長期電力市場価格の予測シミュレーションサービスの共同開発について
株式会社日本総合研究所(本社: 東京都品川区、代表取締役社長: 谷崎勝教、以下「日本総研」)と株式会社三井住友銀行(本社: 東京都千代田区、頭取CEO: 福留朗裕、以下「三井住友銀行」)は、長期の電力市場価格を予測するシミュレーションサービス(以下「本サービス」)を共同で開発し、2024年11月から提供を開始します。
日本総研がこれまで蓄積してきた電力市場に関する知見と、三井住友銀行が持つデータ分析のスキルを組み合わせた本サービスによって、将来のエネルギーミックスの変化や連系線の制約などを踏まえた電力市場の将来をより精緻に表現することが可能となります。
■開発の背景
昨今の電力市場は、ロシアによるウクライナ侵略をはじめ、記録的な円安、再エネの急速な進展など多くの不確実な要因にさらされており、価格の変動が大きくなっています。今後も、DXによる電力需要の増加、原子力発電所の再稼働、地域間の連系線の増強などによって、電力市場価格に大きな影響が発生することが見込まれます。再エネの開発事業者は、こうした市場リスクからFIT制度に守られてきましたが、自ら売り先の確保が求められるFIP制度に移行することで、将来の価格変動のリスクにさらされることになります。
電気を使用する企業にとっても、現在トレンドとなっている再エネの長期電力購入契約(PPA)の締結にあたっては、将来の電力市場価格の動向を踏まえて購入価格を決定することが必要となります。そのため、発電事業者および電気を使用する企業の双方にとって、20~30年先の長期の電力市場価格を把握することが一層重要となり、各種の要因が価格に影響を与えるシミュレーションを正確に行うことが課題とされるようになりました。
■本サービスの概要
本サービスでは、各電源の供給力や電力需要について、中長期の見通しをベースに、政策や現場の進捗状況といった個別の情報を収集しながら需給シナリオを作成します。また、連系線の状況を踏まえた、エリアごとの電力市場価格を算定します。
①電力需給シナリオの作成
例えば、将来的に電力比率を高めていく見通しである再エネについては、直近の導入トレンドや洋上風力の公募計画、政府の各種計画を踏まえて今後の導入量を見極めます。また、再稼働の見通しを立てにくい原子力発電については、新規制基準適合審査や工事の進捗、周辺住民との調整状況などを見ながら発電所ごとに再稼働の有無や時期を推定します。そして、地域間連系線についても、北海道本州間連系設備(日本海ルート)の新設や中国九州間連系設備の増強といった、政府の広域系統整備計画を取り込むことで、今後の地域間の電力融通の能力の推移を予測します。
一方、需要については、データセンターや半導体工場の新設計画などの情報も収集することで、中長期の予測の精緻化を図ります。
このように、本サービスでは電力需給について、中長期の見通しのほかに、関連する各種の情報を収集・統合し、一元的に管理・分析することで、蓋然性のあるシナリオを構築することが可能となっています。また、現在の趨勢に従って電力需給の動向が推移する現行政策シナリオだけでなく、政府の各種エネルギー計画が実現した場合の公表政策シナリオも策定することで、不確実性も考慮した分析となっています。
②地域間連系線の制約による市場分断を反映したエリアごとの電力市場価格
地域間を結ぶ連系線が弱いと、エリアごとに電力市場が分断し、それぞれの電力市場価格に差異が生じます。本サービスでは、機械学習などを活用したシミュレーションツールを使用することで、この市場分断がもたらす影響を精緻に反映させながら、エリアごとの電力市場価格を算定します。
本サービスでは、①②を組み合わせることで、中長期における電力需給の推移を従来よりも正確に捉えた電力市場価格を、エリアごとに予測することが可能となります。
■今後の展望
日本総研は、今回開発した、エリア間の電力市場の差異をより正確に表現できるシミュレーションツールについて、今後、出力制御サービスなど他の電力市場分析サービスでも活用していく予定です。
三井住友銀行は、今回のシミュレーションモデルで培ったデータ分析のスキルを活かし、SMBCグループ全体のデータ利活用のより一層の推進に取り組んでまいります。
日本総研と三井住友銀行は、発電事業者および電気を使用する企業に対し、これからも一層役立つ情報を提供できるよう努めてまいります。
■本件に関するお問い合わせ先
【報道関係者様】 広報部 山口 電話: 080-7154-5017
【一般のお客様】 リサーチ・コンサルティング部門 環境・エネルギー・資源戦略グループ
200010-analysis@ml.jri.co.jp