Z Venture Capital 2026年 注目の投資領域

ZVC 2026投資テーマ展望|韓国チーム

Z Venture Capital株式会社

2025年は、Z Venture Capital(ZVC)にとって、投資規模、地域展開、注力領域のすべてにおいて大きな進化を遂げた一年でした。日本、韓国、米国を拠点に、51社のスタートアップへの投資、300億円規模のZVC2号ファンドの始動、そしてサンフランシスコ拠点の開設など、ZVCはグローバルにスタートアップと伴走する体制をさらに強化しました。

そして、2026年。ZVCは、この一年をどう見据えているのか。本コラムでは、各拠点で投資を担うメンバーが、2026年に注目しているテーマや領域について語ります。2回目は韓国です。

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未来を設計する——2026年に向けた投資戦略

2026年——干支で言えば「午年」。この時代に、私たちは投資戦略の視座をあらためて再定義しています。イノベーションの最前線だけでなく、産業経済の基盤そのものに価値が眠っている領域へも、積極的に目を向けていく方針です。

半導体、AI、高度なネットワークインフラといった分野に対し、官民一体で継続的な資本投資が行われてきた韓国は、世界有数のデジタル先進国として確固たる地位を築いています。この強固な土台を前提に、私たちは2026年に向けて、3つの中核的な投資テーマを軸としながら、これまで注目されてこなかった「隠れた優良領域」への戦略的な拡張を進めていきます。

1. 大市場の「境界線」を変革する

私たちが注目するのは、テクノロジーによって構造転換を迫られている巨大市場の“境界”に生まれる機会です。すでに完成された流行テーマを追いかけるのではなく、老朽化した物流インフラ、規制に縛られたサービス産業、医療・製造・金融といった分野に残るアナログな業務フローなど、既存のバリューチェーンが変革を迫られる中で顕在化する本質的な課題に注目しています。

韓国のデジタル化が加速するにつれ、こうした歪みやボトルネックは一層明確になっています。私たちは、既存の業務や価値連鎖に自然に組み込まれ、ユーザーに大きな行動変容を求めることなく、高いスイッチングコストと持続的な競争優位を築けるプロダクトを開発するチームに投資していきます。

2. 横断的に価値を生む基盤技術

次に重視するのは、複数の産業やネットワークを横断して機能する基盤技術です。具体的には、AIインフラ、データ基盤、コネクティビティの制御、サイバーセキュリティ、業界特化型ミドルウェアなどが含まれます。

これらの技術は単一市場に依存せず、複数のエンドマーケットからの需要を享受できるため、高いスケーラビリティを持ちます。韓国国内でもAIモデルやソリューションの開発が急速に進んでおり、この分野の裾野の広さは明らかです。私たちは、短命なアプリケーションではなく、データパイプラインや業務ツールにおける「要所」を押さえる企業に注力します。

3. 「Make in Korea, Go Global」

三つ目の柱は、韓国の技術力・製造力を基盤にしながら、初期段階からグローバル展開を前提とした事業構築を行うモデルです。ハードウェア、ロボティクス、エネルギー効率、デジタルコンテンツといった分野における韓国の強みを、世界市場で通用するソリューションへと昇華できる創業者を私たちは支持します。

このアプローチは、製造業革新を掲げる国家戦略とも高い親和性を持ち、官民連携による相乗効果が期待できます。グローバル展開の成否は、技術力だけでなく、プロダクト設計や価格モデルが地域を越えて通用するかどうかによって判断されると考えています。


戦略的拡張-「エッセンシャル・バリュー」への投資

私たちは、一見すると地味で目立たないものの、経済的に極めて重要な領域への投資も強化します。日々の業務に深く組み込まれ、安定した需要が存在し、かつ汎用的な資本から見過ごされがちな分野——例えば、レガシー産業向けの業務デジタル化、規制対応インフラ、産業保全の自動化などです。

こうした分野は、過度な競争に晒されにくく、合理的なバリュエーションで参入できる点も魅力です。プロセス改善を強みとしてきた韓国の産業的DNAを活かすことで、大きな生産性向上を実現できると考えています。

