職⼈技で和装にも合う鞄作り。"鞄のお医者さん"として頼られる千住の⼯房「渡邊鞄」。高齢化社会で需要が増える「ウロバッグカバー」と、お祭りにぴったり「のれんバッグ」を、舎人公園千本桜まつりで披露!
足立ブランド認定企業の渡邊鞄が2025年3月29日(土)、30日(日)の2日間、都立舎人公園で開催される「舎人公園 千本桜まつり」で「足立ブランド」ブースに作品を展示します。
江⼾時代からの賑わいが今も続く、東京都⾜⽴区の下町、千住。この町にある⼿作りの鞄⼯房が『渡邊鞄』です。和柄を取り⼊れたデザインに、使いやすさを追求した機能性を持たせた鞄作りで⼈気の⼯房。最近は「鞄のお医者さん」として修理やリメイクの仕事も増えています。確かな職⼈技で何でも⽣み出す『渡邊鞄』をご紹介します。

創業は1929年。14歳で上京した⽗の修業から始まった鞄作り
江⼾時代、宿場町として栄えた東京都⾜⽴区の千住。その賑わいが今も続くこの町の路地裏で、凛とした佇まいの⼯房を構える『渡邊鞄』は和装にも洋服にも合う鞄を⼀点ずつ、丹精を込めて⽣み出す鞄店です。



「創業したのは私の⽗です。14 歳の時、いとこのお兄さんを頼って⼤分県から上京し、神⽥の鞄店で修業を始めたそうです。それが1929 年のことで、その年を『渡邊鞄』の創業年にしています。ただ、頼りにしていたそのいとこは病気で早世してしまい、ほかに⾝寄りがいない東京で⽗は苦労を重ねたようです。戦争にも⾏っています。その後、⾃分の⼯房を⾜⽴区⻄新井に持てるようになりました」
そう話すのは2代⽬として、確かな技で鞄作りを続ける渡辺憲⼀⽒です。

「私は⾼校卒業後、⽗からの『有無を⾔わせず』の状況で⼯房に⼊り、1973 年から働き始めました。私が20 歳になった頃には⽗が引退してしまって、それからは私が⼯房を切り盛りするようになりました。その頃はハンドバッグメーカーの下請けとして、OEM 製造がメインでした。仕事はたくさんありました」
職⼈としてオリジナルの鞄を作る
しかし2000 年代に⼊る頃には景気の低迷で、製造数も減少傾向に。⽗から「無理やり」⼊れられた⼯房ではあったものの、⼦供の頃から図⼯の成績はいつも5で、もの作りが好きだった渡辺⽒は、「職⼈として、⾃分がデザインするオリジナルのものを作っていこうと決めました」と振り返ります。
「最初に⼿掛けたのがヌメ⾰を使い、シンプルなデザインに仕上げたシザーケースです。美容師さんが腰に下げ、ハサミを⼊れるケースです。当時、中学⽣だった娘がモノトーン調のかっこいいホームページを作ってくれて掲載したところ、(東京の)南⻘⼭にある誰もが知るような美容室から連絡が来て、スタッフ⽤にと⼀括注⽂してくれました」

それまで下請けの鞄製造ばかりをしてきた渡辺⽒は「本当に嬉しかったです。そして、ホームページなどをうまく使えば、⾃分が⼯夫して作ったものが売れるんだ、これからはこういう時代になるのかと感じました」と話します。

商品には感動や驚きが必要
次に⼿がけたのは、2 年かけて完成させた「縦⻑トート⼤ 纏(まとい)柄」です。

⽣地に「⻤ツイル」というしなやかで厚く、斜めの織り⽬が綺麗に出る綾織物を使い、中央には和装に合う纏の柄を配しました。また、バッグの内側には携帯⼊れや名刺⼊れなど、⽇常で使いやすいポケットがあります。内側の底には交通系IC カードを⼊れるポケットがあり、バッグを肩に下げたまま底⾯で改札機をタッチし、改札を抜けられる⼯夫も施されています。
「機能⾯では⼗徳ナイフのような多機能性を持たせたいと思って、使い勝⼿を⼯夫しました。ものには『へえ!』と感動したり、驚くようなことが⼤切だと考えています。⼈の⼼を打つもの、誰も⾒たことがないものを⽣み出したいという気持ちはいつもあります」
その後も、和のテイストをベースにした鞄を作り続けていきました。和柄に惹かれるのは「着物のおしゃれや⼩唄が趣味だった⽗の影響を受けています」と渡辺⽒は⾔います。
江⼾⼩紋など和柄をさりげなく⼊れたデザインの鞄は次第に評判を呼ぶようになり、映画やテレビドラマの⼩物として使われたり、テレビの「お散歩」番組で⼯房が登場するようにもなりました。


排尿障害があっても、おしゃれをして外出できる鞄を作る
そんな中、それまで作ったことがない鞄の製作相談が『渡邊鞄』に寄せられました。
「地元の⼯務店の棟梁だった男性が来られて、『ウロバッグ』を持って外出できる鞄が作れないか? という相談をされたのです」と渡辺さん。『ウロバッグ』とは病気などで排尿障害になった⽅が、カテーテルの管を通して尿を出す際にその尿を溜めておくバッグのことです。

「『ウロバッグ』のことはその時初めて知りました。また、カテーテルを使った採尿が必要な状態になっても、そのバッグをいっしょに持ち出すことができれば、外出して散歩を楽しんだりできることも知りました」
「それならば、おしゃれをして外出できるような専⽤の鞄を作ってみよう」と、1 年かけて作り上げたのが『渡邊鞄』の「外出⽤ウロバッグカバー」(税込13,200 円)です。

