HARMONY ART GALLERY(中国・上海)でStareReap中国初個展『梅沢和木個展 Everlasting Particle CORE』 3月1日より開催(リコー)
株式会社リコー/StareReapプロジェクトは初めての海外での個展として、梅沢和木「Everlasting Particle CORE」を開催します。中国・上海のHarmony Art Gallery / 尚艺画廊を会場に、最新作を発表します。
梅沢和木《Chara-song platinum fiber love》
Acrylic on UV resin (StareReap 2.5 print)
92.4 x 92.4 x 4 cm, 2023
会場:Harmony Art Gallery/尚艺画廊(中国・上海)
会期:2023年3月1日(水)~2023年3月15日(水)
時間:10:00~19:00
休廊日:月曜日
協力:CASHI/Branding Shanghai/金秋雨(日本大学芸術学部 美術学科 助教授)
インクジェット技術を長年開発してきた株式会社リコーは、これまでに蓄積したテクノロジーを活用したアートプロジェクト”StareReap”を2020年春にスタートしました。UV光(紫外線)を照射することで硬化するUVインクジェット印刷と、デジタルプロセッシングをベースとした立体画像処理を組み合わせた作品は、次世代のアートプリントとして高く評価されています。
2021年6月には東京・銀座にRICOH ART GALLERYをオープンし、梅沢和木をはじめ名和晃平、ライアン・ガンダー、金氏徹平ら現代アートの分野の最前線で活躍するアーティストとコラボレーションを実現してまいりました。
そして、2022年11-12月に中国・上海にて同地の非営利組織Branding Shanghai*の協力を得て、Yun Jian Art Museum / 云间美術館(中国・上海)にてRICOH ART GALLERYのプレゼンテーションを行いました。上海はアジアにおける現代アートの中心地の一つであり、数多くの美術館やギャラリーが所在しています。日本のアートや文化に対しての高い関心を持つ上海の観衆に展示は好意的に受け入れられ、Harmony Art Gallery / 尚艺画廊と梅沢の個展を共同開催する運びとなりました。
梅沢はインターネット上に浮遊する画像や、アニメやマンガ、ゲームといったサブカルチャーを主な題材として、イメージをコンピューター上でコラージュすることで作品を制作しています。”StareReap”にとって、梅沢のようにデジタルをベースに作品制作を行う作家とのコラボレーションは、プリントの可能性を拡張する非常に重要な取り組みとなりました。
コラボレーションの最初の機会であった2021年は、梅沢もリコーも手探りの中で制作していましたが、繰り返しテストを続ける中で新しい表現を実現するためのヒントを見出します。それがデータ上のレイヤーごとにテクスチャーを管理する方法でした。複雑に折り重なる梅沢のイメージをマイクロメートル単位の印刷で陰影と空間性を与えることで作品は完成しました。本展「Everlasting Particle CORE」の新作群は、プリントマシンのセッティングを改良し、前回のコラボレーションよりさらに細かいレベルで立体感をコントロールしながらも、ビビッドな発色を実現しています。
梅沢和木《Luv 2 Feel XXX》 梅沢和木《Everlasting Particle CORE》
Acrylic on UV resin (StareReap 2.5 print) Acrylic on UV resin (StareReap 2.5 print)
141.3 x 115.6 x 4 cm, 2023 200 x 338.1 cm, 2023
上海での個展に向けて、梅沢は次のようにステートメントを記しています。
「Everlasting Particle COREと永遠の世界について」
