日本自然保護協会は「日本版ネイチャーポジティブアプローチ」を開始します

NACS-J

● 公益財団法人日本自然保護協会(以下、NACS-J)は、市区町村から日本のネイチャーポジティブを実現する「日本版ネイチャーポジティブアプローチ」の実践として以下の取組を開始し、今後、市区町村を認定する制度をつくります。
● 市区町村のネイチャーポジティブの実践を通じて、地域の生物多様性の保全・回復とともに、地域の魅力や、地域産業の付加価値を高めることを目指します。
● 2025年までに60地域で実践開始を目指し、市区町村、企業、NPO等のパートナーシップを構築するために、関心のある市区町村と企業を募集しています。
● 地域の生物多様性に即してネイチャーポジティブに向けた目標を設定し、保全や回復の状況を定量的に評価します。
● 先駆的なモデル地域として、群馬県みなかみ町・三菱地所株式会社・NACS-Jの連携協定等に基づいて活動を実践し、他地域へも展開します。


生物多様性の損失は世界規模で急速に進んでいます。2030年までに、ネイチャーポジティブ(*1)、すなわち「生物多様性の損失を止め、反転させる」ための行動をとることが、生物多様性条約やそれに基づく生物多様性国家戦略で重要な使命となっています。

NACS-Jは、生物多様性保全に実効性ある30by30(*2)を実現し、2030年に地域での生物種の絶滅をなくすとともに、生物多様性を回復基調に導くことを目指し、日本のネイチャーポジティブの実現について検討を進めてきました。

NACS-Jは、日本のネイチャーポジティブを実現するために、市区町村からのネイチャーポジティブを実践し、そのために必要なパートナーシップの構築と、生物多様性の定量的な評価に取り組みます。この取組を「日本版ネイチャーポジティブアプローチ」と名付けて成果を発信していきます。「日本版ネイチャーポジティブアプローチ」は、環境省をはじめ、これまで日本の生物多様性保全に連携してきた方々との協力関係を強化しながら推進していきます。


(*1)ネイチャーポジティブ

人と地球のために、生物多様性の損失を止め、自然を回復させること。昆明・モントリオール生物多様性枠組で2030年ミッションとしてこの考え方が掲げられている。生物多様性国家戦略2023-2030の目標としても2030年までにネイチャーポジティブの実現が掲げられている。


(*2)30by30

2030年までに陸と海の30%以上を健全な生態系として効果的に保全する目標。昆明・モントリオール生物多様性枠組にも組み込まれ「30by30目標」と呼ばれている。


  • 1.市区町村からネイチャーポジティブを実現

日本の生物多様性は、地域の自然的・社会的条件によって異なるため、日本のネイチャーポジティブは、生物多様性の特性と社会制度の二つの側面から、市区町村を基にして実現していくことが重要です。

「生物多様性国家戦略2023-2030」では、ネイチャーポジティブを実現するための社会の根本的変革の必要性が強調され、生物多様性の保全と、社会経済活動、気候変動対応、地域課題解決の統合的な取組が求められています。地域の未来像に向けて、統合的な取組ができる主体として、市区町村は重要な役割を担っています。

地域でネイチャーポジティブを実現するためには、地域の自然を将来にわたって保全し、価値を高め、生物多様性に配慮した産業を推進する必要があります。この取組を通じて、地域の魅力を高め、地域産業の付加価値の向上や、教育、福祉、防災・減災等に地域の生物多様性を活かすことに繋げていくことが重要です。

NACS-Jは、群馬県みなかみ町(以下、みなかみ町)を先駆的なモデル地域と位置づけ、2月27日に、みなかみ町と三菱地所株式会社との3者連携協定を結び具体的に活動することを発表しました。また、5月16日には、埼玉県所沢市と株式会社NTTドコモとの3者連携協定を締結しており、今後、他地域への展開を積極的に進めていきます。これらの実践を通じて、市区町村のネイチャーポジティブに向けた目標設定や、その取組を認定する制度をつくります。また、「日本版ネイチャーポジティブアプローチ」の実例として、COP16に向けた生物多様性条約科学技術助言補助機関会合(SBSTTA)(*3)等の機会を通じて世界に発信します。


(*3)生物多様性条約科学技術助言補助機関会合(SBSTTA)

生物多様性条約第25条に基づいて設立され、条約の実施状況について科学技術的な見地から締約国会議(COP)および他の補助機関に対して助言を行うことを任務とする。通称「サブスタ」と呼ばれている。


