少量多品種の板金加工で、お客様に寄り添う株式会社フクムラが、この春から新体制に。小さな町工場が、1社依存を脱却し多数の取引先を獲得した秘密に迫る!

優れた製品・技術を持つ事業者を広く認定し区内外へPRする「足立ブランド」。認定企業である株式会社フクムラも掲載された「足立ブランド認定企業紹介冊子」が2025年2月にリニューアルされました。

足立ブランド

昭和37年創業の精密板金加工メーカーの『フクムラ』は、今年で創業63年を迎えます。この春女性2人の入社が決まりました。男性より女性の数が多い、新体制でのスタート。板金加工会社の多い足立区において、足立ブランドへの参加の意義、そして商品開発の強みや特徴などを、技術革新と顧客へ寄り添う心で未来へ対峙する3代目社長、福村京介さんにお話を伺いました。

<金属で折り紙をする会社、フクムラです。金属加工に困ったらどんなことでもご相談ください。図面なしでも大丈夫>

金型プレス加工から精密板金加工へ

昭和37年、初代社長 福村正一氏が脱サラして創立した板金加工会社『フクムラ』。時代はまさに高度成長期。自動車や家電、精密機械が飛ぶように売れた時代に、形状が複雑で高い精度が要求される金型を使った部品は不可欠です。製品の形状に合わせた金型を作るプレス板金は、高精度で大量生産に適しています。

2代目の社長、勝市氏が時代の流れと共に、プレス板金だけではなかなか商売が立ち行かないということで、少量生産が対応可能な別の板金加工も始めました。

「私は一度入社したものの退職、別の会社で働いていたのですが、叔父である2代目社長の勝市が亡くなったため、私が3代目として呼び戻されました。私の代になってプレス事業からは撤退し、現在は社内で鉄、アルミ、ステンレスなど精密板金とNC板金で会社を運営しています」と京介社長は語ります。

ちなみに「精密板金」とは板金加工の中でも高い精度が要求される加工方法で、レーザー加工やパンチングなど、様々な加工技術を組み合わせ、複雑な形状の部品を製作できる加工。

一方「NC板金」とは数値制御(NC)によって、板金加工機を制御し、複雑な形状の部品を加工する方法。プログラミングによって図面を作成し、機械に指示することで高精度な加工をする板金加工です。製品の大小に関わらず、電子機器など寸法や形状が重要な部品を作るのに適します。

<パンチングマシーン。NC制御で複数の金型を入れ替えながら打ち抜き加工を行う>

どちらの加工も量産向きの金型板金ではなく、少量多品種に向く金型レスの加工です。

「足立ブランド」への参加と変化

「足立ブランド」への参加は、同じく「足立ブランド」の『安心堂』から背中を押されたのがきっかけだとか。先代社長と『安心堂』の丸山前会長は「あだち異業種交流会未来クラブ」で面識があり、『安心堂』の主力製品のひとつ、曲面や凹凸面などあらゆる形状にできるパッド印刷機「なんでもくんANG-3」の製作に携わったことなどから協力関係にあったそうです。足立ブランド第1号の『安心堂』の丸山前会長に勧められ、第3期生として平成21年に認定されました。

<名刺にもFC足立のマークが入る>

「足立ブランドに感じたメリットは技術やサービスが“行政のお墨付き”と言えることです。私共は、職人合わせ7人の小さな町工場。営業力の乏しいフクムラでは、これが大きな武器になると考えました。また足立ブランドを通して異業種の企業と連携、相互に協力し、情報共有や新しいビジネスに繋げられたら、という期待もありました」と京介社長。

※FC足立(FreeCompany=自由なつながり、自由な仲間)とは、足立ブランド認定された区内産業主たちの業種を越えた集合体。

『フクムラ』はかつて取引先が1社依存、その後増えても4社依存という経営状態が長く続き、弱電のカバーシャーシか、ヒートシンク(放熱板)の製造が7〜8割を占め、客先の業種も似通っていたため、その分野が衰退、停滞に陥ると発注が止まるタイミングが同じという苦杯を喫する経験が度重なり、限界を感じていたそうです。そうした中『安心堂』からの発注や「足立ブランド」への参加は後に大きなターニングポイントのひとつとなったそうです。