2026年、私たちが投資するスタートアップは、高成長が期待される基盤技術への積極的な投資と、経済を支える必須サービス領域への戦略的な参入を両立させる「バーベル戦略」を体現すると考えています。韓国発のディープテックが持つ爆発的な成長可能性と、実務に根ざした産業デジタル化の強靭さを掛け合わせることで、次世代のグローバルリーダーの創出を目指します。

韓国のGDP成長が停滞する中、人口減少やコスト上昇といった課題は、もはや将来リスクではなく、経営・オペレーション上の制約として顕在化しています。私は、その解決策は大きく二つに集約されると考えています。それは、テクノロジーによる効率の最大化と、グローバル需要の獲得です。

こうした問題意識のもと、2026年の投資テーマは以下の二本柱に定めています。

Pragmatic Robotics

K-プレミアムを支えるグローバル・インフラ

1. Pragmatic Robotics——「未来を夢見るロボット」ではなく、「今すぐ働くロボット」

ヒューマノイドや汎用AIが注目を集める一方で、私が重視するのは商業的に成立するかどうかです。急速に変化するAI環境の中で、最も持続的な価値を生むのは、確かな実装力と、現場の課題に対する深い理解だと考えています。

レガシー産業に残る“効率ギャップ”の解消

デジタルトランスフォーメーションが進む一方で、伝統的な産業には依然として大きな非効率が残っています。私は、単純かつ反復的な肉体労働を、高信頼性のハードウェアとローカライズされたAIで置き換え、導入直後から明確なROIを生み出せるロボティクスに注目しています。

PoCを超えた商業的実証を重視

単なる実証実験ではなく、すでに売上を立て、市場からの評価を得ているスタートアップを優先します。狙うのは、特定の業界・課題に深く刺さる「垂直型ロボティクス」。導入初日から価値が伝わる明確なユニットエコノミクスと提供価値を持つ企業です。

2. 「K-プレミアム」を支えるグローバル・インフラ

国内市場の成熟・飽和は避けられない現実です。しかし同時に、過去最多水準の外国人流入と、Kブランドに対する世界的な需要拡大が進んでいます。為替環境の追い風や文化的ソフトパワーを背景に、これは一時的なブームではなく、経済構造そのものの変化だと捉えています。

グローバル需要のマネタイズ

国内外の外国人層をターゲットとしたプロダクトやサービスには、大きな成長余地があります。いまや「Kブランド」はプレミアムを帯び、高い利益率と、かつてない規模での市場到達を可能にしています。

・勝ち筋は“ブランド”ではなく“支える側”にある

単一の消費者ブランドや食品に賭けるのではなく、グローバルな需要の流れを支えるインフラに注目しています。具体的には、海外展開を最適化するMarTech、データドリブンなリテールネットワーク、越境決済、AIを活用したワンストップ型サービスプラットフォームなどです。



2026年は、これまで以上に安価な資本に支えられている企業と、構造的な必然性の上に立つ企業が明確に分かれる「グレート・フィルター」の年になるでしょう。こうした中で、私の考えはシンプルです。

国が抱える制約や逆風を、他には真似できない競争優位(Unfair Advantage)へと転換できる創業者に投資することです。産業の「働く手」となる技術をつくる人、あるいはグローバル化する市場をつなぐ「デジタルの橋」を架ける人。そうした実践的なイノベーションこそが、韓国の次の10年を形づくると信じています。ぜひ、お話ししましょう。

1. 新世代AIハードウェア/データインフラ/RAG

投資仮説

コンピュートとデータインフラは、今や戦略的な国家資産になりつつあります。韓国は、メモリ、半導体、データセンターといった既存の強みを、輸出可能なAIインフラへと発展させていくポジションにあります。

なぜ今重要なのか

・AIコンピュート需要の爆発的拡大により、カスタムチップ、エッジ向けアクセラレータ、用途特化型インフラへのニーズが急増しています。

・ベクトルデータベースは、現代のAIアプリケーション、特にRAG(Retrieval-Augmented Generation)やエージェント型AIにおいて不可欠な基盤となっています。テキスト、画像、ユーザー、イベントといった高次元埋め込みデータをリアルタイムで保存・検索する必要があり、従来のリレーショナルデータベースではスケール対応が困難です。

