欧州糖尿病学会(EASD)で発表された解析により、リナグリプチンは様々な基礎療法との併用で2型糖尿病患者に効果的かつ忍容性が良好であることが示される
この資料は、ドイツ ベーリンガーインゲルハイムと米国イーライリリー・アンド・カンパニーが10月2日に発表したプレスリリースを日本語に翻訳したものです。尚、日本の法規制などの観点から一部、削除、改変または追記している部分があります。また海外の試験であるため、日本の承認内容と異なることがあります。この資料の内容および解釈についてはオリジナルが優先することをご了承ください。
*日本においては、トラゼンタ®の添付文書上は他の糖尿病治療薬との併用についての臨床効果及び安全性は確立されていないとされています。
2012年10月2日 ドイツ/ベルリン、米国/インディアナポリス
ベーリンガーインゲルハイムと米国イーライリリー・アンド・カンパニー(NYSE: LLY)は、欧州糖尿病学会(EASD)で、1つの大規模第3相臨床試験の結果と3つの併合解析の結果を発表しました。これらの結果からリナグリプチンが、高齢患者および糖尿病性腎症を有する患者を含む2型糖尿病患者に有効かつ忍容性が良好であることが示されました1,2 ,3-4。
ベーリンガーインゲルハイム医薬開発担当上級副社長Prof.クラウス・デュギは「2型糖尿病は複雑で治療が難しい疾患です。しかも患者の多くは高齢で、合併症を抱えています。そのような中、エビデンスの蓄積とともに、リナグリプチンが効果的な血糖コントロールを必要とする2型糖尿病患者に効果的かつ忍容性の良好な治療選択肢であるという私たちの確信はますます深まっています」と述べています。
ベーリンガーインゲルハイムとイーライリリー・アンド・カンパニーが発表した試験結果の1つは、基礎インスリン療法でコントロール不良な患者1,261人を対象に、リナグリプチンの追加療法の長期的な安全性および有効性をプラセボ投与群と比較評価した第3相試験の結果です。
リナグリプチンの全般的な安全性および忍容性は、プラセボ投与群と同等でした。血糖コントロールがリナグリプチン投与群の方が良好(52週目のHbA1c値のベースラインからのプラセボ調整後変化量は-0.53%、P<0.0001)であったにもかかわらず、低血糖の発現率は、リナグリプチン投与群で31.4%、プラセボ投与群で32.9%と同等でした。HbA1c値は、糖尿病患者の過去2~3カ月の血糖 コントロール状態の指標として測定されるものです。体重については、両群とも治療期間を通じて大きな変動はみられませんでした1。
リナグリプチンの基礎インスリン療法への追加療法としての安全性と有効性は、高齢患者(70歳以上)においても示されました。これは高齢の2型糖尿病患者に対し、基礎インスリン療法への追加療法として、24週間以上にわたり、リナグリプチンとプラセボを比較評価した2つの第3相試験を用いた事前に定義した併合解析結果によるものです。高齢の2型糖尿病患者は、一般的に罹病期間が長く、β細胞機能が低下しているという特徴がみられます。そのため多くの症例で、基礎インスリン療法との併用が必要となります。このような脆弱な高齢患者においてリナグリプチンと基礎インスリンの併用は忍容性が良好であり、有害事象の全般的な発現率もプラセボ投与群と同等以下でした。リナグリプチンは、-0.77%(HbA1c値のベースラインからのプラセボ調整後変化量、P<0.0001)という血糖コントロール改善を達成しました。低血糖の発現率は、リナグリプチン投与群で28.6%、プラセボ投与群で37.2%でした4。
7つの第3相試験に関する第3次併合解析として、高齢の2型糖尿病患者(65歳以上)を対象に、リナグリプチン単独療法、または様々な血糖降下療法へのリナグリプチンの追加療法の安全性と有効性に関して、様々なパラメータを評価しました。この解析結果から、リナグリプチンの忍容性は良好であり、用量調節を必要とすることなく、高齢患者(65歳以上)への治療選択肢となることが示されました。
リナグリプチン投与群では、ベースラインから24週目までのHbA1c値の変化量が-0.62%(プラセボ調整後、P<0.0001)と、血糖値の低下がみられました。リナグリプチン投与群の患者には、空腹時血糖(FPG)にも有意な低下(プラセボ調整後平均変化量 −14.8 mg/dL、P<0.0001、−0.82 mmol/L)がみられました。リナグリプチン投与群の有害事象の発現率はプラセボ投与群と同等以下(リナグリプチン群71.3%、プラセボ群73.3%)でした。また副作用の発現率もプラセボ投与群と同等以下(リナグリプチン群18.1%、プラセボ群19.8%)でした3。