3代目社長の挑戦、“図面なしの超難度”注文

京介社長の代になり「1社依存」から脱却し、今では顧客の業態は幅広くなりました。『フクムラ』は特に筐体(きょうたい)と呼ばれる金属製の箱型の板金部品やユニットの制作を得意とし、テレビ局などで用いられる高性能な音響機器のケースや、プロのミュージシャンなどが使う高価なエフェクターケース、ゴルフのマグネット付き飛距測器ホルダーのケースなども手掛けています。

<アンプシャーシ>
<自動員数テープ挿入機>

「“安かろう悪かろうの金物”から脱皮して今ではマニアックなものなど、小ロットですが、高性能で高単価なものにも多く携わっています。現在の取引先は、約90社ほど。従業員の人数からすれば顧客数はかなり多いのではないでしょうか」

<職人合わせて従業員数10人以下の小さな町工場。取引先が1社依存だった状況を脱却し、今では取引先は約90社に!!>

こうした経営方針への転換は、3代目の京介社長になってから。それにはちょっとした家族経営ならではのエピソードがあります。

「先代の叔父はFAXで注文書が送信されるのを待つ営業スタンスだったため、20年前に私が社員として入社した時から営業方針の問題点を進言し、ぶつかることもしばしばでした。昔ながらの職人気質である先代は、もの作りに関しては超一流ですが、営業に関してはからっきし。当時は、パソコンも今ほど普及しておらず、私が営業や発注などをメールで行っていると仕事をしていないと思われてしまうような始末。職人は工作機械の前に立って手を動かせとよく叱られたものでした」

小さい頃から慣れ親しんだ叔父、甥という近しい関係だからこそ、時には強い言葉でぶつかってしまうことも。結局、京介さんは考え方の違いから8年間勤めた『フクムラ』から出されてしまいます。

「退社してからは5年間くらい別の企業で会社員になりました。勤めた会社は空港の荷物預かりのカウンターで測り付きのベルトコンベアなどを手掛ける家業と同じ金属加工の会社でしたので、抵抗はありませんでしたし、むしろもの作りや経営において大変勉強になりました

『フクムラ』にそのまま残っていたらわからなかったような得難い経験をしたと語ります。

<ベンダーで曲げ加工中の京介さん>

現在、『フクムラ』の取り組みとして大手ではできない“図面なしの超難度”注文を受け付けています。ある意味それは自社のアイデンティティである「精密なら当たり前」をモットーに、一般消費者向けや嗜好性の高い製品にも取り組んでいます。

「まず、板金自体を知らない方もいらっしゃいます。金属を切断、曲げ、溶接などして、様々な形状を作るのが板金です。身の回りを見回せば、例えば家の中にもドアの取っ手や照明の傘など、板金は溢れています。うちは薄い金属で折り紙をしている会社です!

金属を形にするお手伝いをする『フクムラ』に

そもそも完成品のイメージだけで注文されるお客様は設計図や図面はなく、寸法や部品についても全くわからないケースがほとんど。

「図面なしやスケッチ、現物支給のお客様は、そもそも形状的に製作が不可能なものや、コスト感が全くわかっていらっしゃらないケースが多く、1からご相談します。とりあえず完成しても、何度も試作を繰り返します」

設計図や図面があれば一度で済む工程数を、あえて手間をかけ試作を繰り返し製品を作ることは『フクムラ』の同業他社との差別化のみならず、板金会社、職人としての矜持にほかなりません。

