「マルチリージョンEMS」を用いた大規模な社内実証を開始
異なる3つの電力エリアの4拠点をつなぎ、再エネ電力や蓄電システムの最適運用を検証
三菱電機株式会社(以下、三菱電機)は、再生可能エネルギー(以下、再エネ)電力の複数拠点間での自己託送(※1)や蓄電システムの最適な運用により、拠点ごとの脱炭素化目標の達成を支援する独自のクラウドサービス型ソリューション「マルチリージョンEMS(エネルギーマネジメントシステム)(※2)」を用いて、異なる3つの電力エリアの4拠点をつなぐ大規模な社内実証を2024年3月から2年間の予定で行います。
近年、製造業においては、サプライチェーンに対して使用電力の再エネ100%化やCO2削減を求める動きが高まっており、将来は工場など「拠点単位」での脱炭素化目標の達成が事業を継続するうえで重要になると考えられています。また、2021年に国連主導で創設された国際イニシアティブ「24/7 Carbon Free Energy Compact」(当社は2023年に加盟(※3))が提唱する、24時間・365日、1時間単位の電力消費量に合わせてカーボンフリー電力を100%供給するという概念(24/7 Carbon Free Energy)は、国際社会において徐々に浸透し始めています。
当社は今回、四国電力エリアにある受配電システム製作所(香川県丸亀市)と関西電力エリアにある系統変電システム製作所 赤穂工場(兵庫県赤穂市)、電力システム製作所(兵庫県神戸市)および中国電力エリアにある福山製作所(広島県福山市)の4拠点を、「BLEnDer DEP(※4)」によりリアルタイムで連携し、デジタルツイン上で「マルチリージョンEMS」の社内実証を行います。この実証では、拠点ごとに異なる再エネ導入量・目標再エネ比率に対して、電力エリアが異なる拠点間での再エネ自己託送に必要な技術(再エネ予測、需給計画、電力取引、蓄電システム運用)の性能評価を行います。また、受配電システム製作所には太陽光発電設備や蓄電設備を増設し、赤穂工場との間で実設備を用いたエリア間の再エネ自己託送運用業務の検証を通じて運用実績を蓄積していくとともに、実運用での課題に対するさらなるソリューション拡張に向けた技術・機能の高度化を図ります。
当社は今回の社内実証で得られる成果を活用し、E&Fソリューション(※5)としてさまざまな企業に提供することで、カーボンニュートラルの実現に貢献していきます。
■三菱電機「マルチリージョンEMS」の概要
当社は、これまで電力市場向けに「再エネ発電・需要の予測」、「電力計画の作成・提出」、「電力の取引支援」や「再エネ・蓄電システムの制御」などの機能を有するパッケージ型ソフトウエア製品「BLEnDer」シリーズを展開しており、国内で高い導入実績を上げています。
「マルチリージョンEMS」は、電力市場向け「BLEnDer」にマルチリージョン型デジタル電力最適化技術を組み合わせた需要家向けクラウドサービス型ソリューションとして開発したもので、需要家(企業)が自社拠点ごとに脱炭素化目標を管理することを可能とし、自己託送による拠点間の再エネ価値移転と環境価値証書(※6)調達計画の最適化や再エネ・蓄電システムの最適制御を実現します。再エネ価値管理においては、将来の炭素税などの導入や24/7 Carbon Free Energyの考え方が広がることを想定し、30分単位での算出、送電ロス考慮、蓄電システム内の再エネ価値色分け(※7)など厳密な環境価値管理にも対応しています。
■社内実証の概要
1.異なる3つの電力エリアの4拠点をつなぎ、リアルタイムデータを用いた検証を開始
・「BLEnDer DEP」で四国電力エリアにある受配電システム製作所と関西電力エリアにある系統変電システム製作所 赤穂工場、電力システム製作所および中国電力エリアにある福山製作所の4拠点の需要・再エネ発電量などの情報をリアルタイムで収集し、再エネ電力の拠点間自己託送・蓄電システム運用などの全体最適化の効果や、拠点ごとの脱炭素化目標に対する運用計画の精度を検証
・リアルタイムデータに加え、日本卸電力取引所(JEPX)や電力広域的運営推進機関(OCCTO)、再エネ発電所や蓄電システムの動作をデジタルツイン上で模擬することで、年間、月間、週間から翌日にわたる予測・計画業務および当日の計画修正・時間前取引・蓄電システム制御まで一連の業務を検証
・30分単位(リアルタイムデータの30分積み上げ値)での電力および再エネ価値の計画に対する実績精度の検証や、計画から運用、事後精算までの一連の業務フローを検証
2.受配電システム製作所へ太陽光発電と蓄電システムを追加導入、異なる電力エリア間での自己託送を実施し、複数拠点での実運用業務を検証(2024年度中に開始予定)
