世界初、日機装と金沢大学がプベルル酸の腎毒性を細胞実験で確認
食品や医薬品に含まれる化合物の腎毒性を効率的に細胞実験で評価
日機装株式会社と金沢大学医薬保健研究域薬学系の荒川大准教授らによる研究グループは、プベルル酸が腎臓細胞のひとつである近位尿細管上皮細胞に対して毒性を持つことを、世界で初めてヒト細胞実験で確認しました。この成果は、プベルル酸と健康被害の因果関係解明の一助として期待されています。また、今回用いた細胞実験による腎毒性評価方法は、食品や医薬品などに含まれる様々な化合物の腎毒性を適切かつ効率的に評価する有力な手段として期待されます。
■研究の背景と意義
プベルル酸は、アオカビから産生される天然化合物で、紅麹関連食品における健康被害の原因のひとつとして確認された化学物質です。
日本腎臓学会の中間報告では、その健康被害として尿細管間質性腎炎をはじめとする腎機能障害が報告されています。また、国立医薬品食品衛生研究所が行った動物実験において近位尿細管の変性・壊死が確認されています。しかしながら、これまでヒト腎臓細胞への直接的な影響は検証されておりませんでした。
今回の研究では、日機装社製の創薬研究用ヒト腎細胞3D-RPTEC®を使用し、共同研究で確立した腎毒性評価方法によってプベルル酸の腎臓細胞に対する影響を検証しました。その結果、一定濃度以上のプベルル酸が近位尿細管上皮細胞に毒性を発現させ、腎機能障害の原因であることが判明しました。
■研究結果の詳細
使用した細胞:日機装社製 創薬研究用ヒト腎臓細胞3D-RPTEC®
評価方法:以下の論文に記載した方法
主な発見:一定濃度以上のプベルル酸が近位尿細管上皮細胞の細胞死を誘導することが確認されました。紅麹関連食品による健康被害を生じたヒトにおけるプベルル酸の血中濃度は不明なものの、プベルル酸は腎障害を多発する抗がん剤シスプラチンと同程度の細胞毒性作用を有することが見出されました。また、プベルル酸が近位尿細管上皮細胞に取り込まれる経路に薬物トランスポーター※の一種である有機アニオントランスポーターが関わることが示唆されました。
■今後の展望
今回の研究結果は、プベルル酸の腎毒性ならびにそのメカニズムの解明に寄与するものと考えています。
また、これまで医薬品を含む化学物質の毒性・安全性評価は動物実験への依存度が高い傾向にありましたが、細胞実験においても適切な評価が可能であることを示したことで、細胞実験への移行を促進していきます。
日機装と金沢大学は、今後も共同でさらなる研究を進め、化合物全般の腎毒性について細胞実験による適切で効率的な評価方法の確立を目指していきます。
【3D-RPTEC®について】
「3D-RPTEC」とは、ヒト初代近位尿細管上皮細胞(RPTEC; Renal Proximal Tubule Epithelial Cells)を3次元で培養することでヒト腎皮質に近い薬物トランスポーター※を発現する研究用の細胞です。
従来、細胞を用いた毒性評価や薬理評価では、腎臓の株化細胞や初代細胞が使用されてきましたが、薬物に対する応答性は十分ではありませんでした。
「3D-RPTEC」は、従来の腎細胞よりも薬物の応答性が向上し、より感度の高い評価が可能です。
2023年7月より日機装が製造・販売しております。
参考情報(Bright):https://bright.nikkiso.co.jp/article/medical/drug-discovery
※薬物トランスポーター:細胞膜に存在するタンパク質。医薬品を含む内因性/外因性低分⼦物質を細胞内に取り込む、あるいは細胞外へ排出させる装置の役割を持っている。腎細胞には、薬物輸送に関わる多数のトランスポーターの存在が知られている。
<日機装 会社概要>
会社名 : 日機装株式会社
本社所在地: 東京都渋谷区恵比寿4丁目20番3号恵比寿ガーデンプレイスタワー22階
創業 : 1953年12月26日
代表者 : 代表取締役社長 甲斐 敏彦
事業内容 : 産業用特殊ポンプ・システム、医療機器、航空機部品等の製造・販売
URL : https://www.nikkiso.co.jp/
<金沢大学 概要>
法人名 : 国立大学法人金沢大学
所在地 : 石川県金沢市角間町
設立 : 1949年5月31日
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