【新刊】流通業の脱炭素とサステナビリティの取り組みを、事例を交えて紹介
~特集 「環境に配慮したイノベーション」:研究情報誌『流通情報』のご案内~
公益財団法人流通経済研究所(本社:東京都千代田区、理事長:青山 繁弘、以下流通経済研究所)は、消費者に身近な存在である流通業が事業の長期的な持続可能性を向上させるために不可欠な “環境対応” を確認するため、研究情報誌『流通情報』の最新号で「環境に配慮したイノベーション」を特集し、関連する6編の論文レポートを公開しました。『流通情報』では、消費者と社会的価値を共創するイノベーションについて考えます。
◆特集「環境に配慮したイノベーション:流通業の脱炭素とサステナビリティの取り組み」の背景
世界中で発生している異常気象を目の当たりにして、人々の地球温暖化に対する危機意識が一段と高まってきています。
温室ガスの排出を減少させる脱炭素(カーボンニュートラル)の目標を設定し、目標達成に向けた取り組みを推進することが、国、産業、企業に強く求められるようになるなか、流通業にとっても例外なく対応不可避な課題です。まさに、環境に対応したイノベーションが流通業に求められていると言えます。
『流通情報』2024年1月号では、「環境に配慮したイノベーション:流通業の脱炭素とサステナビリティの取り組み」と題し、、流通業界がこれから取り組むべき方向性について、グローバルな環境面や政策に関する基本的な情報やイノベーションの方向、流通企業における具体的な取り組み事例を紹介しています。
◆「環境に配慮したイノベーション:流通業の脱炭素とサステナビリティの取り組み」の論文レポート概要
■論文レポート① 国内外の政策をわかりやすく解説
企業に求められる社会(ステークホルダー)からの期待と要請がサステナビリティへの関心の高まりにより変化し、ESG(Environment, Social, and Governance)の分野の非財務情報開示の重要性が高まっています。その中で自然資本を活用した多様な商品、製品を扱う流通産業は、そのサプライチェーン上のESGデータを把握、可視化し、脱炭素化していくことを技術・イノベーションによってビジネスモデルに組み込み、それを実行するためのプラットフォームを有しています。リアルタイムESGデータ等を取得し、サプライチェーン上の取引先企業と連携共有し製品を顧客に届けるプロセスをCO2削減量とコストの観点から最適化し、生み出されたCO2削減価値を可視化することで、従来見えなかった価値や経営インサイトを導出し炭素価値を企業価値にいち早く組み込み、企業価値向上に繋げられる可能性があり、そこで生まれる「省エネ」や「CO2削減」などの「環境価値」を顧客に訴求するといったロイヤルティマーケティングへの活用も考えられます。
■論文レポート② 消費者意識の高まりが、ソーシャル・イノベーションの創出につながる
流通業界は、これまで何度もビジネス・イノベーションが創出されることで、業界それ自体を拡大してきました。しかし、SDGsに取り組むことが当たり前となった日本の流通業界では、社会的課題の解決につながるソーシャル・イノベーションが創出されているものの、業界を一変させるまでには至っていません。本稿ではこれまで流通業界のあり方を変えてきたビジネス・イノベーションを振り返り、プラットフォーム・ビジネスによるソーシャル・イノベーションの創出を検討し、それをさらに普及させるための消費者の責任ある消費について論じます。
■論文レポート③ 取り組み事例:アスクル
アスクルは、法人・個人向けeコマースとして、1993年の設立から商品の分野を拡大し、現在では1,200万点以上の商品を扱っています。環境配慮されたオリジナル商品の開発・採用に2010年から取り組んでいましたが、脱炭素、資源循環・省資源、生物多様性保全を目指し2021年に商品環境基準を策定しました。すべてのオリジナル商品を評価し、2022年から商品サイトにスコアを表示する取り組みを開始し、2023年にはBtoBサイトでスコアを葉っぱのマークで見える化を実施したことにより、CVR向上の傾向が見られました。本稿ではアスクルの環境の取り組みと商品環境基準について紹介します。
■論文レポート④ 取り組み事例:三菱食品
三菱食品では、一般には伝わりにくい「食品卸売業」という業態の果たす社会的機能や役割、更には知的資産をステークホルダーに周知するため、昨年度より統合報告書を発行しています。本稿では「三菱食品 統合報告書2023」を基に、当グループが設定する4つの「サステナビリティ重点課題」のうち、環境問題対応の「2030年目標」として挙げられる[1]CO2排出量削減、[2]TCFD、[3]Scope 3に焦点を当て、主に脱炭素への取り組み事例を紹介します。
具体的には、CO2排出量を削減するために環境配慮型の電力や車両を導入し、サステナビリティに取り組む業界のリーディングカンパニーとして主体的にTCFD開示を行っています。また、TCFD提言に沿った指標・目標としてのScope1、2において自社の事業活動に伴うCO2排出量削減ロードマップを策定することに加え、サプライチェーン全体のカーボンニュートラル実現に向けてScope3の可視化にも着手しています。
■論文レポート⑤ 取り組み事例:ドラッグストア大手3社
ウエルシア、マツキヨココカラ、ツルハの統合報告書から、環境対応の取り組みについて確認しました。企業統合などで上位集中化が進むドラッグストア業態では、商品・サービスの拡充と共に対応すべき社会課題対応も増えています。流通業にとって今後の課題となるScope 3への対応について、売上規模が大きく成長途上にあるDGS企業の役割は大きいと考えられます。環境配慮型PB開発は今後サプライチェーン全体の取り組みに深化すると考えられ、同様の取り組みを取引先メーカーとの協働で進めることも期待されます。
■論文レポート⑥ 食品小売業の取り組み状況を分析
本稿は、食品小売業におけるサステナビリティへの取り組みの現状と課題をどう捉えるべきかという問題に取り組みます。アンケート結果から、食品小売業のサステナビリティへの取り組みの現状と課題が、①サステナビリティへの取り組みの「コスト」から「投資」への転換と、②全従業員が一体となった推進体制の構築、の2点にあることを示します。本稿の貢献は、調査対象を食品小売業に限定し、食品小売業のビジネスモデルを考慮した設問設計を行うことで、食品小売業の現について掘り下げた考察を行う点にあります。
◆『流通情報』2024年1月号の詳細
特集 「環境に配慮したイノベーション:流通業の脱炭素とサステナビリティの取り組み」
流通業が事業の長期的な持続可能性を向上させるために不可欠な “環境対応” につて、関連する6編の論文レポートで確認します。
論文 「農産物の品種表示に関する小売店頭でのフィールド実験~桃の品種表示の場合~」――石橋敬介、佐々木舞香、佐藤尚樹、西山淳一
視点 「人生を駆動する欲望への接近」
――公益財団法人流通経済研究所 理事・名誉会長/株式会社コムテック22 代表取締役
上原征彦
発行日:20243年1月15日(月)
詳しくはこちら:https://www.dei.or.jp/information/info01
◆研究情報誌 『流通情報』
『流通情報』は、流通活動・マーケティングに関連する重要なテーマに焦点を当てた会員向けの研究情報誌です。
食品業界、小売業、卸売業、物流業など多くの分野の関係者によるレポート、流通経済研究所の研究員による報告など、独自のコンテンツを提供しています。
■価格:定期購読年間33,000円
(本体30,000円+消費税3,000円)
■発行頻度:隔月刊(年6号刊行)
■購読特典:電子版利用
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