リフィル処方箋の普及状況と医療費削減効果について
当社は、独自に保有しているレセプトデータを中心としたメディカルビッグデータ『REZULT』を基に、リフィル処方箋に関する影響調査を実施しました。
リフィル処方は症状が安定している患者に対して、最大3回まで繰り返し利用できる処方箋による処方が可能となった仕組みで、2022年4月の診療報酬改定で新設されました。
当社未来共創Labサイトでは、2023年3月に本制度に関する調査レポートを公開しております。
リフィル処方箋の実態と医療費削減効果について(https://www.jastlab.jast.jp/news-20230330/)
外来の受診が減ることにより医師・患者の負担軽減や医療費の削減が期待される制度となりますが、厚生労働省ではリフィル処方箋の利用率は2023年3月時点において0.05%に留まっていると発表しており、認知度の低迷が大きな課題とされています。
2023年12月末に電子処方箋がリフィル処方に対応し、2024年6月の診療報酬改定においてもリフィル処方箋の利用促進を図る改定が含まれました。
本調査ではリフィル処方箋を取り巻く環境の変化を中心に、経時的な調査を実施しています。
【集計条件】
調査対象:
当社が保有するレセプトデータベース(約940万人)の内、2022年4月~2024年6月の期間における医科外来・調剤レセプトデータを対象に調査
参考資料:
厚生労働省 医療機関・薬局での電子処方箋導入・運用について 2.3 今後の開発について リフィル処方箋(令和5年12月28日実装)
(https://www.mhlw.go.jp/stf/denshishohousen.html#2)
厚生労働省 令和6年度診療報酬改定の概要(医科全体版)
(https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001252076.pdf)
目次
1 | リフィル処方箋の処方状況の推移
2 | リフィル処方箋の処方患者の傾向
3 | リフィル処方箋の処方患者における医療費の推移
1 | リフィル処方箋の処方状況の推移
リフィル処方箋の処方側である病院・クリニック等(医科)と応需側である調剤薬局(調剤)について調査しました。
応需側は複数回利用可能であることから、数値としては高めとなりますが処方箋の処方と応需に関しては概ね同傾向での推移が見られます。
厚生労働省の発表と同様に2023年3月時点では医科の処方状況としては0.05%にとどまっており、2023年12月まで同傾向が続いていることが分かります。
電子処方箋とリフィル処方については管理・運用面において相性が良いと考えられ、2024年1月以降若干の増加が見られました。
また、診療報酬改定が施行された2024年6月においても医科の処方率が向上し、過去最高となっており、各施策に一定の効果があったことが考えられます。(図1)
次に年度別にリフィル処方箋の使用回数を調査しました。
医師の判断により最大3回までの利用が可能ですが、最大2回とする処方が多く、その比率は年々増加(2022年度55.3%、2024年度60.8%)しています。
新規にリフィル処方箋を処方する場合や、一過性の症状(花粉症等)、真夏の外出控えや長期休暇前の一時的な措置として、利用回数を2回に指定したリフィル処方が増えていることも想像できます。(図2)
病院・クリニックの処方状況について、医療機関の規模(病床数)別に確認しました。
病床数が200床以上の比較的規模の大きな病院では、病床数がそれ以下の医療機関と比較して、処方率が大きく伸びていることが分かります。
これは大きな病院では医師の負担軽減を図るため、積極的に導入が進んでいることが考えられます。
また、病床を持たないクリニック等の小規模施設では2024年6月処方率の増加が見られており、診療報酬改定において、かかりつけ医機能の評価となる生活習慣病管理料等の施設基準に「リフィル処方や長期処方を活用することが可能であることを、患者に周知すること」が要件に追加されたことの影響が考えられ、施設数の多いクリニックにおけるリフィル処方普及の一助となる可能性が推察されます。(図3)
【図1】リフィル処方箋の処方傾向
【図2】リフィル処方箋使用回数の傾向
【図3】病床規模別の処方傾向
※2024年6月はデータ反映が完了している一部データ、2024年度は期中のデータとなるため速報値として掲載。
2 | リフィル処方箋の処方患者の傾向
リフィル処方箋を処方されている患者の傷病・医薬品について調査しました。
年度別に見た際に順位に大きな変動はなく、リフィル処方箋の対象として想定されている生活習慣病、アレルギーが上位に含まれています。
傷病1位のアレルギー性鼻炎については元々の患者数が多いことも影響していると考えられますが、医薬品としてもアレルギー用薬が1位となっており、リフィル処方箋の対象患者においては、概ね制度に対する期待通りとなっていると推測できます。(表1,表2)
速報値となる2024年度においては春の花粉症シーズン(2~3月)が含まれていないことから、アレルギー性鼻炎・急性アトピー性結膜炎の割合が少なく出ていると考えられます。
【表1】リフィル処方箋の処方患者における罹患状況(患者割合:上位5疾患)
【表2】リフィル処方箋の医薬品処方状況(患者割合:上位5薬効分類)
3 | リフィル処方箋の処方患者における医療費の推移
最後にリフィル処方箋の処方患者における外来医療費(10割)の推移について調査しました。
2021年度(リフィル処方箋導入前)と2022~2023年度(リフィル処方箋導入後)の外来医療費を比較しています。
また、リフィル処方箋の影響を明確にするため、定期的に通院しており、リフィル処方箋の処方が1年超継続した患者の推移を調査しました。
加えて、リフィル処方箋の利用による受診日数の減少も期待されるため、合わせて推移を確認しています。
病状の変化もあるため一概には言えませんが、定期的に通院している患者が、安定的にリフィル処方箋を処方された場合、2021年度と比較して2022年度で3,647円、2023年度で5,141円程度、対象者1人当たりの外来医療費(10割)が減少していることが分かりました。
そのため、定期的に通院している患者については一定の医療費削減効果があると考えられます。(図4)
受診日数にも減少傾向が見られ、2022年度で1.5日、2023年度で1.9日程度、対象者1人当たりの受診日数が減少していました。
リフィル処方箋により受診日数も減少していることが確認できたと考えます。(図5)
【図4】リフィル処方箋の処方患者における医療費の推移
【図5】リフィル処方箋の処方患者における受診日数の推移
※医療費が外れ値となる患者は除外。
リフィル処方については、まだまだ普及しておらず影響は限定的ですが、受診回数が減少することで医師や症状が安定している患者の負担軽減、医療費の削減にも繋がります。
また、長期処方と比較して医療従事者(薬剤師)と患者の接点は維持できることもメリットとして挙げられると思います。
今回の診療報酬改定にも見られる通り、政府としてもリフィル処方の促進には前向きと捉えておりますので、引き続き状況を注視していきます。
当社では、データヘルス計画の策定支援や事業実施支援の一環として、適正服薬(後発品の利用促進等)に関して通知から効果分析までのサービスも行っています。他にも、約940万人分の匿名加工済みのレセプト・健診データ等の医療リアルワールドデータによる地域差分析やペイシェントジャーニー(※1)などアドホックな分析やデータの販売を行っております。気になる点、詳しく知りたい点などがございましたら、下記アドレスまでお気軽にお問い合わせください。
※1 患者が病気を認知し、医療機関へ受診、そして治療となるまでの一連のステップ。
■本件で利用したメディカルビッグデータ「REZULT」につきましては以下をご参照ください。
https://www.jastlab.jast.jp/rezult_data/
【本件に関するお問い合わせ】
日本システム技術株式会社
ヘルスケアイノベーション事業部
TEL:03-6718-2785
Mail:rezult@jast.co.jp
URL:https://www.rezult-lp.com/
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