米国小売従業員60%が勤務先でAI導入と回答、今後6~12カ月を見据え現場人材戦略の再設計を提言【A.T. カーニー】

AI導入店舗では77%が顧客体験向上、81%が顧客の声を収集・共有しやすくなったと回答―職場で正式なAI研修を受けた従業員は17%

KEARNEY

A.T. カーニー株式会社(東京都港区、日本代表:針ヶ谷 武文)は、AIが小売店舗の現場業務と顧客体験に与える影響を分析した論考「店舗現場の高度化:AIは小売の現場業務と顧客体験をどう変えるか」(英題:Elevating the retail floor: How will AI reshape frontline retail roles and the customer experience?)を公開しました。

 

本稿は、米国の小売現場従業員、店舗マネージャー、複数店舗を統括する責任者を対象としたKearney調査に基づいています。回答者の60%は、自店舗ですでにAI・自動化ツールの導入が始まっていると回答しました。これらの技術は、在庫追跡、発注・補充、シフト作成、手作業によるデータ入力など、反復的で時間のかかる業務を効率化し、従業員が顧客に向き合う時間を増やしています。

 

AI導入店舗では、従業員の77%が顧客体験はすでに向上したと回答し、81%が顧客の声や気づきを収集・共有しやすくなったと答えています。一方、自店舗がAI導入に「十分に準備できている」と感じる現場従業員は19%にとどまります。本稿は、ツール導入だけでなく、業務の分担、研修、管理職のリーダーシップを一体で再設計する必要性を指摘しています。

 

AI導入店舗では在庫追跡62%、発注・補充49%、シフト作成42%で活用

AI導入店舗の回答者による複数回答では、影響を受けた業務として在庫追跡(62%)が最も多く、発注・補充(49%)、シフト作成・勤務計画(42%)、顧客対応(39%)、データ入力(35%)が続きました。研修(33%)、業務の優先順位付け(30%)、データ報告・分析(29%)にも活用が広がっています。

 

導入状況の内訳は、少なくとも1つのツールを導入した店舗が34%、複数のツールが18%、1つ以上の業務を完全に自動化した店舗が8%です。AI導入店舗では、現場従業員の29%が業務負荷の軽減を実感し、平均で週1~2時間、なかには3時間超を削減しています。生まれた時間は、新しいスキルの習得、顧客対応、同僚の支援に使われています。

 

図表1 米国小売店舗におけるAI・自動化の導入状況と影響業務

仕事を細かな作業に分け、AIと人の強みを生かして再配分

本稿は、職務を個別の作業に分解し、それぞれを人、AI、または両者の組み合わせのうち、最も効果的な担い手に割り当てる「ジョブ・ピクセレーション」を提唱しています。AIは在庫追跡、データ入力、価格調整、シフト管理などを自動化・支援できます。

 

従業員は、商品選びや組み合わせの提案、店舗イベントの企画、チームメンバーの育成など、人の判断力、共感力、協働が必要な業務に集中できます。これは雇用をなくす考え方ではなく、役割を進化させ、部門を越えた連携やスキルの多様化を促すものです。

 

重要なのは、既存の仕事にAIを付け足すだけでなく、AIと人がそれぞれの強みを発揮できるよう、仕事の流れそのものを見直すことです。

 

図表2 AI・自動化が顧客体験と顧客の声の収集・共有に与える効果

顧客体験は向上する一方、正式なAI研修を受けた従業員は17%

AI導入店舗では、顧客体験が向上したとの回答が77%、顧客の声を収集・共有しやすくなったとの回答が81%でした。従業員は、商品知識を深め、AIの示唆や会員データを活用することで、一人ひとりに合った提案や、特別な要望への丁寧な対応に時間を使えるようになります。

 

しかし、AIツールを使う準備ができていると感じる現場従業員は63%である一方、職場で正式な研修を受けた割合は17%です。今後6~12カ月でAI・自動化がさらに増えると予想する従業員は59%であり、導入の速さに対して学びの仕組みが追いついていません。

 

本稿は、職務目標や実績、顧客の声に応じた個別学習、必要な場面で助言するAIコーチング、実際の接客に近いAIシミュレーションを日々の業務に組み込むことを提案しています。例えば美容部員は、新商品の説明を事前に練習し、店頭では色選び、関連商品、肌への注意点についてリアルタイムの支援を受けられます。