・AIデータセンターは電力密度の限界に直面しており、液浸冷却や液体冷却、高度な電力・熱管理技術の導入が加速しています。これらの市場は2030年に向けて年率2桁成長(CAGR)が見込まれています。

・Samsung、SK Hynix、ハイパースケーラー、新規AIデータセンタープロジェクトなどを背景に、韓国ではAIクラスターやAIデータセンターを国家インフラとして捉える動きが強まっており、インフラ系スタートアップにとって追い風となっています。

注力領域

  • デバイス/産業用途/自動車向けのエッジAIチップ・アクセラレータ

  • インメモリ/ニアメモリコンピューティング、CXL

  • エンタープライズAIの中核を担うベクトルDBおよびRAG関連インフラ

  • データセンター向け基盤技術(液体・液浸冷却、電力システム、高速インターコネクト、GPUの動的仮想化・オーケストレーション)

  • 量子コンピューティング

2. エンタープライズ向け 垂直型/エージェント型AI

投資仮説

水平型の基盤モデルは引き続き米国主導で進む一方、規制が強く、データ感度の高い領域における垂直型・エージェント型AIはローカルで勝者が生まれると考えています。韓国特有の規制環境や言語・データの特殊性は、構造的なチャンスを生み出しています。

韓国における優先領域

  • 防衛・国家安全保障:情報統合、シミュレーション、サイバー防衛エージェント

  • リーガル:契約レビュー、訴訟準備、コンプライアンス業務の自動化

  • フィンテック/銀行:与信審査、AML/不正検知、書類業務の自動化

  • ヘルスケア:診療記録作成、医用画像トリアージ、病院オペレーション最適化

  • 広告・メディア:キャンペーン設計やクリエイティブ生成エージェント(AI生成コンテンツの明示義務強化による需要増も追い風)

3. AIネイティブ/AI強化型SaaS(Korea-First)

投資仮説

韓国においてAIサービスがスケールする条件は明確です。既存の強固なユーザーベース、明確で反復性の高いユースケース、実証済みのビジネスモデルです。

ゼロから立ち上げる水平型AIアプリよりも、すでに機能しているSaaSにAIを重ねるアプローチの方が、はるかに魅力的だと考えています。実際、既存SaaSにおける自動化、予測、パーソナライズといったAI機能は、単体のAIツールと比べて、継続利用率や支払い意欲が高い傾向にあります。

台湾への投資:産業インテリジェンスの次なるフェーズへ

世界的に生産コストの上昇、利益率の低下、製造プロセスの複雑化が進む中、台湾は製造業AI(Manufacturing AI)における有望な市場として存在感を高めています。設計から生産、品質管理に至る製造ライフサイクル全体にインテリジェンスを組み込むことで、持続的な価値創出が可能となっています。


1. 製造ライフサイクル全体を横断するManufacturing AI


最も競争力のあるプラットフォームは、物理空間とデジタル空間の双方を横断し、ソフトウェア、センサー、シミュレーション、オートメーションを統合しています。

設計、工程最適化、品質管理、生産管理といった意思決定を高度化することで、さまざまな製造現場において定量的な成果を生み出しています。


2. グローバル製造システムへ拡張可能なプラットフォーム


台湾の製造業は、世界でも屈指の高密度かつ高度な生産エコシステムの中で、グローバルサプライチェーンの中核を担っています。この環境により、AIプラットフォームは多様な現場で検証・改善され、グローバル展開に向けた基盤を構築できます。

インテリジェント検査、デジタルツイン、製造業向けOSといったソフトウェアレイヤーは、まずローカルに組み込まれ、その後、自然な形で世界へと広がっていきます。

台湾が持つ製造業の厚み、豊富なデータ、そしてシステムレベルの知見は、産業システムの設計・構築・運用の在り方を静かに変革する、グローバルに通用するプラットフォームを生み出す土壌となっています。

