<施行まで2年を切った、医師の働き方改革>医師1,276名に「医師の働き方改革についてのアンケート」を実施し、当事者となる医師の考えや認識度を調査
医療人材総合サービス、事業場向け産業保健支援を行う株式会社エムステージ(東京都品川区、代表取締役:杉田雄二)は、医師転職求人サイト『Dr.転職なび』、医師アルバイト求人サイト『Dr.アルなび』に登録する会員医師に「医師の働き方改革についてのアンケート」を実施し、1,276名より回答を得ました。(調査期間:2022/6/23~2022/6/26)
結果について、(株)エムステージ 事業推進室マネージャーで医療経営士1級の木島が解説します。
結果について、(株)エムステージ 事業推進室マネージャーで医療経営士1級の木島が解説します。
<調査背景> 2024年に予定されている医師の働き方改革ですが、厚生労働省が2022年6月に公表した「医師の働き方改革の施行に向けた準備状況調査」によると、副業・兼業先も含めた時間外・休日労働時間をおおむね把握していると回答した病院は39%と、働き方改革に向けた準備が進んでいるとは言い難い結果となっています。 そのような中で、当事者となる医師自身は働き方に関してどのような考えを持っているのか、働き方改革への理解はどれくらい進んでいるのかについて、調査を実施しました。 |
<調査結果のサマリー>
- 2人に1人の医師が、労働時間による影響で「働き方を変えたい」と思ったことがある
- 9割近くの医師が、医療機関を選ぶ際に「働き方改革の取組状況」を重視する
- 一方で、7割以上の医師は「医師の働き方改革」以降の自身の働き方を把握していない
- 常勤先の「働き方改革」が進んでいると感じている医師はわずか25%
- 自由回答では、「適正な金額の給与の支払いと同時に整備されなければ、ただの減給になる」、「時間外労働をしていても、自己研鑽と言われるようになった」などの声が上がる一方、「医療の質向上につながればよい」などの期待の声もあがった
- 労働時間の管理だけではなく、複数主治医制や事務作業の効率化といった業務体制の整備、経営者や患者の意識改革などの包括的な取り組みを進めることが望まれている
1. 2人に1人以上の医師が「働き方を変えたい」と思ったことがある
労働時間による影響で「働き方を変えたい」と思ったことがあるかについて質問したところ、57%が「思ったことがある」、43%が「思ったことはない」と回答しました。2人に1人の医師が、「働き方を変えたい」と思ったことがある状況が分かりました。
2. 働き方を変えたいと思った医師の4割以上が「転職」を選択
労働時間による影響で「働き方を変えたい」と思った経験のある医師に、その際に取った行動について質問したところ、最も多い回答は「転職して、勤務先を変えた」(回答者の44%)となりました。一方で、「何も行動せず、我慢した」(回答者の29%)の回答も多くありました。
「その他」の回答では、“裁判を起こした(50代女性・その他の専門)”、“労働基準監督署に相談した(50代男性・その他の専門)”、“留学を決めた(30代男性・外科系)”、“フリーランスになった(40代男性・その他の専門)”などの回答がありました。
3. 9割近くの医師が、医療機関を選ぶ際に「働き方改革への取り組み状況」を重視している
今後転職を検討することがあった場合に、転職先を選ぶポイントとして「医療機関の働き方改革への取り組み状況」を重視するかを質問したところ、38%が「重視する」、48%が「まあ重視する」と回答し、86%の医師が医療機関を選ぶ際に働き方改革の取り組みを重視していることが分かりました。
4. 2024年4月から医師の働き方改革の適用が始まることを「知らない」医師は全体の2割以上
2024年から医師の働き方改革の適用が始まることを知っているかについて質問したところ、78%が「知っている」、22%が「知らない」と回答しました。2024年4月まで残り2年を切る中で、全体の2割以上が2024年の「医師の働き方改革」の適用を知らないと回答しており、まだまだ認知度が高いとは言い切れない状況が分かりました。
5. 医師の働き方改革に関する情報源は、「インターネットの記事」が最多
