「GXの産業界への影響と対応」研究プロジェクトにレポートを掲載
オーストラリアのエネルギー政策に関する最新動向
東京海上ディーアール株式会社は、2024年10月から調査研究プロジェクト「GXの産業界への影響と対応」を実施しています。このたび研究成果として、「オーストラリアのエネルギー政策に関する最新動向」を発行いたしました。詳細は本プロジェクトの概要ページをご覧ください。
レポート概要
2025年5月、オーストラリア(以下、豪州)で連邦議会総選挙(下院150議席、上院の半数40議席の改選)が実施され、与党・労働党が地滑り的な勝利を収めました。労働党は少数与党となることが予想されていたものの、実際には下院(定数150)の議席を78から94議席まで伸ばし、単独過半数を確保しています。一方、野党・保守連合(自由党、国民党)は議席を43議席(改選前は55議席)へ減らしました。
2022年5月の総選挙で保守連合から政権交代した労働党は、下院では単独過半数を確保していたものの、上院では過半数に届かず緑の党と政策協定によって政権の安定化を図ってきました。その影響もあり、労働党政権下では、気候変動への取り組みが政策の柱に据えられ、再生可能エネルギーへの移行やグリーン水素の製造・輸出に向けたプロジェクトなどが進められてきました。選挙戦でも、労働党は再生可能エネルギーの拡大とグリーン産業の育成を軸に、段階的かつ継続性のある脱炭素政策を提示しました。一方、保守連合は原子力導入やガス供給の強化を訴えましたが、拙速な原子力導入計画が有権者の警戒感を招き、政策の継続性と社会的受容性の観点から労働党の勝利につながりました。
豪州は世界有数の資源輸出国であり、特に日本は液化天然ガス(LNG)や石炭の多くを豪州から輸入しています。本稿では、日本のエネルギー安全保障を考えるうえで非常に関係の深い豪州について、そのエネルギー政策動向を概説します。なお、本稿ではエネルギーに焦点を当てますが、豪州は重要鉱物(リチウムやコバルト、レアアースなど)の生産国でもあり、日本や米国、欧州などは重要鉱物のサプライチェーン構築にあたって豪州との協力を強化しています。
「GXの産業界への影響と対応」研究プロジェクト概要
GX(Green Transformation)とは、化石燃料をできるだけ使わず、クリーンなエネルギーを活用していくための変革やその実現に向けた活動のことを指します。
現在の産業・社会構造は化石燃料の使用を前提に最適化されたものです。従って、GXは、単なるエネルギー政策の転換にとどまらず、社会の様々な分野に変化をもたらし産業界にも大きな影響を及ぼします。
本プロジェクトは、そのようなGXの与える影響をエネルギー、産業・競争、金融・資本市場、貿易・通商、技術、等の多様な観点から分析し、産業界に必要な対応を検討します。
研究の成果については当社ホームページにレポートとして発信する他、セミナー等も予定致しております。