男だから女子におごらなきゃ、ってほんと? 日常の中に潜むジェンダーバイアスに気づく男の子の物語『考えたことなかった』
SAPIX小学部が開催する「さぴあ作文コンクール」の課題図書にもなった『いいたいことがあります!』の姉妹編です。
『考えたことなかった』(魚住直子 作/西村ツチカ 絵)
https://www.kaiseisha.co.jp/books/9784037273903
- 作品のあらすじ
ある日、中学2年生の颯太は、祖父母の家へ行く道すがら、言葉を喋るふしぎなネコに声をかけられる。「わたしは、未来のおまえなのにょー。」喋るネコに面食らう颯太だが、ネコによると、このままだと颯太の将来が大変なことになるらしい。いったい、どうして?
ネコとの出会いから、さまざまなことを考えはじめ、颯太は、ジェンダーバイアスや競争主義とどこかでつながりあった、社会のしくみに気づいていく。
颯太が気づいたこととは? そして、ネコの正体、颯太の未来はどうなるのか?
- 日常生活から「社会のしくみ」を浮かび上がらせるストーリー
野球部員として練習に精を出す颯太は、母親と妹の陽菜子と3人暮らし。父親は単身赴任で別居していて、近所には父方の祖父母が住んでいます。
この物語で颯太が経験するのは、言葉を話すネコに出会う、ということ以外は、それほど変わったことではありません。塾で一緒だった女の子と出かけることになったり、近所の祖父母の家に届け物に行ったり……。
しかしその中には少しずつ、社会のしくみが見え隠れします。
家では洗い物や洗濯など、家事をやるように言われているものの、祖父母の家ではおじいちゃんが「いい、いい。そんなの、おばあちゃんがやるから」と言い、なんでもおばあちゃんがやってくれて、颯太は「楽だなあ」と感じます。そして、おじいちゃんはいつも座ったまま。
女友達の原さんと出かけた時には、「男だし」と何気なく飲み物を奢ろうとますが、原さんに「なんで?」と言われ、答えに窮します。
祖父母の家での「楽さ、居心地のよさ」、無意識に女の子に奢ろうとした「男だから」という感情は、どこからくるのか?
これまで「考えたことなかった」ことに颯太が目を向けていくにつれ、読者も同じように、考えていなかったこと、気づいていなかったことが身近にあるかも、と思うかもしれません。
はたして颯太は喋るネコが告げた未来を、変えることができるのか? ひとりの男子中学生の目を通して、日常のひっかかりから社会のしくみを考えはじめる物語です。
刊行に合わせ、弁護士で『これからの男の子たちへ』の著者・太田啓子さんから、書評を寄せていただきました。
▶︎ウェブマガジン「Kaisei web」より、『考えたことなかった』書評(評:太田啓子/弁護士)
https://kaiseiweb.kaiseisha.co.jp/a/review/2210review/
また、刊行前レビューでも好評の声が多数届きました。
▶︎Net Galleyの刊行前レビュー
https://www.netgalley.jp/catalog/book/268633
- 前作『いいたいことがあります!』は、SAPIX小学部「さぴあ作文コンクール」課題図書
姉妹編とも言える前作『いいたいことがあります!』では、颯太の妹、小学6年生の陽菜子が主人公。母親から、「勉強しなさい」「家事をやりなさい」と言われること、兄の颯太は忙しいから家事をしなくても許されることなど、生活のさまざまなことに対してモヤモヤしています。そんなある日、陽菜子はふしぎな女の子と出会い……。
『いいたいことがあります!』(魚住直子 作/西村ツチカ 絵)
https://www.kaiseisha.co.jp/books/9784037272906
同作は、SAPIX小学部が実施している「さぴあ作文コンクール」で課題図書に選ばれ、受験問題などにも使われて、多くの反響がありました。今回の『考えたことなかった』は、またちがった視点から物事を見て考える、新たな物語となっています。『いいたいことがあります!』に続けて読んでも、単体で読んでも楽しめます。
性別問わず、幅広い年齢の方に読んでいただきたい作品です。
▶︎ウェブマガジン「Kaisei web」より、『いいたいことがあります!』書評(評:田中俊之)
https://kaiseiweb.kaiseisha.co.jp/a/review/rv_1809/
- 著者紹介
作:魚住直子
『非・バランス』で第36回講談社児童文学新人賞を受賞しデビュー。『Two Trains』で第57回小学館児童出版文化賞、『園芸少年』で第50回日本児童文学者協会賞、『だいじょうぶくん』で第32回ひろすけ童話賞を受賞。作品に『いいたいことがあります!』『クマのあたりまえ』『みかん、好き?』などがある。
絵:西村ツチカ
漫画家。2010年、短篇集『なかよし団の冒険』でデビュー。同作で第15回文化庁メディア芸術祭マンガ部門新人賞受賞。『北極百貨店のコンシェルジュさん』で第25回文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞受賞。漫画作品に『さよーならみなさん』『アイスバーン』装画・挿絵を手掛けた作品に『シンドローム』『さいごのゆうれい』『火守』などがある。
- 書籍詳細
『考えたことなかった』
作:魚住直子
絵:西村ツチカ
本体価格:1,400円
判型:20cm×14cm
対象;小学校高学年から
初版:2022年10月15日
書籍詳細:https://www.kaiseisha.co.jp/books/9784037273903
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