【働く現役世代に警鐘】ビッグデータで解明する劇症型溶連菌患者の年齢と罹患歴
前回(https://www.jast.jp/news/20854/)は、劇症型溶血性レンサ球菌感染症(以下、劇症型溶連菌)をテーマに、患者数の増加に注目して調査を行いました。今回は、患者の詳細に焦点を当てて調査を行っております。
劇症型溶連菌は、一般的な溶血性レンサ球菌(以下、溶連菌)がまれに引き起こす重篤な感染症です。劇症型溶連菌は突発的に発症し、短時間でショック症状や多臓器不全を引き起こすことがあり、その死亡率は約30%と報告されています。発症には様々な要因が考えられますが、重篤化する原因はまだ解明されていません。
2024年7月現在、劇症型溶連菌は新型コロナウイルスと同様に5類感染症に分類されており、医療機関は感染者が発生した場合、近くの保健所へ届け出を行う必要があります。
溶連菌は小児をはじめ、多くの方に馴染みのある病名です。最近のニュースでは、2023年及び2024年に溶連菌が劇症型溶連菌へと発展する事例が増加していると報じられています。本レポートでは、劇症型溶連菌についての理解を深めるために、レセプトデータを用いて患者数を抽出し、時系列の傾向や患者の特徴について調査結果をまとめました。
【集計条件】
調査対象:JASTの保有するレセプトデータ(約900万人 2024年7月時点)の内、
2017年1月~2024年3月診療、
傷病名コード「8841180:連鎖球菌感染症」「8845555:劇症型A群連鎖球菌感染症」
1.劇症型溶連菌患者の年代別患者割合と本人・家族区分割合
劇症型溶連菌患者について、発症時の年代別データを、溶連菌患者のデータと比較した結果は以下の通りです。
一般的に、溶連菌は子供に多く見られますが、劇症型溶連菌は主に30代以上の成人に発症すると言われています。当社のデータでも同様の傾向が確認されており、溶連菌の患者は20歳未満が半数以上を占める一方で、劇症型溶連菌の患者は20歳以上が大多数を占めており、全体の9割に達しています。
さらに、20歳以上の患者について、レセプトデータから「本人」と「本人以外(扶養家族含む)」の患者割合を集計した結果がこちらです。
20歳以上の劇症型溶連菌患者の約73%が「本人」区分であることが判明しました。働く現役世代の方々は、職場やお客様先への移動など外出や人との接触機会が多いため、感染リスクが高まっていると考えられます。
2.劇症型溶連菌患者の予後不良因子保有割合
日本感染症学会によると、劇症型溶連菌は予後が不良(治療後の経過や見通しが良くない)とされています。特に、基礎疾患の罹患歴や免疫に作用する医薬品の内服が予後不良因子とされています。当社のデータを用いて、患者層の大部分を占める20歳~59歳の劇症型溶連菌患者について、予後不良因子を調査した結果は以下の通りです。
劇症型溶連菌患者のうち、ステロイドを処方されている患者は全体の44.2%に達しています。また、基礎疾患として糖尿病、高血圧、腎疾患、肝疾患などの生活習慣病を持つ患者の割合はそれぞれ20%を超えています。つまり、劇症型溶連菌患者の5人に1人が何らかの生活習慣病を抱えていることになります。生活習慣病は特に働く現役世代に馴染みのある病気ですが、これらの病気が重篤な感染症のリスクを高める要因となり得るため、日頃からの健康管理が重要です。
前回に引き続き、今回もレセプトデータを用いて劇症型溶連菌の患者詳細について調査しました。その結果、年代別や基礎疾患の保有状況を見ても、働く現役世代の方々に患者が多いことがわかりました。そのような方々が感染すると、家庭内感染にも繋がる可能性があります。自身や身近に生活習慣病などの基礎疾患を持っている方がいる場合は、特に注意しながら生活していきましょう。
■当社未来共創Labサイト内にも同様のレポートを掲載しております。以下をご参照ください。
https://www.jastlab.jast.jp/news-20240724/
■本件で利用したメディカルビッグデータ「REZULT」につきましては以下をご参照ください。
https://www.jastlab.jast.jp/rezult_data/
■未来共創Labについて
当社未来共創Labはメディカルビッグデータ「REZULT」活用や伴走型による新規商材開発を通し、他企業やアカデミア、自治体との連携を強め共創DXを推進している組織です。当社のデータと企業価値を高め、お客様の課題を解決するための可能性を広げるべく、今後も取り組みを進めて参ります。
また未来共創Labでは、SDGs(Sustainable Development Goals)目標3「すべての人に健康と福祉
を」、目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」へ向けて、メディカルビッグデータを利活用した健康増進を目的とし、産学連携での商材開発・共同研究を実施しています。
【関連情報】(本レポートは下記情報を参考にして作成されています)
厚生労働省 劇症型溶血性レンサ球菌感染症(STSS)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000137555_00003.html
国立感染症研究所 劇症型溶血性レンサ球菌感染症とは
https://www.niid.go.jp/niid/ja/diseases/alphabet/rs-virus/392-encyclopedia/341-stss.html
国立感染症研究所 国内における劇症型溶血性レンサ球菌感染症の増加について (2024年6月時点)
https://www.niid.go.jp/niid/ja/tsls-m/2655-cepr/12718-stss-2024-06.html
一般社団法人日本感染症学会 侵襲性A群レンサ球菌感染症
https://www.kansensho.or.jp/ref/d28.html
【本件に関するお問い合わせ】
日本システム技術株式会社 未来共創Lab
お問い合わせ:https://www.jastlab.jast.jp/contact/
未来共創Labサイト:https://www.jastlab.jast.jp/
▼日本システム技術株式会社 企業情報
https://www.jast.jp/
以上
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