孔雀の羽の発色を構造・素材ともに再現!
~構造色を基盤とする次世代インク開発に期待~
国立大学法人 千葉大学(学長:徳久剛史)大学院工学研究科の桑折道済准教授と河村彩香 氏(修士課程)らの研究グループは,森本元博士(公益財団法人 山階鳥類研究所)との共同研究で,孔雀の羽の発色機構のもとになる微細構造とそれらを構築しているメラニン(注1)を,構造・素材ともに模倣し,構造色(注2)を基盤とするフォトニック材料を作製しました。
本研究ではメラニンの模倣体として,ポリドーパミン(注3)を含む新たなコア-シェル型粒子(注4)を作製し利用することで,単一材料で視認性の高い構造発色を実現しました。原料となるコア粒子の粒子径とシェル層の厚みを任意に制御することで,フルカラー化が可能であることを明らかにしました。また,見る角度により色が可変な「虹色構造色」と,色が変化しない「単色構造色」を容易に作り分けることが可能となりました。構造色は色褪せせず,従来のインクにはない独特の光沢を有することから,本成果は,構造色を用いる次世代インク開発の基盤となる重要な研究成果です。
本成果は,2016 年9月23日(英国時間)にNature 系英国科学誌「Scientific Reports」に掲載されました。本研究は,文部科学省 科学研究費補助金 新学術領域「生物規範工学」ならびに,千葉大学ベンチャー・ビジネス・ラボラトリーからの補助を受けて行われました。
当研究グループではこれまでに,メラニンの前駆体であるドーパの模倣物質「ドーパミン」を重合して得られる黒色の高分子「ポリドーパミン」を,大きさが均一な黒色コロイド粒子として得ることに成功しました。この粒子はメラニンとほぼ同じ組成の材料で,ポリドーパミン粒子のみを用いて構造色の発現が可能であることを初めて見出しました[1]。しかし,構成成分すべてをポリドーパミンで作製したコロイド粒子は黒色度が高すぎ,インクとして利用する際に重要な固体状態での発色が暗くなってしまう大きな課題がありました。この課題の解決,ならびにインクとしての実用化にむけて,本研究では,「1 種類」でかつ「黒色度が制御可能」なコロイド粒子を用いる視認性の高い構造色材料の開発を目標としました。
参考論文: [1] M. Kohri et al., J. Mater. Chem. C, 3, 720-724 (2015).
(注2)構造色: 光の波長あるいはそれ以下の微細構造に光があたり反射して見られる色で,身近な構造色にはコンパクトディスクやシャボン玉などが挙げられる。構造が維持される限り退色や変色が起こらず,次世代インク材料としての研究開発が進んでいる。
(注3)ポリドーパミン: アミノ酸誘導体であるドーパミンの自己酸化重合により容易に得られる黒色の高分子化合物。ムール貝の接着タンパク質を模倣して作製された高分子で,通常は薄膜状で用いられることが多い。
(注4)コア-シェル型粒子: 内部のコア部位と,外部のシェル部位からなる複合粒子で,コア部とシェル部の構造を化学的に調製することで,バラエティに富んだ機能材料を設計・合成することができる。
著者名: 河村彩香*1,桑折道済*1,森本元*2,南日優里*1,谷口竜王*1,岸川圭希*1
*1 千葉大学大学院工学研究科
*2 山階鳥類研究所
雑誌名: Scientific Reports, 6, 33984 (2016).