このウロバッグカバーで、第1に⼯夫をした点はアンモニア臭を消す消臭布の採⽤です。九州の久留⽶絣メーカーが開発したものを⾒つけ、その⽣地を使うことにしました。
またバッグの周囲の縁は丈夫な真⽥紐を縫い込み、型崩れしにくくしています。何度でも洗濯機で丸洗いできるようにするための⼯夫です。
ほかにも服とバッグの間の導⼊チューブを隠すための蓋をつけたり、底⾯にファスナーをつけ排尿コックを出せるようにしています。


「棟梁にはそのウロバッグカバーを喜んでいただき、散歩にもよく出かけられていました。同じ悩みを持つ多くの⽅に購⼊していただけるようにもなりました。実際に使われている⽅から使い勝⼿の感想や意⾒を聞き、チューブを固定するマジックテープの⻑さを変えたり、尿が溜まると重くなるというので柔らかな肩当てを別売りで作ったりして、改良も加えていきました」
渡邊鞄のオンラインショップでも直接購入が可能です。
これからの⾼齢化社会で排尿障害になる⽅の数も増えると考えられます。
「病気などをきっかけにウロバッグを使うようになったとしても、室内にこもらず、外出を楽しめるアイテムがあることを知ってもらいたいです。まずは⾜⽴区内の病院などで、このウロバッグカバーのことを広めていければと思います」と渡辺⽒は話しています。
「舎人公園 千本桜まつり」ではこちらのウロバッグカバーが実際にご覧いただけます。
「鞄のお医者さん」として頼りにされる存在に
また最近、『渡邊鞄』には鞄のリメイクや修理の依頼がたくさん来るようになっています。
「今は、『鞄のお医者さん』だと思い、それぞれ相談に来られる⽅の思い出のバッグや、祖⽗⺟や親から受け継ぎ、これからも⼤切に使っていきたいという品のお直しをしています。仕事の⼤半がこの修理、リメイクになってきましたが、楽しいです。基本的には古くなって、壊れたりしている鞄の修理や仕⽴て直しです。預かったその場で直せるものもありますが、サイズの変更や別のものへの作り変え、⾰がボロボロになっているものなど難しい依頼もあって、それが仕上がった後に『あー、よかった』と、夜に⼀杯やるのが⾄極のひと時です」

これまでにあった依頼では、⻑年乗り続けた愛⾞のワーゲンをいよいよ廃⾞にすることになり、シートの⾰を何かに作り変えられないか、というものもあったそうです。
「その時はヘッドレストをその形を活かしてポーチにして、そのほか、シート⾰でバッグや御朱印帳⼊れ、キーホルダーを作りました」
渡辺⽒が⼿がけたリメイクや修理の最新の実例は、『渡邊鞄(watanabebags)』のInstagram
で⾒ることができます。
手づくりの工房で地域と繋がる
2014 年に現在の場所の⼀軒家を借り、渡辺⽒と娘さんの⼿で改装をして⼯房兼店舗にしました。お客様に商品を⼿にとって⾒ていただき、直接販売できる場を持ちたいと考え、3カ⽉かけて探し、ようやく巡り会えた家でした。








千住で⽣まれ育ち、地元への恩返しをしたいという渡辺⽒の『渡邊鞄』⼯房。北千住駅に降り立った際には是⾮お気軽にお⽴ち寄りください。
千住の⼟産として育てたい「のれんバッグ」
『渡邊鞄』は2020 年、「⾜⽴ブランド」に認定されました。
「ほかの業種の⽅との繋がりが広がり、刺激を受けています。『⾜⽴ブランド』としてメディアへの露出の機会も増え、それもありがたいです」と渡辺⽒。
また、渡辺⽒には「千住の⼟産」「千住の名物」として育てていきたいオリジナルの商品があります。それが「のれんバッグ」です。先ほどの工房兼店舗のオープン記念パーティで配布したノベルティバッグが好評で、商品化したものです。
「のれんバッグは⽵をそのままハンドルに使った、シンプルなフォルムのバッグです。袋と⽵を繋ぐ部分には真⽥紐を使っていて、それを左右にスライドさせて袋の⼝の開け閉めをします。着物にも浴⾐にも合うデザインです。⾜⽴区には『⾜⽴の花⽕』⼤会が毎年あって、その⽇は⼤勢の⽅が浴⾐を着て街歩きをされたりしますが、その際にもこのバッグはぴったりかなと思っています」

そんな「のれんバッグ」もこの春「舎人公園 千本桜まつり」で実際に手に取ってご覧いただけます。夏のお祭りに向けておひとついかがでしょうか?目指せ、足立の風物詩!
【企業情報】
渡邊鞄
会社名:渡邊鞄
住 所:東京都⾜⽴区千住4-12-3
電話番号:03-3888-3650
代表者:渡辺憲⼀
事業内容:鞄の制作・販売・修理
オンラインストア:
https://watanabebags.stores.jp/
instagram:
https://www.instagram.com/watanabebags/
facebook :
https://www.facebook.com/watanabebags/
取材など掲載情報に関するお問い合わせは、「足立ブランド」の運営事務局でもある足立区役所産業経済部産業振興課ものづくり振興係でも受け付けております。
足立区役所産業経済部 産業振興課 ものづくり振興係
電話番号:03-3880-5869
ファクス:03-3880-5605
足立ブランド公式Webサイト
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