医師の働き方改革に関する情報収集を行う手段について質問したところ、「インターネットの記事」が最多となりました。「その他」の回答では、“医師会”、“新聞”、“ニュース”などが挙がりましたが、複数名から“全く入手していない(50代男性・精神科 ほか)“”どうせ何も変わらないから、知らない(30代男性・その他の専門)“といった声も挙がりました。
6. 半数以上の医師は、「労働時間の上限規制」の内容を知らない
医師の働き方改革では、医師の時間外労働について「原則、年960時間。例外として救急医療現場などでは年1,860時間」の上限規制が設けられます。
この「労働時間の上限規制」の内容を知っているかについて質問したところ、9%が「詳しく知っている」、39%が「だいたい知っている」、37%が「あまり知らない」、15%が「全く知らない」と、回答しました。「あまり知らない」と「全く知らない」を合わせると、内容をよく知らない医師は全体の半数以上を占めました。
7. 7割以上の医師は、「医師の働き方改革」以降の自身の働き方を把握していない
医師の働き方改革により労働時間の上限規制が設けられることで、2024年以降の自身の労働時間上限が何時間となるか知っているかについて質問したところ、70%が「知らない」、30%が「知っている」と回答しました。自身の労働時間がどのような影響を受けるかを把握していない医師が全体の7割を超える結果となりました。
8. 「宿日直許可」について理解していない医師も約7割
医師の労働時間上限の制限に大きく関わってくるのが、勤務する医療機関の「宿日直許可」の取得状況です。宿日直許可がある医療機関であれば、その許可の範囲内で宿日直の業務時間が原則的に労働時間とみなされません。
この「宿日直許可」の基準や内容を知っているかについて質問したところ、7%が「詳しく知っている」、26%が「大体知っている」、39%が「あまり知らない」、28%が「全く知らない」となり、「あまり知らない」と「全く知らない」を合わせ約7割が、自身の労働時間上限の管理に関わる「宿日直許可」について理解していないことが分かりました。
9. 常勤先が「時間外労働・休日労働」を正しく把握していると回答した医師は約半数のみ
常勤先が、医師の「時間外労働・休日労働の実態」を正確に把握しているか質問したところ、54%が「把握している」、32%が「把握していない」、14%が「分からない」と回答し、正しく把握していると回答した医師は約半数となりました。
10. 常勤先における勤怠管理で最も多いのは「手動のタイムカードによる打刻」
常勤先における勤怠管理の方法について質問したところ、「手動のタイムカードで打刻」が最も多い回答となり、40%を占めました。また「自己申告で記入」、「勤怠管理されていない」を合わせると、常勤先による勤怠管理がされていない医師が35%に上る結果となりました。
11. 常勤先の「働き方改革」が進んでいると感じている医師はわずか25%
常勤先での「働き方改革」が進んでいるか質問したところ、25%が「進んでいる」、46%が「まだ進んでいないが、今後は進むと思う」、29%が「あまり進んでおらず、今後も進まないと思う」と回答しました。「まだ進んでいない」と感じている医師の多くは、今後の改革へ期待を寄せていますが、約3割の医師は今後も進まないと思っていることが分かりました。
12. 「働き方改革」を進めるためには、医療機関の意識改革が最も重要
常勤先での働き方改革が進んでいるか質問し、「まだ進んでいないが、今後は進むと思う」、「あまり進んでおらず、今後も進まないと思う」と回答した医師に対して、働き方改革を進めるために、どのようなことが必要かを質問しました。
回答のTOP3は、1位「医療機関の意識改革」、2位「医療機関の制度見直し・整備」、3位「医療機関による、労働状況などの現状把握」となり、医療機関の意識改革が最も重要であるという回答となりました。
13. 「医師の働き方改革」に医師が期待していること、提案、感想など(自由回答より抜粋)
◆収入の確保
・労働時間だけでなく適正な金額の給与の支払いについても同時に整備されなければ、ただの減給になると懸念している
