抗うつ薬が効かない社交不安症(対人恐怖)を認知行動療法が改善
~ 世界初、臨床試験で実証~ 47.6%の患者で症状がほぼ消失するなど、大き治療効果
宮崎大学吉永尚紀講師と千葉大学清水栄司教授らの研究グループは、抗うつ薬で改善しない社交不安症患者(患者の7-8割と想定される)に対して、認知行動療法が有効(85.7%が改善、47.6%が寛解[症状ほぼ消失])であることを臨床試験により明らかしました。
成果は、欧州医学雑誌のPsychotherapy and Psychosomatics誌(注1)に5月27日付(日本時間)でオンライン速報版が掲載されました。
<注1>
2014年インパクトファクター:9.20(ランキング:心理学分野で4位、精神医学分野で5位)
成果は、欧州医学雑誌のPsychotherapy and Psychosomatics誌(注1)に5月27日付(日本時間)でオンライン速報版が掲載されました。
<注1>
2014年インパクトファクター:9.20(ランキング:心理学分野で4位、精神医学分野で5位)
- ポイント
・これまでの治療法は――抗うつ薬を用いた薬物療法は、社交不安症に対する標準的治療法として世界的に最も普及しています。しかし、抗うつ薬治療では十分な改善を示さない患者が多いことが課題として指摘されており、次の有効な治療法を確立していく必要がありました。
・本研究は世界で初めて、抗うつ薬で改善しない社交不安症に対し、認知行動療法を行うことの有効性をランダム化比較試験により示しました。対象患者42名は2群(「通常治療群」と「通常治療に認知行動療法を併用する群」)に分けられ、治療により改善した患者は通常治療群10% vs 認知行動療法併用群85.7%、寛解(症状がほぼ消失)は0%vs 47.6%でした。
・本研究成果を受け、2016年度の診療報酬改定において「認知行動療法」の対象疾患に社交不安症が加わりました。なお、本研究で作成・使用された認知行動療法マニュアルに従って治療が実施された場合に限り、算定できる要件となっています。
・本研究成果については、国内での活用のみならず、国際的な社交不安症の治療ガイドラインの改定など、世界の標準治療に貢献するなどの活用が大いに期待されます。
Yoshinaga N, et al. Cognitive Behavioral Therapy for Patients with Social Anxiety Disorder Who Remain Symptomatic following Antidepressant Treatment: A Randomized, Assessor-Blinded, Controlled Trial. Psychother Psychosom. 2016;85(4):208-17.
URL(https://www.karger.com/Article/Abstract/444221)
- プレスリリースの詳細について、以下のウェブサイトをご確認ください。
- 問い合わせ先
●吉永尚紀
宮崎大学テニュアトラック推進機構看護学系
Tel/Fax:0985-85-9784
E-mail:naoki-y@med.miyazaki-u.ac.jp
研究室HP:http://www.med.miyazaki-u.ac.jp/home/yoshinaga/
●清水栄司
千葉大学子どものこころの発達教育研究センター・大学院医学研究院認知行動生理学
Tel/Fax:043-226-2026(Tel) 043-226-2028 (Fax)
E-mail:eiji@faculty.chiba-u.jp
研究室HP:http://www.m.chiba-u.ac.jp/class/rccmd/(子どものこころの発達教育研究センター)
http://www.m.chiba-u.ac.jp/class/phys1/(認知行動生理学)
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