Stripe、バーティカル SaaS に関する 5 つのインサイトを発表

プログラマブルな金融サービスを構築する Stripe は、AI の台頭によりソフトウェアへの期待が変化する中で、急速な戦略転換を迫られているバーティカル SaaS プラットフォームに関する 5 つのインサイトを発表しました。
住宅向けサービスや自動車修理などの多岐にわたる業種から、タトゥーショップや葬儀場といった非常に専門的な業種まで、Stripe 上には 1 万 6,000 以上のプラットフォームが存在しています。その多くが、決済や融資などの金融サービスを追加し、単なるソフトウェアの枠を超えることで事業の拡大を目指しています。各社は、ユーザーの業務オペレーションそのものに深く入り込むことで、他社が容易に代替できない、より強固な顧客基盤の構築に取り組んでいます。今年 4 月に開催された Stripe Sessions 2026 および並行して行われた SaaS Platform Leaders Summit では、数千人規模のバーティカル SaaS リーダーたちが集結し、今後のバーティカル SaaS の差別化戦略について、活発な議論が交わされました。
1. AI の台頭により、純粋なソフトウェアから脱却を狙うプラットフォーマー

AI によってソフトウェアビジネスがコモディティ化するという懸念は現実のものとなっていますが、特定の業界に特化しているバーティカル SaaS プラットフォームには、対象とする業界に深く根ざしているという強みがあります。Toast のプレジデント兼 CFO であるエレナ・ゴメス (Elena Gomez) 氏は、純粋なソフトウェアや AI では簡単に模倣できない方法で、顧客のワークフローに密着したサービスを構築することが重要であるとし、「バーティカル SaaS で勝利を収める企業とは、顧客の世界に深く組み込まれ、顧客の声に耳を傾け続ける企業です」と述べています。
バーティカル SaaS を提供する企業が顧客の日常業務に深く浸透するための最も効果的な方法の一つが、「決済機能の提供」です。AI の進化によってソフトウェア機能の再現が容易になる一方、決済機能を提供することで、取引処理や収益推移の把握、キャッシュフローの管理といった、事業を支える財務業務に必要不可欠なプラットフォームへと進化できます。
ユーザー側も、プラットフォームに決済機能の提供を求める声が急速に高まっています。決済機能の導入率 (中央値) は、2024 年の 27% から 2025 年には 40% へと上昇しました。しかし、導入の課題が完全に解決されたわけではありません。中央値のプラットフォームと、80% 以上の導入率を達成している Stripe のプラットフォームとの間には、依然として大きなギャップがあります。
この格差を埋めているプラットフォームは、決済機能の導入を「全社の最優先事項」として掲げています。GlossGenius の決済担当バイスプレジデントであるキャサリン・ビリー (Catherine Beley) 氏は次のように述べています。
「まず『なぜやるのか』から始めることが極めて重要です。決済が自社にとって最大の収益源であることを経営陣に示し、それを決済総額だけでなく、会社全体の年間経常収益 (ARR) といった具体的な目標に落とし込むのです。」
高い導入率を実現しているプラットフォームは、製品開発や市場進出戦略、カスタマーサクセスに至るまで、この戦略を一貫して強化しています。商業用トラックの修理工場向けプラットフォームである Fullbay の決済担当バイスプレジデント、フィル・アクリー (Phil Acree) 氏は、営業のインセンティブ設計に決済の項目を組み込むことを以下のように提案しています。
「当社のソフトウェア担当営業は、デモの際に決済機能について触れるようインセンティブが設定されています。これは研修担当やカスタマーサクセスマネージャーも同様です。チームの誰もが顧客とのあらゆる接点で決済機能の導入を促しています。」
Tidemark の推計によると、成功を収めているプラットフォームにおいて、組み込み型決済を導入した顧客 1 社あたり、プラットフォームには年間経常収益に平均 4,200 ドル (65 万 1,000 円) の増益がもたらされています。
さらに、決済機能の導入は顧客維持率にも影響を与えます。2026 年の Stripe のデータによると、組み込み型金融製品を提供するプラットフォームは、年間解約率が 11% 低く、複数製品戦略を採る企業は、ソフトウェアのみを提供する同業他社に比べて収益成長率が 49% 速いことが分かっています。
Nextech の金融サービスシニアバイスプレジデント、ベン・ブライドー (Ben Brideaux) 氏は次のように述べています。
「決済収益だけで切り離して考えてしまいがちですが、決済リーダーにとっての真の機会は、自社の他の収益に与える『二次的効果』にあります。顧客維持率や売上継続率を向上させることができれば、こうした複利的な効果が目に見えて現れ始めるのです。」
2. 業務への深い組み込みで築かれる強固な競争優位性
