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学校法人 順天堂
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真菌成分が炎症を悪化させるメカニズムを解明

~免疫受容体CD300bは真菌の脂質成分を認識して好中球を集積させる~

学校法人 順天堂

順天堂大学大学院医学研究科・アトピー疾患研究センターの伊沢久未 助教、北浦次郎 先任准教授ら、及び東京大学医科学研究所の高橋まり子 博士研究員、国立感染症研究所の金城雄樹 室長らの共同研究グループは、真菌成分が炎症を悪化させるメカニズムを解明しました。本研究では、真菌感染によって炎症性樹状細胞(*1)の免疫受容体CD300b(*2)が真菌の脂質成分であるフィトスフィンゴシンを認識すると、樹状細胞はNO(一酸化窒素)を産生して好中球を局所に集積させ、それにより炎症が促進され悪化することを明らかにしています。この成果は、真菌感染による炎症の悪化を回避する治療に大きく道を開く可能性を示しました。本研究はScience系列誌のScience Signaling 電子版に2019年1月15日付けで発表されました。
【本研究成果のポイント】
  • 免疫受容体CD300bを欠損させたマウスは真菌成分による好中球の集積が著しく低下する
  • 炎症性樹状細胞の免疫受容体CD300bは真菌の脂質成分であるフィトスフィンゴシンを認識して活性化しNOを産生する
  • 炎症性樹状細胞が産生するNOは局所へ好中球を集積させて炎症が促進され悪化する

【背景】
カンジタ症など真菌によって引き起こされる感染症や炎症性疾患は、ステロイドや抗がん剤などの使用により免疫が低下している患者さんにとって生命に関わる重要な問題です。真菌感染により好中球が集積する早期の炎症は真菌の排除に役立ちますが、真菌感染が持続して炎症が悪化すると肺・皮膚・関節などの組織が障害されます。現状、抗真菌薬が治療の中心に用いられていますが、真菌感染による炎症悪化のメカニズムが不明であるため有効な治療法は確立されていません。研究グループは、これまでの研究でCD300が脂質を認識する免疫受容体ファミリーであることを明らかにするとともに、免疫受容体CD300bを欠損させたマウスに真菌の細胞壁成分であるザイモサン(*3)を投与すると局所の炎症が弱まることを見出しました。これらの知見を踏まえて、免疫受容体CD300bはザイモサンに含まれる何らかの脂質を認識して真菌感染による慢性炎症を促進するのではないかと考え、その働きについて詳しく調べました。

【内容】
まず、マウスの背部皮下に空気を注入して作製した皮下空気嚢にザイモサンを注射する実験を行いました。すると、野生型マウスの皮下空気嚢には感染防御に作用するNOの産生とともに好中球が集積するのに対し、免疫受容体CD300bを欠損させたマウスでは好中球の集積が著しく減るだけでなく、NOの産生量も低下することがわかりました(図1a,b)。そこで、CD300bが認識するリガンド(特定の受容体に特異的に結合する物質)を同定する実験系を確立して、ザイモサンに含まれる脂質に着目してスクリーニングを行ったところ、CD300bはフィトスフィンゴシンと呼ばれる脂質を認識することがわかりました。次に、NO産生を阻害する薬剤や炎症性樹状細胞を除去する薬剤を投与すると、野生型マウスにおける好中球の集積はCD300b欠損マウスの場合と同程度に減ることがわかりました。これらの結果から、局所の炎症性樹状細胞はCD300bを利用してザイモサンに含まれる脂質成分であるフィトスフィンゴシンを認識して活性化すること、さらにNOを産生して局所に好中球を集積させることで炎症が促進されることがわかりました。さらに、同様のメカニズムにより、マウスの関節腔にザイモサンを投与すると好中球を早期に集積させて炎症を誘導することがわかりました(図1c)。

 

これらのことから、真菌感染症においては真菌の脂質成分が持続的に過剰な好中球集積を誘導すると、様々な炎症細胞の浸潤と活性化がおこり組織障害をもたらすことで炎症が悪化すると考えられます。


【今後の展開】
本研究により、生体は炎症性樹状細胞の免疫受容体CD300bを利用して真菌に含まれる脂質成分を認識し、局所へ好中球を集めることがわかりました。真菌感染時には早期の好中球集積は真菌排除に役立ちますが、一方、感染収束後の過剰な好中球集積は炎症を悪化・遷延化させて組織障害(関節炎など)を引き起こすなどの慢性炎症につながります(図2)。

図2: 真菌成分による好中球集積のメカニズム 図2: 真菌成分による好中球集積のメカニズム

つまり、CD300bの機能を活性化させる薬剤は早期の真菌感染の防御に有効な可能性がある一方、CD300bの機能を抑制する薬剤は真菌感染後の慢性炎症の緩和に有効である可能性が示されました。今後、CD300bに着目して真菌が関与する疾患の病態メカニズムの解明と治療法開発を目指したいと思います。

【用語解説】
*1 炎症性樹状細胞: 抗原を提示する機能をもつ樹状細胞の一つで、感染時などにNO(一酸化窒素)を産生する特徴をもつ。
*2 CD300b: CD300bはペア型の免疫受容体であるCD300ファミリーの一つであり、細胞を活性化させる受容体である。
*3 ザイモサン: 真菌酵母(Saccharomyces cerevisiae)の細胞壁の不溶性抽出物である。多糖類や脂質が含まれる。

【原著論文】
本研究はScience系列誌のScience Signaling 電子版に2019年1月15日付けで発表されました。
雑誌名: Science Signaling  (https://stke.sciencemag.org)
タイトル: Phytosphingosine–CD300b interaction promotes zymosan-induced nitric oxide-dependent neutrophil recruitment
日本語訳: CD300bはザイモサンに含まれるフィトスフィンゴシンを認識してNO依存的に好中球を集積させる
著者: Mariko Takahashi1, Kumi Izawa1,2, Makoto Urai3, Yoshinori Yamanishi1,4, Akie Maehara1,2, Masamichi Isobe1,2, Toshihiro Matsukawa1,5, Ayako Kaitani1,2, Ayako Takamori2, Shino Uchida2,6, Hiromichi Yamada2,7, Masakazu Nagamine2, Tomoaki Ando2, Toshiaki Shimizu2,7, Hideoki Ogawa2, Ko Okumura2, Yuki Kinjo3, Toshio Kitamura1, and Jiro Kitaura1,2
著者(日本語表記): 高橋まり子1、伊沢久未1,2、浦井誠3、山西吉典1,4、前原明絵1,2、磯辺優理1,2、松川敏大1,5、貝谷綾子1,2、高森絢子2、内田志野2,6、山田啓迪2,7、長嶺誠和2、安藤智暁2、清水俊明2,7、小川秀興2、奥村康2、金城雄樹3、北村俊雄1、北浦次郎1,2
所属:1東京大学医科学研究所、2順天堂大学大学院医学研究科アトピー疾患研究センター、3国立感染症研究所、 4東京医科歯科大学、 5北海道大学医学部、 6順天堂大学医学部内科学教室・消化器内科学講座 、 7順天堂大学大学院医学研究科小児思春期発達・病態学
DOI: 10.1126/scisignal.aar5514

なお、本研究はJSPS科研費 基盤研究(B)(JP23390257とJP26293231)等の研究助成と加藤記念研究助成の支援を受け実施されました。

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小川 秀興
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