英国バーミンガム大学の内科学名誉教授であるProf. アンソニー・バーネット(Prof. Anthony Barnett)は「治療困難とされる患者集団を、非常に勇気づけるものです。高齢患者さんの多くは、合併症や腎機能低下、低血糖リスクの増加など、安全性や忍容性に関する不安を多く抱えています。リナグリプチンは、腎機能の低下がある患者でも用量調節や特別なモニタリングの必要がありませんので、高齢の2型糖尿病患者さんに効果的かつ忍容性の良好な治療選択肢であると思われます。治療選択肢がより一層限られていく中で、従来の治療法にリナグリプチンが加わるのは喜ばしい限りです」と述べています。
独立した解析において、リナグリプチンは糖尿病性腎症を合併したもう1つの脆弱な2型糖尿病患者集団に対しても有効性を示しました。2型糖尿病患者の多くは診断されて間もなく糖尿病性腎症を発症します。中には末期の腎臓病へ進行することがあります。現在、腎臓病を有する2型糖尿病患者のための経口治療薬の選択肢は非常に限られています。7つのランダム化試験を解析し、24週間治療後の併合可能なデータを生成して、次の2つのデータセットが定義されました。
セット1: 持続的なアルブミン尿(30 ≤UACR≤ 3000 mg/g[尿中アルブミン/クレアチニン比])がみられ、アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACE阻害薬) またはアンジオテンシン受容体遮断薬(ARB)のいずれかにより安定的に治療されている早期糖尿病性腎症を有する2型糖尿病患者
セット2: 高齢(65歳以上)の糖尿病性腎症で、UACR基準を満たしている患者
セット1の患者は経口血糖降下薬による基礎療法の有無は問われていません。セット2の患者はインスリン療法を含む様々な血糖降下基礎療法を受けていました。
セット1の患者において、HbA1c値のプラセボ調整後変化量は-0.71%、空腹時血糖値の変化量は-1.4 mmol でした (いずれも p<0.0001)。また、リナグリプチンはUACRも33% (p<0.05) と有意に低下させました。セット2の患者で、リナグリプチンは調整後UACRを30%(p<0.05)と有意に低下させました。アルブミン尿の減少は、いずれのセットにおいてもリナグリプチンの血糖低下効果から予測される数値を上回るものでした2。
リナグリプチン(5 mg、1日1回投与)は、欧州ではTrajenta™、米国ではTradjenta™の商品名で、2型糖尿病成人患者の血糖コントロール改善を目的に食事療法や運動療法と併用する1日1回服用の錠剤として発売されています。リナグリプチンは、1型糖尿病患者や糖尿病性ケトアシドーシス(血中または尿中のケトン値が高い)の治療に対しては共に適応外となります。欧州では、インスリンとの併用での使用は承認されていません。リナグリプチンは、患者さんの腎・肝機能の低下にかかわらず用量の調整を必要としません5。
日本では、2011年7月1日に食事療法、運動療法のみで十分な効果が得られない2型糖尿病患者の治療薬(単独療法)として、日本ベーリンガーインゲルハイムが、「トラゼンタ®錠 5mg」(一般名:リナグリプチン)の製造販売承認を取得しました。現在、他の糖尿病治療薬との併用についての臨床効果及びや安全性は確立されていません。
糖尿病について
1型および2型糖尿病の患者数は、世界で3億6600万人と推定されています6。大半が2型糖尿病であり、糖尿病全体のおよそ90~95%を占めます7。糖尿病は、インスリンというホルモンを生体が適切に分泌、利用しにくくなったりした場合に発症する慢性疾患です8。
ベーリンガーインゲルハイムとイーライリリー・アンド・カンパニーの提携について
2011年1月、ベーリンガーインゲルハイムとイーライリリー・アンド・カンパニーは、糖尿病領域におけるアライアンスを結び、同領域において大型製品に成長することが期待される4つの治療薬候補化合物を中心に協働していくことを発表しました。同アライアンスは、ベーリンガーインゲルハイムが持つ研究開発主導型イノベーションの確かな実績とイーライリリーが持つ糖尿病領域での革新的な研究、経験、先駆的実績を合わせ、世界的製薬企業である両社の強みを最大限に活用するものです。この提携によって両社は、糖尿病患者ケアへのコミットメントを示し、患者のニーズに応えるべく協力しています。このアライアンスに関する詳細は、www.boehringer-ingelheim.com またはwww.lilly.comをご参照ください。