 

管理職の準備は約2割、将来像から逆算した人材戦略へ

店舗マネージャーはAIによって平均週2~3時間を削減している一方、管理職がAI活用環境を率いる準備が十分だと考える現場従業員は約2割です。管理範囲が複数部門や複数拠点へ広がる可能性を踏まえ、感情知性、デジタル理解、迅速な意思決定を高める育成計画と継続的な支援が必要です。

 

今後6~12カ月でAI・自動化により仕事が楽になると考える従業員は52%、仕事がより意義あるものになると予想する割合は46%です。本稿は、将来の店舗業務に必要な作業とスキルを先に描き、そこから逆算して役割、管理体制、学習環境を組み直す「トゥモロー・バック」の人材戦略こそが、生産性、イノベーション、長期成長を左右すると結論づけています。

 

論考について

-論考名:「店舗現場の高度化:AIは小売の現場業務と顧客体験をどう変えるか」(英題:Elevating the retail floor: How will AI reshape frontline retail roles and the customer experience?、2025年8月21日公開)

-URL: https://www.jp.kearney.com/issue-papers-perspectives/elevating-the-retail-floor-how-will-ai-reshape-frontline-retail-roles-and-the-customer-experience

 

監修者

-井上 真 グローバル取締役 シニアパートナー

東京大学卒業。ワシントン大学(ミズーリ州)MBA修了。三井物産、米国の化学品メーカーなどを経て、A.T. カーニー入社。消費財・小売、サービス、総合商社を中心に、全社戦略、競争戦略、グローバル成長戦略、営業・マーケティング改革、組織診断・設計、チェンジ・マネジメント等のコンサルティングに従事。2024年、Kearneyの新たなプラクティスであるStrategy, Growth & Organization Transformation (SG&OT)のAPACのリーダーに就任。コンサルティング業界媒体The consulting reportの "The Top 25 Strategy Consultants and Leaders of 2024" に選出。

 

-福田 稔 シニアパートナー

慶應義塾大学商学部卒業、IESEビジネススクールMBA修了、ノースウェスタン大学ケロッグビジネススクールMBA exchange program修了。電通総研(旧電通国際情報サービス)、欧州系戦略コンサルティングファームを経て、A.T. カーニー入社。消費財・小売プラクティスのAPAC共同リーダーを務める。主にアパレル・繊維、ラグジュアリー、化粧品、小売、飲料、ネットサービスなどのライフスタイル領域を中心に、戦略策定、ブランドマネジメント、GX、DXなどのコンサルティングに従事。上記領域においてプライベートエクイティやスタートアップへの支援経験も豊富。

経済産業省の産業構造審議会 繊維産業小委員会委員、繊維産地におけるサプライチェーン強靭化に向けた対応検討会委員、これからのファッションを考える研究会~ファッション未来研究会~副座長など、アパレル・繊維、ライフスタイル産業に関わる多くの政策支援にも従事。大学院大学至善館の特任教授(マーケティングの理論と実践)も務め、ビジネスとアカデミアからライフスタイル産業の革新に向けた多くの発信をしている。著書に『2040年アパレルの未来 「成長なき世界」で創る、持続可能な循環型・再生型ビジネス』(東洋経済新報社)など。

 

A.T. カーニーについて

 A.T. カーニー(グローバル・ブランド名:Kearney)は、100年にわたり世界有数の経営コンサルティングファームとして、Fortune Global 500企業の4分の3以上をはじめ、世界各国の政府機関に信頼されるパートナーであり続けてきました。40カ国以上に拠点を展開し、私たちの最大の強みは「人」にあります。インパクト・ファーストを掲げ、独創的な発想と実行力をもって、顧客企業が直面する最も困難な課題に挑み、変革の実現をともに推進します。日本には1972年に進出し、あらゆる主要産業のリーディングカンパニーに対し、戦略策定から変革の実行まで一貫した支援を提供しています。詳しくはWebサイトをご覧ください。www.jp.kearney.com

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会社概要

A.T. カーニー株式会社

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URL
https://www.jp.kearney.com/
業種
サービス業
本社所在地
東京都港区赤坂9-7-1 ミッドタウン・タワー23階
電話番号
03-6890-5001
代表者名
針ヶ谷 武文
上場
未上場
資本金
-
設立
1926年09月