千葉大学 大学院工学研究科 共生応用化学専攻
准教授 桑折 道済(こおり みちなり)
TEL:043-290-3393
E-mail:kohri@faculty.chiba-u.jp
【研究内容以外について】
千葉大学 企画総務部 渉外企画課 広報室
TEL:043-290-2232 FAX:043-284-2550
E-mail:bag2018@office.chiba-u.jp
TEL:04-7182-1101
E-mail:hiraoka@yamashina.or.jp
千葉大学大学院工学研究科 共生応用化学専攻 http://chem.tf.chiba-u.jp/
山階鳥類研究所 http://www.yamashina.or.jp/
本成果は,2016 年9月23日(英国時間)にNature 系英国科学誌「Scientific Reports」に掲載されました。本研究は,文部科学省 科学研究費補助金 新学術領域「生物規範工学」ならびに,千葉大学ベンチャー・ビジネス・ラボラトリーからの補助を受けて行われました。
- 背景と目的
自然界には,鮮やかで美しい色の鳥や昆虫がおり,これらの色の一部は構造色による色です。鳥の羽の構造色を発現する微細構造を構築する「メラニン」が形成する粒子状の微細構造に太陽の光などがあたると,構造由来の構造色が発現するとともにメラニン顆粒の黒色が散乱光を吸収し,結果として視認性の高い構造色が発現します。例えば,雄の孔雀の羽の発色は,柱状型のメラニン顆粒が形成する微細構造由来の色です。このような背景より,メラニンを模倣したコロイド粒子を人工的に再現出来れば,鮮やかで視認性の高い構造色の発現が期待されます。
当研究グループではこれまでに,メラニンの前駆体であるドーパの模倣物質「ドーパミン」を重合して得られる黒色の高分子「ポリドーパミン」を,大きさが均一な黒色コロイド粒子として得ることに成功しました。この粒子はメラニンとほぼ同じ組成の材料で,ポリドーパミン粒子のみを用いて構造色の発現が可能であることを初めて見出しました[1]。しかし,構成成分すべてをポリドーパミンで作製したコロイド粒子は黒色度が高すぎ,インクとして利用する際に重要な固体状態での発色が暗くなってしまう大きな課題がありました。この課題の解決,ならびにインクとしての実用化にむけて,本研究では,「1 種類」でかつ「黒色度が制御可能」なコロイド粒子を用いる視認性の高い構造色材料の開発を目標としました。
参考論文: [1] M. Kohri et al., J. Mater. Chem. C, 3, 720-724 (2015).
- 研究成果概要と本成果の意義
黒色度を制御した粒子を作製するために,今回は,汎用高分子であるポリスチレン粒子をコアとし,そのりをポリドーパミンで被覆したコア-シェル型粒子を作製しました。ポリドーパミンシェル層の膜厚は,仕込みモノマー濃度により容易に制御可能であり,膜厚を変化させることで黒色度を自在に制御できることがわかりました。
作製したコア-シェル型粒子を用いて構造色ペレットを作製したところ,コア粒子の大きさ(221~287 ナノメートル)とポリドーパミンシェル層の厚み(0~20 ナノメートル)を変えることで,ほぼすべての色を生み出すことに成功しました。また,ポリドーパミンシェル層の厚みによって粒子表面の粗さが変わり,粒子の配列構造を制御できることを見出しました。この結果,見る角度により色が可変な「虹色構造色」と,色が変化しない「単色構造色」を容易に作り分けることも可能となりました。構造色は色褪せせず,独特の光沢を有することから,本成果は,構造色を用いる次世代インク開発の基盤となる重要な研究成果です。
- 用語解説
(注2)構造色: 光の波長あるいはそれ以下の微細構造に光があたり反射して見られる色で,身近な構造色にはコンパクトディスクやシャボン玉などが挙げられる。構造が維持される限り退色や変色が起こらず,次世代インク材料としての研究開発が進んでいる。
(注3)ポリドーパミン: アミノ酸誘導体であるドーパミンの自己酸化重合により容易に得られる黒色の高分子化合物。ムール貝の接着タンパク質を模倣して作製された高分子で,通常は薄膜状で用いられることが多い。
(注4)コア-シェル型粒子: 内部のコア部位と,外部のシェル部位からなる複合粒子で,コア部とシェル部の構造を化学的に調製することで,バラエティに富んだ機能材料を設計・合成することができる。
- 発表論文
著者名: 河村彩香*1,桑折道済*1,森本元*2,南日優里*1,谷口竜王*1,岸川圭希*1
*1 千葉大学大学院工学研究科
*2 山階鳥類研究所
雑誌名: Scientific Reports, 6, 33984 (2016).
- お問合せ
【研究内容について】
千葉大学 大学院工学研究科 共生応用化学専攻
准教授 桑折 道済(こおり みちなり)
TEL:043-290-3393
E-mail:kohri@faculty.chiba-u.jp
【研究内容以外について】
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山階鳥類研究所 広報
TEL:04-7182-1101
E-mail:hiraoka@yamashina.or.jp
- 関連リンク
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山階鳥類研究所 http://www.yamashina.or.jp/
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