ベーリンガーインゲルハイムについて
ベーリンガーインゲルハイムグループは、世界でトップ20の製薬企業のひとつです。ドイツのインゲルハイムを本拠とし、世界で145の関連会社と44,000人以上の社員が、事業を展開しています。1885年の設立以来、株式公開をしない企業形態の特色を生かしながら、臨床的価値の高いヒト用医薬品および動物薬の研究開発、製造、販売に注力してきました。
2011年度は132億ユーロ(約1兆4,624億円)の売上を示しました。革新的な医薬品を世に送り出すべく、医療用医薬品事業の売上の23.5%相当額を研究開発に投資しました。
日本ではベーリンガーインゲルハイム ジャパン株式会社が持ち株会社として、その傘下にある完全子会社の日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社(医療用医薬品)、エスエス製薬株式会社(一般用医薬品)、ベーリンガーインゲルハイム ベトメディカ ジャパン株式会社(動物用医薬品)、ベーリンガーインゲルハイム製薬株式会社(医薬品製造)の4つの事業会社を統括しています。日本のグループ全体で約2,700人の社員が、革新的な医薬品の研究、開発、製造、販売に従事しています。
詳細は下記をご参照ください。
www.boehringer-ingelheim.co.jp
イーライリリー・アンド・カンパニーについて
1876年創業のイーライリリーは130年の歴史ある研究開発主導型の先進企業であり、世界140カ国以上、約38,000人の社員が自社の研究施設の最新の成果を応用するとともに、社外の研究機関との提携を通じて医薬品のポートフォリオを拡大しています。米インディアナ州インディアナポリスに本社を置くリリーは、医薬品と情報を通じて「こたえ」を提供し、世界で最も急を要する医療ニーズを満たしています。リリーについての詳細は以下のウェブサイトをご覧ください。 www.lilly.com
リリーの糖尿病事業について
リリーは1923年に世界初の商業用インスリンを開発して以来、糖尿病ケアの分野において常に世界をリードしています。現在もなお、研究開発や事業提携を通じて、幅広い製品ポートフォリオの充実と糖尿病領域へのたゆまぬ企業活動の継続による実質的なソリューションの提供により、糖尿病を患う人々の様々なニーズにおこたえすることを目指しています。薬剤開発やサポートプログラムそして更なる活動を通じて、糖尿病患者さまの生活をより豊かなものにするお手伝いをしてまいります。詳細は以下のウェブサイトをご覧ください。 www.lillydiabetes.com
このプレスリリースには、2型糖尿病の治療に用いられるリナグリプチン錠に関する将来予想に関する記述が含まれています。リリーの現在の予測に基づいていますが、医薬品の研究開発プロセスおよび商品化には多大なリスクと不確実性が伴います。将来の研究結果や患者体験が、現在までの研究知見と一致するという保証はありませんし、リナグリプチンが商業的に成功を収めるという保証もありません。リリーの業績に影響する可能性のあるその他のリスク要因、並びに、不確実要因については、米国証券取引委員会に提出されたリリーの最新のフォーム10-Kおよび10-Qをご覧ください。なお、リリーは将来予想に関する記述を更新する義務を負いません。
REFERENCES
1. Yki-Järvinen H, Rosenstock J, Durán-Garcia S, et al. Long-term safety and efficacy of linagliptin as add-on therapy to basal insulin in patients with type 2 diabetes: a 52-week randomised, placebo-controlled trial. Oral presentation no 6 Presented at the 48th European Association for the Study of Diabetes (EASD) Annual Meeting, Berlin, Germany. 2012 1-5 October 2012.
