物価上昇で食支援の需要が増加、食品不足が深刻化――支援事業の難局に求められる対応 【ひとり親家庭のためのフードバンク事業「グッドごはん」】
認定NPO法人グッドネーバーズ・ジャパン(本部:東京都大田区、代表理事:小泉 智)は2017年より日本国内の子どもの貧困対策事業として、低所得のひとり親家庭のためのフードバンク「グッドごはん」を運営し、ひとり親家庭への食品配付を行っています。
昨今の物価上昇の影響などから、現在、「グッドごはん」の支援を求めるひとり親家庭が大幅に増加しています。
食品支援の需要と供給のバランスが大きく変動していると言える今、必要とする家庭に十分な支援を届けられなくなる事態を避けるため、グッドネーバーズ・ジャパンは今後の対策検討を行っています。
●「グッドごはん」の支援を求めるひとり親家庭が増加、食品配付世帯数は前年同月比7割増で推移
認定NPO法人グッドネーバーズ・ジャパンが運営する「グッドごはん」は、所得が一定額未満で18歳未満の子どもを養育するひとり親家庭等を対象としたフードバンク事業です。予め利用登録をした対象家庭から毎月申し込みを受け付け、無償で食品を配付しています。現在、食品配付を希望する家庭が大幅に増加し、5,000世帯を超える申し込みがきています。本年(2024年)1月と比べ、9月の配付世帯数は4割以上増加しています。また各月の配付世帯数は、前年(2023年)と比べると、各同月より4割から最大8割以上増となっています。
こうした配付世帯数増の背景には昨今の物価上昇が大きく影響していると思われ、食品支援を希望するひとり親家庭からは次のようなコメントが多数寄せられています。
物価高の影響で生活は困窮する一方です。頑張って働いておりますが、精神的にも辛い時がやはりあります。 |
物価が上がり、じわじわと生活に影響を感じている。これから子どもたちがどんどん大きくなっていくにつれてお金もかかってくるのに、収入が増えないのが不安。 |
毎月毎月スーパーに行くと全て値上がりしており、卵、牛乳、野菜など一切買えず、安上がりのカップ麺などでしのいでます。 |
物価高騰が半端なくひとり親の賃金では追いつかないです。学費も学校に待ってもらわないといけないくらいです。 食べ物だけでもなんとかしたいと働いてますが追いつかない状態です。子ども達もおかわりを我慢したりで親として情けなくなります |
食品を含めてすべてのものが今までの1.5倍以上になっていて、固定費はギリギリまですでに削減していますが、値上げの幅に到底追いつきません。最終やはり削れるのは食費になってしまうのですが、自分を含め子供の体重も、減少してしまっていて、懺悔の日々です。 |
●食品調達の難航、必要量の3割以上が不足
支援ニーズが増加する一方、配付する食品の調達における課題も表面化してきました。「グッドごはん」で配る食品は、主に企業や個人の方から現物寄付で寄せられるもので、昨年は配付世帯数に対して必要とされる食品の平均8.5割程を寄付食品で賄っていました。しかし、本年に入ってからは必要分の6.5割ほどに留まり、3.5割が不足している状況です。
昨今、全国各地のフードバンクで食品寄付の減少がみられるという報道もありますが、「グッドごはん」も例外ではありません。
当団体は、先述した支援を必要とする家庭の増加に対し、食品の供給が不足しがちな事態に危機感を持ち、今後の事業運営へのヒントを得るため企業等にアンケート調査を実施しました。
アンケート概要
「フードバンク等への食品寄付の動向についてのアンケート」
・実施日程:2024年9月9日~10月11日
・対象者:当団体が運営するフードバンク事業「グッドごはん」に過去5年間で食品のご寄付をくださった企業・法人、または当団体から食品ご寄付の相談をさせていただいた企業・法人
・回答方法:アンケート回答フォームへの入力(オンライン)
・回答者数:58法人(食品関連を主な事業内容とする法人28、その他の法人30)
※当アンケート調査は回答数に限りがあるため、調査結果はフードバンク等や食品寄付に関する事業・業界全般の動向を正確に示すものではありません
回答法人のうち、フードバンク等(「グッドごはん」以外のフードバンクや子ども食堂を含む食支援事業)へ自社の余剰商品もしくは流通不可商品の寄付を実施したことのある33法人に、本年(2024年)1月から現在までにおけるフードバンク等への余剰商品や流通不可商品の寄付量が、昨年(2023年)の同時期と比較しどのように変化したか聞いたところ、14法人が「減った」「かなり減った」と回答しました。
