インターブランド「Best Global Brands 2021」レポート
「ブランド価値」によるグローバル・ブランドランキングTOP100を発表
・Appleが9年連続で第1位、Amazonが第2位、Microsoftが第3位で昨年同様
・Sephoraが初めてBest Global Brands入り
・Teslaがブランド価値を184%アップさせ、成長率1位
・100ブランドの合計金額価値は前年比15%成長、本ランキング史上最大の成長率
・Toyotaは昨年に続き第7位、18年連続で自動車ブランドの最高位
世界最大のブランディング専門会社インターブランドは、グローバルのブランド価値評価ランキング「Best Global Brands 2021」(以下BGB 2021)を発表しました。本ランキングは、グローバルに事業展開を行うブランドを対象に、そのブランドが持つ価値を金額に換算してランキング化するもので、レポートの発表は2000年から今年で22回目となります。時代の不安定性・不確実性がコロナ禍で加速され、本ランキングにも大きな影響を与えています。
https://prtimes.jp/a/?f=d92-20211021-860907e7715212b7a6aef9b509b9b647.pdf
ランキングでは、Appleが9年連続で第1位 (ブランド価値 4,083億ドル、前年比 +26%)、Amazonが第2位(2,492億ドル、同+24%)、Microsoftが第3位(2,102億ドル、同 +27%)、Googleが第4位(1,968億ドル、同+19%)、Samsungが第5位(746億ドル、同 +20%)となり、Top5は全てほぼ20%台の高い成長率とともに昨年と同様の順位に輝きました。
Sephora(100位、46億ドル)が初めてランクインしました。これにより、LVMHグループは、Louis Vuitton(13位)、Dior (77位)、Tiffany & Co.(92位)、Hennessy(95位)と合わせBest Global Brandsに5つのブランドを有する最大のグループとなりました。
Top5 Growing Brands(最も成長率の高い5ブランド)は、Tesla(前年比+184%)、Salesforce.com(同+37%)、Adobe(同+36%)、PayPal(同+36%)、Microsoft(同+27%)となりました。2020年に40位に再ランクインを果たし、今回14位に躍進したTeslaの対前年成長率は、過去22年間のBest Global Brandsにおいても前例のないものとなりました。また、最も成長している業種は、昨年に引き続きテクノロジー(+23%)となっています。
100ブランドの合計金額価値は2兆6,675億ドルとなり、2020年に比べ15%成長しています。これはBGBの過去22年間の中で最大の成長率となっています。BGBの個別ブランドの平均成長率は、BGB 2020の+1.3%に対し、BGB 2021は+10%となっています。また、Top3ブランド(Apple、Amazon、Microsoft)だけで、100ブランドの合計金額価値の33%を占めています。
Key Leanings(考察)
BGB2021の分析の結果、2021年に成長したブランドの多くは、「ブランド強度分析」指標のうち、Direction(志向力)、Agility(俊敏力)、Participation(共創性)という3つの要素が卓越していました。昨年のEmpaty(共感力)、 Agility(俊敏力)、Affinity(愛着度)に比べ、新時代に一歩先駆けて動きだしているブランドが成長していることが窺えます。
- Direction(志向力):ブランドの目指す姿と、それをどのように実現していくかが明確であり、それを実行に導く文化と価値観が定義されている
- Agility(俊敏力): 組織としてビジネス機会や課題に対応し、期待を超え続けるため迅速に動くことができる
- Participation(共創性): 顧客やパートナーを巻き込み、対話を生み、参加や協働を促すことができている
また、アジア地域において、成長を続けるリーディングブランドを俯瞰すると、人々や社会にとって、変化が続くこれからの時代を可能性に満ちたものとする(The Decade of Possibility)ために、以下のような重要なポイントも浮かび上がってきています。
