1枚8時間が、1時間になった。それでも最後は人の手で直している――PixAI社内イラストレ ーター Kayano に聞く、AI制作の本当の手順
マンガや動画でも制作時間は90%減、それでも仕上げは手作業で。AI企業で絵を描く人の作業フロー
PixAIには、社内でイラストを制作しているメンバー、Kayanoという社員がいます。
絵は独学です。美術の専門教育は受けていません。大学で学んだのは建築設計でした。それでも学生の頃から、コンテストへの応募や知人を通じた依頼を受けたりして、イラストやキャラクターデザインを手がけてきました。

2023年、Kayanoが画像生成AIを初めて触ったときの評価は「まだ仕事には使えない」でした。考えが変わったのは2025年の後半。いま、イラスト1枚にかかる時間は、8時間から1時間になっているそうです。
何が変わって、何が変わらなかったのか。実際の手順に沿って聞きました。
■ 絵は、ずっと趣味だった
――絵を描きはじめたきっかけは?
「小学生の頃です。始めたのはただの興味からでした。そのときに描いていたものは、いま見ればひどいものでしたが、それからずっと、趣味としては続いています」
絵の勉強といえるようなことをしたのは、中学三年から高校にかけて。といっても、絵画教室や講座に通った経験はありません。同じ時期に、二次元文化そのものにのめり込んでいったといいます。
「ちょうど同人誌が流行っていた時期でした。2010年代の初めごろですね」


大学で選んだのは建築設計でした。ただ、本人のなかで絵と建築はつながっていません。
「このふたつは、自分のなかでは切り離されています。建築の知識が絵に影響しているかというと、あまり関係がないと思います」
就職後の仕事にはグラフィック素材の制作が含まれ、その前後では、コンテストへの応募や知人から紹介された外注の仕事も受けていました。多くはイラストとキャラクターデザインです。
「依頼が来るから、お金を稼ぎたくて受ける。自分が本当に描きたいものを描く仕事は、受けたことがないんです」
■ 2023年当時は「まだAIは仕事には使えない」
画像生成AIの存在を知ったのは2023年の前半、Stable Diffusionが広まりはじめた頃でした。
「AIがこういう絵を出せるのか、という驚きはありました。ただ、仕事に使えるものではなかった。専門性の面でも、生成の質の面でも、まだ粗かったんです」
自分でも触ってみたものの、深く調べることはしませんでした。
「クオリティがよくなかったですし、そもそも当時は、AIをどう使うものなのかという認識自体が、みんな曖昧でした。だから本腰を入れて研究するということはなかったです」
■ 2025年後半、人の作品を見て考えを変えた
転機は2025年の後半でした。
「本当にすごいと感じるAI作品が出てきたんです。成果として見えるものが出てきた。それで、いろいろと研究するようになりました」
■ 最初にやったのは、他の人のワークフローを読み込むこと
「当時はComfyUIが流行っていて、ComfyUIでワークフローを組むことを集中してやっていました。といっても、最初は人が公開しているワークフローをダウンロードして、どう再現するのか、自分が生成するとどんな結果になるのかを見るところからです」
■ 今の作り方:案件全体から逆算する
現在の作業の進め方は、案件の内容によって決まります。
「案件全体から逆算して見ています。そのプロジェクトにどれだけコストをかけられるかで、手修正をどこまで入れるかが決まります」
基本的な流れはこうです。まずAIで生成する。次に、直す必要がある部分について、AIに具体的な要望を出す。それでもどうにもならない部分を、自分の手で直す。
「手修正にどれだけの労力を使うかは、結局そのモデルの性能次第です」

■ ラフは、絵ではなく文字で書く
制作過程を見せてもらって、意外だったことがあります。
キャラクターの立ち絵を作るとき、Kayanoの手元に最初に残っている資料は、ラフスケッチではありませんでした。文字で書かれた設計メモです。
どういう髪型や衣装で、どういう性格に見えるキャラクターなのか。それを言葉で詰めてから生成に入り、出てきた候補のなかから選び、採用した1枚に手を入れて仕上げていました。
「自分で細かく設計して、手で描き込んだキャラクターを渡して、それをもとにi2i(image-to-image=画像から画像を生成すること)で生成してもらう――これは今のところ、結果がかなり悪いんです。だから、前工程でキャラクターを手描きで作り込むという『投資』は、最初からしません。後の工程で、それを活かせないからです」
できないことから逆算して、作り方そのものを組み替える。AIの出力を一通り見てきた人の判断です。
絵を描けるにも関わらず、あえて最初は描かない。そういう組み立て方になっていました。



