特定疾患療養管理料算定条件見直しに伴う影響調査
当社は、独自に保有しているレセプトデータを中心としたメディカルビッグデータ『REZULT』を基に、特定疾患療養管理料の算定要件から生活習慣病3疾患(高血圧、脂質異常症(遺伝性疾患を除く)、糖尿病、以下「3疾患」)が除外されたことに関する影響調査を実施しました。
特定疾患療養管理料とは、定められた疾患を主病とする患者に対して、計画的な医療管理を行うことを評価するための診療報酬点数となります。2024年6月の診療報酬改定において3疾患が特定疾患療養管理料の算定対象疾患から除かれることとなりました。
この3疾患は特定疾患療養管理料の算定理由の多くを占めていましたが、より細やかなケアの必要となる生活習慣病管理料(※1)2への切替を促す方針とされています。これは医療の質の向上と効率化を目的とした改定となり、患者・医療機関の双方へ大きなインパクトがあると考えられます。
本調査では外来診療を中心に診療報酬改定前後における、特定疾患療養管理料の算定患者・医療機関の状況について調査を実施しました。
【集計条件】
利用データベース:当社の保有するレセプトデータベース(約1,000万人 2025年4月時点)
調査対象:診療報酬改定前に特定疾患療養管理料の算定があった医療機関及び患者の医科外来レセプトデータを対象に調査
調査期間:診療報酬改定前:2023年6月~2023年11月、診療報酬改定後:2024年6月~2024年11月のそれぞれ6か月間
参考資料:
令和6年度診療報酬改定の概要【外来】(https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001218897.pdf)
【REZULTのデータソース】
・保険者由来のレセプトデータを中心としたデータベース
・健康保険組合、共済組合のデータを収載(新生児~働き世代中心)
・患者の追跡性に優れ、大規模病院~クリニック、調剤薬局、歯科と幅広く収載
目次
1 | 診療報酬改定前後における患者一人当たりの医療費の変化
2 | 「特定疾患療養管理料」の算定状況の変化
3 | 「特定疾患療養管理料」の算定患者・医療機関における医療費の変化
1 | 診療報酬改定前後における患者一人当たり医療費の変化
まず、診療報酬改定前後の患者一人当たり医療費の変化について調査を実施しました。
全体・入院・外来・歯科・調剤それぞれの医療費を見ると、全体としては微増の傾向が見受けられましたが、外来のみ減少していることが分かりました。(図1)
一概には言えませんが、今回の調査対象となる特定疾患療養管理料の算定要件を始めとする、外来診療の効率化を目指した診療報酬の見直しが影響していることが考えられます。

【図1】診療報酬改定前後における患者一人当たり医療費の変化
※患者一人当たり医療費 = 各レセプト種類における医療費の合計(円) ÷ 各レセプト種類における発生患者数(人)
2 | 「特定疾患療養管理料」の算定状況の変化
今回の主題となる特定疾患療養管理料の算定要件見直しにより、患者・医療機関それぞれの算定状況を調査しました。
患者においては18.3%から9.7%と半数近く減少していました。(図2)
特に生活習慣病が増加傾向にある40歳以上において大きく減少していることから、多くの患者が3疾患での算定を受けていたことが分かります。
医療機関においても減少傾向は顕著となっています。(図3)
診療報酬改定前と比較し、全体で12ポイント近く減少しており、特に有床のクリニック・診療所、100床未満の病院において大きな減少が見られました。
これらの医療機関においては特定疾患療養管理料の算定が3疾患中心になっており、他の特定疾患での算定を行っていない、もしくは限定的だったことが考えられます。