1)パーパスの重要性
- ESGやSDGsは、あくまでも市場参入の前提条件であり、これからの競争を勝ち抜いて行くためには、ブランドはこうした社会的責任を超えた存在になる必要がある
- パーパスは、企業に存在意義を与えるだけでなく、機能を超えて情熱を語り始めた時、そこに人々や社会との関係性が生まれ、意味のあるものとなる
- それはまさしくブランディングの本質でもあり、アジアブランド、特に日本のブランドを考えると、「志」という言葉があるように、パーパスに基づいて直感的にブランド構築ができるということは、成功への大きなアドバンテージになり得る
- コロナ禍に端を発した働き方、物理的な会社の位置付け変化は、社員がブランドに心から関わりたいと思える手段を提供することを求めている
- 会社に留まるための理由、すなわち距離や孤立感、不安感を克服する感情的な絆が、一層必要な時代となった
- またブランドは、社員の自己変革を支援する存在として、そのパーパスには、社員が「ありたい世界に向けて変化を起こす」ための能力や、これからの新しいあり方への旅を共有することが表現されていなければならない
- ブランドは、オフラインだけでなく、オンライン上に広がるメタバースの両方で的確な存在感を構築することにより、国境を越え、全方位的なブランド体験を実現することが可能となる。このことは、特にZ世代をはじめとする若い世代に効果的にアクセスする上で、ブランドにとって非常に重要である
成長ブランドに関する分析
Tesla:14位、363億ドル(前年比+184%)
Teslaは、「世界の持続可能なエネルギーへの移行を加速する 」という非常に明確なミッションを掲げています。世界で唯一、発電から蓄電、輸送まで一貫した持続可能なエネルギー企業になろうとしています。生産・販売体制の整備を進め、2020年の世界新車販売(納車)台数はコロナ禍の中でも前年比36%増となっています。2020年Teslaの時価総額はToyotaを初めて上回り、自動車産業において世界首位となりました。 Teslaの独特な点は、熱烈な固定ファンを保持している点です。また、米国の自動車メーカーは規制によってゼロエミッションの車を一定の割合で販売することが義務付けられていますが、Teslaは、他自動車メーカーに規制クレジットを販売する特徴的な事業を展開しています。
Salesforce.com:38位、148億ドル(+37%)
Salesforce.comは、CRM(顧客管理システム)ツール、オンライン・カスタマー・サービス、E メール・マーケティング、レポート、キャンペーン・パフォーマンス・トラッキングなど、常に革新的で、お客様が簡単に使えるサービスを提供することで、CRMにおける世界的なリーダーシップを確立し、第4位のソフトウェア企業となりました。その顧客には、Google、Coca-Cola、Philips、American Express、Harvard Business School、Columbia Business Schoolなどのさまざまな規模やプロフィールの企業が含まれており、その信頼性の高さが窺えます。近年、急激な成長を遂げており、収益は、2017年度の84億ドルから2019年度には132億ドルに、2022年度には224億ドルを見込んでいます。また、買収戦略も積極的で、新しいサービス提供に加え、既存サービスの強化に繋がる企業を買収するなど、競合他社を凌駕しています。
Adobe:21位、248億ドル(+36%)
Adobeは、当初はソフトウェア開発を中心としたブランドでしたが、現在はデジタルマーケティングやメディアソリューションのリーダーとして、クリエイティビティやデジタルエクスペリエンスを重視したブランドになっています。Adobeはイノベーションを前提に、常にトレンドと対話し、それを製品に取り入れ、現在のモバイルへの移行など、消費者の要求やニーズに対応しています。Adobeは、創造性の発揮、ドキュメント生産性の向上、デジタルビジネスの強化という3つの大きな成長分野に取り組んでいます。特に現在は、「デジタル体験で世界を変える」という使命を果たすために、人工知能や機械学習に力を入れています。またAdobeの魅力の一つは、従業員と消費者の両方に対して「人を中心とした」経営を行なっていることです。このことは多くのアワードの受賞によっても証明されています。