実際のキャラクターデザイン作業で使われたデザイン案で、案1が採用された。この前段階は文字による設計案だけで、ラフ稿は存在しない。
■ 漫画は、脚本から始める
漫画を作るときは、もう少し手数があります。
まず、ページ単位の脚本や字コンテを書きます。そのページが何を描くページなのか、何コマ使うのか、ページ全体で何が起きるのか。
次に、コマの配置を図にします。
┌────────────┬─────────────┐
│ PANEL 2 │ PANEL 1 │
├────────────┴─────────────┤
│ PANEL 3 │
├────────────┬─────────────┤
│ PANEL 5 │ PANEL 4 │
└────────────┴─────────────┘
そのうえで、コマごとの「カメラ(寄り・引き・角度)」「画面に何が写っているか」「台詞と効果音」を書き出していきます。
これらが完成してから、ようやく生成に入ります。
【ページ脚本】
PAGE 2|コメディ/日常 5コマ
空腹がMioをベッドから引きずり出す。
PANEL 1|右上
カメラ:Mioのお腹と、パーカーの裾の小さなアップ
画面:静かな部屋に、突然大きな腹の音が響く
SFX:「ぐぅぅ~~……」
PANEL 2|左上
カメラ:Mioの顔の近景
画面:ベッドに仰向け。紫色の目が開く。猫耳が一瞬で両方とも立つ
Mio:「…………。」
PANEL 3|中央・大きな横長コマ
カメラ:横からの全身、中遠景
画面:ようやく足を引きずるように寝室から台所へ歩く。体はわずかに前かがみ、袖が手の半分を覆っている。白からピンクへグラデーションした短い髪はぼさぼさ。長い尻尾が床をだらりと引きずる
Mio:「空腹には……」「勝てなかった……。」
SFX:「ぺた……」「ぺた……」
PANEL 4|右下
カメラ:冷蔵庫の内側からMioを見る視点
画面:冷蔵庫を開ける。中には卵、牛乳、いちご、パン、バターが残っている。冷気が顔に当たる
Mio:「おお……。」「ちゃんと食料がある。」
PANEL 5|左下
カメラ:顔をやや煽りで特写
画面:目が急にきらきらと輝く。尻尾も立つ。両手で卵とパンを持っている
Mio:「えらいぞ、昨日の私!」
ナレーション(小さな字):「昨日のMio、最大の功績。」

■ プロンプトは、構造で決まる
プロンプトの組み立てには、本人なりの型がありました。文章をひとかたまりで書くのではなく、6つのブロックに分けて書くというものです。
1. 画面のスタイル ― 塗り、線、陰影、コントラスト、レンズの画角やボケなど、絵としての見え方に関わる指定
2. 内容の概要 ― 何を作るのか、どういう用途か、誰が出てくるのか
3. キャラクターの描写 ― 髪型、目、服装、体型など
4. 設定 ― 場所、時間帯、状況。場面の複雑さに応じて、長くも短くもなる
5. コマの配置 ― 何コマで、どのコマがどこに来るのか
6. コマごとの内容描写 ― カメラ、画面の中身、台詞、効果音
「特に画風に関する指定は、習慣的にいちばん前に置いています。そのほうが、再現の精度が明らかに高いんです」
そして、漫画の場合は コマの配置をきちんと指定することが決定的に重要だといいます。
■うまくいかなかったこと:「モノクロの漫画で」と指定したのに、カラーで出力された
話のなかでいちばん具体的だったのは、うまくいかなかったときの話でした。
例えば、プロンプト上の概要で「モノクロの日本の漫画ページを作る」と書いていても、カラー漫画が出力されることがあります。ここでの原因は2つあったといいます。
ひとつは、画面のスタイルのブロックで白黒を指定していなかったこと。
「概要に書いても、スタイルとして強調していないと効かないんです」
もうひとつは、キャラクターの描写のほうに色の記述が入っていたこと。髪の色、目の色、服の色――キャラクターを特定するために必要な情報が、そのまま画面を色づけてしまっていたのです。
■ 台詞のラベルが、絵のなかに描かれてしまう
また、コマごとの台詞を書くとき、ラベル(話者や種別を示した見出し)の付け方にも決まりがあります。
「画面に出したい文字と同じ言語でラベルを書くと、ラベルのほうまで画像に描き込まれてしまうことがあります」
そのため、台詞はコマの内容描写と一緒に書き、ラベルは英語で統一しているそうです。
どれも、作ってみなければ分からないことでした。


