M&Aが行われる調剤薬局の傾向をSCUELビッグデータから調査
処方箋応需患者数6千人~1万人未満の薬局でM&Aの実施が最多に
調査背景
厚生労働省の公表データによると、令和4年度の調剤医療費は7.8兆円、全国の薬局数6.2万件となっており、薬局はコンビニエンスストア(全国約5.8万件)よりも多く、小規模店舗が乱立している状態にあります。同省の医療経済実態調査から、同一法人の薬局店舗数の推移を見ると、2~5店舗の小規模法人が減少する一方、20店舗以上の法人薬局は増加しており、大規模法人よる出店増加や買収等が活発化していることが推察されます。
この度、SCUELが保有するビッグデータを用いて、薬局におけるM&Aの実態を探るため、M&Aが行われたと推定される薬局の傾向を調査しました。
調査概要
調査手法:web調査(SCUELデータベース:地方厚生局や都道府県の公開情報をもとに調査)
実施期間:2023年12月
対象地域:全国
対象施設:調剤薬局
本調査では、2022年11月時点と2023年5月時点を比較し、開設法人名及び開設者氏名が変更されている薬局360件をM&A推定薬局(以下「M&A群」)としました。また、同期間に法人変更等が生じていない残りの薬局群の中から360件の薬局をランダムサンプリングし(以下「対照群」)、M&A群との比較分析を行いました。
調査結果
調査項目は、SCUEL 薬局データベースが保有する薬局の属性データ約200項目としました。各項目について、M&A群と対照群の平均値または割合の差を項目間で比較できるように正規化処理を行いました。その結果、群間で大きな差が見られた、1)薬局の周辺環境、2)薬局の運営体制、3)薬局の機能、4)薬局の利用状況の4点について、概要を報告します。
1)薬局の周辺環境
M&A群は東京都、神奈川県、福島県に多く、千葉県や北海道、京都府では相対的に少ない傾向が見られました。また、薬局周辺の環境に着目すると、M&A群は駅からの距離が遠く、対照群と比較して半径1km以内の医療機関数・薬局数が多く、これら応需医療機関や最寄り薬局との距離が近い傾向が見られました。
青色が濃いエリアでは薬局のM&Aがより多く行われたと推定される
2)薬局の運営体制
同一法人が運営する薬局数を比較すると、M&A群は運営薬局数1~5施設の法人によるものが多く、M&Aは個人経営または少数支店経営の法人薬局でより多く行われていることが分かりました。さらに、M&A群は営業年数11~20年の薬局において多く、週の営業時間合計は対照群よりも短い傾向が見られました。
3)薬局の機能
薬局機能の指標として施設基準を見ると、M&A群では調剤基本料1の届出が多く、経営規模の小さい薬局でより多くのM&Aが行われていることが分かりました。これは2)の法人運営薬局数の結果と一致します。一方、対照群では、かかりつけ薬剤師指導料及びかかりつけ薬剤師包括管理料、在宅患者調剤加算、地域支援体制加算等の届出割合が高く、在宅や地域医療連携に関する基準を届出ている薬局ではM&Aが発生しにくい傾向が見られました。
4)薬局の利用状況
薬局の処方箋応需患者数(年間)を比較すると、M&A群では6,000人~9,999人の階層が多く、20,000人以上の階層が少ない傾向が見られました。一方、処方箋応需患者数の年間増減数については、M&A群は過去1年間で平均2,322人減少しているのに対し、対照群では平均4,417人減少しており、M&A群の方が応需患者数の減少度合いは少ない傾向が見られました。
同様に、居宅調剤件数(年間)を比較すると、M&A群は対照群より居宅調剤件数が少ないものの、過去1年間の増加数はM&A群が平均260件であるのに対して、対照群は174件であり、M&A群の方が居宅調剤件数の増加度合いは多い傾向が見られました。
以上の結果から、
M&Aが行われやすい薬局の特徴をまとめました。
周辺に医療機関及び競合薬局が多い環境下にある。
同一法人による運営薬局が5店舗以下であり、営業年数は11~20年に至る。
在宅や地域連携に関する施設基準が少なく、居宅調剤件数は少ない。
処方箋応需患者数が6,000人から1万人未満規模で、患者数の年間減少数は少ない。
本調査は過去に遡ってM&A推定薬局の傾向を調べましたが、SCUEL薬局データベースでは、現時点で上記同様の属性を有する薬局を抽出することも可能です。M&Aの評価や予測にぜひご活用ください。
■参考文献
厚生労働省:令和4年度調剤医療費の動向
厚生労働省:衛生行政報告
厚生労働省:医療経済実態調査
https://www.mhlw.go.jp/bunya/iryouhoken/database/zenpan/iryoukikan.html
■SCUELデータベースについて
本調査で利用している薬局データベースの他にも、医療・介護・福祉に関する理解を深めるための各種データベースを保有しております。
薬局M&Aデータベース https://scueldb.com/pharmacy-ma
■ミーカンパニーについて
ミーカンパニー株式会社は、2010年設立以来、医療機関・薬局・介護・障害福祉データベース「SCUEL®(スクエル)データベース」を構築してきました。「データでこれからの日本の医療・介護を支えること」を事業理念とし、高鮮度で精緻なデータベースの提供を通じて、地域包括ケアシステムの実現や、患者と医療、家族と介護をつなぐことを推進します。
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