と比較して、人事組織の社内における位置づけがやや下降して見えることにも、注意が必要だろう。

本調査からは、人事が戦略的にパフォーマンスを発揮するためには、「処遇の市場化」、「職務範囲の脱・属人化」、「タレントデータの一元化」、「自律的キャリア選択」、「社内/外の雇用流動化」という5つが重要な要素として抽出されている。一方で、ビジョンや企画構想力の欠如、事業部門との連携の不足といった状況は、パフォーマンスを押し下げている。
人事部門が取り組むべきことは、自社の事業戦略を見据えた上で、❶まず自らの組織目的を問い直し、戦略人事を推進していくための指針となる人事ポリシーを定めること、❷HRBPを主軸に事業戦略と人材戦略を再接続すること、❸人材データの一元化による配置・育成の高度化を進めること、そして、❹経営とのコミュニケーションを密にし、自社ビジネスへの感度を高めること、❺従業員の報酬と市場価値との乖離を埋めていくことだ。
ますますAIが経営戦略に組み込まれていく中で、「人と組織」の意思決定が人事の外側で進んでいけば、人事部が存在感を失っていく事態になりかねない。こうした取り組みを通じて、人事部門が実務運営の担い手ではなく、経営と事業の成長を支える戦略パートナーへと進化していくことが期待される。
● 本調査を引用いただく際は、出所として「パーソル総合研究所」と記載してください。
● 調査結果の詳細については、下記URLをご覧ください。
URL: https://rc.persol-group.co.jp/thinktank/data/hr-trend2026/
● 構成比の数値は、小数点以下第2位を四捨五入しているため、個々の集計値の合計は必ずしも100%とならない場合があります。
■調査概要

■【株式会社パーソル総合研究所】<https://rc.persol-group.co.jp/>について
パーソル総合研究所は、パーソルグループのシンクタンク・コンサルティングファームとして、調査・研究、組織人事コンサルティング、人材開発・教育支援などを行っています。経営・人事の課題解決に資するよう、データに基づいた実証的な提言・ソリューションを提供し、人と組織の成長をサポートしています。
■【PERSOL(パーソル)】<https://www.persol-group.co.jp/>について
パーソルグループは、「“はたらくWell-being”創造カンパニー」として、2030年には「人の可能性を広げることで、100万人のより良い“はたらく機会”を創出する」ことを目指しています。
さまざまな事業・サービスを通じて、はたらく人々の多様なニーズに応え、可能性を広げることで、世界中の誰もが「はたらいて、笑おう。」 を実感できる社会を創造します。
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