国産ハーブ「クロモジ」エキスは細胞に作用して、インフルエンザウイルスの吸着と侵入をブロック、感染を防ぐ

 養命酒製造株式会社(本店:東京都渋谷区 代表取締役社長 塩澤太朗)と信州大学農学部(河原岳志 准教授)(長野県上伊那郡南箕輪村)の共同研究グループは、クロモジエキスが細胞に作用して、インフルエンザウイルスの吸着と侵入をブロックする可能性があることを示す研究成果を得ました。
 この研究成果は、論文「クロモジ熱水抽出物のインフルエンザウイルス感染抑制メカニズムの検討」として、『薬理と治療』(2020年48巻8号、8月28日発刊)に掲載されました。今回の結果を受け、河原准教授は、「クロモジエキスは、食品として日常的に利用できる素材なので、感染リスクを身近に感じるときの予防策としての利用が期待できる。今後、クロモジエキスの抗ウイルス作用について、その有効成分や標的分子の解明研究が求められる。」と述べています。

■クロモジエキスはインフルエンザ感染の初期段階である「吸着・侵入」をブロック
~ウイルスの増殖ステップとクロモジエキスの作用点~


インフルエンザウイルスは細胞表面に吸着し、内部へ侵入して遺伝情報を複製することで増殖します。それらが細胞表面から大量に放出されて、周囲の組織や、他の人に感染を広げていきます。クロモジエキスは、感染ステップの初期段階である、ウイルスの細胞への吸着・侵入をブロックします。




 上気道感染症のひとつであるインフルエンザでは、上気道の粘膜上皮細胞の表面にインフルエンザウイルスが吸着し、細胞内に侵入してウイルスが増殖していきます。細胞へのウイルスの吸着から8時間後には数百から数千倍に増殖し1)、周囲の細胞や組織に感染を広げます。さらに24時間後には約100万倍に増殖しながら2)、粘膜上皮を傷害します。そのため、インフルエンザ感染予防のためには、そもそも細胞の中にインフルエンザウイルスが入ろうとする“初期段階”で対処をすることがとても重要です。
 今回、信州大学農学部(河原岳志 准教授)らの研究グループがクロモジエキスのインフルエンザウイルスに対する抗ウイルス作用のメカニズムについて検討したところ、クロモジエキスが細胞へ働きかけることで、インフルエンザウイルスの細胞への「吸着・侵入」をブロックすることが分かりました。また同研究グループの過去の研究では、クロモジエキスの防御作用に持続性があることや3)、ウイルスの侵入後においてもクロモジエキスを添加すると増殖抑制効果が得られること4)を明らかにしています。
 また、2017年から2018年にかけての3ヶ月間(12月中旬〜3月中旬)、クロモジエキスを配合した飴の摂取がインフルエンザ罹患を抑制できるか実証研究を行いました。その結果、クロモジエキスが入っていない飴を摂取したグループの罹患率が13.4%だったのに対し、クロモジエキス配合飴を摂取したグループでは3.0%となり、有意に罹患率が減少することを確認しました(罹患者数では77.8%の減少)。また、風邪症状の発生も抑えられていました5,6)

1)山本 名古屋学芸大学健康・栄養研究所年報 2010; 4: 47-64. 2) 岡田ほか 日本農村医学会雑誌 2005; 53(5), 775-82. 3)河原ほか Jpn Pharmacol Ther 2019; 47: 1197-204. 4) 河原ほか 日本生薬学会第66回年会発表 2019; P-059. 5)伊賀瀬ほか Jpn Pharmacol Ther 2018; 46: 1369-73. 6)伊賀瀬ほか Glycative Stress Res 2019; 6: 151-8.

