ダビガトラン治療、大出血後の患者転帰がワルファリン治療に比較して良好であることが判明
- ダビガトランの良好な安全性プロファイルをさらに裏付けるデータ
- 2012年度米国血液学会(ASH)年次総会でのプレゼンテーションが「Best of ASH」として注目
2012年12月10日 ドイツ/インゲルハイム
大規模臨床試験RE-LY®i試験の新たな事後解析の結果から、大出血がみられた患者において、ダビガトラン エテキシラート(以下ダビガトランと表記)投与群ではワルファリン投与群と比較して、低い死亡率と短い集中治療室の滞在期間が示されました。ダビガトランについて検討した5つの第3相試験の事後統合解析のデータから、ダビガトラン投与群では、ワルファリン投与群よりも大出血後の予後が良好であることが示されています。これらの新たなデータは、米国ジョージア州アトランタで開催された2012年度米国血液学会(ASH)年次総会にて発表されました1。RE-LY®試験において、大出血の発現率はワルファリン投与群と比較して、ダビガトラン150 mg投与群では同等でしたが、ダビガトラン110 mg投与群では有意に低いことが示されました2,3。
マクマスター大学(カナダ・ハミルトン)血液学・血栓塞栓症部門のサム・シュルマン(Sam Schulman)教授は次のように述べています。「出血は、あらゆる抗凝固療法で発現することが知られている治療に関連した合併症です。私たちの解析結果から、ダビガトラン療法中に大出血を発現した患者の予後は、ワルファリン治療群より良好であるということが示されています。このデータからはさらに、出血を発現した患者さんに行われる標準的な治療は、ダビガトラン投与群にもワルファリン投与群と同様に有効であることが示され、また必要な医療資源はワルファリン投与群以上にはならないことも示されました」。
この新たな事後解析は、ダビガトラン投与およびワルファリン投与に伴う大出血後の臨床上の管理と患者転帰を比較するものであり、同比較はRE-LY®試験のみの解析において、また非弁膜症性心房細動における脳卒中発症抑制と静脈血栓塞栓症(VTE)の急性期治療および二次予防の適応iiに対する5つの第3相試験の統合解析において行われました。これらの試験の試験期間は6~36カ月で、27,419人の患者を登録しました1。ダビガトラン投与群には、ワルファリン投与群に比較して高リスク因子を持つ患者が多く存在しました(高年齢、クレアチニンクリアランス低値、高頻度のアスピリンまたは非ステロイド性消炎・鎮痛剤の併用)1。
i RE-LY試験では、PROBE法(前向き、ランダム化、非盲検、盲検下エンドポイント評価)で、盲検化した経口直接トロンビン阻害剤ダビガトラン エテキシラートの2用量群(110 mg 1日2回投与、150 mg 1日2回投与)と、非盲検のワルファリン群とを比較しました3。
ii日本では静脈血栓塞栓症の急性期治療および二次予防の適応は取得していません。
iii性別、年齢、体重、腎機能、その他の血栓症治療で調整。
RE-LY®試験に関して、死亡に至った大出血の調整解析iii を行ったところ、ワルファリン投与群と比較して、ダビガトラン投与群は有意に低い死亡率を示しました(ダビガトラン 150 mg+110 mg投与群vs.ワルファリン投与群に関しオッズ比0.56、p=0.009)。さらに、RE-LY®試験では、集中治療室(ICU)と冠動脈疾患集中治療室(CCU)の滞在期間が、ワルファリン投与群患者よりもダビガトラン投与群患者で有意に短いという結果が示されました(2.7晩vs.1.6晩、p=0.01)1。
ベーリンガーインゲルハイム医薬開発担当上級副社長Prof.クラウス・デュギは次のように述べています。「これらの解析は医師と患者さんにとって重要なニュースです。大出血が発現した際、ダビガトランの中和剤がなくても、ダビガトランの投与を受けた患者さんにはワルファリン投与を受けた患者さんよりも良好な転帰が期待できる可能性が示唆されています」。
ダビガトランのベネフィット・リスクプロファイルが良好であることは、欧州医薬品庁(EMA)や米国食品医薬品局(FDA)などの規制当局による安全性評価によって支持されています4,5。FDAの最新情報ではミニ・センチネル評価の結果が報告されており、ダビガトランの新たな使用に伴う出血発現率はワルファリンの新たな使用に伴う出血発現率を上回らないことが示されています。具体的には、頭蓋内出血と消化管出血を合わせた発現率(リスク期間100,000日当たり)は、ダビガトランの新規投与患者と比較してワルファリンの新規投与患者で1.8~2.6倍高くなりました5。先般発表されたRELY-ABLE®試験結果では、ダビガトランの治療効果と良好な安全性プロファイルは長期にわたり持続することが示されています6。
ベーリンガーインゲルハイムについて
