「誰が正しいかではなく、みんなで決めたことを正解にしていく」——15年続くNPOの、対話の作法
NPO法人CRファクトリー「第31回プレミアムコネクトーク」にSET理事長・三井俊介が登壇。震災2日後の立ち上げから15年、移住者80名超を生んだ組織の続け方を語る
2026年8月24日(月)、認定NPO法人SET(岩手県陸前高田市広田町/理事長・三井俊介)の理事長・三井俊介が、NPO法人CRファクトリーの運営する会員制オンラインコミュニティ「コミュニティ・ラボ」主催の「第31回プレミアムコネクトーク」に登壇しました。テーマは「人口が減るからこそ豊かになる人づくり、町づくり、社会づくり」。CRファクトリー代表理事の呉哲煥氏との対話、参加者を交えたセッションへと展開し、参加者からは「自分の活動に引き寄せて考えられた」との声が上がりました。

なお呉氏は、かつてSETの理事を務めた人物でもあります。15年前からの縁が、今回の登壇の場につながりました。
■ 「50年後、この街はなくなってしまうかもしれない」——始まりは、地域の人の一言だった
SETの出発点は2011年の東日本大震災です。当時大学生だった三井は、震災の2日後に仲間へ呼びかけてSETを立ち上げ、物資の搬入・搬出から活動を始めました。
活動の方向が定まったのは、縁あって訪れた陸前高田市広田半島で、地域の方から聞いた一言でした。
「50年後、この町はなくなってしまうかもしれない」
そこにあったのは、震災による突然の喪失だけではありませんでした。震災以前から、人口流出と高齢化は静かに進んでいた。三井はこの経験から、被災地で起きていることを50年後の日本全体で起こりうる変化として捉え、地域の実践を社会へつなげる視点で活動を続けてきました。
■ 人口が減ることが、問題なのではない
登壇のなかで三井が一貫して強調したのは、人口減少そのものをマイナスと捉えない、という立場です。問題は人が減ることではなく、人々の行動様式やコミュニティのあり方、まちづくりの仕組みが、その変化に追いついていないことにある——SETはその前提で事業を設計してきました。
現在SETが展開するのは、岩手県内の中高生へのキャリア教育、都市部の大学生が地域に滞在してまちづくりに関わるスタディプログラム、全国の中高生を対象とした民泊型修学旅行など。中高生への伴走支援は約1,300名、スタディプログラムには約1,500名の大学生が参加し、民泊修学旅行では全国から約17,000人の生徒が陸前高田を訪れています。活動を通じて岩手県へ移住した人は80名以上、うち30名以上が現在も地域で暮らしています。
活動初期の広田町には、高台移転によるコミュニティの分断、若者の流出、漁業の衰退といった課題が幾重にも重なっていました。そのなかでSETが目を向けたのは、課題への直接的な介入ではなく「一緒にやる人を増やすこと」でした。

地域の人が「これをやってみたい」と言ったとき、「いいですね。一緒にやりましょう!」と応えられる存在であり続けること。それが結果として、関係人口や移住者、新しい仕事の創出につながってきた、と三井は話しました。
■ 「違いは違いだよね」——15年続けるための、対話の作法
15年のあいだ、仲間との関係をどう維持してきたか。呉氏からの問いに、三井が挙げたのはSETに根づく対話の文化でした。
意見が食い違ったとき、どちらかを間違いとするのではなく、「違いは違いだよね」と認め合ったうえで話し合う。
「誰が正しいかではなく、みんなで決めたことを正解にしていく姿勢が、長期にわたる活動継続の土台になっている」
正しさを競わせれば、組織はどこかで必ず割れる。決めたことを全員で正解に育てていく——その積み重ねが、15年という時間を支えてきたといいます。
仲間はどこから始まったのか、という問いには、「友達ですね」とシンプルに答えました。制度や動員からではなく、顔の見える一人ひとりへの声かけから、SETの15年は始まっています。

■ 当日の詳しい内容は、CRファクトリーのレポートで
当日のトークの詳細については、主催であるNPO法人CRファクトリーがnoteでレポート記事を公開しています。あわせてご覧ください。
■ 今後の展開
SETは引き続き陸前高田市広田町を拠点に、スタディプログラムや民泊修学旅行の受け入れ、中高生へのキャリア教育を継続するとともに、移住・定住の促進にも取り組んでいきます。人口減少を「制約」ではなく「関係性を結び直す機会」として捉える実践を、地域の外へも開いていきます。
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■ 認定NPO法人SETについて
SETは「一人ひとりの"やりたい"を"できた"に変え、日本の未来にGoodなChangeを起こす」をミッションに掲げ、2011年の東日本大震災以降、岩手県を中心とした地域で若者と住民がともに学び合う仕組みをつくってきました。修学旅行民泊や大学生・社会人向けプログラム、地域コミュニティづくりなどを通じて、若者が地域の日常に関わり、住民とともに学び合う"続く関係"を育んでいます。2024年度は年間5,000人以上が参加。現在では岩手県のみならず複数地域で活動を展開。若者の成長と地域の活力を同時に生み出しながら、人と地域の関係性そのものを基盤とした、持続可能な地域づくりに取り組んでいます。過去に2度の内閣総理大臣賞受賞、その他多数受賞。
【団体概要】
認定特定非営利活動法人SET
所在地:岩手県陸前高田市広田町字山田52-6
理事長:三井俊介
設立:2011年3月12日(法人化:2013年6月18日、認定取得:2025年10月16日)
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