細かい絵が好きだ。顔料を含んだ筆やペインティングナイフを画用紙や印刷物に触れさせ、紙や絵具の細かな繊維や粒子まで感知し画面を埋めていく作業は、素朴な快楽がある。こういった作業を延々としていると、本当に細かな世界のコア、分子や原子の世界まで知覚できているのではないかと思う。もちろんそれは勘違いで、集中した結果ハイになっているだけだ。しかしこの、細かな制作の集中の果てに人の認知の限界を越えた世界に触れられるのではないかという期待、錯覚は制作のモチベーションの一つになっている。
ディスプレイ上で画像をコラージュしていき、細かな1ピクセルの調整や、コピーアンドペーストを繰り返していく時の作業も、同様に快楽がある。現実の物質に向かって制作する時と違うのは、それが仮想の電子上の光によって表示されている点で、1ピクセルより小さい世界は原理的にこのモニターの中の世界にはない。この仮想の世界に、自分は魅了され続けている。
これらの集中を要する作業は、自分が身体をもった人間であること、死という限界をもっていることを少し忘れさせる。私は強くタナトフォビア(死恐怖症)の性質を持っており、キャラクターやデータに対する執着はそれに関係している。自身の意識を保ったまま、身体が消失して永遠に生きられたらと思うが、それは架空の世界のキャラクターがよくそうなっているだけで、実際にはかなり難しいというのはわかっている。単に、そういうものに憧れがある。
作品の中で扱われているモチーフについて言及しておく。私は、インターネットやそれに関連するアニメ、漫画、ゲームといったいわゆるサブカルチャー、そこに登場するキャラクターが好きだ。それらの画像を集めてただ眺める時間が1日の中でも多く、ディスプレイ上で組み合わせてデスクトップの壁紙として設定していた日々の作業が、現在の作風に繋がっている。世代的には私は日本の90年代〜ゼロ年代、2010年代付近のサブカルチャーに浸かっており、扱うイメージや雰囲気はそれらの影響を受けたものとなっている。複製技術や印刷技術の発展した先として通信技術やインターネットがあるとして、大きな違いは物質から形のないデータのやり取りになったことだろう。物体から解放されたさまざまな作品は、回線の速度の向上とともに流通も加速し、サブスクリプションとして流れるように消費されていくようになった。次々と生まれ消費され消えていく様々なキャラクター達はそもそもそういった加速し続けるコンテンツ形態と相性がよく、セカイ系やループ物と呼ばれるような物語とも無関係ではない。キャラクターやデータは、増えていくし消えていく。彼らは、電子を通してディスプレイ上に表示されるというかりそめの存在のあり方ゆえの儚さがあり、あくまでイメージでのみ存在し、共有されていく。にもかかわらず、未だ印刷の流通も同時に行われている。紙や箱に印刷され、売られ買われ、大切に保存されたりしていく。ディスプレイへ表示されるだけで立ち現れる(そして動いたり、音も出る)という役目は果たせるのに、補完的に印刷物としても複製され続けるのはなぜなのか。人間の、物質に対する執着の性が透けて見える。
私が物質としての作品を作り続けているのも同じことが言える。データのみで成立しうるアート作品は改めて説明するまでもなくさまざまな選択肢とともに存在している。しかし、物質としての支持体と絵具、粒子との絡み合いを捨てきれずにいる自分がいる。物質としての身体に縛られているとも言える。同時に、印刷物として存在する前、粒子や顔料に変換される前の細かなピクセルのひとつひとつも捨てきれずにいる。その両方を捨てずに作品として具現化するため、データで画像を作り印刷して加筆するという手段を用いている。暫定的な手段として扱ってきたつもりだが、StareReapはその暫定的な手段としては十分過ぎるほどの強度を持つ技術だと思う。物質と仮想の電子の光、両方の表現を繋ぐメディウムとして心強い。そこにはディスプレイ上で制作した画像と、自らの手による加筆が反映されている。一見平面に見えるようで、非常に細かな立体感があり、増え続け消費され続けてきたキャラクター達のゴーストが、物質として別の形で現出したかと錯覚するようだ。
永遠に生きることは難しいかもしれない。しかし、作品制作の集中のふとした瞬間と、キャラクターとデータの世界には、そのヒントがあるのではないかと思っている。
あらゆる細部のコアには、永遠の世界が宿っている。そう思いながら作品を作っている。
梅沢和木
