「お正月どころではない」――年末年始、8割が家計苦・物価高が拍車 低所得のひとり親家庭に迫る困窮【2,000人超調査】
家族団らんの笑顔が増える、年末年始。その陰で、経済的困難を抱えたひとり親家庭では、十分な食事さえままならなくなる現実があります。
認定NPO法人グッドネーバーズ・ジャパン(本部:東京都大田区、代表理事:小泉 智)は、自団体が運営するフードバンク「グッドごはん」の利用者である低所得のひとり親家庭を対象に、この年末年始における家計の状況や、物価上昇による暮らしへの影響を調査しました。
【主な調査結果】
・今年の年末年始の家計見通し 「非常に苦しい」「やや苦しい」計8割
・物価上昇の影響深刻 昨年の同時期と比較して「十分な食料を買えなくなった」約6割(複数回答)
・季節的な食事や暖房の使用を諦め、「クリスマスとお正月は無いものと思い、もやしと納豆で栄養を摂る」との切迫した声も
【調査概要】
「ひとり親家庭における年末年始の暮らしに関するアンケート」
・実施日程:2025年11月6日~11月16日
・対象者:グッドネーバーズ・ジャパンのフードバンク事業「グッドごはん」の利用者 ※利用者は、原則としてひとり親家庭等医療費受給者証保有者に限る(ひとり親家庭等医療費受給者証とは、18歳未満の子どもを養育し、所得が限度額未満かつ生活保護を受けていないひとり親家庭等に交付される医療費助成制度の医療証)
・回答方法:アンケート回答フォームへの入力(オンライン)
・有効回答者数:2,198名
・回答者属性:
- 性別:女性 2,110名 (96.0%)|男性 51名 (2.3%) (性別無回答:37名)
- 年代:10代 2名 (0.1%)|20代 43名 (2.0%)|30代 417名 (19.0%)|40代 1,154名 (52.5%)|50代 557名 (25.3%)|60代以上 17名 (0.8%) (年代無回答:8名)
- 居住地域:首都圏(主に東京・神奈川・埼玉・千葉)974名 (44.3%)|近畿(主に大阪・京都・兵庫・奈良)752名 (34.2%)|九州(主に佐賀・福岡)472名 (21.5%)
調査結果詳細
年末年始、家計一層厳しく
今年の年末年始における家計負担の見通しに関して、「非常に苦しい」と回答した人が最も多く、「やや苦しい」と合わせた割合は8割に及びました。

また、この年末年始の家計負担を減らすために家庭で実際に行う予定の事柄を質問したところ、
・「季節のイベント(お正月・クリスマス等)に際した食事や品物の用意を諦める」
・「栄養面よりも価格を優先して食材を買う」
・「自分(保護者)の食事の量を減らす」
といった、食事に関する項目が多く選択されました(複数回答)。
加えて、「寒さを我慢して暖房やお湯の使用を控える」との回答も比較的多く、食を削ることと同様、安心して生活する基本的な環境さえ維持できない状況が懸念されます。

<自由記述回答>
・「毎年、年末年始は経済的に余裕がないどころか、足りないくらいで、生きるのに精一杯です。毎年、お正月だからと特別な食事を用意することもできていなかったのに、今年は特に難しそうなので、今から辛いです。」
・「クリスマスとお正月は無いものと思い、もやしと納豆で栄養を摂る。」
・「光熱費が高いので、お風呂は溜めることはできない。」
・「毎年生活が苦しいので年末年始らしいことはなにもできないし、服をきこんで暖房をつけないようにするだけです。」
・「クリスマスにお正月、子どもたちが楽しい季節ですが、我が家は切り詰めないといけない季節。」
・「パート勤務で給料が時給制のため、毎年、年末年始は仕事が休業となり収入が減るのにも関わらず、子供も年末年始の預け先がなく副業ができないし、食費や光熱費の出費が多くなり困窮している。それに加えて物価高があり、年々家計が苦しくてクリスマスやお正月と言っていられない。」
物価高騰が生活の基盤を直撃
調査の結果、今般の物価上昇が暮らしに与える影響も見えてきました。
“物価上昇により、昨年の同じ時期と比べて、現在の暮らしの中で変わったこと”について回答を得たところ、
・「十分な食料を買えないようになった/買えないことが増えた」
・「貯金を切り崩して生活するようになった/切り崩すことが増えた」
・「生活に必要な水道・電気・ガスの使用を控えるようになった/控えることが増えた」
・「子どもの教育費に充てるお金を十分に確保できないようになった/十分に確保できないことが増えた」
といった項目が比較的多く選択されました(複数回答)。
物価上昇が食費や光熱費といった生活の最低ラインを直撃し、貯金を切り崩さざるを得ないなど、家計の脆弱化が進んでいる状況が推察されます。

物価の上昇は、年末年始の生活にも困難をもたらします。
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食事の状況
“物価上昇を受けて、この年末年始の家庭での食事にどのような影響が出ると思うか”を質問した結果、
・「季節のイベント(お正月・クリスマス等)に際した食事を用意できない」
・「経済的に購入できる食材が限られ、栄養が偏る」
を選択した人が6割を超えました(複数回答)。
この結果から、物価上昇の影響により、年末年始の食事において“豊かさ”と“健康”の両方が損なわれる状況が懸念されます。
季節の食事を囲むことは、決して“贅沢”ではなく、食卓に象徴される家族の文化・季節・思い出の時間を育む大切な体験の機会です。また、栄養のある食事は、子どもの健やかな成長に欠かせません。
そうした子どもの豊かな体験や健康の基盤までをも諦めざるを得ない深刻な状況が示されました。

