【実施報告】奈良の鹿との共存を考えるシンポジウムに255名が来場― ワー ルド・ヘリテイジ、世界遺産を「訪れる観光」から「未来を作る観光」へ
アンケート回答者の94.3%が「ネイチャーポジティブをもっと知りたい」、約70%が今後の市民参加企画に「参加したい」と回答

奈良・大阪で宿泊・観光施設を運営する株式会社ワールド・ヘリテイジ(本社:奈良県奈良市、代表取締役:東 正教)は、株式会社学びの旅、奈良教育大学ESD・SDGsセンターとともに、2026年9月26日(土)、奈良教育大学(奈良市高畑町)にてシンポジウム「ネイチャーポジティブシティー奈良 ~歴史・景観・学びを未来へつなぐシンポジウム~」を開催しました。当日は255名が来場。2026年7月の調査で過去最多の1,687頭となった奈良の鹿をめぐり、有識者らが現場の課題を共有し、人と鹿の共存を市民とともに考えました。アンケート回答者の94.3%は、「ネイチャーポジティブをもっと知りたい」と答えています。
①開催結果:来場255名、13名が登壇
-
来場者数:255名
-
登壇者数:13名(司会含む)。奈良教育大学、奈良文化財研究所、奈良の鹿愛護会、奈良県観光局奈良公園室、奈良市教育委員会ほか
アンケート回答者の約65%は奈良市・奈良県内在住で、年代も10代から60代以上と幅広い層にわたりました。奈良公園や春日山原始林をめぐる課題が、地元の暮らしに近いテーマであることがうかがえます。


② 1300年の共生を未来へ 各分野の有識者が奈良の価値と課題を共有
■開会
シンポジウムは、宮下 俊也氏(奈良教育大学 学長)と川井 徳子氏(株式会社学びの旅 代表取締役)の挨拶で開幕。
■基調講演