決済機能の大規模な導入が進むと、さらなる関連製品の展開、そして顧客の定着率向上への道が開かれます。コマースプラットフォームの Shopify は現在、決済や資金調達、バンキング、チャージカードなどの組み込み型金融製品を提供しています。また、Toast は飲食店の POS システムとして始まり、その後給与計算や請求書支払い、資金調達へと機能を拡張してきました。
ヘアサロン予約アプリ theCut は、事業資金調達ソリューション Stripe Capital の導入により、自社のみならず、プラットフォームを利用する数千人もの理容師たちにとっても新たな機会をもたらし、同社が融資の案内を送信してからわずか 24 時間以内に、167 人の理容師が総額 78 万 8,000 ドル (1 億 2214 万円) の融資を受け入れる結果となりました。theCut の CEO であるオビ・オミレ (Obi Omile) 氏は次のように述べています。
「需要があることは分かっていましたが、これほど早く受け入れられるとは本当に驚きでした。メールを受け取ってからわずか 3 〜 4 分で提案を承認する理容師もいました。また、Capital の資金は、新しい設備購入や閑散期における資金繰りの安定、店舗の広告宣伝等に役立っています。理容師の皆さんからは一貫して、Capitalによって『ビジネスが成長した』『経営が安定した』『規模を拡大できた』というお声をいただいています。」
競争優位性は、必ずしも金融サービスの提供に限りません。例えば Moxie は、医療美容サロンが営業ライセンスを失うリスクを回避できるよう、コンプライアンスツールをプラットフォームに組み込んでいます。また、Slice は、加盟しているピザ店のためにピザ箱の卸売価格の交渉を代行しています。こうしたサービスは、事業への深い理解が根底にあるからこそ実現できるものであり、AI を強みとする新しい競合企業が、参入初日から簡単に提供できるような性質のサービスではありません。
3. 独自の AI 製品の提供で成功を収めるバーティカル SaaS が急増
ソフトウェアの枠を超えたサービス展開が強固な競合優位性を築く一方で、プラットフォーム企業はソフトウェア層での進化も止めていません。Stripe が実施した調査では、SaaS プラットフォーム企業の 87% が「AI は脅威ではなく、むしろチャンスである」と回答しており、各社は実験段階から収益化の段階へと急速に移行しています。
Bessemer の パートナーであるバイロン・ディーター (Byron Deeter) 氏は、非 AI ネイティブのプラットフォームが、AI エージェント ツールを追加することで成長を加速させている例として、Canva と Intercom を挙げています。Canva は指示文を入力するだけで、画像や動画、テキスト、コードなどを自動生成できる会話型 AI アシスタント Canva AI を、Intercom は AI カスタマーサービスエージェント Fin を展開しています。ディーター氏は次のように述べています。
「私に言わせれば、AI に対する不安や恐れよりも、『今の私たちなら何ができるか』というマインドセットを持つことの方がはるかに重要です。」
トップクラスのバーティカル SaaS プラットフォームも、この変化への適応を加速しています。例えば Toast IQ は、地域の食のトレンドを予測し、レストランのメニュー開発やマーケティングの精度向上を支援します。また Quipli は、新しい建設許可が申請された際に、機器レンタル業者向けに見込み顧客情報を自動生成します。さらに法律家向けの Clio の AI アシスタントは、文書の起草や案件の要約、クライアントに関するインサイトの抽出などで弁護士を支援しています。
Tidemark の創業者であるデイブ・ユアン (Dave Yuan) 氏は、これをシンプルに「顧客の需要に応えること」であると定義し、次のように述べています。
「顧客は、皆さんからエージェント型のソリューションを求めています。自分の仕事をサポートしてくれたり、やりたくない単調な定型業務を自動化してくれたりする AI エージェントを求めているのです。」
4. 試験段階の AI 価格設定
AI 機能の価格設定や収益化の手法について、明確な答えを出すのは容易ではありません。AI 機能を備えた SaaS プラットフォーム企業の 86% が、すでにその機能を有料化していますが、一方で 44% の企業が、最適なモデルを模索する中で「今後12カ月間に複数回の価格改定」を行う見込みだと回答しています。
一部の企業は AI 機能を既存の SaaS 料金にパッケージ化していますが、従量課金制や成果報酬型の料金体系を通じて、独立した製品として個別に切り離して提供している企業もあります。これに対し、デイブ・ユアン (Dave Yuan) 氏は正式決定する前にテストを行うことを勧めています。ユアン氏は次のように述べています。
「AI 機能をパッケージ化して提供したいという誘惑に駆られがちですし、アップグレードや製品利用を促す目的であればそれも理にかなっています。しかし、付加価値を提供できているかどうかを判断する最大の判断材料は、顧客がそれに対して対価を支払うかどうかです。プラットフォーム企業は、AI 機能をプレミアムプランに組み込むか、個別のオプションとして課金することを検討すべきでしょう。」
5. エージェンティックコマースを牽引する役割が期待されているプラットフォーム