2. Groop P, Cooper M, Perkovic V, et al. Effects of the DPP-4 inhibitor linagliptin on albuminuria in patients with type 2 diabetes and diabetic nephropathy. Abstract. 2012 1-5 October 2012.
3. Patel S, Schernthaner G, Barnett A, et al. Safety and efficacy of linagliptin in elderly patients with type 2 diabetes: evidence from 1331 individuals aged ≥=65 years. Presented at the 48th European Association for the Study of Diabetes (EASD) Annual Meeting 1-5 October, Berlin, Germany. 2012 1-5 October 2012.
4. Woerle HJ, Neubacher D, Patel S, et al. Safety and efficacy of linagliptin plus basal insulin combination therapy in a vulnerable population of elderly patients (age = 70 years) with type 2 diabetes. Presented at the 48th European Association for the Study of Diabetes (EASD) Annual Meeting 1-5 October, Berlin, Germany. 2012 1 - 5 October 2012.
5. EMA. Trajenta™ (linagliptin) tablets. EMA Summary of Product Characteristics. 2011.
6. International Diabetes Federation. The Global Burden. IDF Diabetes Atlas. 2011(5th Edition).
7. Centers for Disease Control and Prevention. National diabetes fact sheet: National estimates and general information
8. International Diabetes Federation. What is Diabetes? . IDF Diabetes Atlas. 2011(5th Edition).
*日本においては、トラゼンタ®の添付文書上は他の糖尿病治療薬との併用についての臨床効果及び安全性は確立されていないとされています。
2012年10月2日 ドイツ/ベルリン、米国/インディアナポリス
ベーリンガーインゲルハイムと米国イーライリリー・アンド・カンパニー(NYSE: LLY)は、欧州糖尿病学会(EASD)で、1つの大規模第3相臨床試験の結果と3つの併合解析の結果を発表しました。これらの結果からリナグリプチンが、高齢患者および糖尿病性腎症を有する患者を含む2型糖尿病患者に有効かつ忍容性が良好であることが示されました1,2 ,3-4。
ベーリンガーインゲルハイム医薬開発担当上級副社長Prof.クラウス・デュギは「2型糖尿病は複雑で治療が難しい疾患です。しかも患者の多くは高齢で、合併症を抱えています。そのような中、エビデンスの蓄積とともに、リナグリプチンが効果的な血糖コントロールを必要とする2型糖尿病患者に効果的かつ忍容性の良好な治療選択肢であるという私たちの確信はますます深まっています」と述べています。
ベーリンガーインゲルハイムとイーライリリー・アンド・カンパニーが発表した試験結果の1つは、基礎インスリン療法でコントロール不良な患者1,261人を対象に、リナグリプチンの追加療法の長期的な安全性および有効性をプラセボ投与群と比較評価した第3相試験の結果です。
リナグリプチンの全般的な安全性および忍容性は、プラセボ投与群と同等でした。血糖コントロールがリナグリプチン投与群の方が良好(52週目のHbA1c値のベースラインからのプラセボ調整後変化量は-0.53%、P<0.0001)であったにもかかわらず、低血糖の発現率は、リナグリプチン投与群で31.4%、プラセボ投与群で32.9%と同等でした。HbA1c値は、糖尿病患者の過去2~3カ月の血糖 コントロール状態の指標として測定されるものです。体重については、両群とも治療期間を通じて大きな変動はみられませんでした1。
