主要アパレル2022年4~9月期は仕入れ額2桁増加/今秋冬で反転攻勢へ

フルカイテンが決算まとめレポート公表

FULL KAITEN

フルカイテン株式会社(本社・大阪市福島区、代表取締役・瀬川直寛)は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大が日本で始まってから3年目の上半期である2022年4~9月期における大手上場アパレル企業7社の決算を調べ、各社の在庫効率(在庫単位あたりの粗利益を増やす力)がどう変化しているか等を考察するレポートを作成しました。
PDFファイル版は下記リンクからダウンロードできます。
https://full-kaiten.com/news/report/6263
要約は次のとおりです。
  1. 全7社が前年同期比で増収となり、営業損益は6社が前年から改善した(黒字転換3社、赤字幅縮小3社)
  2. 少ない在庫で多くの粗利益を稼ぐ力の指標であるGMROIは、ワークマンを除く6社が前年より改善。ただ、コロナ禍前の2019年を超えたのは2社にとどまった
  3. 6社が仕入れを前年同期より増やしており、うち5社の増加率は2桁パーセントに上る
  4. 仕入れ拡大傾向が鮮明になり、仕入れ抑制と在庫圧縮による粗利益改善という手法からの脱却が進む。今後、増やした在庫を効率よく利益に換える「販売力」の強化が急務

※本稿は、2月期・5月期・8月期決算16社の22年3~8月における決算をまとめた別のレポート「主要アパレルがコロナ禍3年目でようやく発注額2桁増加」(本年10月31日公表、https://full-kaiten.com/news/report/6070)の続編となります。
  • 全7社が増収、6社の営業損益が大幅改善
本稿の調査対象は3月期・9月期決算の主要アパレル企業7社の2022年4~9月における決算である。決算短信を基に売上高、営業損益、当期純損益をまとめたのが表1だ。 

売上高は全7社が前年同期を上回った。2022年4~9月は3年ぶりに行動制限がない春の大型連休と盛夏の行楽シーズンを迎えるなど、集客が大きく回復した。
営業損益面では、ワークマン以外の6社が前年から改善している。ワールドとAOKIホールディングス、ユナイテッドアローズは前年の赤字から黒字転換し、青山商事とコナカ、はるやまホールディングスは赤字幅が大きく縮小した。

ワークマンは円安の進行とPBの価格据え置きが響いて減益となった。
 
  • 仕入れ抑制から発注増への転換が鮮明に
表2は各社の期中仕入れ増減率と9月末の在庫高増減率、粗利益率とそれぞれの前年同期比をまとめたものだ。

期中の仕入れ額(発注額)を見ると、はるやまホールディングスを除く6社が前年同期よりも増やしており、うち5社は14.5%~35.8%増という大きな増加幅となった。

次に、2022年9月末における在庫高は、同年6月末に続きスーツ4社が9.9%〜17.8%の割合で減らしている。なおかつ4社のうち3社は粗利率を1.99~3.18ポイント改善させ、コナカもわずかな悪化(マイナス0.12ポイント)にとどまっている。このため、値引きを抑制しながら在庫消化を進めることが引き続きできたと推察される。

以上から、各社とも事業の縮小均衡を招く仕入れ抑制から脱却し、仕入れ拡大に転換したことが分かる。
 
  • ワークマンは在庫効率が急降下
2019年以降4年間の4〜9月におけるGMROI(※注釈)の推移を示したのが次のグラフだ。
 ※GMROI:小売業などの在庫ビジネスにおいて、保有する在庫を用いて効率的に粗利益(売上総利益)を上げる力を表す指標。(粗利益額) ÷ (期中平均在庫高)で求められる

本稿がGMROIを重要な指標とみている理由は次の通りだ。
海外展開が進んでいる一部の会社を除き、多くのアパレル企業は国内事業が売上高の多くを占めている。その国内は縮小市場であり、売上規模ばかり追求すると過度の価格競争に陥る。
そうした市場では、売る力を大きく超える量の在庫を持つことは大きな経営リスクとなる。このため、限られた量の在庫を効率よく利益に変える経営が求められる。