本中 眞氏(奈良文化財研究所 所長)が、「世界遺産 “古都奈良”の風景―“場”が語り継ぐ物語を未来へー」をテーマに基調講演を行いました。本中氏は、世界遺産「古都奈良の文化財」を寺社建築や遺跡といった有形文化財だけでなく、人々の暮らしや信仰、祭礼などの無形の営みと一体となった「文化的景観」として捉える視点を紹介しました。さらに、奈良公園や春日山原始林について、「自然と人間の共同作品」であり、人と自然、文化が長い年月をかけて共生してきた象徴的な場所であると解説しました。
■パネルディスカッション
パネルディスカッションでは、中澤 静男氏(奈良教育大学 特任教授)がモデレーターを務め、「奈良型ネイチャーポジティブ」をテーマに多角的な議論が行われました。
まず、説田 晃大氏(奈良市美術館 主任学芸員)が、写真を通して奈良の風景の変遷を紹介。明治から昭和にかけての写真資料をもとに、奈良公園は昔から変わらない風景ではなく、人の営みによって変化し続けてきた景観であることを示しました。
続いて、奥田 篤氏(奈良県観光局奈良公園室 主幹)は、奈良公園における景観保全や植生管理、外来種対策などの取り組みを紹介し、歴史的な景観を維持しながら自然環境を保全していくための方策について説明しました。
中西 康博氏(一般財団法人奈良の鹿愛護会 副会長)は、年間2,691件に及ぶ鹿の保護や事故及び苦情対応等の実績を紹介するとともに、人身事故や住宅地への出没など、共存を続けていく上での課題について報告しました。
また、杉山 拓次氏(春日山原始林を未来へつなぐ会 事務局長)は、世界遺産・春日山原始林で進む植生への影響や保全活動の現状を紹介し、市民参加による継続的な自然再生の重要性を訴えました。
渡邉 伸一氏(奈良教育大学 教授)は、奈良の鹿が1300年にわたる保護管理の歴史によって守られてきたことを紹介。中世から続く保護制度や、江戸期から始まった角切りなどの管理の仕組みに触れ、「かつてのような上からの権力によってではなく、民主社会の中でこの共生をどう維持できるかが今試されている」と提起しました。
さらに、新宮 済氏(奈良女子高等学校 教諭)は、高校生による探究学習の実践事例として、奈良の鹿と人との共生をテーマにした動画制作や啓発活動について発表。これを受け、三木 恵介氏(奈良市教育委員会 研修係長)は、地域の自然や文化を学びながら課題解決に取り組む教育の重要性について指定討論を行いました。
モデレーターを務めた中澤 静男氏は、「自然環境を保全し、さらに回復軌道に乗せていくことが重要」と指摘。また、「これからの奈良の自然と人との共生関係をつくっていくのは、一人ひとりの行動によるボトムアップの取り組み」と述べ、「自分に何ができるかを考え、一歩踏み出してほしい」と来場者に呼びかけました。
■まとめ・総括
及川 幸彦氏(奈良教育大学ESD・SDGsセンター長)が、「奈良の1300年にわたる人と自然、文化の共生の歴史には、ネイチャーポジティブを実現するための知恵と実践が詰まっている」と指摘。その上で、「行政・企業・教育機関・市民など、それぞれの立場でできることから行動を起こしていくことが重要」と呼びかけ、奈良から新たな共生のあり方を発信していく意義を示しました。
③参加者アンケート:半数超が「知らなかった」層から、94.3%が「もっと知りたい」へ
-
ネイチャーポジティブについて、参加前に「名称・考え方とも知らなかった」と答えた人は54.7%(有効回答53件中29件)。参加後は94.3%(同50件)が「もっと知りたい」と回答しました。
-
パネルディスカッションを「理解できた」以上と答えた人は94.3%(同50件)。「全体で一番印象に残ったプログラム」としても84.9%(同45件)が挙げました。
-
今後の市民参加企画に「参加したい」と答えた人は69.8%(同37件)でした。
自由記述には、「鹿愛護会のボランティアに参加」「関連団体に寄付していきたい」「観光客に接し方や観察のおもしろさを伝えたい」「ESDとして授業展開できるようにしたい」など、学びを具体的な行動につなげようとする声が寄せられました。
参加者の声(アンケートより抜粋)
-
「それぞれの立場から見た奈良公園と鹿の歴史を知ることができてよかった。今後どうしていけばいいのかすぐに答えはでないけど一人一人が自分事として考えることが大切だと感じた。」
-
「どこか頭の中で人任せにしている部分があった。市民としてできることを考える際きっかけになった。」
-
「何を残して、何を変えるのか、何を基準に考えて未来へ進むのかを考えさせられました。」
④ 株式会社ワールド・ヘリテイジが考える観光 ― 「訪れる観光」から「未来を作る観光」へ
株式会社ワールド・ヘリテイジは、世界遺産を観光資源として紹介するだけでなく、その文化・自然・地域の暮らしを次世代へ受け渡すことを、観光事業者としての新たな責任と位置付けています。地域の文化と自然を観光資源として消費するのではなく、次の世代へ受け渡す観光を作る。世界遺産を「訪れる観光」から、世界遺産の未来に「参加する観光」へ。それが当社の考える観光です。
この考えのもと、当社は次の3つの役割を担っています。
-
地域の課題を発見する会社:観光客を呼び込むだけでなく、観光によって生じる課題にも向き合います。
-
異なる人をつなぐ会社:地域に蓄積された知恵を集め、対話を実践へとつなげます。
-
学びを事業に還す会社:得られた知見を、当社の観光事業そのものに反映していきます。
当社は2026年6月、奈良教育大学ESD・SDGsセンターのネーミングライツを取得し、「World Heritage ESD・SDGsセンター」として運営しています。また、同じグループの株式会社学びの旅は、2024年度全国商工会議所きらり輝き観光振興大賞で大賞を受賞した「奈良SDGs学び旅」を2020年の開始から約10,000人に提供しています(2025年度まで)。
代表取締役 東 正教 コメント
「私たちは、観光を『地域の文化と自然を、次の世代へ受け渡すこと』だと考えています。奈良公園の鹿は、奈良の誇りであると同時に、今まさに向き合うべき課題でもあります。当日、多くの市民の皆様が自分事として考えてくださったことを心強く感じています。今回の議論を、観光事業者として私たち自身の事業に還していきます。」
⑤ 開催の背景:過去最多1,687頭、いま問われる「人と鹿の共存」
奈良公園の鹿は、奈良の鹿愛護会による2026年7月の調査で過去最多の1,687頭(前年比222頭増)が確認されました。生活圏や通学路への出没、住宅街の「ミニ奈良公園化」、農作物や下草への被害など、課題は多様化しています。本シンポジウムは、奈良公園の鹿や春日山原始林、世界遺産「古都奈良の文化財」を取り巻く現状や課題を、奈良市民に広く知っていただき、自然・景観・観光・地域社会を含む総合的な視点で「奈良公園の未来をどう作っていくか」を考えるスタートの場として開催しました。
開催概要
-
イベント名: ネイチャーポジティブシティー奈良 ~歴史・景観・学びを未来へつなぐシンポジウム~
-
日時: 2026年9月26日(土) 13:30~16:30(受付13:00~)
-
会場: 奈良教育大学 大講義室(奈良県奈良市高畑町)
-
主催:株式会社ワールド・ヘリテイジ、株式会社学びの旅
-
共催: 奈良教育大学 ESD・SDGsセンター
-
参加費:無料
-
登壇者(敬称略)
-
宮下 俊也(奈良教育大学 学長)/川井 徳子(株式会社学びの旅 代表取締役):開会・主催者挨拶
-
本中 眞(奈良文化財研究所 所長):基調講演
-
中澤 静男(奈良教育大学 特任教授):モデレーター/渡邉 伸一(奈良教育大学 教授)/中西 康博(一般財団法人奈良の鹿愛護会 副会長)/杉山 拓次(春日山原始林を未来へつなぐ会 事務局長)/奥田 篤(奈良県観光局奈良公園室 主幹):パネリスト
-
新宮 済(奈良女子高等学校 教諭):取組事例紹介/三木 恵介(奈良市教育委員会 研修係長):指定討論/説田 晃大(奈良市美術館 主任学芸員):発表
-
及川 幸彦(奈良教育大学ESD・SDGsセンター長):まとめ・総括/河野 晋也(奈良教育大学 准教授):司会
-
【会社概要】株式会社ワールド・ヘリテイジ

