出生登録に関する報告書を発表 5歳未満の3人にひとりは「公に」存在しない子どもたち
12月11日、ユニセフ67回目の創設記念日を迎える
・本信は、ユニセフ発表の情報に基づき、日本ユニセフ協会が編集したものです
・原文(英語)と報告書の閲覧をご希望の際は、日本ユニセフ協会 広報室にお問い合わせください
【2013年12月11日ニューヨーク発】
12月11日の67回目の創立記念日にあたり、ユニセフは、世界の出生登録に関する新たな報告書を発表。
出生登録されていない5歳未満の子どもは約2億3,000万人、つまり、3人にひとりであることを明らかに
しました。
ユニセフ事務局次長のギータ・ラオ・グプタは「出生登録は、権利以上のものです。社会が、その子ども
自身とその存在を初めて認識し、認めるのが出生登録です。出生登録は、国家の発展から子どもたちが
忘れさられず、その権利を否定されず、隠されないことを保証する上でも重要なのです」と述べました。
報告書『すべての子どもが生まれながらに持つ権利:出生登録における不平等と傾向(原題:Every
Child’s Birth Right: Inequities and trends in birth registration)』は、161ヶ国における
統計の分析と国別の出生登録に関する最新のデータと推定値をまとめたものです。
■出生登録率は60%、わずか3%の国も
2012年、誕生後すぐに出生登録された赤ちゃんは世界全体でわずか約60%でした。数値は地域によって
大きく異なりますが、最も低かったのは南アジアとサハラ砂漠以南のアフリカでした。
出生登録が最も低かった国10ヶ国は以下の通りです。
ソマリア(3%)、リベリア(4%)、エチオピア(7%)、ザンビア(14%)、チャド(16%)、
タンザニア共和国(16%)、イエメン(17%)、ギニアビサウ(24%)、パキスタン(27%)、
コンゴ民主共和国(28%)
■「出生登録証」を持つ子どもはさらに少なく、虐待や搾取などにあいやすく
出生登録が行われても、多くの子どもたちが「出生登録証」を持っていません。たとえば、
東部・南部アフリカでは、出生登録証を持っているのは、出生登録が行われた子どもの約半数。世界では、出生登録された子ども7人のうち、ひとりは出生登録証を持っていません。中には、登録証の発行に多額の費用がかかる国々もあり、登録証を持っていない原因となっています。また、登録証が発行されず、
家族の手元に登録を証明するものがない国々もあります。
誕生時に登録されなかった子どもたちや公的な証明を持たない子どもたちは、教育や保健ケア、
社会保障から除外されてしまうことが頻繁に起こります。公にその存在が登録され、確認できるものが
なければ、子どもたちが自然災害や紛争、搾取の結果などで家族とはぐれてしまった場合、身元を
確実に確認できず、家族のもとへ帰るのはより困難になってしまいます。
「出生登録と出生登録証は、子どもたちが持つ可能性を解き放つうえで、欠かせません。すべての
子どもたちは、計り知れない可能性を持って生まれてきます。しかし、社会が子どもたちの存在自体を
認識していなければ、子どもたちが育児放棄や虐待によりあいやすくなってしまうのです。そうなれば、
子どもたちの可能性はどんどん失われてしまします」と、グプタ事務局次長は言います。
■出生登録を阻む要因への取り組みを
出生登録は、国の市民登録にとっても不可欠であり、統計の質や支援活動、計画立案、政府の効率性を
強化する上で欠かせないものです。
ユニセフは、出生登録がされていないことは、社会の不平等と格差の兆候だとしています。こうした
不平等の影響を最も受けるのは、特定の民族や宗教のグループの子どもたちや、農村部や遠隔地に住む
子どもたち、貧しい家庭や教育を受けていない母親を持つ子どもたちです。
出生登録が行われない要因は様々です。登録証の発行に費用が掛かること、関連する法律やプロセスが
ないこと、文化的な要因、さらなる差別や阻害の恐れなどが挙げられ、こうした原因への取り組みも
必要です。
■ユニセフ、携帯電話などを使って出生登録を促進
ユニセフは、政府と地域社会を支援しながら、市民登録と出生登録システムの強化を支援しています。