エージェンティック コマースの登場により、取引のあり方が変わりつつあります。購買プロセスの発見や意思決定、決済の全般において、AI エージェントがより能動的な役割を果たすようになっているためです。AI エージェントが読み取り可能な商品カタログから、ヘッドレスチェックアウト API* に至るまで、現在そのインフラを構築しているプラットフォーム企業は、将来的に 5 兆ドル (775 兆円) 規模とも言われるエージェンティック ビジネスの機会を見据えて設計を進めています。
*分離されたユーザー画面と決済処理システムを API で連携・制御
小売プラットフォームにとって、この変化はより本質的な課題を突きつけています。commercetools の共同創業者兼マネージングディレクターであるダーク・ホーリグ (Dirk Hoerig) 氏は次のように述べています。
「小売データの質には大きな課題があります。これまでのデータはすべて人間によるショッピングや SEO に向けて最適化されているからです。今、顧客の検索行動は変わりつつあります。『グレーのジーンズ』と検索する代わりに、『イベント登壇用にお勧めのコーディネート』と入力するようになっているのです。エージェント型の発見においては、こうした文脈の重要性がはるかに高まっています。」
WooCommerce や Commerce、commercetools は、人気の高い大規模言語モデル (LLM) 上で自社の加盟店の商品カタログが適切に検索され、購入できるようにするための取り組みを進めています。これには、商品データの構造そのものを再考する必要があります。
エージェンティック コマースがどのような姿になるかは、業界によって異なります。例えば、パドルテニスの予約アプリ Playtomic であれば、AI エージェントがコートの予約手続きを最初から最後まで完結させることが考えられます。また Metropolis は、駐車時の取引を完全に自動化することを目指しています。AI がナンバープレートを読み取り、登録されたクレジットカードに請求を行い、人間が一切操作することなくゲートを開けるという仕組みです。一方で、法律や医療の分野では、人間同士の関係性が引き続き中心となり、AI エージェントはどちらかといえばサポート役に回り、スケジュール管理や書類作成、請求、アフターフォローなどの処理に活用されています。
業界を跨いで共通しているのは、加盟店側がプラットフォームに対してエージェンティックコマースがもたらすあらゆる変化に対応できていることを期待している点です。Wix の決済共同責任者であるヴォヴァ・ツクール (Vova Tsukur) 氏は次のように述べています。
「どの AI エージェントのインターフェースが覇権を握るかは誰にも分かりません。だからこそ、私たちは特定の 1 つのチャネルや手段だけに賭けるようなことはしません。そうした複雑な変化をプラットフォーム側が吸収し、加盟店を煩わさせないようにすることこそが、私たちの仕事なのです。」
次世代の構築に向けて
Stripe は、Shopify や Mindbody、Substack など、世界で最も成功しているバーティカル SaaS プラットフォームのインフラを支えています。
今回の Stripe Sessions において、バーティカル SaaS を支援する Stripe の新機能を数十項目発表しました。これには、さらなる収益の最大化を支援する Platform growth studio や、わずか数行のコードで Stripe Treasury や Stripe Issuing を組み込める機能などが含まれます。また、バーティカル SaaS プラットフォーム向けには、顧客の迅速なオンボーディング、カードによる経費支払い、不審請求申し立ての管理、柔軟な融資枠へのアクセス、そして AI エージェント対応を可能にするための多様なツールが追加されています。
Stripe Sessions での発表内容の全容は、こちらからご確認いただけます。また、基調講演やブレイクアウトセッションのオンデマンド配信もぜひご覧ください。さらに、東京で開催される Stripe Tour にご登録いただければ、日本における Stripe の最新動向に触れ、日本のデジタル経済を動かすビジネスリーダーたちと直接ネットワーキングを行うことも可能です。
#####
Stripe について
Stripe は、プログラマブルな金融サービスを構築する企業です。世界の何百万もの企業が Stripe を利用して、オンラインおよび対面での決済や組込型金融、収益モデルのカスタマイズを推進し、より収益性の高いビジネスを築いています。サンフランシスコとダブリンに本社を置く Stripe は、世界の GDP の 1.6% に相当する年間 1.9 兆ドル (約 300 兆円) 以上の決済を処理しています。AI とステーブルコインにフォーカスを置いた事業拡大と研究開発への投資を通じて、Stripe はグローバル経済における最先端技術の普及に貢献しています。
詳しくは https://stripe.com/jp をご覧ください。
このプレスリリースには、メディア関係者向けの情報があります
メディアユーザー登録を行うと、企業担当者の連絡先や、イベント・記者会見の情報など様々な特記情報を閲覧できます。※内容はプレスリリースにより異なります。
すべての画像