株式会社ワールド・ヘリテイジは2000年より、奈良・大阪で宿泊、観光施設を運営し、地域文化を尊重し地域の観光振興のために事業活動をしてきました。2026年4月1日には株式会社奈良ロイヤルホテルを吸収合併しました。奈良に地盤のある当社が運営することにより、観光業における奈良の地域活性化を促進し、両社の強みを活かした相乗効果を発揮することを目指しています。
公式WEBサイト:https://www.worldheritage.co.jp/
【会社概要】株式会社学びの旅

2025年3月設立。株式会社学びの旅は、奈良商工会議所、奈良市観光協会、奈良教育大学などで構成される「奈良新しい学び旅推進協議会」が2020年に開発した探究学習プログラム「奈良SDGs学び旅」を継承し、その運営・販売を担っています。
「奈良SDGs学び旅」は、奈良の観光資源をSDGsの視点から学ぶ教育旅行向けプログラムであり、2020年の事業開始から2025年度までに約10,000人に利用されています。2024年度には、 全国商工会議所きらり輝き観光振興大賞の大賞を受賞しました。

株式会社学びの旅は、この事業を中核事業として展開し、教育旅行の誘致や滞在時間の拡大を通じて、奈良市内の観光事業者への経済的還元を目指しています。また、ESD(持続可能な開発のための教育)研究の先進拠点である奈良教育大学と連携し、対話と体験を通じて価値観と行動変容を促す教育観光に取り組んでいます。
公式WEBサイト:https://nara-manabitabi.com/
このプレスリリースには、メディア関係者向けの情報があります
メディアユーザー登録を行うと、企業担当者の連絡先や、イベント・記者会見の情報など様々な特記情報を閲覧できます。※内容はプレスリリースにより異なります。
すべての画像