■ 1枚8時間が、1時間になった
――AIを使う前と後で、どれくらい変わりましたか。
「これはもう、以前までのやり方が覆りました」
イラスト1枚にかかる時間は、以前は8時間ほど。今は1時間です。
アニメーションや漫画でも、短縮の度合いは同じく80〜90%だといいます。
■ それでも、最後は自分の手で直す
ただし、本人は付け加えました。
「そのイラストの上に、さらに細かいキャラクターの再現や質感を求めるなら、そこから30%くらいの時間を足して調整することになります」
そして、こう続けます。
「AIが生成したものにどれくらい満足できるかは、結局、どれだけの時間をかけてそれを直すか、細部に手を入れるかで決まります」
早くなったのは、途中までで、最後に手を入れる時間は短縮されていない。むしろ、そこが仕事の中身になっています。





ゲームKVの手修正前と後。中央の人物を中心に、衣装の質感と線が描き足されている
■ AIが苦手なのは、「その人にしか作れないキャラクター」
――AIにできなくて、人がやるしかないことは何でしょう?
「キャラクターデザインの前段です。AIを使わない人がデザインするキャラクターは、独特で、個性があって、細部まで作り込まれている。ああいうものを、プロンプトだけで安定して再現するのは、かなり難しいです」
■ 絵を描ける人が使うと、仕事の範囲が変わる
――絵を描ける人がAIを使う場合と、そうでない人が使う場合の違いは?
「絵を描かない人が使い始めると、細かいところにはあまりこだわらないことが多いです。きれいなものが出てきたら、それでOKになる」
一方、絵を描ける人の場合は、別の変化が起きるといいます。
「専門的に絵を描ける人がAIに触れると、できることの範囲が変わります。キャラクターデザインだけ、イラストだけを担当していた人が、AIに何ができるかを理解すると、イラスト以外のこともできるのでは、となる。短い映像にする、もっと使える素材にする、簡単なゲームを自分で作ってしまう。そういう広がり方をします」
■ 周りの絵描きは、どう見ているか
――AI企業で働いていることで、絵描きの友人から何か言われることは?
「友人にAIを使っていることや、AI企業で働いていることを話すときは、きちんと筋の通った話で伝えるようにしています」
――たとえば?
「今の時代の流れの話ですね。AIというのは何かを取って代わるものではなく、道具として使うものだと。何かを置き換えられるかどうかは、結局その人自身の力量がどれだけあるか、それでどこまでのものを作れるかにかかっている。最上級のクオリティのものを完全に置き換えることは、今のところできません。ハイエンドの二次元にしても、3Dにしても、できていない」
そのうえで、周囲の反応をこう話します。
「話していて多いのは、あまり興味がない、という反応です。AIにはまだできないことがたくさんある、と。これは8割から9割が答えます」
触ってはみたものの、使いこなせない人もいるといいます。その理由について、本人の見方は率直でした。
「AIが何を出せるのか、会社ごと、オープンソースごとにモデルの理屈がどう違うのかを、突き詰めて調べていないからだと思います。何が作れるのかを、そもそも知らない。興味がない状態だと、深く調べようとはしませんから。だから使えない」
■ 使っている道具
――いま、仕事で使っている道具を教えてください。
「生成に使うPixAIの『Tsubaki.3』、仕上げに使う『CLIP STUDIO PAINT』、そして文章や構成を詰めるときに使う生成AIがふたつ。絵を仕上げるためのソフトは、AIを使うようになってからも手元に残っています」