全7社のうち、2022年のGMROIがコロナ禍前である2019年と同水準以上だったのはコナカ、AOKIホールディングス、青山商事の3社のみだった。ただ、ワークマンを除く6社は前年よりは改善している。
2019年を下回っている4社は、在庫を効率よく利益に換える力の回復の面で課題を残している。具体的にはコロナ禍前の66%〜95%の水準にとどまっており、在庫を効率よく利益に換える力については、なお課題を残しているといえる。

なお、コナカは2022年4~6月期に続いてコロナ禍前と比べて大きく回復しているとはいえ、販管費をまかなうだけの粗利益額を稼ぐことができていないため営業赤字になっている。
 
  • キャッシュフローは売上上位3社が黒字に
この章では各社のキャッシュフローを見てみる。直近4年間の3~8月期におけるフリーキャッシュフローを比較したのが表3だ。

 ※フリーキャッシュフロー:企業の本業によって稼いだ現金を指す「営業活動によるキャッシュフロー」と、設備投資や将来への投資と資産売却による資金回収との差額を表す「投資活動によるキャッシュフロー」の和を指す。企業が事業活動全般で得た資金のうち自由に使えるお金を指す。

フリーキャッシュフローがマイナスの企業は、自由に使える資金がないため投資余力に乏しく、事業活動を維持していくために銀行借り入れや資産の切り売りなどを余儀なくされる。

表3は上から売上高が大きい順に並んでいるが、売上規模の小さい会社のフリーキャッシュフローの回復が遅いことが見て取れる。また、赤字の2社は営業損益も赤字であり、採算面だけでなく現金創出力の立て直しも急務と言える。
 
  • まとめ:仕入れ拡大・在庫増だからこそ「販売力」強化を
2022年3月期までのコロナ禍2年間と比較して、各社が仕入れ抑制と在庫圧縮に終止符を打ち、仕入れの大幅増加に転換していることが今4~9月期決算まとめで鮮明になった。10月以降の2022年秋冬シーズンに向けて在庫を大きく積み増したことで、販売力を強化できなければ、再び値引き販売の頻発と残在庫の評価減というコロナ禍前の状態に戻りかねない。

ここで言う販売力とは、在庫を効率よく利益に換える「儲ける力」を指す。販売力が高ければ、同じ在庫消化を図るにしても、無駄な値引きをすることなく、より多くの利益とキャッシュフローが得られる。
販売力を向上させる方法論は複数あるが、そのうちの1つが軌道修正する力である。

アパレルビジネスでは、商品企画の段階で需要予測つまり仮説に基づく「販売計画」を立てる。ここで仮説(需要予測)の精度を上げようとすると、高い確率で徒労に終わる。そうではなく、当初計画と実績との乖離(ギャップ)を極小化する「軌道修正力」を付けることが重要になるのだ。

販売計画に盛り込んだ売上高、粗利益、在庫消化スピード等の数値と実際の数値との間には必ずギャップが発生する。そのギャップが意味する事を明らかにし原因と対策を探らなければ、販促施策を週次で重ねていくごとにギャップはどんどん大きくなっていき、値引きと残在庫によって粗利益がどんどん毀損されてしまう。

販促施策のPDCAを効果的に行い、得られたインサイトを次の施策へ活かすことができれば、軌道修正力は上がっていく。そのためにも、今ある在庫を分析することで、限られた量の在庫でも効率よく利益と現金へ換えるビジネスモデルへの変革が求められている。
 
※本調査は、対象となった企業の経営成績や財政状態の優劣を評価するものではありません。

【本レポートの引用について】
本レポートの内容は自由に引用していただけますが、その際は下記へご連絡ください。
フルカイテン株式会社
戦略広報チーム 南昇平
電話: 06-6131-9388
Eメール: info@full-kaiten.com

【会社概要】
社名: フルカイテン株式会社
URL: https://full-kaiten.com
事業内容: 在庫を利益に変えるクラウドシステムの開発
本社: 大阪市福島区福島1-4-4 セントラル70 2階B
設立: 2012年5月7日
代表者: 代表取締役CEO 瀬川直寛
 

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会社概要

フルカイテン株式会社

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URL
https://full-kaiten.com/
業種
情報通信
本社所在地
大阪府大阪市福島区福島1-4-4 セントラル70 2F
電話番号
06-6131-9388
代表者名
瀬川直寛
上場
未上場
資本金
4億2154万円
設立
2012年05月