「できることは顧客のイメージを金属で形にし、より良い製品にブラッシュアップし、リーズナブルに作ることです。試作までこぎつけたものの、希望小売価格が製作コストと同じになってしまい途中で頓挫してしまった案件などもあります。けれども、お客様が満足し『ありがとう!』が直接耳に届くことは職人のモチベーションや、次の課題へと繋がります」

<親孝行の京介社長。2代目社長でもある母、正江さんの協力で会社の苦難を幾度も乗り越えてきました>

金属加工で困っている、形にしたいがどこに相談したらいいかわからないという消費者をなくす。

それが、京介社長の願いだと言います。

今後はひとつの製品に対して母数を増やすことが課題だそうです。

「設計・製作のみならず、デザイナーや資材メーカーなどと協力して、パッケージングのデザイン製作にも関わっていきたいです。技術面においても板金加工だけでは限界があるため、切削、表面処理など多種多様な加工をできる協力工場を見つける必要があります」とも語ります。

設備投資より職人の技に依存した先代の経営を打破するため、国や自治体補助金などを上手く利用し最新機器を導入。常に根底の課題であった、品質保持、職人依存、生産性などの問題も解決してきていると話します。最近では「去年8月、都内でも数台しか導入されていない最新鋭の『大型曲げ加工機(プレスブレーキ、ベンダー)』を導入したことで、10年以上のベテラン職人の“曲げ”の技術が容易に実現できるようになった」のだとか。

<2024年8月に導入した最新のベンディングマシン>

2011年頃『フクムラ』では、金属を加工でデザイン的にもこだわった様々なアイデア商品で「もの作り企業を対象とした新製品コンテスト」をいくつも受賞した時期がありました。

<2011年TASKものづくり大賞、奨励賞受賞。「折り鶴」を模して鉄で製作した花瓶>
<2014年TASKものづくり大賞、奨励賞受賞。曲げるとフックになる「足立の生物たち」>
<2011年TASKものづくり大賞、奨励賞受賞。トイレットペーパーホルダー「幸せのふくちゃん」>

正江さんはその楽しい思い出を回想し「またこうした一般消費者向けの製品も手がけていきたい」と語っています。

またこの春に女性2人の入社が決まり、社内では男性より女性の方が多くなりました。「時代は板金女子かなぁ」と目を細める正江さん。フクムラを支える母の柔らかな笑顔に、女性社員も安心感を覚えるのでしょう。新体制になったフクムラのこれからにも、どうぞご期待ください。

■ 足立ブランド認定企業紹介冊子・送付希望の方へ

足立ブランド認定企業である株式会社フクムラも掲載される「足立ブランド認定企業紹介冊子」を10名様に送付させていただきます。送付ご希望の方は下記の応募フォームをご利用ください。

※ 部数に限りがございますので、ご希望者多数の場合はPDF送付になる旨をご了承ください。

足立ブランド認定企業紹介冊子 / 応募フォーム

https://forms.gle/C6wTHxEBce7vzqAx5


企業情報

株式会社フクムラ

https://fukumura.info/

会社名:株式会社フクムラ

住 所:東京都足立区小台2-33-18

電話番号:03-3919-5849

代表者:福村 京介

「足立ブランド」は、区内企業の優れた製品・技術を認定して、その素晴らしさを全国に広く発信することで、区内産業のより一層の発展と足立区のイメージアップを図ることを目的とした事業です。

『株式会社フクムラ』は、この「足立ブランド」認定企業です。


取材など掲載情報に関するお問い合わせは、「足立ブランド」の運営事務局でもある足立区役所産業経済部産業振興課ものづくり振興係でも受け付けております。


足立区役所産業経済部 産業振興課 ものづくり振興係

電話番号:03-3880-5869

ファクス:03-3880-5605


足立ブランド公式Webサイト

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会社概要

足立ブランド

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業種
官公庁・地方自治体
本社所在地
東京都足立区中央本町一丁目17番1号 足立区産業振興課
電話番号
03-3880-5869
代表者名
吉尾文彦
上場
未上場
資本金
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設立
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