■ AIで上達したというより、ひとりでできることが増えた
――AIという道具を得て、何が変わりましたか。
「自分が上達したというより、個人でできることが増えた、という感覚です。イラストひとつを極めて非常に高い精度に持っていくとか、キャラクターデザインを極めるとか、そういうことはできないと思っています。でもAIという道具があると、できることが1つや2つに限定されなくなる。もっといろいろな内容に手を出せます。ゲーム開発とか、簡単なゲームを自分で作るとか」
「たとえば、以前なら、企画と、美術と、プログラマーが必要でした。でも今の簡単なゲームなら、美術とAI、プログラマーとAI、企画とAI、それぞれ一人で完成させられてしまう。そのぶん費用はかかりますが、時間やそのほかのコストと比べれば、それでも割に合います」
■ 「一緒に賢くなりたい」
――最後に、AIにこうなってほしいという願いはありますか?
「もっと賢くなってほしいです。もっと汎用的に使えるようになってほしい。賢くなればなるほど、自分がどこまでできるかが決まるので」
――賢くなるのは、AIのほうですか? それとも……?
「一緒に賢くなる、ということで」
■ PixAIについて

PixAIは 「想像力に、命を吹き込む(Imagination, made real)」 をスローガンに、特別な才能がないと感じている方たちでも創作の楽しさと可能性を届けることを使命としています。
2022年10月のサービス開始以来、今では 世界中で1,500万人以上 のクリエイターに利用されるAI二次元創作プラットフォームへと成長しました。北米・韓国・台湾など創作文化の根付いた地域を中心に急速に支持を獲得し、同ジャンルにおいてユーザー満足度、継続率ともにトップクラスの評価を獲得しています。
2025年上半期には、Sensor Towerの調査により、日本App Store「グラフィック/デザイン」カテゴリ売上第1位、「AI総合」カテゴリ第6位 を記録し、AI創作分野における確かな地位を築いています。
PixAIは、今後ともクリエイターの創作活動を支援し、作品ごとの権利と表現を尊重するという理念のもとでサービスを運営してまいります。
■ 最強アニメ調オールインワンAI創作ツール「Tsubaki.3」
「Tsubaki.3」は、イラスト・マンガ制作・動画生成のすべてができる、アニメ調オールインワンAI創作ツールです。1枚の参考画像から、表情差分・多角度・衣装違いへとキャラクターを展開——何枚でも、キャラが崩れない。
さらに、コマ割り・吹き出し・台詞を含むページ生成にも対応し、キャラが、漫画になる。イラストやマンガのコマをもとにした動画生成まで、ひとつのモデルで続けられます。
▼Tsubaki.3 特設ページ
https://pixai.art/ja/tsubaki-3
■ 統合型AI創作ツール「PixAI Studio」ーープロ向け制作ワークスペース
「PixAI Studio」は、2026年7月に新規リリースされた、画像生成・動画生成・編集・素材管理をひとつのキャンバス上で自由に組み合わせられる統合型AI創作ツールです。
PixAI自社開発のアニメモデルや160万以上のコミュニティLoRAにも対応し、シネマティックな動画制作から連載漫画の作成まで、複雑な制作プロセスを一気通貫で完結できます。すぐに使えるテンプレートも用意されており、ゼロからワークフローを構築する必要はありません。
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■ 対話型AI創作エージェント「Mio.2」について

「Mio.2」は、PixAIが開発した対話型AI画像生成エージェントです。チャットを開いて、思い描いていることをそのまま伝えるだけで、「Mio.2」が一緒に形にしていきます。仕上がりに満足できなければ、変更したい点を伝えるだけ。納得するまで何度でも調整できます。
まだ何を描きたいか決まっていなくても問題ありません。 「アイデア出しモード」 で会話を始めれば、「Mio.2」がアイデアの整理や方向性の提案をサポート。構想段階から創作の完成まで、1つの会話の中で一貫して進めることができます。日本語・英語・中国語・韓国語に対応し、アニメ調・二次元スタイルに特化した最新フラグシップモデル「Tsubaki.2」を搭載しています。
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■ 関連リンク
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PixAI公式サイト:https://pixai.art/ja
-
対話型創作エージェント「Mio.2」:https://agent.pixai.art/
-
Tsubaki.3 特設ページ:https://pixai.art/ja/tsubaki-3
-
PixAI公式ブログ(Tsubaki.2 詳細解説):https://pixai.art/articles/ja/tsubaki-2-is-here-everything-you-need-to-know-2/
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公式YouTubeチャンネル:https://www.youtube.com/@PixAIJP
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