PayPal:42位、143億ドル(+36%)
2020年は、コロナ禍によりオンラインショッピングでのデジタル決済が増加し、PayPalの歴史の中で最も好調な年となりました。純新規アクティブアカウント、取扱高、売上、営業利益、フリーキャッシュフローで記録的な成長を達成しました。PayPalのミッションは、すべての人に金融サービスを提供し、生活の向上と決済を変革することです。 従業員(2021年Forbes誌アメリカの多様性に優れた雇用主 第13位)、イノベーション(暗号化やタッチレス)、CSR活動(ワクチン接種のための無料送迎、中小企業への投資、ゼロエミッション、黒人系企業の支援、Equality Actの成立を支援)の視点から、ミッションの実現を図っています。
Microsoft:3位、2,102億ドル(+27%)
Microsoftは、コロナ禍による世界的な在宅勤務の増加でAzureなどのクラウドサービスや、ビジネスSNSのLinkedInが驚異的な成長を遂げた1年となりました。Teamsのデイリーアクティブユーザー数は1億4,500万人超えでコロナ禍前の4.5倍となり、ブランドへの繋がりや親近感が高まっています。最近ではWall Street Jornalで、その価値がS&P500の80%を構成する5社のうちの1社として紹介されました。また、サティア・ナデラ氏のリーダーシップは従業員からA+、経営陣のリーダーシップはAと評価され、アクセシビリティやデジタル・ディフェンスといったユニークで信頼性の高いCSR活動を通じて、多くの人から共感を得ています。
日本ブランドに関する分析
Toyota:7位、541億ドル(前年比+5%)
Toyotaは、「モビリティカンパニー」への変革を進めるために、2020年新しい経営理念となる「トヨタフィロソフィー」を定義しました。その中で、ミッションを「幸せを量産する(幸せの量産)」とし、社員の行動指針である「トヨタWay2020」を策定しました。CES2020で発表した、人々の生活を支えるあらゆるモノやサービスとつながるコネクテッドシティ「Woven City」など、Connected(コネクテッド)、Autonomous(自動化)、Shared(シェアリング)、Electric(電動化)の領域から、未来のモビリティ社会を実現し「幸せの量産」を目指しています。
Honda:25位、213億ドル(-2%)
Hondaは、「意志をもって動き出そうとしている世界中すべての人」を支えるパワーとなる会社を目指しています。「環境」と「安全」に注力し、モビリティ、パワーユニット、エネルギー、ロボティクスの領域で進化をリードしています。2020年日本と欧州では小型電気自動車「Honda e」の販売を開始、2021年中国向けに「Honda SUV e : prototype」を世界初公開し、2022年にF1から撤退することを決定しました。これらは、これまでHondaの大きな強みであった内燃機関を中心としたパワートレインから、社会の持続可能性を考慮した新しいパワートレインへの大きな転換を意味しています。
Sony:41位、144億ドル(+20%)
Sonyは、2021年60年以上ぶりに社名を「ソニーグループ株式会社」に変更しました。「クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす」ことをPurpose(存在意義)として掲げ、4つのValues(価値観)を定め、「人に近く」を経営の方向性としました。「テクノロジーに裏打ちされたクリエイティブエンタテインメントカンパニー」として、ゲーム、音楽、映画が業績を牽引しています。2020年CES 2020において、モビリティにおける安心・安全から、快適さやエンタテインメントなども追求したEVコンセプトカー「VISION-S」を発表するなど、新しい社会への貢献に取り組んでいます。
Nissan:59位、111億ドル(+5%)
Nissanは、「日産らしさの回復」を戦略目標のひとつに掲げています。2020年は、新たなパーパス「人々の生活を豊かに。イノベーションをドライブし続ける」、新たなロゴ、従業員のための新たな指針「日産ウェイ」を掲げ、ブランドの再構築に着手しています。日産USAでは、コロナ禍の中、完全オンライン販売プログラム「Nissan@Home」を展開。お客様のシームレスなデジタル体験を加速するなど、お客様にユニークなブランド体験を提供しています。