さらに、今後3年間で、自社のフードバンク等への食品寄付量がどのようになるか予想を聞いたところ、17法人が「現在と概ね同程度の状態が続く」、12法人が「減少していく」と回答。「減少していく」と予想した法人にその理由を尋ねると、「食品ロス削減のための取り組みが進み余剰商品や流通不可商品が減っていくため」(8法人)と「物価上昇の影響で余剰商品や流通不可商品が減っていくため」(5法人)、「事業縮小のため」(1法人)が挙げられました(複数回答)。
食品ロス削減の取り組みとしては「商品の種類を削減し、在庫の回転率をあげるなどの対策を行っている」「廃棄予定食材を利用した特別ランチメニュー販売」「需要と供給の予測精度の向上と、製造上ロスの削減」等の具体例が挙げられ(自由記述回答)、様々な工夫や技術向上により食品ロス削減の努力が進められていることが分かりました。
●寄付食品を活かすために求められること
社会の変化や情勢以外の面での課題を把握するため、全回答法人※にフードバンク等への食品寄付実施にあたり懸念となることや実施の後押しになることを聞きました。
※余剰商品・流通不可商品の寄付経験がある法人、それ以外の形態(防災備蓄品の寄付、社内フードドライブ等)で寄付経験がある法人、いずれの形態の食品寄付も未実施の法人が含まれます
懸念になることとしては「輸送費等、寄付にかかるコスト」、次いで「寄付食品の安全管理・事故リスク」が多く選択されました(複数回答)。
また、食品寄付実施の後押しとなり得るフードバンク側の取り組みとしては、「食品寄付をしやすくするためのプラットフォームの構築」が最も多く選択され、「食品寄付の受け入れキャパシティの強化」が続く結果となりました(複数回答)。
既述のとおり、「グッドごはん」では食品配付世帯数が増加し続けている一方で、食品寄付が伸び悩み、必要量に対して不足している状況から、支援を求める家庭に食品を届けられなくなる危機感を抱いています。
さらに、グッドネーバーズ・ジャパンが食品関連企業に対して行った調査では、今後3年間で自社のフードバンク等への食品寄付量が「減少していく」と回答した法人もみられ、中には、自社における食品ロス削減の取り組みや物価上昇がフードバンク等への食品寄付量減少に影響していくと予想する回答もありました。
これらを踏まえ、グッドネーバーズ・ジャパンとして、食品ロス削減に対する取り組みの推進や物価上昇など、社会における動きが「グッドごはん」事業にもたらす影響を把握し、時流を捉えた対策を検討する必要性を認識しています。たとえば、現金のご寄付を募り適正に食品を購入することで、現物寄付以外の方法で配付食品の必要量を確保するなどの対応が考えられます。
また、今後も企業・法人や個人の皆さまが安心してご寄付をくださるよう、設備や人的リソース等を適切に維持・拡大し、食品の適正管理とリスク軽減に努めるほか、皆さまの社会貢献意識を最大限に活かせるよう、効果的なご寄付の形態を積極的に企画・提案してまいります。
グッドネーバーズ・ジャパンは、「グッドごはん」の支援を必要とするすべての家庭を支えるべく、臨機の対策を講じながら、食のセーフティネットとしての役割を果たしてまいります。
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■団体について
特定非営利活動法人グッドネーバーズ・ジャパンは、国際組織グッドネーバーズ・インターナショナルの一員として、2004年に開設されました。「子どもの笑顔にあふれ、誰もが人間らしく生きられる社会」を目指し、国内外の子ども支援を行っています。公益性の高い団体である「認定NPO 法人」として東京都から認可を受けています。
■ひとり親家庭のフードバンク「グッドごはん」とは
「グッドごはん」とは、ひとり親家庭等医療費受給者証をもつ、所得が限度額未満のひとり親家庭を対象に、食品を毎月無料で配付する事業です。2017年9月の事業開始以降、のべ99,546世帯に食品をお渡ししてきました*。
首都圏、近畿および九州における40か所以上*の配付拠点にて、企業や個人の寄付によって集まったお米や調味料、レトルト食品、お菓子など、約10,000円相当のカゴいっぱいの食品をひとり親家庭に配付しています。
*2024年9月時点
https://www.gnjp.org/work/domestic/gohan/
※通常、配付拠点に直接取りに来られる方を対象に食品を配付しています
※生活保護受給中の方は対象外です
<訂正とお詫び(2024年12月5日)>
「グッドごはん」事業開始以降の食品配付世帯数(のべ・2024年9月時点)の記載に誤りがございましたため、下記のとおり訂正いたしました。お詫び申し上げます。
(誤)99,550世帯
(正)99,546世帯
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