京都から考える、文化の未来。文化を守るだけではなく、動かす時代へ

現場で見えてきた「文化×経済×まちづくり」のリアルとは──

株式会社PIF

伝統と革新が共存する街・京都。
その文化的背景の中で、次世代に“文化をどう受け継ぎ、どう広げていくか”が問われています。

本対談では、株式会社あっぱれ 代表取締役・山本陽平氏、合同会社京都村正 代表・村山カズマサ氏、株式会社PIF 代表取締役・山本浩の3名が登壇。

「文化振興」や「現代における文化のあり方」、そして「共創によって生まれる新たな価値」について語り合いました。
会話の中では、2025年10月14日から京都駅ビルで開催されている芸術祭「ゲイジュツ ノ エキ 2025 / GNE」にも触れながら、文化の持つ力と、未来への継承までを深掘ります。


対談者

合同会社京都村正 代表 村山カズマサ氏

立命館大学 デザイン・アート学部プロデューサー

OIC総合研究機構客員研究員

University of Hawaii at Manoaにて天体物理学を専攻。

帰国後はクラブDJやラジオ局のディレクター、イベント制作会社で企画・制作・運営を担当。

30代を機に「ものづくり」の世界へ入り ディスプレイや什器・印刷物の工場にて10年素材や制作技術を学ぶ。

2021年 合同会社 京都村正 設立しラグジュアリーブランドの空間デザインや全国の寺社仏閣などの文化財PRプロジェクトに従事。

株式会社あっぱれ 代表取締役 山本陽平氏

2009年NTT東日本で省庁等との渉外業務、海外での新規事業立ち上げや経営管理の業務に従事。

2017年祭りサポートを行う株式会社オマツリジャパンを共同代表取締役として共同創業。7年間で500件以上各地の祭りを支援。

2024年に文化財全般の活用支援を行う株式会社あっぱれを設立し、代表取締役に就任。2024年には26地域50件以上の文化財を活用支援。日本国際博覧会の一般催事における審査員、文化庁の文化資源を活用した文化観光の推進による地方創生に関する懇談会の委員就任、文化庁全国各地の魅力的な文化財活用推進事業の統括コーチ就任など。

株式会社PIF 代表取締役 山本浩

VJ/舞台監督/イベント制作ディレクター/イベントプロデューサーを経て、

2020年に株式会社PIFの代表に就任。

きゃりーぱみゅぱみゅのワールドツアーや中田ヤスタカのライブディレクターをはじめ、様々なイベントや大型フェスのプロデュースから制作までを手がける中、

近年では、地方創生事業や、祭りの高付加価値事業、花火大会のプロデュースマネージメントなどの日本文化におけるイベントコーディネートに従事。

過去に、青森ねぶた祭りプレミアム観覧席の運営や、富山八尾おわら風の盆特別席の企画運営、日本各地の花火大会のプロデュースもおこなっている。

日本文化×エンタメの可能性に着目し、現代エンターテイメントの領域に留まらないイベントプロデュース/エンターテイメントコンサルティング事業を推進。

順不同

文化振興は“総力戦”

Q.まず皆さんが考える「文化振興」とはどのようなものですか?

山本(あっぱれ):

私は普段、全国各地の有形・無形の文化財の支援活動を行っています。
そのなかで感じる文化振興とは、“まちづくり”の一環だということです。
地域の人々が大切にしている文化を中心に据えて、まちをどう作っていくか——
それが文化振興の本質なのではないかと思っています。

村山:

僕は、いかに地域の中で文化を守りながら、外の人たちにも伝えていくか——

その“ハードルを下げること”が大事だと感じています。

文化には、一般の人がなかなか踏み込めない世界があって、その閉じられた世界をどう外に見せていくか。
一方で、見せすぎても価値が薄まるし、出さなさすぎても伝わらない。
その“あんばい”をどう取るか、そこに一番難しさを感じますね。

山本(あっぱれ):

そうですね。今の話にも重なりますが、文化財って守るだけでは成り立たないと思っていて、
継承には、人・お金・情報、そして熱量が必要なんです。
でも今、少子高齢化の影響でその熱量が地域全体で薄れてきていると感じていて、だからこそ

文化を単体で守るのではなく、文化を中心とした街づくりをどう行うかが肝心だと思います。
外部の人が関わっても長続きしないので、地元の人たちが自走できるようなオペレーションづくりも大切。文化振興は「総力戦」だと思っています。
中の人・外の人・その間に立つ人、そして行政も民間も、全員で取り組んでいかないといけないと思っています。

山本(PIF):

熱いですね〜。

僕はその総力戦の一部になりたくて、この仕事をしています。

それでいうと僕は外の人間の立場なので、外の立場だからこそ僕達が関わらせていただくことで、
新しい視点や発想を文化の世界に掛け合わせて、プラスαになれたらと思っています。
僕にとって文化振興に関わること自体が、大事な意義のひとつになっています。

Q.皆さんが文化や地域に関わろうと思ったきっかけは何だったんでしょうか?