東南アジア・フィンテック投資:現場に根ざしたAI

東南アジアにおけるフィンテックの大きな機会は、AIが各国固有の金融行動、規制環境、データ構造に深く組み込まれることで生まれると考えています。導入が進むにつれ、ローカルデータから学習し、複雑性をスケーラブルなインフラへと変換する「現場に近いAI」が、持続的な価値を創出します。


1. 複雑な商取引エコシステムを支えるエージェント型決済AI


ローカルおよび地域横断の商取引プラットフォームが連携する中で、エージェントが自律的に決済を実行するエージェント型決済インフラへの関心が高まっています。

東南アジア特有の決済手段、規制、EC環境にリアルタイムで適応しながら、決済フローをインテリジェントに制御するシステムに大きな成長余地があります。


2. 従来の与信審査を超えるAI主導のクレジットインフラ


デジタルレンディングの拡大に伴い、信用スコアリングや与信審査の自動化は重要なテーマとなっています。特に有望なのは、分析にとどまらず、AIエージェントが新たなデータを発掘し、与信、詐欺検知、コンプライアンスを横断して自動化するプラットフォームです。

東南アジアでは、ローカルシステムの深層に入り込み、不可欠なインフラとして機能するAIフィンテックが、今後ますます価値を蓄積していくと考えています。

—— 構造課題と強み、その両方から生まれる機会に賭ける

2026年の投資仮説は、明確な信念に基づいています。韓国における最も本質的なスタートアップ機会は、国が抱える構造的課題に真正面から向き合う中から生まれるものと、すでに世界トップレベルにある強みを最大限に活かすところから生まれるもの、その両方に存在するという考えです。

まず一つ目は、人口動態や社会構造の変化を新たな成長機会へと転換する起業家です。韓国は世界でも有数のスピードで高齢化が進む社会であり、この現実は大きな課題であると同時に、未開拓の機会でもあります。

私たちは、人々がより長く健康で、生産的かつ自立した生活を送ることを可能にする技術やサービス、すなわちロンジェビティやヘルススパン(健康寿命)の延伸に関わる領域に、大きな可能性を見ています。「引退」や「老後」の定義そのものが変わりつつある中で、これまでテクノロジースタートアップから十分に向き合われてこなかった層に対し、新たなプロダクトや体験が生まれていくと考えています。

二つ目は、韓国の産業的な強みを最大化する企業です。韓国は、製造業や重工業の分野で長年にわたり世界的な競争力を築いてきました。その過程で蓄積されたのは、単なる設備や資本ではなく、現場に根ざしたオペレーションの知見、プロセスデータ、そして実務経験の集積です。私たちは、こうした“苦労して得られたデータ”を、スケーラブルなソフトウェアやAIソリューションへと昇華できる起業家に強い関心を持っています。

特に注目しているのは、学習し、適応し、ドメイン知識を蓄積していくプラットフォームです。ハードウェア、データ、ソフトウェアが相互に補完し合いながら進化する「知識の脳(Knowledge Brain)」を構築することで、一朝一夕では模倣できない、持続的な競争優位を生み出すチームに大きな魅力を感じています。

私たちにとって投資テーマは、あくまで思考の指針であって、境界線ではありません。事前に定めた関心領域に当てはまらなくとも、強いミッションとビジョンを持つ卓越したチームには、常に心を開いて向き合っています。

真に長く続く企業は、多くの場合、深い自己確信と明確な目的意識を持ち、「なぜ自分たちの仕事が長期的に意味を持つのか」を言語化できる起業家によって築かれます。そうした技術的な卓越性と現場での実行力を兼ね備えた起業家、チームと出会ったとき、私たちは本気で伴走していきたいと考えています。



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業種
金融・保険業
本社所在地
東京都千代田区紀尾井町1-3 東京ガーデンテラス紀尾井町紀尾井タワー
電話番号
03-6850-0010
代表者名
In Joon Hwang
上場
未上場
資本金
2億円
設立
2012年08月