<自由記述回答>
・「物価や光熱費が上がり続けているので、長期休みは食費が嵩みます。普段でも自分の食事を削っていますが、更に削る必要があります。」
・「お祝いのご飯を作るにも、食料品の値上げで苦しい。お正月どころではない。」
・「食品があまりにも高額になっていて日々の買い物に悩まされます。口に入れば何でも良いわけはなく、子どもの健康と栄養面をどう支えていくのか。クリスマスやお正月、食事の楽しみを味わわせてあげたい気持ちと、現実的な金銭面での難しさ。」
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暖房の使用控え
“物価上昇を受けて、この年末年始に、家での暖房をどのように使う見通しか”について回答を得たところ、「著しく節約するため、寒さを感じても暖房をつけない」「かなり節約するため、暖房を使う時間や部屋、設定温度を大きく制限して、多少寒くてもなるべく暖房をつけない」を合わせた割合が4割を超えました。
暖房は本来、寒さから身を守る・健康を維持するといった、“生命維持に近い機能”を持つものです。そのため、暖房を控える行動は“危険を伴う切迫した選択”であるとも考えられ、健康リスクを受け入れざるを得ないという深刻な状況が推察されます。

<自由記述回答>
・「電気代がとても高く、暖房を極力使わず過ごすつもりです。」
・「なるべく光熱費削減のため、寒くても服を重ね着するなどして、暖房器具は使わないようにしています。」
・「今ですら暖房代節約のため暖房機器使わずに着込んだりしているが、もっと寒くなったら電気代やガソリン代、灯油代など、心配が尽きない」
求められる支援
年末年始に一層困窮した状況にさらされる家庭に対しては、適切な支援が求められます。
今回、「年末年始や子どもの学校の長期休み中など、家計の負担がかさむ時期に、国や自治体からどのような支援があれば助かると感じるか」について自由記述で回答を取得し(回答数:1,350名)、テキストマイニングにより分析を行った結果、「現金給付」が特徴的かつ重要度の高い単語として抽出されました。これは、多くの回答者が自由記述の中で繰り返し言及し、回答全体の傾向を最も強く表していた単語であることを示します。

※ユーザーローカルAIテキストマイニングによる分析( https://textmining.userlocal.jp/ )
年末年始は、食費や光熱費が増えるなど、家計に直接的・即時的な負担が生じる時期です。そのため回答者は、「現金給付」といった、“今日・明日すぐ使える”“確実に手元に届く”支援を必要としている可能性がうかがえます。
年末年始を安心して過ごせる環境を、すべての子どもに
今回の調査結果より、この年末年始、冬を安全に過ごすための基本的な生活環境すら維持できない低所得のひとり親家庭が多く存在する現実が浮き彫りになりました。十分な食事や暖房を確保できないことは、子どもの成長や家庭の安心に重大な影響を与えかねません。
グッドネーバーズ・ジャパンは、こうした危機に直面する家庭を支えるため、年末年始に向けて食品の配付内容を強化し、必要な支援を届けます。
そして、子どもたちが寒さや空腹に苦しむことなく、安心して冬を過ごせる環境を実現するために、引き続き課題の発信と支援の輪の拡充に努めてまいります。
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■団体について
特定非営利活動法人グッドネーバーズ・ジャパンは、国際組織グッドネーバーズ・インターナショナルの一員として、2004年に開設されました。「子どもの笑顔にあふれ、誰もが人間らしく生きられる社会」を目指し、国内外の子ども支援を行っています。公益性の高い団体である「認定NPO法人」として東京都から認可を受けています。
■ひとり親家庭のためのフードバンク「グッドごはん」とは
「グッドごはん」とは、ひとり親家庭等医療費受給者証をもつ、所得が限度額未満のひとり親家庭を対象に、食品を毎月無料で配付する事業です。2017年9月の事業開始以降、延べ13万を超える世帯に食品をお渡ししてきました*。
首都圏、近畿および九州における約40か所*の配付拠点にて、企業や個人の寄付によって集まったお米や調味料、レトルト食品、お菓子など、約10,000円相当のカゴいっぱいの食品をひとり親家庭に配付しています。
*2025年5月時点(配付拠点数は月により変動)
https://www.gnjp.org/work/domestic/gohan/
※通常、配付拠点に直接取りに来られる方を対象に食品を配付しています
※生活保護受給中の方は対象外です
■フードバンク「グッドごはん」を利用する低所得のひとり親家庭を対象とした各種調査について
グッドネーバーズ・ジャパンは、フードバンク「グッドごはん」を利用する低所得のひとり親家庭を対象に実施してきた各種調査の一覧を、以下のページにて公開しています。
同調査では、食事・収入・子どもの体験・孤立の実態など、ひとり親家庭が直面する多様な課題について、定量・定性的に可視化しております。ぜひご覧ください。
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