リナグリプチンの基礎インスリン療法への追加療法としての安全性と有効性は、高齢患者(70歳以上)においても示されました。これは高齢の2型糖尿病患者に対し、基礎インスリン療法への追加療法として、24週間以上にわたり、リナグリプチンとプラセボを比較評価した2つの第3相試験を用いた事前に定義した併合解析結果によるものです。高齢の2型糖尿病患者は、一般的に罹病期間が長く、β細胞機能が低下しているという特徴がみられます。そのため多くの症例で、基礎インスリン療法との併用が必要となります。このような脆弱な高齢患者においてリナグリプチンと基礎インスリンの併用は忍容性が良好であり、有害事象の全般的な発現率もプラセボ投与群と同等以下でした。リナグリプチンは、-0.77%(HbA1c値のベースラインからのプラセボ調整後変化量、P<0.0001)という血糖コントロール改善を達成しました。低血糖の発現率は、リナグリプチン投与群で28.6%、プラセボ投与群で37.2%でした4。
7つの第3相試験に関する第3次併合解析として、高齢の2型糖尿病患者(65歳以上)を対象に、リナグリプチン単独療法、または様々な血糖降下療法へのリナグリプチンの追加療法の安全性と有効性に関して、様々なパラメータを評価しました。この解析結果から、リナグリプチンの忍容性は良好であり、用量調節を必要とすることなく、高齢患者(65歳以上)への治療選択肢となることが示されました。
リナグリプチン投与群では、ベースラインから24週目までのHbA1c値の変化量が-0.62%(プラセボ調整後、P<0.0001)と、血糖値の低下がみられました。リナグリプチン投与群の患者には、空腹時血糖(FPG)にも有意な低下(プラセボ調整後平均変化量 −14.8 mg/dL、P<0.0001、−0.82 mmol/L)がみられました。リナグリプチン投与群の有害事象の発現率はプラセボ投与群と同等以下(リナグリプチン群71.3%、プラセボ群73.3%)でした。また副作用の発現率もプラセボ投与群と同等以下(リナグリプチン群18.1%、プラセボ群19.8%)でした3。
英国バーミンガム大学の内科学名誉教授であるProf. アンソニー・バーネット(Prof. Anthony Barnett)は「治療困難とされる患者集団を、非常に勇気づけるものです。高齢患者さんの多くは、合併症や腎機能低下、低血糖リスクの増加など、安全性や忍容性に関する不安を多く抱えています。リナグリプチンは、腎機能の低下がある患者でも用量調節や特別なモニタリングの必要がありませんので、高齢の2型糖尿病患者さんに効果的かつ忍容性の良好な治療選択肢であると思われます。治療選択肢がより一層限られていく中で、従来の治療法にリナグリプチンが加わるのは喜ばしい限りです」と述べています。
独立した解析において、リナグリプチンは糖尿病性腎症を合併したもう1つの脆弱な2型糖尿病患者集団に対しても有効性を示しました。2型糖尿病患者の多くは診断されて間もなく糖尿病性腎症を発症します。中には末期の腎臓病へ進行することがあります。現在、腎臓病を有する2型糖尿病患者のための経口治療薬の選択肢は非常に限られています。7つのランダム化試験を解析し、24週間治療後の併合可能なデータを生成して、次の2つのデータセットが定義されました。
セット1: 持続的なアルブミン尿(30 ≤UACR≤ 3000 mg/g[尿中アルブミン/クレアチニン比])がみられ、アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACE阻害薬) またはアンジオテンシン受容体遮断薬(ARB)のいずれかにより安定的に治療されている早期糖尿病性腎症を有する2型糖尿病患者
セット2: 高齢(65歳以上)の糖尿病性腎症で、UACR基準を満たしている患者
セット1の患者は経口血糖降下薬による基礎療法の有無は問われていません。セット2の患者はインスリン療法を含む様々な血糖降下基礎療法を受けていました。
セット1の患者において、HbA1c値のプラセボ調整後変化量は-0.71%、空腹時血糖値の変化量は-1.4 mmol でした (いずれも p<0.0001)。また、リナグリプチンはUACRも33% (p<0.05) と有意に低下させました。セット2の患者で、リナグリプチンは調整後UACRを30%(p<0.05)と有意に低下させました。アルブミン尿の減少は、いずれのセットにおいてもリナグリプチンの血糖低下効果から予測される数値を上回るものでした2。
