リチウムイオン電池のサプライチェーンを独占する中国に欧州勢が台頭

ブルームバーグNEF、2025年まで中国がサプライチェーン市場を独占する一方、米国とスウェーデンが3位と4位に上昇することを予想

ブルームバーグ エル・ピー

【香港、ロンドン、ニューヨーク-2020年9月16日】ブルームバーグNEF(BNEF)は2020年リチウムイオン電池サプライチェーンランキングを発表。中国が2020年のサプライチェーン市場を独占し、過去10年以上市場をリードしてきた日本と韓国を追い抜いていることを明らかにしました。BNEFのデータによると、中国の優位性は主に2つあり、72ギガワット時という中国国内の電池に対する高い需要、および世界の原料精製の80%、世界の電池生産能力の77%、世界の部品製造の60%を占めていることに起因しています。
2020年において日本は2位、韓国は3位を占めています。両国とも蓄電池や部品生産では世界をリードしているものの、いずれの国も原料の精製や採掘に対しては中国ほどの影響力を有していないのが特徴です。原料サプライチェーンにおける支配力では劣勢ですが、日本と韓国は環境配慮やRII(規制=regulation、革新=innovation、インフラ=infrastructure)面で中国に対し優位に立っています。

BNEFの蓄電池分析部門長のジェームス・フリスは次のように述べています。「中国の優位性は、同国が過去10年間で行ってきた巨額投資と一連の政策を見れば当然のことと言えます。寧徳時代新能源科技(CATL)などの中国メーカーはこの10年間で、無名の状態から世界をけん引する存在となりました。欧州各国および米国は自国内で生産能力の拡大を図っているアジアのメーカーに対抗すべく、強力な蓄電池メーカーを生み出す取組みをしており、今後10年間の様相は特に注目に値します。また、欧州は原料バリューチェーンを取り込む施策を実施していますが、それに対し米国は対応の遅れを取っています」 

BNEFのリチウムイオン電池サプライチェーンランキングは、2020年における各国の順位と現在の開発状況の傾向に基づいた2025年の順位予想を示しています。また、サプライチェーンに関連する原料、セルと部品の製造、環境、RII、最終需要(電気自動車と定置型蓄電全体)[1]の主要5要素から国の順位づけも含まれており、順位付け全般において、前述の5つの要素は均等に重みづけをされているのが特徴です。

電気自動車の需要の増加に伴い、自動車製造現場に近い電池製造施設の必要性が増加しています。これが起因して欧州では電池工場が急増し、他国のサプライチェーン市場も欧州に続く兆しがあります。欧州内での成長産業と強力な環境への貢献が支えとなり、同地域の5ヶ国が2020年において上位10位以内にランクインしています。

2025年のランキングは、各国の現在の取組とその傾向に基づき作成されていますが、今後の政策や規制の変更に影響される可能性はあります。米国は2020年においては6位ですが、次の大統領選挙により状況は変化する可能性があります。米国が原料への投資を強化し電気自動車の利用を促進した場合、日本と中国を追い抜き2025年には1位になることもあり得ます。対照的に英国は、欧州大陸諸国の152ギガワット時相当の大規模需要にアクセスすることができなくなった場合、2025年のランキングで順位が下降する可能性があります。なお、152ギガワット時は、英国の需要の約5倍にあたります。

BNEFの金属市場分析部門長のソフィー・ルーは次のように述べています。「多くの原料生産国は、いかに資源を活用し、付加価値をもたらすか、そして蓄電池製造などを対象とする下流投資をさらに呼び込むかについて頭を悩ませています。主な決め手は、当該産業の環境負荷、安価でクリーンな電気エネルギーの確保、高い技術力を持つ従業員、蓄電池の需要を増加させるインセンティブです。こうした要因は、特定の希少価値の高い金属を独占するよりも重要となり得ます」

また、サプライチェーンに関連したサステナビリティと二酸化炭素排出の重要性が高まっており、素材加工や電池製造で使用される電力が、確実に低炭素電力であることは必須です。フランスは、キロワット時あたりの排出二酸化炭素量が28グラムと炭素排出係数の低い電力を有することが起因し、環境要因において2019年は1位を記録しました。欧州委員会が提唱する国境炭素税が導入され、米国大統領候補のジョー・バイデン氏が当選すれば、これらの国や地域は自国内のサプライチェーンを入手することが可能になると考えられます。

BNEFの蓄電池・原料調査担当アナリストのアムポフォ・クワシは次のように述べています。「バリューチェーンに対する投資を誘致するには、原料の調達、有能な人材の確保、インフラを整えることが必須です。世界中のクリティカルミネラル採掘への巨大投資に加えて中国はミネラルの精製においても市場を独占しています。中国が日本や韓国に対して総合的に優位であるのはこれが理由です。バリューチェーン全体において上位を狙う国は、環境を保護する政策を策定しつつ、上流金属の採掘や精製開発を支援することが必要となるでしょう」

 

図1:2020年度および2025年度(予想)リチウムイオン電池サプライチェーンランキング図1:2020年度および2025年度(予想)リチウムイオン電池サプライチェーンランキング

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[1] 原料は原料入手、掘削能力、精製能力に基づく順位付け。電池と部品は電解質塩と電解質溶液、陰極、陽極、セパレーター、電池の製造能力に基づく順位付け。環境は、電力系統の炭素排出、再エネ政策、環境と生態系の健全性に基づく順位付け。RIIはインフラ、政策、研究開発投資、STEM教育に基づく順位付け。需要は交通と定置型蓄電によるリチウムイオン電池需要に基づく順位付け。

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設立
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