ベトナムのグローバル・バリュー・チェーン:政府が取り組むべき今後の課題は、輸出増による地域経済へのさらなる付加価値創生
1980年代、世界で最も貧しい国の一つであったベトナムは、今日、市場において目を見張る経済成長を続けている。しかし、ベトナムが輸出から生み出す付加価値は少なく(2019年690億米ドル)、財・サービスの名目輸出総額(2600億米ドル)のわずか4分の1にとどまっている。日本アセアンセンターより本日発行された『ASEANにおけるグローバル・バリュー・チェーン:ベトナム』[https://www.asean.or.jp/ja/centre-wide-info/gvc_database_paper11/]は、この付加価値の問題がベトナムの発展に多くの戦略的課題を提起している点をとりあげている。
ベトナムにおける大規模な外国直接投資(FDI)、特に輸出加工におけるFDIは、その国が輸出加工生産の好適地となったことを意味する。しかしながら、ベトナムの総輸出は増加している一方で、国内の付加価値輸出(すなわち、ベトナムの輸出における国内創出分の付加価値)の国民経済への貢献は小さく、GDP比でASEAN平均の33%に比べて12%に過ぎない。
経済と輸出に対するFDIの効果は、ベトナム経済の付加価値構造に依存する。ベトナム経済では、第二次産業(製造業)、特に食品、飲料、タバコの産業が大きな相乗効果を示している。相乗効果が大きいほど、FDIが経済に与える影響が大きくなるということが予想される。
ベトナムのグローバル・バリュー・チェーン(GVC)は、ベトナムが世界および地域の生産ネットワークに関与している度合いを示している。およそ30年の間に、ベトナムの付加価値輸出に対する諸外国の貢献度は、32~33%に安定するまでは23~42%と変動していた。その時までに、ASEAN加盟国、大韓民国、中国はASEANにとって重要な中間輸出国となり、日本とともにベトナムのGVCの一部を形成し、ベトナムの総輸出の重要な貢献国となっている。他のASEAN諸国との違いは、日本から輸入されてベトナムの輸出に使用される中間財の重要性が相対的に高いまま(総輸出の7%)にある一方、他のASEAN諸国ではこの重要性が低下している点である。
ベトナムのGVC参加率の変化は、主にバリューチェーンの下流部分というよりも上流部分(中間財供給)によって引き起こされており、これは、1990年以降も主要な部分を占めている。ベトナムは国際的な生産ネットワークにより一層参入するようになった一方で、 ASEAN域内で創生されたバリューチェーン(域内バリューチェーン)への参入は、ASEAN地域の平均には及んでいない。
海外直接投資(FDI)レベルの上昇とベトナムのGVC参加の増加には関連があり、これらの両方が経済に利益をもたらす。 GVC参加は、さらなる経済成長のための機会増大にも関連していることが経験的に証明されている。
FDIとGVCの相関関係を活かすため、ベトナム政府は、課題に直面する国内産業部門を支援するべく法的枠組みと行政手続きを改善するべきである。また、ハイテク技術と最新のインフラ開発を促進するとともに、FDIを誘致するためにドイモイ政策下での経済改革を推し進めるべきである。
■国際機関日本アセアンセンター■
正式名称:東南アジア諸国連合貿易投資観光促進センター
ASEAN10 カ国政府と日本政府により 1981 年に設立。 貿易・投資・観光・人物交流の 4 分野を中心に、ASEAN 商品の輸出促進、日系企業 の進出支援、人材育成、日 ASEAN 間の観光促進等を通して、日本と ASEAN 諸国との 関係促進に貢献する国際機関です。
URL:https://www.asean.or.jp/ja/
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