  • 2.パートナーシップの促進

市区町村のネイチャーポジティブを実現するためには、多様な主体によるパートナーシップが不可欠です。実現への課題を三つに整理すると、第一は、市区町村に生物多様性保全やネイチャーポジティブを実現するための資金と専門性が不足していること、第二は、生物多様性に関する情報が不足していること、第三は、市区町村の範囲だけでは生息地を全てカバーできない広域な生息地を必要とする生物種の存在です。

資金と専門性の不足を補うためには、ネイチャーポジティブへの積極的な取組を検討している企業等とのパートナーシップにより資金供給を促進し、その資金を活用して、NACS-Jやコンサルタント等とのパートナーシップにより専門性を担保します。生物多様性情報の不足については、NPOやナチュラリスト、専門家とのパートナーシップにより、地域の生物多様性情報を収集することで、現状を正確に把握します。広範囲の生息地を必要とする生物種については、その保全を踏まえ、市区町村間のパートナーシップを促進していきます。河川の流域や上下流等の生態系のつながりに加え、既存の姉妹都市や、都市部と中山間地域等、様々な市区町村間で効果的なパートナーシップを構築できる可能性があります。

NACS-Jは、市区町村のネイチャーポジティブを実現するために、全国2万5千を超えるNACS-Jの会員・自然観察指導員、自治体、企業とのネットワークを活用して、パートナーシップを構築します。また、モデル地域での実践を通じて、より効果的なパートナーシップを追求します。2025年までに60地域でのパートナーシップ構築を目指して、市区町村、企業等を現在募集しています。


  • 3.生物多様性の定量的な測定と評価の推進

NACS-Jは、地域に即した保全や回復についての目標を設定することによって、進捗状況や関わる主体ごとの貢献度等を定量的に評価する取組を進めて行きます。このことは、市区町村におけるネイチャーポジティブの実現を促進することに繋がります。この取組は、「IUCNネイチャーポジティブアプローチ(*4)」にも適合していきます。

これまで、国立研究開発法人国立環境研究所、株式会社シンク・ネイチャー、株式会社バイオームにご協力を頂きながら検討を進めており、市区町村からネイチャーポジティブを実現するために、今後も様々な手法の可能性を追究します。


(*4)IUCNネイチャーポジティブアプローチ

IUCNでは、ネイチャーポジティブの実現に向けた関心の高まりを受けて、ネイチャーポジティブを定義し、自然の保護と回復に向けた貢献を測定する方法論「IUCNネイチャーポジティブアプローチ」の開発が進められています。2022年10月13日の「IUCNリーダーズフォーラム」でワーキングペーパーが公表されています。

https://www.iucn.org/resources/file/summary-towards-iucn-nature-positive-approach-working-paper


  • 4.NACS-Jネイチャーポジティブ特別委員会の設置

NACS-Jは、市区町村から日本のネイチャーポジティブを実現していくために、日本を代表する自然科学と社会科学の専門家で構成された「NACS-Jネイチャーポジティブ特別委員会」を設置しました。日本の生物多様性の特性と科学性を担保して取組を推進します。


NACS-Jネイチャーポジティブ特別委員会 委員

石井 実  大阪府立大学名誉教授

土屋 俊幸 東京農工大学名誉教授

中静 透  東北大学名誉教授

西廣 淳  国立研究開発法人国立環境研究所 気候変動適応センター 副センター長


  • 参考

公益財団法人 日本自然保護協会について

自然保護と生物多様性保全を目的に、1951年に創立された日本で最も歴史のある自然保護団体のひとつ。ダム計画が進められていた尾瀬の自然保護を皮切りに、屋久島や小笠原、白神山地などでも活動を続けて世界自然遺産登録への礎を築き、現在も日本全国で壊れそうな自然を守るための様々な活動を続けています。「自然のちからで、明日をひらく。」という活動メッセージを掲げ、人と自然がともに生き、赤ちゃんから高齢者までが美しく豊かな自然に囲まれ、笑顔で生活できる社会を目指して活動しているNGOです。山から海まで、日本全国で自然を調べ、守り、活かす活動を続けています。

http://www.nacsj.or.jp/

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会社概要

URL
http://www.nacsj.or.jp/
業種
財団法人・社団法人・宗教法人
本社所在地
東京都中央区新川1-16-10 ミトヨビル2F
電話番号
03-3553-4101
代表者名
土屋 俊幸
上場
未上場
資本金
-
設立
1951年10月