ニッスイの健康経営、2024年度の取組計画
2022年度に着手した長期ビジョン「Good Foods 2030」では、健康経営を人財価値向上の施策のひとつに位置づけており、2030年のありたい姿として、健康経営の実現、すなわち「一人ひとりが十分に能力を発揮できる姿」「従業員とその家族の生活の質の向上」の実現が会社としてのさらなる成果向上につながる状態となることを目指しています。
この長期ビジョンの第一段階である中期経営計画「Good Foods Recipe1」(2022~24年度)では、個人に向けて「個人の健康促進」「私生活との両立支援」、職場に向けて「働きやすくやりがいのある職場づくり」に取組んでいます。
2024年度はグループ健康経営の拡充に注力します。2023年度はグループ各社がそれぞれ健康目標を定めて取組を進めた結果、7社が「健康優良法人2024」(うち1社は「ブライト500」)に選定されました。本年度はさらにグループ内の連携を密にして好事例を共有展開し、グループ全体としての健康経営への取組を加速します。
またニッスイにおいても、引き続き健康諸施策を展開します。
人的資本の低減要因には身体や心の病気・ケガがありますが、それらの指標としてニッスイでは「身体的な疾病リスク」「プレゼンティーイズム(なんらかの理由でパフォーマンスが低下している状態)」「アブセンティーイズム(心身の不調により就業ができない状態)」に着目しました。
パフォーマンスの低下は、高ストレスや仕事への不満足などの心理的要因の影響度が高く、結果、メンタルヘルス不調によって長期休業に至ることもあります。また睡眠不足・喫煙・朝食の不摂取・飲酒習慣・運動不足といった生活習慣も次点の要因となっています。さらに、その他の長期病欠の主要因としては「がん」が挙げられます。
(1)メンタルヘルス対策
・メンタルヘルスの不調を未然に防ぐ一次予防を最も重視し、ストレスチェックによるストレスの把握を始めとして、エンゲージメント調査とも連携して高ストレス部署への状況確認・指導を行い、またマネジメント層への教育研修等を通して職場環境改善を図ります。
・重症化を防止する二次予防として、保健師による面談の実施、外部の従業員支援サービスによるケアプログラムの活用推進、高ストレス・ストレス要注意者の相談窓口の利用を促進します。
・職場復帰の段階では、休暇制度や復職支援によるサポート利用を促進します。
(2)生活習慣の改善
●パフォーマンス低下を防ぐため、生活習慣の改善として以下を提唱します。
・1日8,000歩以上の運動 ・禁煙 ・週2回以上の禁酒
・6時間以上の睡眠と規則正しい生活リズム ・朝食の摂取 ・EPAの摂取や魚食
●定期健康診断実施前の健康施策として、2023年度に導入した運動習慣支援アプリ「Beatfit(ビートフィット)」を活用した肥満率や生活習慣の改善を継続します。
このアプリには12ジャンル700以上のクラス(コンテンツ)があり、運動のほか睡眠やストレスケアにも対応し、従業員は全員無料で使用できます。
4月24日から6月23日までの2か月間、毎日の歩数と同アプリのコンテンツ再生数をチーム対抗や個人で競う「新・からだ改善コンテスト」を実施します。
●全従業員の定期健康診断の検査項目に、心筋梗塞・脳梗塞など循環器系疾患の発症との関連が示唆される指標であるEPA(*3)/AA比(*4)を取り入れ、全社平均0.4を目標値としています。ニッスイの主要事業であるファインケミカル事業の中核をなすEPA(エイコサペンタエン酸)を社員の生活習慣病予防に活用する活動として2016年度より毎年実施しており、2024年度も継続します。
EPAを多く含むニッスイ商品を無償で従業員に提供し、EPA/AA比の上昇に取組む恒例の企画「EPAチャレンジ」、魚食を推進する「お魚食推進キャンペーン」も継続実施します。
(3)がん対策
・女性検診や線虫によるがん検診の受診率を向上させ、要精密検査となった場合の追加検査費用を補助します。
・経営層や管理職層の禁煙を促進し、事業所ごとに受動喫煙の防止について再周知を図り、喫煙者に対して喫煙による健康被害や禁煙サポート策を周知します。
・35歳以上を対象に隔年で腹部エコー検査を実施していますが、がんの早期発見の一助として毎年実施に変更します。
*1「健康経営」は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。
*2 ニッスイの健康宣言(2016年制定)
従業員が「能力を十分に発揮できること」「従業員とその家族のQOL(生活の質)の向上」を目指して、従業員の心と体の健康を積極的にサポートすることにより、多様な人財が健康で能力を発揮できる環境を整備し、生産性向上につなげることを企図しています。
*3 EPA
EPA(エイコサペンタエン酸)はイワシなどの魚油に含まれる成分のひとつで、オメガ3系の必須脂肪酸の一種ですが、体内でほとんど生成できないため、毎日の食生活を通じて摂取する必要があります。
EPAは、心疾患リスクの軽減や血中中性脂肪の低下、抗炎症などのさまざまな作用が認められています。1990年には閉塞性動脈硬化症、1994年には高脂血症の治療薬として認可されました。
なおニッスイでは、肉中心の食生活を送る現代人に向け、肉の日(29日)の翌日の30日に青魚のEPAを摂取すること推奨し、バランスの取れた食生活を提案するため、毎月30日を「EPAの日」として一般社団法人日本記念日協会に登録、認定されました。
*4 EPA/AA比
健康を維持するEPAの機能はすでに多くのことが明らかにされていますが、今日、特に注目されているのが、EPAとAA(アラキドン酸)の体内バランスを示す比率「EPA/AA比」です。
AAは必須脂肪酸ですが、肉や植物油(リノール酸)の摂取に偏った食生活を続けていると体内で増えて炎症を促進し、動脈硬化を起こしやすい体質にするものです。一方EPAは、炎症を抑制し動脈硬化が起こりにくい体質にします。
EPA/AA比が高いと心血管疾患による死亡率が低いことが発表され(九州大学大学院医学研究院による「久山町研究」、Atherosclerosis 231 (2013) 261-267)、EPA/AA比があらためて注目されています。
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