ベーリンガーインゲルハイムグループは、世界でトップ20の製薬企業の1つです。ドイツのインゲルハイムを本拠とし、世界で145の関連会社と44,000人以上の社員が、事業を展開しています。1885年の設立以来、株式公開をしない企業形態の特色を生かしながら、臨床的価値の高いヒト用医薬品および動物薬の研究開発、製造、販売に注力してきました。
ベーリンガーインゲルハイムにとって、社会的責任を果たすことは、企業文化の最も重要な柱の1つです。事業を展開する世界の国々において、社会問題に取り組み、社員とその家族を思いやり、全社員に平等な機会を提供することが、 ベーリンガーインゲルハイムの基盤です。そして、尊重と誠実を重んじ、環境保護と持続可能な社会の実現に向けて貢献することが、ベーリンガーインゲルハイムの本質であり使命です。
2011年度は132億ユーロ(約1兆4,624億円)の売上を示しました。革新的な医薬品を世に送り出すべく、医療用医薬品事業の売上の23.5%相当額を研究開発に投資しました。
日本ではベーリンガーインゲルハイム ジャパン株式会社が持ち株会社として、その傘下にある完全子会社の日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社(医療用医薬品)、エスエス製薬株式会社(一般用医薬品)、ベーリンガーインゲルハイム ベトメディカ ジャパン株式会社(動物用医薬品)、ベーリンガーインゲルハイム製薬株式会社(医薬品製造)の4つの事業会社を統括しています。
日本ベーリンガーインゲルハイムは、呼吸器、循環器、中枢神経などの疾患領域で革新的な医療用医薬品を提供しています。
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http://www.boehringer-ingelheim.com/
(ベーリンガーインゲルハイム)
http://www.boehringer-ingelheim.co.jp/
(ベーリンガーインゲルハイム ジャパン)
References:
1. Majeed A, et al. Management and Outcomes of Major Bleeding On Dabigatran or Warfarin. Poster 19 from Session 332: Antithrombotic Therapy 11. Presented on 8 December at the American Society of Hematology (ASH) Annual Meeting 2012.
2. Connolly SJ, et al. Dabigatran versus warfarin in patients with atrial fibrillation. N Engl J Med. 2009;361:1139-51.
3. Connolly SJ, et al. Newly identified events in the RE-LY trial. N Engl J Med. 2010;363:1875-6.
4. European Medicines Agency: Opinions on annual re-assessments, renewals of marketing authorisations and accelerated assessment procedures. Adopted at the CHMP meeting of 15-18 October 2012. Viewed October 2012 http://www.ema.europa.eu/docs/en_GB/document_library/Other/2012/10/WC500134406.pdf
5. Food and Drug Administration FDA Drug Safety Communication: Update on the risk for serious bleeding events with the anticoagulant Pradaxa. Viewed November 2012 http://www.fda.gov/Drugs/DrugSafety/ucm326580.htm
6. Connolly SJ, et al. Randomized Comparison of the Effects of Two Doses of Dabigatran Etexilate on Clinical Outcomes Over 4.3 Years: Results of the RELY-ABLE Double-blind Randomized Trial. CS.04. Clinical Science: Special Reports: Valvular Heart Disease, PAD, Atrial Fibrillation: International Perspectives. Presented on 7 November 2012 at the American Heart Association Scientific Sessions 2012