ポータブルかつ安全なNO(一酸化窒素)吸入療法システムの開発【産技助成Vol.79】

独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
熊本大学バイオエレクトリクス研究センター


商用電源やバッテリーさえあれば世界中のどこでも利用できる
全く新しいNO供給装置とNOモニターを開発
安全、簡便、ポータブル、省エネルギー、低コストといった数々のメリットを持つ

main image
【新規発表事項】 
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO技術開発機構)の産業技術研究助成事業(予算規模:約50億円)の一環として、熊本大学バイオエレクトリクス研究センターの准教授、浪平 隆男氏は、商用電源やバッテリーさえあれば世界中のどこでも利用できる全く新しいNO供給装置とNOモニターの開発をしました。
本装置は、新生児の呼吸不全を含む重症呼吸不全病や、肺高血圧症、心臓移植後の患者の呼吸管理に対する画期的な治療法として注目されているNO吸入療法において利用されるNO生成装置で、10,000K(ケルビン)の高温プラズマによりNOをつくる「パルスアーク放電方式NO生成法」と、従来方式より20,000倍以上の高いガス捕集濃縮が可能な「ハニカム構造型マイクロチャネルスクラバー」を導入した新しい治療装置です。
いつでもどこでも簡単にNOが生成できるパルスアーク放電方式NO生成法の採用により、従来の高濃度NOボンベは不要であるため、治療場所の制限を受けません。
また、従来用いられてきたバブラー(気泡発生装置)よりも高い捕集率機能を備えたハニカム構造型マイクロチャネルスクラバーの採用により、ポータブルかつ省エネルギー・低コストで使用できるNOモニターを開発しました。


1.研究成果概要
本研究を効率よく進めるために「NOをつくる」「NOをはかる」2つのグループを組織しました。
“つくる”グループは9,000K以上のプラズマ温度でNOを生成できることを突き止めました。さらに、低消費エネルギーでNOを生成できるパルスアーク放電条件に関する知見を得て、それをもとにパルスアーク放電のためのエネルギー蓄積コンデンサ容量およびパルスアーク放電の繰り返し周波数の最適化を図り、実際に検証しました。最終的にポータブル且つ省エネルギー・低コストの「オンサイトNO供給装置」を試作し、その性能特性を実証しました。
“はかる”グループでは、高捕集効率機能を有するスクラバーの開発を目指した研究を進め、捕集液体積に対する捕集面積(捕集液体と被計測ガスの接触面積)率を増大できる、ハニカム構造型のマイクロスクラバー(小型の排ガス洗浄装置)を製作。紫外線ランプを用いた酸化カラム(注1)がもっとも安定した酸化特性を有することを明らかにし、これらの研究成果をもとに、ポータブル且つ省エネルギー・低コストの「オンサイトNOモニター」を試作し、期待する特性を有することを実証しました。

(注1) 紫外線ランプを用いた酸化カラム:NOを酸化しNO2へ変換する装置


2.競合技術への強み
1)安全性の向上:これまでは高濃度で高圧のNOボンベを用いていたため、ガス漏洩による医療事故の発生が懸念されていました。オンサイト(現地)でNOを生成できる本技術は、非常に安全です。
2)機動力の向上:救命活動に必要なNOボンベや分析器などは大変重く、オンサイトでの使用が困難でした。しかし、NO生成装置とNOモニターを人工呼吸器と一体化することにより、電源(商用電源やバッテリー)のみで世界中の至るところで簡便に利用できます。
3)患者のQOL(Quality Of Life:生活の質)の向上:従来のNO吸入器は特殊な治療室でのみ使用されるため、治療生活を余儀なくされる患者のQOL低下が大きな問題でした。ポータブル化と安全性を向上させた本装置は使用する場所を選ばず、患者のQOLの向上に貢献します。


3.今後の展望
本研究開発において、すでにポータブルNO供給装置およびNO&NO2モニターのプロトタイプ製作は終了しています。今後は「安全且つ患者のQOL改善につながるNO吸入療法システム」のプロトタイプを製作し、臨床試験を実施してデータを取得した上で薬事法認可申請を行う予定です。また、薬事法の壁を低くするために、本製品をNO生成装置とNOモニターを共に人工呼吸器に取り入れたオールインワンとしてではなく、人工呼吸器のオプションとして位置づけて販売することも検討しています。


4.参考
成果プレスダイジェスト:熊本大学准教授  浪平 隆男氏

すべての画像


会社概要

URL
http://www.nedo.go.jp/
業種
製造業
本社所在地
神奈川県川崎市幸区大宮町1310番 ミューザ川崎セントラルタワー16~21階
電話番号
044-520-5100
代表者名
村田 成二
上場
未上場
資本金
-
設立
-