リナグリプチン(5 mg、1日1回投与)は、欧州ではTrajenta™、米国ではTradjenta™の商品名で、2型糖尿病成人患者の血糖コントロール改善を目的に食事療法や運動療法と併用する1日1回服用の錠剤として発売されています。リナグリプチンは、1型糖尿病患者や糖尿病性ケトアシドーシス(血中または尿中のケトン値が高い)の治療に対しては共に適応外となります。欧州では、インスリンとの併用での使用は承認されていません。リナグリプチンは、患者さんの腎・肝機能の低下にかかわらず用量の調整を必要としません5。
日本では、2011年7月1日に食事療法、運動療法のみで十分な効果が得られない2型糖尿病患者の治療薬(単独療法)として、日本ベーリンガーインゲルハイムが、「トラゼンタ®錠 5mg」(一般名:リナグリプチン)の製造販売承認を取得しました。現在、他の糖尿病治療薬との併用についての臨床効果及びや安全性は確立されていません。
糖尿病について
1型および2型糖尿病の患者数は、世界で3億6600万人と推定されています6。大半が2型糖尿病であり、糖尿病全体のおよそ90~95%を占めます7。糖尿病は、インスリンというホルモンを生体が適切に分泌、利用しにくくなったりした場合に発症する慢性疾患です8。
ベーリンガーインゲルハイムとイーライリリー・アンド・カンパニーの提携について
2011年1月、ベーリンガーインゲルハイムとイーライリリー・アンド・カンパニーは、糖尿病領域におけるアライアンスを結び、同領域において大型製品に成長することが期待される4つの治療薬候補化合物を中心に協働していくことを発表しました。同アライアンスは、ベーリンガーインゲルハイムが持つ研究開発主導型イノベーションの確かな実績とイーライリリーが持つ糖尿病領域での革新的な研究、経験、先駆的実績を合わせ、世界的製薬企業である両社の強みを最大限に活用するものです。この提携によって両社は、糖尿病患者ケアへのコミットメントを示し、患者のニーズに応えるべく協力しています。このアライアンスに関する詳細は、www.boehringer-ingelheim.com またはwww.lilly.comをご参照ください。
ベーリンガーインゲルハイムについて
ベーリンガーインゲルハイムグループは、世界でトップ20の製薬企業のひとつです。ドイツのインゲルハイムを本拠とし、世界で145の関連会社と44,000人以上の社員が、事業を展開しています。1885年の設立以来、株式公開をしない企業形態の特色を生かしながら、臨床的価値の高いヒト用医薬品および動物薬の研究開発、製造、販売に注力してきました。
2011年度は132億ユーロ(約1兆4,624億円)の売上を示しました。革新的な医薬品を世に送り出すべく、医療用医薬品事業の売上の23.5%相当額を研究開発に投資しました。
日本ではベーリンガーインゲルハイム ジャパン株式会社が持ち株会社として、その傘下にある完全子会社の日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社(医療用医薬品)、エスエス製薬株式会社(一般用医薬品)、ベーリンガーインゲルハイム ベトメディカ ジャパン株式会社(動物用医薬品)、ベーリンガーインゲルハイム製薬株式会社(医薬品製造)の4つの事業会社を統括しています。日本のグループ全体で約2,700人の社員が、革新的な医薬品の研究、開発、製造、販売に従事しています。
詳細は下記をご参照ください。
www.boehringer-ingelheim.co.jp
イーライリリー・アンド・カンパニーについて
1876年創業のイーライリリーは130年の歴史ある研究開発主導型の先進企業であり、世界140カ国以上、約38,000人の社員が自社の研究施設の最新の成果を応用するとともに、社外の研究機関との提携を通じて医薬品のポートフォリオを拡大しています。米インディアナ州インディアナポリスに本社を置くリリーは、医薬品と情報を通じて「こたえ」を提供し、世界で最も急を要する医療ニーズを満たしています。リリーについての詳細は以下のウェブサイトをご覧ください。 www.lilly.com
リリーの糖尿病事業について
リリーは1923年に世界初の商業用インスリンを開発して以来、糖尿病ケアの分野において常に世界をリードしています。現在もなお、研究開発や事業提携を通じて、幅広い製品ポートフォリオの充実と糖尿病領域へのたゆまぬ企業活動の継続による実質的なソリューションの提供により、糖尿病を患う人々の様々なニーズにおこたえすることを目指しています。薬剤開発やサポートプログラムそして更なる活動を通じて、糖尿病患者さまの生活をより豊かなものにするお手伝いをしてまいります。詳細は以下のウェブサイトをご覧ください。 www.lillydiabetes.com