印刷は言うまでもなく、複製技術の一種として誕生しました。古来より多様な印刷技法が研究され、現代アートにおいてはマルセル・デュシャンやアンディ・ウォーホルが「複製」やその背後にある「消費」や「死」の意味を再考しています。梅沢の作品もその延長に位置づけることができますが、加えて現代の日本社会におけるサブカルチャーのスピーディな消費と再生のサイクルにも言及し続けています。梅沢は制作において、自身の過去作品の図版を素材として再利用したり、曼荼羅を思わせる構図を頻繁に取り入れています。それはあたかもイメージが輪廻し続けているようでもあり、本展出品作においてもそのような一面を垣間見ることができるでしょう。
梅沢にとっても初めての機会となる上海での個展は、”StareReap”の新しい一歩を踏み出す意義深い展覧会となりました。本展を多くの方にご高覧いただきますようお願い申し上げます。
*Branding Shanghai・・・上海という都市の国際的な発信、文化発信におけるプラットフォーム構築を目的とした非営利組織です。 Branding Shanghaiの公式アンバサダーには、俳優の胡歌(フー・ゴー)、Angelababy、ダンサーの谭元元(タン・ヤンヤン)、バイオリニストのCharlie Siemなど、各分野の第一線で活躍する文化人が名を連ねています。
梅沢和木|Kazuki Umezawa
1985年、埼玉県生まれ。武蔵野美術大学映像学科卒業。インターネット上に散らばる画像を再構築し、圧倒的な情報量に対峙する感覚をカオス的な画面で表現する。CASHI所属
主な展示に、梅沢和木アトリエ「梅沢和木オープンアトリエ in 大宮」(2022)、
RICOH ART GALLERY「画像・アラウンドスケープ・粒子」(2021)、CASHI「黒の夢」(2020)、
ジェフリーダイチ「Tokyo Pop Underground」(2019)、
東京都現代美術館「百年の編み手達ー流動する日本の近現代美術ー」(2019)、
ワタリウム美術館「HYPER LANDSCAPE 梅沢和木 × TAKU OBATA」(2018)など。
■StareReap
StareReapは現代美術家とのコラボレーションにより、プリンティングのテクノロジーを活用した新しい作品群を生み出していく、株式会社リコー発のアートプロジェクトです。
これまで、StareReapはRICOH ART GALLERY(東京・銀座)を中心に、日本国内の作家に留まらず、世界中の作家とのコラボレーションによる展覧会を開催してまいりました。
StareReap 2.5とは、UVインクジェットを用いた立体印刷の技術で、約23ミクロンという 非常に微細なUVインク滴を何層も重ね、従来の版画・印刷技法(シルクスクリーンやリトグラフ)では表現できなかった複雑な凹凸やテクスチャー表現を可能としています。
金属、ガラス、木材など、様々な素材への印刷を行うことができ、手作業ではできない微細な表現や、空想的なテクスチャーの表現などアーティストの表現領域を拡張します。
また、StareReapは作家との繰り返される試作の中で、テクノロジーを超えた作品性の創出や、作家の自由なイマジネーションを尊重するように努めています。プリンティング・ディレクターが作家とアイディアを磨いていく中で、新しい表現にたどりつくこと。それが、このプロジェクトの目的です。数多くのアーティストとの出会いによって、まだ誰も見たことがない先端的な作品をStareReapは追求し続けています。
| リコーグループについて |
リコーグループは、お客様のデジタル変革を支援し、そのビジネスを成功に導くデジタルサービス、印刷および画像ソリューションなどを世界約200の国と地域で提供しています(2022年3月期グループ連結売上高1兆7,585億円)。
imagine. change. 創業以来85年以上にわたり、お客様の“はたらく”に寄り添ってきた私たちは、これからもリーディングカンパニーとして、“はたらく”の未来を想像し、ワークプレイスの変革を通じて、人々の生活の質の向上、さらには持続可能な社会の実現に貢献してまいります。
詳しい情報は、こちらをご覧ください。
https://jp.ricoh.com/
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