Nintendo:70位、92億ドル(+26%)
Nintendoは、「娯楽を通じて人々を笑顔にする会社」として、「誰もが直感的に楽しめる任天堂独自の遊びを提供し続けること」を目指しています。Nintendoのキャラクターや商品「Nintendo IP」とお客様とのつながりを深めるために、スマートデバイスをはじめ、映像コンテンツやテーマパーク、キャラクターグッズなど、「Nintendo IP」とのタッチポイントを拡大し、その世界観に触れる体験を数多く提供しています。また、「Nintendo Account」を通じて、お客様一人ひとりと長期的な関係を築くことに取り組んでいます。
Canon:79位、69億ドル(-14%)
Canonは、2020年コロナ禍により、カメラやオフィス向け複合機とレーザープリンターの需要が低減し、業績に打撃を受けました。その中で、2021年4月、2021-2025 長期経営構想及び2021-2023 中期経営計画を策定し、事業ポートフォリオの転換を推進しています。祖業のカメラの技術を活用し、新規事業への投資やM&Aを加速させ、監視カメラ、医療機器、有機ELパネル製造装置、商業・産業印刷の4つのビジネスを拡大・強化しています。企業理念である「共生」を元に、今後のCanonブランドの展開が期待されます。
Panasonic:88位、58億ドル(+0%)
Panasonicは、中期経営計画で、B2B事業をソリューション型ビジネスモデルとして強化することを宣言しました。B2C、B2Bの両面からの取り組みを積み重ねることで、「くらしアップデート」を実現できる企業への変革を目指しています。B2C事業では、現在の市場ニーズにマッチした感動商品として、コロナ禍の中、空気中の細菌やウイルスを抑制する「ジアイーノ」や「ナノイーX」を中国で展開。B2B事業では、ToyotaやTeslaとの自動車用電池の共同開発や、ファクトリーオートメーションなど、社会的に期待される技術を生み出しています。また、ソリューションプロバイダーとしての役割を強化するために、Blue Yonderを買収しました。
インターブランドについて
インターブランドは、1974年ロンドンでの設立以来、40年以上にわたり、常に世界をリードするブランディング専門会社として、戦略、クリエイティブ、テクノロジーの組み合わせにより、クライアントのブランドとビジネス双方の成長を促進する支援を行っています。
社会環境の不確実性が増す一方で、選択肢はかつてないほど豊富となりイノベーションのスピードが加速を続ける時代の中で、顧客の期待はビジネスよりも速く動き、価値観も変化し多様化しています。変化を続ける人々のインサイトの奥に潜む真理を探求し、その想いや期待するところをいち早く捉え、期待を超える体験を提供することを決断し、実践すること。インターブランドではこうした決断と実践のアクション(Iconic Moves™️)が必要だと考えています。
インターブランドではISO(国際標準化機構)により世界で最初にブランドの金銭的価値測定における世界標準として認められた「Brand Valuation™(ブランド価値評価)」をはじめとする先端的な分析手法を用いる戦略チームと、数多くの受賞歴と高い創造性を持つクリエイティブチームが一つのチームとなり、分析から戦略構築、クリエイティブ開発、社内外エンゲージメント、そしてブランドを経営指標に取り入れ組織革新を実現するサポートまで、全ての流れを自社のリソースで完結しプロジェクトを推進します。
インターブランドジャパンについて
インターブランドジャパンは、ロンドン、ニューヨークに次ぐ、インターブランド第3の拠点として、 1983年に東京で設立されました。「カスタマー・エージェンシー」として、オンラインコミュニティ運営、顧客との共創ワークショップなどを通じて経営に顧客視点を組み込む支援をグローバルで展開しているグループ会社 C Space(本社:ボストンおよびロンドン、国内拠点:東京都渋谷区)とともに、日系企業、外資系企業、政府・官公庁など様々な組織・団体に対し、トータルなブランディングサービスを提供しています。インターブランドジャパンについての詳しい情報はhttps://www.interbrandjapan.comをご覧ください。
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