・常勤先の給料が少なく、外勤や当直バイト等で補填している。今後、バイトが十分に出来なくなる場合には、対策を考えなければと思っている
・真面目に適用したら大学病院は間違いなく崩壊する。大学病院の給与改正とセットでしないと、皆辞める
・大学病院のようなところでは尚一層、薄給の中で家族を養う必要がある。働けない制度など作ると、まともに働く医師には迷惑でしかない
・労働時間が短縮されてもやるべき仕事量が減らないなら、収入が減る分だけ、仕事に対するモチベーションは下がる
・収入を保証した上での働き方改革をお願いしたい
・給与を下げようしていることに腹がたつ
・公務員であってもアルバイト可能にしてほしい
◆適切な勤怠管理、時間外手当
・自己研鑽という名の時間外労働が心配
・時間外労働をしていても自己研鑽と言われるようになった。環境も変えずに働き方が変えられるはずがない
・労働内容は変わらないのに勤務時間だけを減らすことはできないのだから、給与がつかない時間外労働が増えて、見た目上は勤務時間が上限以内に収まっている状況になる
・働き方改革に則るように時間外を制限して、かえって無償労働を求められるようになった
・現在は産業医であり企業勤めである。病院との時間外業務に対する管理体制やその対応の違いに驚いた。自己研鑽の言葉で、医師の時間外労働が片付けられないことを期待する
・早朝のカンファレンスや就労後の医局会が時間外にならない
・時間外は満額しっかりつけて欲しい。気持ち的にも辛くなる
・連続勤務に対する罰則を規定する
・「働き方改革」を根拠に、短時間労働・軽負荷労働となる医師がいる一方、「名ばかり管理職・理事・経営者」の肩書をつけられ、労働時間規制除外となる医師が、そのしわ寄せを被るような事態が憂慮される。チェック機能を考える必要がある
・事務員が勝手に出勤時間、退出時間を記入しているようだ。呼び出しがあっても全くカウントされていない
・非常勤医として数か所を担当している医師の正確な労働状況は、本人以外誰が管理するのだろうか
・常勤先(大学、公的医療機関など)では時間外も含めて目いっぱいこき使い、バイトはさせないという医師奴隷化改革
◆柔軟・段階的な対応
・杓子定規に実施することを強要せずに、弾力的に実施していけばよい
・働きたい者は働けば良い。働きたくない者は働かなければ良い。一律に規制するのではなく、自由に選べるようになれば良い
・「医師の働き方改革」が進行していく中で、ある程度、柔軟な労働時間調整と労務管理が定まっていくとよいと思う
・強制的に労働制限されると、収入の低下を招くケースもあり、ある程度自己決定を伴う流動的なものにしてほしい
・常勤の病院での労働環境の管理は重要と考えるが、非常勤勤務や当直については医師の個人的な意思で行っている場合もあり、最初から規制の範囲に入れないで段階的導入が良いのではないか。そうしないと民間病院の一部は人手不足になる可能性がある
・働き方改革で上限を設定されるのは心外。むしろ働きたい人には、働きたいだけ働く権利を保障すべき
・公立病院などは医師の勤務体制が旧態依然の硬直的なものであり、柔軟性のある勤務形態を取れないため、結果として人材の流出を招いている
・そもそも医療機関で他人の命や生活を背負っている中、時間外申請できる上限など時間で区切る意味も分からない。ボランティアで重い責任を負えなど、是非やめていただきたい
・楽しんで仕事をしている人間にとって、仕事時間を制限するのは、愚かなことだと思う
・働き方改革より個人が柔軟に契約できることが大切と考える。厳しい時間規制は職種に馴染まない
・医師に労働時間制限を設けることは間違っている。日本が人為的な医療過疎になってしまう
◆医師体制・業務体制の整備
・主治医性制の廃止。複数主治医制度が広まれば良い
・夜間休日における救急体制の地域連携
・診療にほぼ無関係で無意味な書類を簡略化し、書類に揚げ足を取るだけで業務を圧迫する審査会という無駄を今すぐやめること
・当直、オンコールが嫌で、それらが無い仕事にした。当直は規制されると思うが、オンコールについても定義や規制をしてほしい
・運用面でやりくりする働き方改革ではなく、人員配置などの構造変化を伴った改革になることを期待する