・四国電力エリアにある受配電システム製作所に、逆潮流(※8)可能な太陽光発電と蓄電システムを追加導入し、余剰分の再エネ電力を関西電力エリアの系統変電システム製作所の赤穂工場に自己託送することで、電力取引市場を介したエリア間での再エネ自己託送の実運用業務を検証
・また、中国電力エリアの福山製作所、関西電力エリアの電力システム製作所などのリアルタイムデータを連携させ、デジタルツイン上で太陽光発電および蓄電システムの適用を拡大したケースを検証
3.「マルチリージョンEMS」の運用実績の蓄積と技術・機能の高度化
・再エネ、蓄電システム、逆潮流関連設備などの導入、自己託送に必要な一般送配電事業者およびJEPX、OCCTOとの各種契約手続き、運転開始後の発電予測値の算出や発電計画の作成・提出および実際の発電量との差の調整(インバランス調整)などの自己託送運用業務を当社自身で行い、経験・実績を蓄積
・これらの経験・実績をもとに、企業への導入支援・契約支援の知見を蓄積するとともに、日々の運用業務をより円滑に行うためのさらなるソリューション拡張に向け技術・機能を高度化
■今後の予定・将来展望
脱炭素化に取り組む企業に対して、太陽光発電や蓄電システムなどの設備の最適な導入量や投資回収計画のシミュレーション結果とともに、社内実証を通じて得られた自己託送運用業務の知見や実績を踏まえたソリューションを提供することで、本製品の技術・機能の高度化を進めていきます。さらに、受配電システム製作所において、「マルチリージョンEMS」を含む省エネやO&M(※9)の技術確立に向けた実証を進め、カーボンニュートラルの推進と安心・安全な設備運用、経済合理性を満たすエネルギー最適化に総合的に応えるE&Fソリューションとしてさまざまな企業に提供していきます。
■「マルチリージョンEMS」の製品情報
・当社ソリューションサイト「再エネ自己託送ソリューション マルチリージョンEMS」から、本製品のサービス内容、特徴、導入までの流れなどが確認可能です。
「再エネ自己託送ソリューション マルチリージョンEMS」(2/13公開予定)
https://www.MitsubishiElectric.co.jp/eig/energysystems/lineup/mr-ems/
・三菱電機PoC Lab. ウェブサイト(お客様向け・会員登録制)では、「マルチリージョンEMS」の経済性シミュレーターや運用の詳細をご覧いただけます。
「三菱電機PoC Lab.ウェブサイト」
https://www.MitsubishiElectric.co.jp/eig/energysystems/poc/
■商標関連
「マルチリージョンEMS」 「BLEnDer」 |
三菱電機株式会社の登録商標 |
「BLEnDer DEP」 |
三菱電機株式会社の出願中の商標 |
※1 電力会社が保有する配電ネットワークを利用して、自社発電所で発電した電力を自社内の別の需要拠点に送電する仕組み
※2 2022年4月20日広報発表 https://www.MitsubishiElectric.co.jp/news/2022/0420.html
※3 2023年10月26日広報発表 https://www.MitsubishiElectric.co.jp/news/2023/1026.html
※4 BLEnDer(ブレンダー)は当社が開発した電力取引と需給制御を総合的に扱う電力市場向けパッケージ型ソフトウエア製品のシリーズ総称。BLEnDer DEPはBLEnDerシリーズのうち、家庭用・産業用機器の通信プロトコルに対応した多種多様な分散型電源の管理・通信連携を行う製品で、IoT(Internet of Things)プラットフォーム基盤と分散型電源用端末から構成される。DEPはDigital Energy Platformの略称
※5 Energy & Facility(エネルギー & ファシリティ)ソリューションの略称
※6 再エネの発電によって発生する「環境価値」や温室効果ガスの排出削減効果を、承認機関の認証を通じて「証書」の形にしたもの。現在国内では、非化石証書、Jクレジット、グリーン電力証書などがある
※7 充電した電気が再エネ由来のものか非再エネ由来のものかを分けて管理すること
※8 需要家の自家発電設備などから電力会社の電力系統に電気を流すこと
※9 Operation & Maintenance(オペレーション & メンテナンス)の略称で、再エネや省エネなどの機器・設備の運転の維持管理や保守保全の業務を指す
<お客様からのお問い合わせ先>
三菱電機株式会社
電力・産業システム事業本部 エネルギー・システムソリューション事業部
〒100-8310 東京都千代田区丸の内二丁目7番3号
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