大型陸上風力発電計画による森林生態系の危機的状況が明らかに
陸上風発計画の全国立地傾向を独自に解析
● 日本自然保護協会は、全国で計画されている287件の陸上風力発電事業の自然環境面の立地の解析を行い、森林生態系への深刻な影響を明らかにした。
● 計画のうち、50%以上が原生林に近い森林を、約25~50%がイヌワシ・クマタカの生息域を建設予定地に含めていた。
● 環境アセス書の一般への常時公開は全体の5.7%に過ぎず、情報公開の問題点が明らかとなった。
● 計画のうち、50%以上が原生林に近い森林を、約25~50%がイヌワシ・クマタカの生息域を建設予定地に含めていた。
● 環境アセス書の一般への常時公開は全体の5.7%に過ぎず、情報公開の問題点が明らかとなった。
公益財団法人日本自然保護協会(理事長 亀山 章、以下NACS-J)は、自然環境に配慮した立地での再生可能エネルギーの推進を提唱しています。
近年、全国の会員・サポーターから、貴重な自然を有する森林での大型陸上風力発電事業(以下、陸上風発)計画に関する相談が急増していました。そこで、今回、NACS-Jは全国での傾向を把握するべく、法アセス対象の大型陸上風力発電事業の自然環境面の立地解析を行いました。
【風発事業の自然環境への影響】
1.半数以上の陸上風発計画で、全国に18%しか残っていない、原生林に近い森林を示す「植生自然度9」のエリアを含んでおり、特に北海道、東北、九州、四国で多い傾向にある(図2,3)。また、約15%の計画で、環境省が保全すべきとして指定している特定植物群落を含んでいた。
3.85%の陸上風力発電事業計画が保安林内で計画されている。これは、風車建設のために保安林を解除し、伐採・土地改変を行われる可能性を示しており、自然環境保全および防災上で大きな懸念がある状況である。
【“環境アセス”の仕組みとしての問題点】
4.環境アセス書の縦覧終了後の公開は約5.7%程度と極めて低く、事業の実施に伴って講じられた環境保全措置や事後調査の結果を公表した最終段階の報告書でさえ15.8%と低い状況であった。これは、本来環境アセスが持つべきコミュニケーションツールとしての機能を十分に果たしていないことが明らかとなった。
5.風力発電事業がアセス法対象事業となり、さらに環境アセスに配慮書が導入されてから全体計画の約11%の32件が事業廃止となっていることが明らかとなった。廃止のタイミングは、全て環境アセスの初期段階(環境影響配慮書公開後が23件、方法書公開後が9件)での廃止であり、環境影響評価準備書公開後の廃止は無かった。
陸上風力発電事業の計画に当たっては、まず、植生や猛禽類など自然環境に配慮した立地選定を行わなければ、たとえ2050年にカーボンニュートラルが達成できたとしても、2050年には日本の自然環境が取り返しのつかない状況になりかねません。
NACS-Jは、今後も、重要な自然環境へ多大な影響を及ぼすと予測される陸上風発計画に対し、計画の初期段階でアセス書を精査し、改善を求め意見していきます。
自然保護と生物多様性保全を目的に、1951年に創立された日本で最も歴史のある自然保護団体のひとつ。会員・サポーター2万4千人。ダム計画が進められていた尾瀬の自然保護を皮切りに、屋久島や小笠原、白神山地などでも活動を続けて世界自然遺産登録への礎を築き、今でも日本全国で壊れそうな自然を守るための様々な活動を続けています。「自然のちからで、明日をひらく。」という活動メッセージを掲げ、人と自然がともに生き、赤ちゃんから高齢者までが美しく豊かな自然に囲まれ、笑顔で生活できる社会を目指して活動しているNGOです。山から海まで、日本全国で自然を調べ、守り、活かす活動を続けています。
http://www.nacsj.or.jp/
近年、全国の会員・サポーターから、貴重な自然を有する森林での大型陸上風力発電事業(以下、陸上風発)計画に関する相談が急増していました。そこで、今回、NACS-Jは全国での傾向を把握するべく、法アセス対象の大型陸上風力発電事業の自然環境面の立地解析を行いました。
- 主な内容
【風発事業の自然環境への影響】
1.半数以上の陸上風発計画で、全国に18%しか残っていない、原生林に近い森林を示す「植生自然度9」のエリアを含んでおり、特に北海道、東北、九州、四国で多い傾向にある(図2,3)。また、約15%の計画で、環境省が保全すべきとして指定している特定植物群落を含んでいた。
2.計画の約1/4がイヌワシの、1/2以上がクマタカの生息地で計画されている。また鳥類の影響を考慮すべき場所として環境省が公開している「風力発電における鳥類のセンシティビティマップ」と比較したところ、約8割の計画が鳥類への影響が大きい場所で計画されていた。
3.85%の陸上風力発電事業計画が保安林内で計画されている。これは、風車建設のために保安林を解除し、伐採・土地改変を行われる可能性を示しており、自然環境保全および防災上で大きな懸念がある状況である。
【“環境アセス”の仕組みとしての問題点】
4.環境アセス書の縦覧終了後の公開は約5.7%程度と極めて低く、事業の実施に伴って講じられた環境保全措置や事後調査の結果を公表した最終段階の報告書でさえ15.8%と低い状況であった。これは、本来環境アセスが持つべきコミュニケーションツールとしての機能を十分に果たしていないことが明らかとなった。
5.風力発電事業がアセス法対象事業となり、さらに環境アセスに配慮書が導入されてから全体計画の約11%の32件が事業廃止となっていることが明らかとなった。廃止のタイミングは、全て環境アセスの初期段階(環境影響配慮書公開後が23件、方法書公開後が9件)での廃止であり、環境影響評価準備書公開後の廃止は無かった。
- 解析結果を受けて
陸上風力発電事業の計画に当たっては、まず、植生や猛禽類など自然環境に配慮した立地選定を行わなければ、たとえ2050年にカーボンニュートラルが達成できたとしても、2050年には日本の自然環境が取り返しのつかない状況になりかねません。
NACS-Jは、今後も、重要な自然環境へ多大な影響を及ぼすと予測される陸上風発計画に対し、計画の初期段階でアセス書を精査し、改善を求め意見していきます。
- 参考
自然保護と生物多様性保全を目的に、1951年に創立された日本で最も歴史のある自然保護団体のひとつ。会員・サポーター2万4千人。ダム計画が進められていた尾瀬の自然保護を皮切りに、屋久島や小笠原、白神山地などでも活動を続けて世界自然遺産登録への礎を築き、今でも日本全国で壊れそうな自然を守るための様々な活動を続けています。「自然のちからで、明日をひらく。」という活動メッセージを掲げ、人と自然がともに生き、赤ちゃんから高齢者までが美しく豊かな自然に囲まれ、笑顔で生活できる社会を目指して活動しているNGOです。山から海まで、日本全国で自然を調べ、守り、活かす活動を続けています。
http://www.nacsj.or.jp/
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