【実験の概要】
 上皮由来細胞を培養してインフルエンザウイルスを加え、各時間帯でクロモジエキスを添加して、定量PCR法によりウイルスの増殖の指標(ウイルスRNA量)を測定しました。クロモジエキスは細胞への「ウイルス感染前の時間帯(下グラフ‐1~0)」に処理した場合に統計的有意な抑制が確認され、細胞に対する予防的な効果が認められました。また、「感染後にウイルスが増殖を続けている時間帯(同グラフ1~2)」においても、統計的に有意なウイルス増殖の抑制が確認されましたが、特に、細胞へのウイルス感染つまり吸着と侵入が行われている時間帯(感染開始から1時間後まで:同グラフ0~1)にクロモジエキスを添加したときに無添加と比べて99.5%以上の抑制がみられ、他のタイミングと比べて最も強い効果が確認されました。


 細胞(上皮由来細胞)をインフルエンザウイルスに感染させる「1時間前から感染直前」、「感染開始から1時間後」、「1時間後から2時間後」に、それぞれクロモジエキスに浸す処理をした。細胞へのウイルスの吸着と侵入が起きる時間帯である、「感染開始から1時間後」までの間に処理したとき、ウイルス増殖指標(ウイルスmRNA量)は「クロモジエキスなし(Ctrl)」に比べて顕著(99.5%以上)に抑制。クロモジエキスがウイルスの吸着と侵入を抑制していることが示唆された。**P<0.01, ***P<0.001 vs. Ctrl
「薬理と治療」vol.48(8), 2020 図3bより一部改変
 


 感染後に細胞中で作られた、ウイルスタンパク質を蛍光染色(赤)し、クロモジエキスを添加した場合としなかった場合を比較しました。その結果、クロモジエキスで処理した場合に細胞中のウイルスタンパク質の量が顕著に減少し、クロモジエキスが、細胞へのウイルス感染を抑えた効果が、視覚的にとらえられました(上図)。他の手法による試験と併せて総合的に検討した結果、クロモジエキスがウイルスの吸着と侵入の段階をブロックすると考えられます。
 

 クロモジエキスであらかじめ処理したウイルスを細胞に感染させた場合と、クロモジエキスが細胞に作用できる条件下でウイルスを細胞に感染させた場合では、後者の方が顕著に強い効果を示し、クロモジエキスは主として細胞に作用することによって、これらの効果を示していることがわかりました。これまでの知見と併せると、クロモジエキスはそれに含まれる多成分による複合的な感染抑制メカニズムを有していると考えられます。本試験結果をまとめた論文は、『薬理と治療』(2020年48巻8号、8月28日発刊)に掲載されました。


■実験の意義
信州大学農学部 河原岳志(かわはらたけし)准教授


 インフルエンザウイルスは標的細胞表面に吸着し、その後細胞内へ侵入すると、細胞が正常な活動をするための仕組みと、エネルギーを奪いとり、ウイルスの増殖のために消費してしまいます。ウイルスの遺伝情報を複製し、ウイルス粒子を構成するのに必要なタンパク質を作り、多数のウイルス粒子を組み立て、細胞外にウイルスを放出し、周囲の細胞や組織そして他の人に素早く感染を広げていきます。インフルエンザの症状が現れるときには、ウイルスはかなりの数に増殖したあとです。
 クロモジエキスは食品として、日常的に利用できる素材です。今回の研究によりクロモジエキスは、ウイルスが細胞に吸着・侵入という感染初期段階を抑制することが明らかになりました。これにより細胞のエネルギーや仕組みが、ウイルスに利用されることを未然に防ぎ、あまり体に負担をかけずに、ウイルスが増えるのを防ぐことができると考えられます。クロモジエキスは吸着、侵入という感染が成立するときに最も強い効果を示すため、感染リスクを身近に感じるときの予防策としての利用が期待できます。今後、クロモジエキスの抗インフルエンザ作用について、有効成分や標的分子について解明されることが期待されます。

■クロモジについて https://www.kuromoji.jp
 クロモジは、日本の山地に自生するクスノキ科の落葉低木です。リラックス作用が期待されるリナロールを主成分とするよい香りがあり、古くから楊枝や香木、生薬(烏樟:うしょう)として使われてきました。


 養命酒製造は全国のクロモジ事業に携わる自治体や団体らとともに、2018年9月に「クロモジ研究会(https://www.kuromoji.jp )」を発足しました。クロモジ資源の保護と産業の発展に寄与し、人々の健康増進に貢献することをめざし、クロモジの研究成果や事業活動を一般に向けて認知啓発する活動を行っています。

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