アパレル・住関連の粗利率はコロナ下でも上昇/仕入れ抑制で縮小均衡懸念

フルカイテンが市場調査

FULL KAITEN

フルカイテン株式会社(本社・大阪市福島区、代表取締役・瀬川直寛)は、アパレル・ライフスタイルを中心とした小売企業における利益率の市場調査を行いました。2020年度(2020年3月~2021年2月)と比較して、2021年度(2021年3月~2022年2月の1年間)は粗利率(売上総利益率)が全体的に上昇したことが分かりました。コロナ禍が丸2年目に入った2021年度は多くの小売企業が仕入れを抑制した結果、在庫の圧縮と値引き販売の減少により、全体として粗利率の上昇につながったとみられます。ただ、仕入れ抑制による粗利率の改善はあくまで緊急避難的な方策であり、2022年度以降は販売力を強化することで、抑制した後の仕入れ水準を維持しながら売上高や粗利益額を伸ばすビジネスモデルが求められると言えます。

  • コロナ禍2年目に粗利率の中央値が上昇
調査は小売各社を粗利率で50%未満、50%以上55%未満、55%以上60%未満、60%以上65%未満、65%以上の5つの階層に分け、2020年度と2021年度における各階層の中央値を比較しました(上グラフ)。対象は当社が開発するクラウドシステム『FULL KAITEN』を利用する企業のうち、2020~2021年度の必要なデータが得られた小売37社(導入ブランド数:190)です。

 ※中央値と平均値 平均値がデータ群の真ん中になるデータを新たにつくるのに対し、中央値はデータ群を大きさの順に並べて真ん中にあるデータを取り出すことで求める(データ群が偶数の場合は中央にある2つのデータの平均値)。中央値は平均値とは違って極端な数字のデータ(外れ値)の影響を受けにくいという特徴がある。

最高の階層(65%以上)を除く4つの階層では、2021年度が2020年度を上回っています。具体的には次の表の通りです。

一方で、65%以上の階層では2021年度の中央値は68.84%となり、2020年度の70.40%から低下しました。
 
  • 原価率を下げても粗利益が増えるとは限らない
前章では粗利率が65%以上の階層を除く4階層で、2021年度の中央値が2020年度から上昇したことに触れました。その要因として、仕入れを抑制した結果、在庫の圧縮と売れ残りの値引き販売が減ったことが奏功した可能性が濃厚です。

粗利率を上げる手立てとしては、製造原価(企画原価)を下げる手法があります。しかし、原価を下げるにはその企業やブランドが持つ販売力とは関係なく、量を発注する必要があります。その結果、残在庫が発生するため値引きを頻発せざるを得なくなり、在庫評価減も相まって粗利益が減ってしまいます。

それよりも、製造原価が多少上がってしまうとしても発注量を抑制し、限られた量の在庫を値引きを避けながら売っていく手法の方が、コロナ禍のような需要激減局面では粗利益の増加に貢献します。

他方、粗利率が最も高い階層(65%以上)では2021年度の中央値が前年度を下回りました。この階層はもともと粗利率が65%以上と高かったこともあり、仕入れおよび値引きの抑制の効果が他の階層と比べて相対的に小さかったためとみられます。
 
  • 仕入れ抑制による粗利率改善はあくまで一時的
コロナ禍3年目となる2022年度以降に向け、留意点が1つあります。2021年度までの仕入れ抑制による粗利率改善は、あくまで緊急避難的な手法であり、これを何期も続けていては事業が縮小均衡になっていくということです。
2021年度までは、前章で見たように仕入れを抑制し在庫が減ったことで粗利率が改善しました。各社・各ブランドの販売力がコロナ前と比較して向上したわけではありません。

この状態で2022年度以降も仕入れ抑制を続ければ、販売力は変わらないので、売る商品が減る分だけ売上高や粗利益額の減少を招きます。すると、固定費を賄いきれずに営業赤字になるので、再びコロナ禍1年目と同様の不採算店舗の閉鎖といった構造改革を迫られます。これではますます業績が下火になっていくことは火を見るよりも明らかです。

かと言って、販売力が変わらないままで再び仕入れを増やせば、値引き販売と残在庫の評価減が頻発するという先祖返りは避けられません。それに、残在庫をさばくために売り場が増えてしまえば本末転倒です。

以上を総合すると、コロナ禍をきっかけにした仕入れ抑制と売り場の統廃合による効果を維持しながら業績回復を確かなものにするには、販売力をつけること以外に道は無いと言えるでしょう。これはコロナ禍を経た今まさにアパレル産業が直面している新たな課題です。
特にアパレル産業では従来、前年踏襲で売上を確保するために仕入れありきで販売力以上の発注を行い、計画通りに売れなければ値下げして残在庫の発生を回避するという手法が主流となっていました。

このため、値下げが増えても利益が出るよう製品原価を下げることが経営の主眼となってきましたが、原価低減は商品の同質化という弊害が出るほどまで既になされています。仕入れ原価率を数ポイント下げられたとしても利益感度は低く、何十%もの値引き販売と残在庫の大幅な評価減を抑える方が利益感度が高いことは自明です。
限られた量の在庫でも、今ある在庫を効率よく利益と現金へ換えるビジネスモデルへの変革が求められています。
  
 
【会社概要】
社名: フルカイテン株式会社
URL: https://full-kaiten.com
本社: 大阪市福島区福島1-4-4 セントラル70 2階B
設立: 2012年5月7日
代表者: 代表取締役 瀬川直寛

【本件の問い合わせ先】
フルカイテン株式会社
 戦略広報チーム 南
電話:06-6131-9388
Eメール:info@full-kaiten.com

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会社概要

フルカイテン株式会社

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URL
https://full-kaiten.com/
業種
情報通信
本社所在地
大阪府大阪市福島区福島1-4-4 セントラル70 2F
電話番号
06-6131-9388
代表者名
瀬川直寛
上場
未上場
資本金
4億2154万円
設立
2012年05月