大幸薬品、低濃度二酸化塩素ガスの芽胞形成菌への殺菌を実現
芽胞子形成菌汚染の衛生対策への可能性に期待
大幸薬品株式会社(本社:大阪市西区、代表取締役社長:柴田高、以下、大幸薬品)は、湘南医療大学と協力して、低濃度二酸化塩素ガスの芽胞形成菌に対する滅菌効果を研究し、その結果を論文「Novel sterilization method of Bacillus atrophaeus and Geobacillus stearothermophilus spores by low concentration chlorine dioxide gas」として発表いたしました。同論文は、日本防菌防黴学会が発行するジャーナル「Journal of Microorganism Control」に掲載されています。
本研究は、米国職業安全衛生局(OSHA)が二酸化塩素ガスの職業性暴露の基準値濃度として定めている0.1ppmvよりも低い濃度である0.05ppmvの低濃度二酸化塩素ガスを用いて、芽胞状態の2種の芽胞形成菌(バチルス・アトロファエウス及びゲオバチルス・ステアロサーモフィルス)の殺菌を初めて実現いたしました。
本研究の結果は、製薬工場や食品工場などの高温多湿でありながら、高い清浄度を要求される環境における衛生対策への寄与が期待されます。
■研究の概要と背景
芽胞形成菌は、製薬工場や食品工場などの高い清浄度が求められる施設において検出され、乾燥や熱、化学薬品による消毒に耐性を持つ芽胞を形成するため、対策の難しい菌です。
従来、芽胞形成菌対策の手段としては、ホルムアルデヒドによる燻蒸が行われてきました。しかし、ホルムアルデヒドには、発がん、粘膜への炎症、皮膚への刺激などのリスクがあるため、海外では徐々に使用を禁止する国が増えてきています。また、国内でも代替法への切り替えが進んでいます。代替法として、過酸化水素、過酢酸や二酸化塩素等による処理が採用されていますが、いずれも高濃度・無人環境下での処理になります。
そこで本実験では、ホルムアルデヒドの代替でかつ有人環境でも使用可能な0.05ppmvの低濃度二酸化塩素ガスを用いて、芽胞形成菌に対する殺菌可能性の可否を検討しました。
(実験概要)
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■研究の内容と成果
実験は、2種の芽胞形成菌(バチルス・アトロファエウス及びゲオバチルス・ステアロサーモフィルス)の芽胞と培地を含む「バイオロジカルインジケータ」という実験器具を二酸化塩素に暴露させることで実施しました。温度37±1℃、 湿度86±2%RH、二酸化塩素濃度0.05ppmvに調節した環境にバイオロジカルインジケータを設置したところ、バチルス・アトロファエウスでは14⽇で、ゲオバチルス・ステアロサーモフィルスでは28⽇で元の菌数から100万分の1以下に殺菌されることが確認できました。
■今後の展開と展望
今回の実験では、米国で労働環境での基準値として定められた0.1ppmvよりもさらに低い濃度である0.05ppmvの低濃度二酸化塩素ガスを用いました。このような低濃度でも、芽胞形成菌の殺菌効果が確認されたことにより、低濃度二酸化塩素ガスは、温度、湿度を適切な条件に設定し用いることにで、高い清浄度が要求される施設における芽胞形成菌制御に対しても有⽤であると考えられます。
【湘南医療大学 薬学部 助教 曾川甲子郎先生コメント】
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低濃度の二酸化塩素ガスによる芽胞形成菌に対する殺菌効果について、興味深い結果が得られたと考えております。二酸化塩素は優れた酸化力と低濃度でも有効性を発揮するため、今後は消毒剤など幅広い分野で活用されていくことを期待します。
■用語解説
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二酸化塩素:常温常圧では黄色いガスとして存在し、国内ではプールの消毒や食品添加物としての使用等が認められている化合物。日本国内では環境中の濃度の規制は設けられていないが、海外では米国にて米国労働安全衛生局(U.S. OSHA)が、労働安全衛生上の濃度基準※を0.1ppmvと定められている。
※TLV-TWA(暴露限度-時間加重平均:Threshold Limit Values - time weighted average concentration). 1日8時間、1週40時間の正規の労働時間中の時間加重平均濃度
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芽胞形成菌:生育条件が適さない時にその環境に対応するために「芽胞」を形成する細菌。代表的な菌としてセレウス菌(バチルス属)やボツリヌス菌やウエルシュ菌(いずれもクロストリジウム属)などが挙げられる。芽胞の状態では、乾燥や高温にも耐えられるため通常の手法での殺菌は困難だが、生育環境が良くなると再び繁殖を始めるため、加熱調理された食品での食中毒を引き起こす原因となることが知られている。
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バイオロジカルインジケーター:菌と培地が一緒に封入された実験器具。設置した環境が生育に適していると内部の菌が成長するが、その成長を目視や顕微鏡等を用いた観察により確認することができる。設置した場所が菌の生育に適した環境であるかの確認や、殺菌処理を行う際に処理対象と一緒に設置、処理を行うことにより、殺菌処理が確実に行われたかを確認する目的等に用いられる。
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