携帯電話などが取り入れられ、革新的な取り組みが行われています。いくつかの例をご紹介します。
コソボでは、ユニセフのイノベーションラボが、RapidSMSと呼ばれる携帯電話を活用した技術を導入。
これにより、出生登録されていない子どもを見つけ、報告する作業が、効率的かつ効果的に、低コスト
で行えるようになりました。
ウガンダでは、ユニセフと民間部門の支援を受け、政府はMobile VRSと呼ばれる取り組みを
行っています。Mobile VRSでは、携帯電話を活用し、これまで数カ月もかかっていた出生登録の
手続きをわずか数分で行えるようになりました。
グプタ事務局次長は「すべての子どもたちの存在を正確に把握できていなければ、公平で包括的な社会
とは言えません。出生登録は、子どもの幸福のためでなく、社会や国家の発展のためにも、続いて
きたものです」と述べています。
* * *
本日、ユニセフはあわせて、ハンドブック『保護へのパスポート:出生登録プログラムのガイド
(原題:A Passport to Protection: A guide to birth registration programming)』も発行。
本書では、出生登録に関わる人を対象に、背景情報や一般原則を解説し、プログラムを作るにあたっての
ガイドを紹介しています。
■参考追記:日本における出生登録について
生まれた日を含め、14日以内に役所に出生届を提出します。提出後、母子手帳の所定の欄に、役所が
出生届を受けたことを証明する旨が記載、登録が手元にも残ります。必要に応じて、「出生届受理証明書」
の発行なども行えます。
■素材のご提供
本プレスリリースに関する画像、映像のお貸し出し(無償)を行っております。
・映像(英語)・画像は以下よりご覧いただけます。http://weshare.unicef.org/mediaresources
・映像(日本語テロップつき)は以下よりご覧いただけます。
http://www.unicef.or.jp/children/station.html
>映像ステーション内、「保護」のタブをお選びください。以下の2本の動画をご用意しています。
>「出生登録-すべての子どもたちに守られることへのパスポートを」
>「ナイジェリア:携帯電話で出生登録数が増加へ」
ご使用の際には、所定のお手続きが必要となります。日本ユニセフ協会 広報室までご連絡ください。
■本プレスリリースに関するお問い合わせ
(公財)日本ユニセフ協会 広報室
TEL:03-5789-2016 FAX : 03-5789-2036 jcuinfo@unicef.or.jp
または
Rita Ann Wallace, UNICEF New York, Tel +1-212-326-7586, Mobile +1 917-213-4034,
rwallace@unicef.org
Iman Morooka, UNICEF Strategic Communications, New York, tel: + 1 212 326 7211,
imorooka@unicef.org
■ユニセフについて
ユニセフ(UNICEF:国際連合児童基金)は、すべての子どもの権利と健やかな成長を促進するために
活動する国連機関です。現在190の国と地域※で、多くのパートナーと協力し、その理念を様々な形で
具体的な行動に移しています。特に、最も困難な立場にある子どもたちへの支援に重点を置きながら、
世界中のあらゆる場所で、すべての子どもたちのために活動しています。(www.unicef.org)
※ユニセフ国内委員会(ユニセフ協会)が活動する36の国と地域を含みます
※ユニセフの活動資金は、すべて個人や企業・団体からの募金や各国政府からの任意拠出金で
支えられています
■日本ユニセフ協会について
公益財団法人 日本ユニセフ協会は、先進工業国36の国と地域にあるユニセフ国内委員会のひとつで、
日本国内において民間として唯一ユニセフを代表する組織として、ユニセフ活動の広報、募金活動、
政策提言(アドボカシー)を担っています。 (www.unicef.or.jp)
すべての画像