【図2】患者全体における特定疾患療養管理料の算定状況
※外来(医科入院外)のレセプトが発生している患者を対象に割合を算出

【図3】医療機関全体における特定疾患療養管理料の算定状況
※外来(医科入院外)のレセプトが発生している医療機関を対象に割合を算出
3 | 「特定疾患療養管理料」の算定患者・医療機関における医療費の変化
最後に特定疾患療養管理料の算定患者・医療機関における医療費の変化を調査しました。
患者視点で確認すると大きくは生活習慣病管理料1・2へ移行された患者とされなかった患者に分かれています。(表1、図4)
国の指針の通り生活習慣病管理料2へ移行している患者の割合が最も多く、60%程度の患者にて生活習慣病管理料2の算定が確認されました。
移行が確認できなかった患者において6か月間の外来医療費に大きな減少傾向が見られましたが、生活習慣病管理料2へ移行した患者においても、移行が確認できなかった患者と比較すると影響は小さいものの医療費の減少傾向が見られました。
医療機関については施設規模(病床数)別に調査を実施しています。
医療機関全体での患者一人当たり医療費としては規模の大きい医療機関の方が診療報酬改定の影響を受けていないことが分かりました。(表2、図5)
しかし、3疾患を主病とするレセプトを対象に確認したところ、全病床規模で減少傾向にあることが分かり、特に有床のクリニック・診療所、100床未満の病院で減少幅が大きい傾向が見受けられました。(表3、図6)
規模の大きな医療機関では3疾患以外の診療も多く医療費の減少が抑止され、規模の小さな医療機関では受診患者の傾向により診療報酬改定の影響を受け易い場合があることも考えられます。

【表1】診療報酬改定前後の特定疾患療養管理料、生活習慣病管理料1・2の算定状況による医療費の変化
※算定患者が同一医療機関を受診した際の算定状況の変化を調査(受信医療機関が減少した患者も含む)

【図4】診療報酬改定前後の特定疾患療養管理料、生活習慣病管理料1・2の算定状況による医療費の変化
※算定患者が同一医療機関を受診した際の算定状況の変化を調査(受診医療機関が減少した患者も含む)

【表2】特定疾患療養管理料算定医療機関における医療費の変化(対象医療機関の受診患者全体を対象)

【図5】特定疾患療養管理料算定医療機関における医療費の変化(対象医療機関の受診患者全体を対象)

【表3】特定疾患療養管理料算定医療機関における医療費の変化(3疾患が主病のレセプトを対象)

【図6】特定疾患療養管理料算定医療機関における医療費の変化(3疾患が主病のレセプトを対象)
今回は特定疾患療養管理料から3疾患が除外された影響の調査を行いました。
対象となった3疾患は患者数も多く、患者・医療機関双方に大きなインパクトがあったことが分かります。
移行先として新設された生活習慣病管理料2ですが、これまで以上に細やかなケアが必要となることから未算定となった患者も一定数見受けられました。
病状・病態の変化もあるとは思いますが、必要な体制が構築できずに算定できなくなった医療機関があることも想像できます。
3疾患の重症化予防・医療費の抑制は国民の健康・皆保険制度の維持に対し重要な指標となるため、今後も注視していきたいと考えています。
当社では、データヘルス計画の策定支援や事業実施支援の一環として、医療費の分析や保健事業のコンサルティングを行っています。
他にも、約1,000万人の匿名加工済みのレセプト・健診データ等の医療リアルワールドデータによる地域差分析やペイシェントジャーニー(※2)などアドホックな分析やデータの販売を行っております。
気になる点、詳しく知りたい点などがございましたら、下記アドレスまでお気軽にお問い合わせください。
※1 参考資料:令和6年厚生労働省告示第57号 別表第一 医科診療報酬点数表
(https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001251499.pdf)
※2 患者が病気を認知し、医療機関へ受診、そして治療となるまでの一連のステップ
■本件で利用したメディカルビッグデータ「REZULT」につきましては以下をご参照ください。
https://www.jastlab.jast.jp/rezult_data/
【本件に関するお問い合わせ】
日本システム技術株式会社
ヘルスケアイノベーション事業部
TEL:03-6718-2785
Mail:rezult@jast.co.jp
URL:https://www.rezult-lp.com/
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