◆医療の質向上に期待
・医療の質の向上に繋がればよい
・1人医長など個人に負担がかかることは、減る傾向になると良いのではと思う
◆経営者や患者の意識改革
・働き方は経営者の認識がカギになるので、情報が多方面から出て周知されることを望む
・医師は聖職でなく労働者であることの再確認が必要と考える
・医師は聖人やボランティアではなく、一職業であることをもっと国民に周知してほしい。勤務地すら選べないなんて地獄
・時間外受診を減らすなど、患者側にも変化してもらわないとならない
・医師の働き方そのものもあるが、むしろ医療体制に対する理解が浸透していない患者や患者家族の方が問題。主治医制が転換されてきて時間は経つが、土日祝日いつでも主治医に説明させろ、診察しろ、看取らせろ、と要求する患者やその家族、酔っ払って救急外来に運ばれた挙句、悪態をついてクレームを撒き散らし威嚇し続けて時間を取らせる患者やその家族、そうした人がいなければかなり負担や時間外労働は減る。医者の数や働き方、という話だけではなく、そもそものモラルや理解の低さも大きな問題
◆医療集約につながる
・医師を確保できない病院が廃院になれば、全体として医療費を削減できる
・小さな医療機関が人手不足で廃院すれば、ひいては医療の集約化となる
◆改革は難しい/期待していない/意識していない
・改革は困難
・現場とかけ離れたところで議論されている
・医師がいないので無理だと思う
・現状では地方など医師の少ないところでは改革案通りは困難だと思う
・患者サービスが低下する
・医療機関に権限を持たせれば、結果改革にはならない
・今のところ改革に期待することはなく、むしろ邪魔だと感じている
・フリーランスで自由にやっているので、あまり意識していない
<アンケート調査概要>
アンケート実施日:2022/6/23~2022/6/26
有効回答:1,276名
対 象:医師求人サイト『Dr.転職なび』、『Dr.アルなび』に登録する会員医師
回答方法:WEBを利用したアンケート調査
回答属性①勤務先:一般病院698名、クリニック(勤務医)216名、大学病院182名、クリニック(開業医)104名、企業など(産業医、健診施設、メディカルドクター等)56名、老人保健施設11名、その他9名
回答属性②年齢 :20代73名、30代373名、40代365名、50代314名、60代132名、70代19名
※引用・転載時には「株式会社エムステージ」と弊社クレジットを明記下さい。
<解説者紹介>
株式会社エムステージ メディカルヒューマンリソース事業部
事業推進室マネージャー
木島 梢(きじま こずえ)
医師のキャリアアドバイザー、医療機関の採用支援担当を経て現職。
2014年、社会保険労務士資格試験に合格。医師の働き方改革について、医師・医療機関へのアドバイスも行う。医療経営士1級
■エムステージの医師求人サイト『Dr.転職なび』『Dr.アルなび』について
「Dr.転職なび」:https://tenshoku.doctor-navi.jp
「Dr.アルなび」:https://arbeit.doctor-navi.jp/sh
3万人以上の医師が登録する、医師向け転職求人サイト、アルバイト求人サイトです。
医師の多様な働き方を推進し、医師不足・医療従事者の過重労働などの課題解決を目指しています。
株式会社エムステージについて
「すべては、持続可能な医療の未来をつくるために」をビジョンに、医療従事者のキャリア支援・医療機関向け
採用支援と、事業場向け産業保健サービスを提供しています。
<会社概要>
商 号:株式会社エムステージ
代表者:代表取締役 杉田 雄二
設 立:2003 年 5 月
所在地:〒141-6005 東京都品川区大崎 2-1-1 ThinkPark Tower5 階
事業内容:医療人材総合サービス、事業場向け産業保健支援
プレスリリースに関するお問い合わせ先
株式会社エムステージホールディングス 広報:武田
TEL: 03-6867-1170/MAIL: t.takeda@mstage-corp.jp
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