石川県・金沢の企業の輸出支援を通して学ぶ、中小企業の輸出の「壁」と成功の秘訣とは?
STANDAGE、「日本文化輸出」に関するレポートを発表
1|日本の中小企業における輸出が進まない現状
人口減少等を背景として国内市場の縮小が見込まれることもあり、海外市場への進出を目指す日本食材を扱う中小企業は年々増加しています。国も輸出高の拡大に向けてさまざまな施策を実行しており、農林水産省は2020年に「農林水産物・食品の輸出拡大実行戦略」をとりまとめ、農林水産物の輸出額を2025年に2兆円、2050年には5兆円まで伸ばすという目標を掲げました。こうした取り組みにより、コロナ禍による一時的な落ち込みはあったものの、輸出高は緩やかな右肩上がりで推移しています。
しかし、中小企業の輸出高を都市部・地方部別に見ると、その格差はまだまだ大きく広がっています。スタンデージが、海外進出をしていない中小製造業(従業員数100名〜300名未満)の経営者・役員100名を対象に実施した調査※1によると、昨今の円安・資源高、物価高騰などの動きを受けて、輸出拡大や海外展開への意欲が高まった企業はわずか18.0%の結果となりました。
輸出に対して消極的/保守的になる理由として、「自社の製品が海外で売れる自信がない」や「任せられる人材がいない」などが挙げられており、海外展開に対して高いハードルを感じている実態が伺えます。
2|石川県金沢市から「海外輸出」に盛り上がりの兆し
日本の中小企業における輸出が進まない現状を受け、日本全国の地方創生に貢献すべく、スタンデージは中小企業向けの貿易支援パッケージを提供しています。なかでも北陸地方に注力し、2022年には北陸銀行とも提携し、輸出支援を始めました。
北陸地方で輸出支援の取り組みの営業を行うなかで、特に石川県金沢市の若き経営者たちの輸出への意欲の高さが目立っています。金沢棒茶、冷凍寿司、漆器など地元企業から立て続けに手が上がり、スタンデージの貿易パッケージを活用して海外販路拡大に乗り出しています。
金沢は、インバウンドがかなり盛んなことに加えて、JCI(青年会議所)の結束力が非常に強いエリアです。事業承継を考えている40〜50代の経営者たちの連携が強く、その中で「金沢から世界へ」という文脈でチャレンジしたいという熱量が高い現状があります。
3|北陸(金沢)から輸出をする上での障壁とは?
一方で、課題も浮き彫りになりました。
スタンデージが、自社で海外輸出を経験したことのある、中小製造業(従業員数100〜300名未満)の経営者・役員100名を対象に実施した調査※2によると、半数以上が自社での海外輸出に苦労を感じている実態が明らかになりました。
品質管理など物流面の課題や、買い手と「引き合わせて終わり」のマッチング後の対応の難しさなどが挙げられる他、海外営業・物流管理における「コスト増加」や「人的リソース不足」に課題を感じている方も多いようです。
実際、日本国内全体の輸出高は緩やかな右肩上がりで推移しているものの、北陸4県の空港・港湾からの輸出額、シェアは令和3年時点で36億円(0.3%)と多くありません。
北陸には海外に輸出すべき特産品が多くあるにも関わらず、輸出額が伸びない背景として、「少量多品目」という地域特性があげられます。北陸地域からの農林水産物・食品の輸出は、太平洋側の港・空港まで小口の貨物輸送を強いられており、これは、物流が整備された大都市圏とは異なる北陸地域固有の課題と言えるでしょう。
4|北陸酒蔵の輸出ニーズから生まれた「特産品特化型」貿易パッケージサービス
上記課題を解決するためスタンデージは、地域特産物の輸出に特化したパッケージプランを開発しました。このプランの元になっているのは、中小企業の輸出参入を促進するため、販路開拓から契約・交渉、決済、物流まで一気通貫で貿易づくりを代行する当社のパッケージサービス「デジトラッド」です。
貿易を「まるなげ」できるデジトラッドの機能やシステムを踏襲する一方、契約対象を弊社が設定する「地域特産物」としての基準を満たす事業者に限定することで、より初期費用を抑えています。国内初となる定温航空便による小口ドア to ドア輸送を実現する物流網もゼロから構築し、農水省の補助事業として取り組んでいます。
特産品特化型貿易パッケージプランは非常に好評で、現在、国内 20 を超える企業に導入いただいており、そのほとんどが日本酒の酒蔵です。この特産品特化サービスが生まれたきっかけも、輸出時の品質管理やロットに課題感を持つ北陸の酒蔵からのニーズでした。日本酒の販売先は主に欧州の高級レストランやホテルで、この物流網は北陸をはじめ、全国の地域特産物(海産物や野菜、肉など)の企業から注目されています。特に世界に誇ることのできる海産物が多々ある北陸においては、親和性が高いといえるでしょう。