このプレスリリースには、2型糖尿病の治療に用いられるリナグリプチン錠に関する将来予想に関する記述が含まれています。リリーの現在の予測に基づいていますが、医薬品の研究開発プロセスおよび商品化には多大なリスクと不確実性が伴います。将来の研究結果や患者体験が、現在までの研究知見と一致するという保証はありませんし、リナグリプチンが商業的に成功を収めるという保証もありません。リリーの業績に影響する可能性のあるその他のリスク要因、並びに、不確実要因については、米国証券取引委員会に提出されたリリーの最新のフォーム10-Kおよび10-Qをご覧ください。なお、リリーは将来予想に関する記述を更新する義務を負いません。
REFERENCES
1. Yki-Järvinen H, Rosenstock J, Durán-Garcia S, et al. Long-term safety and efficacy of linagliptin as add-on therapy to basal insulin in patients with type 2 diabetes: a 52-week randomised, placebo-controlled trial. Oral presentation no 6 Presented at the 48th European Association for the Study of Diabetes (EASD) Annual Meeting, Berlin, Germany. 2012 1-5 October 2012.
2. Groop P, Cooper M, Perkovic V, et al. Effects of the DPP-4 inhibitor linagliptin on albuminuria in patients with type 2 diabetes and diabetic nephropathy. Abstract. 2012 1-5 October 2012.
3. Patel S, Schernthaner G, Barnett A, et al. Safety and efficacy of linagliptin in elderly patients with type 2 diabetes: evidence from 1331 individuals aged ≥=65 years. Presented at the 48th European Association for the Study of Diabetes (EASD) Annual Meeting 1-5 October, Berlin, Germany. 2012 1-5 October 2012.
4. Woerle HJ, Neubacher D, Patel S, et al. Safety and efficacy of linagliptin plus basal insulin combination therapy in a vulnerable population of elderly patients (age = 70 years) with type 2 diabetes. Presented at the 48th European Association for the Study of Diabetes (EASD) Annual Meeting 1-5 October, Berlin, Germany. 2012 1 - 5 October 2012.
5. EMA. Trajenta™ (linagliptin) tablets. EMA Summary of Product Characteristics. 2011.
6. International Diabetes Federation. The Global Burden. IDF Diabetes Atlas. 2011(5th Edition).
7. Centers for Disease Control and Prevention. National diabetes fact sheet: National estimates and general information
8. International Diabetes Federation. What is Diabetes? . IDF Diabetes Atlas. 2011(5th Edition).