道路橋の床版更新における設計業務時間を10分の1に 3Dモデル自動生成システムを開発

鹿島

 鹿島(社長:天野裕正)は、道路橋の床版取替工事におけるプレキャストPC床版の3Dモデル自動生成システム(以下、本システム)を開発しました。本システムは、道路線形(道路全体の座標、長さ、角度)や、プレキャストPC床版に必要な部材である鉄筋などの数値情報を入力するだけで、プレキャストPC床版の3Dモデルを生成し、部材同士が干渉しない配置を自動生成できます。また、鋼桁の数値情報を入力することで、生成した3Dモデルに反映させることも可能です。さらに、生成した3Dモデルに、床版取替前の3D測量点群データを取り込むことで、現況と設計値のずれを容易に把握することができるため、従来は膨大な時間を要していた設計的なシミュレーションを、数値の再入力だけで何度でも、短時間で行うことが可能になりました。

 このたび、本システムを「阪和自動車道(特定更新等)雄の山第1橋他16橋橋梁更新工事(設計業務その1)」(以下、雄の山更新設計業務)に適用した結果、これまで熟練のCADオペレータが手作業で実施していた繰り返し検討の時間が1/10程度になりました。

 なお、本システムは、BIM/CIMモデルが同時に完成するため、施工方法の検討や発注者等との協議にも使用できます。

プレキャストPC床版の3Dモデルイメージ
床版取替工事の施工イメージ

【開発の背景】

 高度経済成長期に整備された国内の道路橋の多くは、供用開始から半世紀以上が経過しており、各地で床版取替工事が進められています。床版取替工事のプレキャストPC床版は、運搬および架設時の制約から橋軸方向に約2mごとに分割されており、道路線形と鋼上部工の形状の関係から1つ1つの形状が少しずつ異なります。例えば、長さ500mの道路橋の場合は約250枚の床版が必要で、これらを1枚ずつ全て手作業で作図するには膨大な時間が必要なため、大量の図面を正確かつ短時間で作成する設計の生産性向上が課題となっています。また、供用中の床版の現況と図面にずれが生じていることも少なくないため、図面の修正を容易に何度でも行うことができるシステムが求められています。

【本システムの概要と成果】

 本システムは、床版の3Dモデル生成だけでなく、鋼桁の3Dモデルの生成および測量データの取り込みによる現況と設計の差分解析・修正も可能です。

 本システムを雄の山更新設計業務に適用した結果、これまでCADオペレータが手作業で実施していた繰り返し検討の時間が大幅に削減され、設計業務に要する時間が1/10程度になりました。

1.床版の3Dモデル生成

 本システムは、パラメトリックモデリング※1が可能な3D-CADソフト※2を活用し、設計条件や数値情報といったパラメータを入力し、システム化された設計仕様やノウハウ通りに、床版の3Dモデル化を行います。

※1 あらかじめ定義されたテンプレートに対応する寸法値等のパラメータを入力するだけで、簡易に生成および修正が可能な 3Dモデルのこと

※2 ダッソー・システムズ 3DEXPERIENCE CATIA on the cloud

①プレキャストPC床版のモデル化

 道路線形情報を数値入力するだけで、3次元情報を有した橋梁の橋面を再現できます。さらに、床版を自動割り付けし、床版厚などの形状データを数値入力するだけで3Dモデルを生成できます。

プレキャストPC床版のモデル化

②配筋モデルの自動化

 鉄筋径やピッチ、かぶり等を数値入力することで、それぞれが干渉しない配筋の3Dモデルを自動生成できます。

自動生成された配筋3Dモデル

③図面化・数量算出

 床版1枚ごとに、2Dの図面データも出力することができます。さらに、数量算出のための構造寸法表

 も出力できます。

2.鋼桁の3Dモデル生成および測量データの取り込みによる現況と設計の差分解析・修正

 本システムに建設当初の鋼桁手書き図面から読み取った部材厚・幅等の数値を入力することで、様々な鋼桁の3Dモデルを生成することができます。床版と鋼桁の干渉チェックは、2Dの図面で行う場合と比較して、3Dモデルでは容易になるため、設計業務の生産性が大幅に向上します。

 また、3Dモデル上に測量データ(点群情報)を取り込み、差分解析を行うことで橋梁全体の現況と図面のずれを瞬時に数値で把握することが可能です。数値を打ち換えるだけで、現況に合わせた微調整を瞬時に設計に反映することが可能となります。

【今後の展開】

 鹿島は今後、本システムを複雑な道路線形を有する橋梁や、プレキャストPC床版の製作および架設の施工計画へも展開するとともに、当社が開発した「スマート床版更新(SDR)システム®」と連携させた情報化施工の技術開発も進めてまいります。

【工事概要】

工事名  : 阪和自動車道(特定更新等)雄の山第1橋他16橋橋梁更新工事(設計業務その1)

工事場所 : 大阪府泉南市信達岡中~和歌山県和歌山市直川

発注者  : 西日本高速道路株式会社 関西支社

施工者  : 阪和自動車道雄の山橋梁更新工事特定建設工事共同企業体

工事諸元 : ①床版取替工(撤去・設置)24,000㎡、②RCラーメン橋の土工化8,000m3(1橋)、③塗替塗装4,000㎡、④橋脚耐震補強6基(1橋)、⑤落橋防止構造26基、⑥支承取替8基、

⑦泉南IC拡幅のうち、①、③~⑥の橋梁補修改築に係る設計業務

工期   : 2021年8月~2025年12月

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建設・土木
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会社概要

鹿島建設株式会社

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URL
https://www.kajima.co.jp/welcome-j.html
業種
建設業
本社所在地
東京都港区元赤坂 1-3-1
電話番号
-
代表者名
天野 裕正
上場
東証プライム
資本金
814億円
設立
-