村山:

そうですね。実は僕、昔は文化とか伝統が大嫌いだったんですよ(笑)。
実家が数百年続く家で、小さい頃から伝統を守れ!みたいな空気が強く、それが嫌で中学を卒業してすぐ京都を飛び出しました。

それから20年近く戻ってこなかったんですが、あるプロジェクトのきっかけで久々に京都に戻ってきたら、寺社が老朽化し、職人も減り、継承が危うい現状を目の当たりにしました。
僕も以前はエンタメや別業界にいたので、その発想を文化の分野に持ち込めば何か変えられるかもしれない——そう思って今関わらせてもらっています。

山本(PIF):

そうなんですか!?
ずっと京都にいらっしゃるものだと思ってました。

村山:
よく言われます(笑)。
でも実際は、京都に戻ってきてまだ7年くらいです。
家柄はありつつも、大事なのは今をどう生きるか——
先人たちが築いてきた歴史の上で、今の自分たちが何をするかで勝負していくという考え方を次の世代に広げたいですね。

山本(あっぱれ):
確かに、僕ら世代は「老舗の看板を守る」よりも「そこに新しい風を入れる」ことに価値を感じていますよね。
文化は動きが遅い分、僕らが少し無理してでも早く仕掛けてスピード感を持って動くことが重要だと思っています。

山本(PIF):
実際、地方の文化プロジェクトでもよくありますよね。
でも、やってみて成功体験を作っていくしかないと思っています。

僕も以前、ある神社で音楽イベントをしたとき色んな問題があって準備が本当に大変でした。
でも、いざ本番で何千人もの観客が盛り上がった光景を見て、「次もやってくれ」と有難い言葉をいただいたことがあります。

あの瞬間、やりきることの大切さを実感して、小さな成功を一つずつ積み重ねていくしかないんだと感じました。
そして、その成功を一緒に経験した仲間をどれだけ増やせるか。それが文化を動かす力になると思っています。

文化は想いだけでは続かない、循環する文化づくり

Q.皆さんが行ったプロジェクトで印象に残っている取り組みはなんですか?

村山:

僕にとって特に記憶に残っているのは、2018年の「ルイ・ヴィトン クルーズコレクション」です。
世界を巡るヴィトンのショーを京都で開催するというもので、祇園白川や寺社をすべて貸し切り、世界中から約600名のVIPを迎えるという前代未聞の規模でした。

当時、寺社側との交渉で初めて見たのが先ほども話した文化財維持の現実でした。
有名寺院ですら屋根の修復に数千万円、壁一枚直すだけで数百万円という世界で、しかもその費用はほぼ自費で行政や国の支援が届かず、住職が「生活するのが精一杯」と言っていたのを今でも覚えています。
そのとき強く感じたのが、

ー文化を守るためには、お金を回す仕組みを作らなければならないーということでした。

山本(あっぱれ):

確かに、文化って“守る”という言葉が先に出ますが、実際には“維持するための経済”が不可欠ですよね。

村山:

そうなんです。
海外のゲストたちは「文化財を直すのは国の責任」と考えているので、日本の現状に驚いていました。
彼らが本当に求めていたのは、お土産ではなくその土地でしか得られない体験。
だから、職人の手仕事や地域文化の本質に価値を見出してくれたんです。

そのときのギフトとして、京都の職人に直接依頼して制作したアイテムをプレゼントしました。
間に業者を挟まず、職人に正当な報酬が届く仕組みに変えたんです。
結果として、職人にもブランドにも、そして文化にも利益が生まれ、「三方よし」を超えた文化が循環する「四方よし」の形を体感しましたね。

山本(あっぱれ):
素晴らしいですね。本当に発想の柔軟性に驚かされます。

僕が文化庁の文化財振興プロジェクトに関わる中で感じるのは、“現場感覚”の重要性です。
制度設計だけでなく、実際に「人・モノ・お金」がどこで詰まっているのかを肌で感じながら支援方針を立てることが大切だと思っています。
そういう中で、どんなプロジェクトを支援していくべきか、文化庁の審美眼や選球眼が問われるんですよね。

山本(PIF):

確かに。補助金を活用した文化事業は、その場限りで終わってしまうケースも多いですよね。
“打ち上げ花火”みたいに終わるのは簡単だけど、そこからどう継承し、どう仕組みにするかが本当の課題だと思います。まさに。僕も「イベントをやること」は得意だけど、その先を考えないと意味がないと思っています。
だからこそ、お二人のような“花火を打ち上げる人”と組んで、どう持続可能な形にするかを常に意識しています。