2023 年 5 月にはパリとロンドンで日本酒の試飲会を開催しました。現地にパートナー会社がいるため、開催後の継続的なフォローを行い、継続発注・発注量の拡大を促しています。まずは日本酒を海外のレストランに販売し、輸出ルートを確立したうえで、そこに地域特産の食品も同様に流し、北陸をはじめ日本全国の味覚および食文化を世界に届けていきたいと考えています。
5|輸出支援を通してわかった、地方創生に貢献するために重要なこと
これまでは、「貿易」をするとなると、販路開拓をし、バイヤーと契約をするために交渉を重ね、契約締結し、決済の手続きをして、物流まで管理しなければなりませんでした。
自社で取り組もうとすれば、海外営業ができる人材を確保して、貿易実務ツールを揃えて…といったコストがかかります。リソースが限られる中小企業が自力で貿易実務や海外との契約交渉を行うことは難しいでしょう。その部分を私たちが代行すれば、約半額は補助金でまかなうことができ、残りの半額のうち一部国内で先に私たちが製品を買い取るため、最初の持ち出しを抑えて貿易に着手できるので安心です。
個々の会社の商品を売るだけでなく、特に特産品においては、日本またはその地方固有の「文化」「技術」「特産」として概念ごと輸出すれば、海外に正しく認知してもらうことができ、売り手となる国内企業も納得・安心して自社製品を海外に送り出せるでしょう。
多くの中小企業から、行政などからの支援で海外のバイヤーから引き合いがきても、どう対応したらよいか分からないという声を聞きます。
同調査※2からも、自社で海外輸出を行った際に「バイヤーとの交渉」に難しさを感じた企業は56.0%にも及ぶという結果がわかっています。
継続的な事業として輸出を支援するには、買い手を紹介して終わりではなく、引き合いがあったあとの海外現地営業やさらなるプロモーションなど事後フォローまでケアし、点ではなく面で支え伴走することが大切です。今後も文化・技術の担い手である企業の目線に立ち、ニーズに合う支援の形を考え、地域創生にもつながる取り組みを続けていきたいと考えています。
※1調査概要:製造業の海外展開に関する実態調査
調査方法:インターネット調査
調査期間:2023年9月27日〜同年10月3日
有効回答:海外進出をしていない、中小製造業(従業員数100名〜300名未満)の経営者・役員100名
※2調査概要:製造業の海外輸出に関する実態調査
調査方法:インターネット調査
調査期間:2023年9月28日〜同年10月11日
有効回答:(外部支援サービスを活用せず)自社で海外輸出を経験したことのある、中小製造業(従業員数100〜300名未満)の経営者・役員100名
貿易まるなげパッケージプラン「デジトラッド」について
「デジトラッド」はスタンデージが独自に開発した、販路の開拓から交渉・契約、決済、物流や通関に関わる事務手続きまでワンストップで提供する総合貿易パッケージサービスです。
22年下半期の急激な円安や、輸出拡大に向けた国の取り組みにより、日本全体の輸出高は緩やかな右肩上がりで推移する一方、中小企業の輸出高を都市部・地方部別に見ると、その格差はまだまだ大きく広がっています。
「デジトラッド」は、こうした課題を抱える日本の製造業がより自由に、より簡単に海外進出を実現できるよう、販路開拓から契約・交渉、決済、物流まで一気通貫で貿易づくりを代行するパッケージサービスとして誕生しました。
一部業務のシステム化やコンサルティングにとどまるのではなく、貿易におけるすべての流れを「まるなげ」できるサービスです。23年8月末時点で、導入企業数はのべ100社に達しました。
(詳しくはこちら:https://boueki.standage.co.jp/digitrad/)
STANDAGEについて
2017年3月設立。「すべての国が、すべてのモノに、平等にアクセスできる世界の実現」をビジョンに掲げ、地域や国に関わらず安心・安全・安価に「商品」と「代金」の同時交換を可能にする、ブロックチェーンを活用した新貿易決済システムの開発を行う。主要な市場はアフリカをはじめとする新興国とみて、ナイジェリアをはじめアフリカ4か国に拠点を設置し対アフリカ貿易事業を展開。貿易決済領域にとどまらず、販路開拓や受発注、国際物流といった貿易全体のDXを実現するシステムの開発・提供を行いながら、国内の新規貿易プレイヤーを増やすため、中小企業の輸出支援にも取り組んでいる。
会社名:株式会社STANDAGE
設立 :2017年3月
代表者:代表取締役社長 足立 彰紀
資本金:6億856万8,500円(3億278万250円の資本準備金を含む)
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