村山:

まさにそうです。

文化事業って本当にお金がかかるのに、関わる人がボランティア扱いされることも多いんですよね。
「文化にお金をもらうなんて」と言われる空気感。
まるでお金を取ったら悪いことをしているみたいな、独特の日本的価値観がありますよね。

裏でどれだけ時間も人も費やしているかなんて、誰も見ていなくて、しかも続けないと

「結局あの人たちも最初だけだったね」と言われて、でも続けるための体力(資金・人員・時間)がない。この“続けられない構造”こそが、日本の文化事業の一番の課題かもしれません。

山本(あっぱれ):
ほんとそう。文化を守るって「想い」だけじゃ続かないですよね。
たとえばお祭りのように、熱量を持った人たちが自然と集まって、その集いからコミュニティが生まれ、結果的に街が動く。だから文化事業って、結局“総力戦”なんですよね。

新たな挑戦 京都駅ビル芸術祭(ゲイジュツ ノ エキ 2025/GNE)

村山:

まさに!伝統の現場って、業界も価値観も本当にバラバラなんですよね。
お互いに「それが常識?」「いやいや非常識でしょ」みたいな衝突が日常茶飯事で起きます。
でも、それを1個ずつ調整していたら10年かかってしまう。
だから僕らは、「一気に巻き込んで動かす」という考えで進めています。

山本(PIF):

それがまさに「京都駅 「ゲイジュツ ノ エキ(GNE)」の発想ですよね。

村山:

そうですね。一般の方が多く利用する公共空間を使って、
そこに職人さんやアーティスト、企業が集まって交わることで、自然と新しい表現とか価値が生まれていく感じ。

それをみんなで一緒に形にしていくことが、こういったプロジェクトの一番の面白さですね。
この巻き込んだスピード感こそが“今の文化の動かし方”なんじゃないかなと思います。

山本(あっぱれ):
「この人と組めるかも」「あの時の展示、次に繋げられるかも」といった小さな成功体験の共有が、文化を次に動かす原動力になるんですよね。
文化庁が新たな挑戦を後押ししているという事実が、それ自体ひとつのメッセージになっています。

地元に根付く=町づくり

Q.皆さんの次なる新たに挑戦したいことはなんですか?

村山:

とにかく大事なのは「人」。一緒にやってくれる人たちを最優先に考えています。
共通意識を持って動ける人たちと、共通の成功体験をつくることが大事なんですよね。
それが次の挑戦につながるし、地域の人も巻き込んで丸ごと一緒に作る感覚が理想です。
関わる側だけじゃなく、地域そのものが主役になるような取り組みにしたいですね。

山本(あっぱれ):
そういう「自分ごと化」が文化振興の本質ですよね。
地元の人たちが自発的に関わり続けることで、文化が根付くと思っています。
事業者だけが頑張るんじゃなくて、地域コミュニティ全体で育てていくことが大事です。

山本(PIF):
結局、補助金などの事業って、継続しないと意味がないんですよね。
初年度は盛り上がっても、次の年に無くなるケースが多くて、だからこそ外からの支援だけでなく、

地域に“ナレッジ(知見)”を残すことが一番の成功だと思います。
それが積み重なって、本当の文化になる。これは一番目指していきたい形ですね。

村山:
挑戦という意味では、僕の次の目標は「プロデューサーギルド」を作ることです。
全国の優れたプロデューサーをつないで、ひとつの地域で生まれたプロジェクトが次の地域へと循環していくような、情報と価値を共有できるネットワークを作れれば最高だと思います。
文化や地域資産を誰のものでもない財産として、みんなで守り、磨いていける仕組みを作るのが、

僕の夢であり挑戦ですね。

山本(PIF):

それ、最高ですね。僕たちにも力にならせてください!

【写真左から】
山本陽平氏 (株式会社あっぱれ 代表取締役)/村山カズマサ氏 (合同会社京都村正 代表)/山本浩(株式会社PIF 代表取締役)

【第1回 京都駅ビル芸術祭「ゲイジュツ ノ エキ 2025 / GNE」概要】

日程:2025年10月14日(火)ー2025年11月3日(月)
会場:京都駅ビル
内容:現代アート・伝統工芸・デジタルアート・音楽パフォーマンスなど
主催:京都駅ビル開発株式会社

HP:https://kyotostation-gne.jp

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会社概要

株式会社PIF

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http://www.p-i-f.net/
業種
サービス業
本社所在地
大阪市西区阿波座, 2-1-1  CAMCO西本町ビル11F
電話番号
06-6626-9248
代表者名
山本浩
上場
未上場
資本金
1000万円
設立
2004年06月