「学校の働き方改革」新たなイシュー。教職員の経済的自己負担は、なぜスルーされ続けてきたのか。その発生の経緯と当事者の意見に、今こそ耳を傾けるときだ。
近年、社会問題化されてきた教職員の労働環境。しかし彼らの経済的な自己負担は暗黙の了解とされてきた。新刊『教師の自腹』では、教職員1,034名に対し自腹額や経緯、頻度などを調査。解決策の提案に乗り出す。
株式会社東洋館出版社(本社:東京都千代田区、 代表取締役社長:錦織圭之介)は、 『教師の自腹』(福嶋尚子・栁澤靖明・古殿真大 著)を2024年5月28日(火)に、 刊行します。
https://www.amazon.co.jp/dp/4491054460
1年間で自腹をしたことが「ある」――75.8%(1,034人中784人)
赤ペンやごほうびシールなどの消耗品、子どもが忘れたとき用の文房具、ドリルや実験の材料などの教材、部活動の審判資格取得費用や審判服、家庭訪問の交通費、駐車場代、修学旅行の下見費用、徴収金未納の立替。強制参加の研修参加費、自己研鑽のための教育書。
教職員が仕事をするうえで、必要なものを私費で負担する「自腹」は、人や学校により差はあるものの、金額の大小や費目・場面を問わず、これまで大いに存在してきました。
新刊『教師の自腹』では、全国の公立小・中学校に勤務する1,034人の教職員に対し、大規模調査「教職員の自己負担額に関する調査(2022年度間)」(調査委託先:マクロミル)を実施。教職員による経済的自己負担の経緯や名目、金額と頻度などを調査しました。
それによって、回答者1,034人中784人、つまり8割弱が、2022年度の1年間に自腹を経験していたことが分かりました。
「自腹」の多種多様な背景と教職員の思い
本調査からは、「自腹はなくすべきだ」と考える教職員が多くいることがみえてきました。一方で、その個別の自腹の「経緯」や「意見(どう思っているか)」を聞いた質問への回答に目を凝らしてみると、手続きの時間を省くために自腹をすることもあれば、積極的に意義を感じて自腹をすることもあり、また、周囲が自腹をしているから自分もする、といった、その背景の多様さもみえてきました。
つまり「自腹発生」には、法制度上のマクロな理由に加え、「教育は生もの」という、常に柔軟さが必要とされる学校という場ならではの性質、もしくは各教職員側の意識や各学校の風土などのミクロな理由も複雑に絡み合っているのです。
よりよい働き方実現のための解決策とは?
本書は、自腹の状況を数値で共有したうえで、当事者から寄せられた様々な声を踏まえ、以下のような、現時点で示せる解決策をまずは提案することで、これまで手つかずとなってきた状況を一歩前に進めることを目的としています。
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学校財務マネジメントの確立
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ヒト、モノ、カネへの意識改革
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学校財務制度の改善
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教育行政との連携
私費にたよらない真の意味での「公」立学校の実現のため、教育行政の専門家である福嶋尚子さん(千葉工業大学准教授)が個別事例や意見を丁寧に検討し、古殿真大さん(名古屋大学大学院生)が、1,000件を超える回答の量的分析を執筆。具体的な解決策の章を担当するのは、現役で学校の財務を担う栁澤靖明さん(公立中学校事務職員)。3名の著者の専門性が結集しました。
この試みに、教育の分野の各所から応援の声が寄せられています。
これがきっかけとなり、どのような制度や実践につなげていくか、さらなる議論が始まることを、願っています。
イベント開催「自腹について話そう」
2024年6月7日(金)には、本書の刊行を記念して無料オンラインイベントを行います。
イベントでは、みなさまからのさらなる「声」を大募集。
学校種や職種を問わず、これまでに経験してきた自腹や、いま現在、自腹関連で困っていること、わからないこと、周りに言い出せずにいること、納得していないこと、なんでも教えてください。
『教師の自腹』の著者陣と参加者のみなさま全員で、寄せられた体験談やお悩み、ご意見について、一緒に考えます。もちろん、回答は任意、匿名です。
まずは課題を共有し、どんな解決策があるか整理しましょう。
自腹から「解放」されるための道は、きっとあるはずです。
イベント情報
『教師の自腹』刊行記念オンラインイベント
「自腹について話そう」
開催日:2024年6月7日(金)
19:45 開場
20:00 開演
20:00-20:30 登壇者自己紹介
書籍解説
20:30-21:30 「自腹について話そう」
21:30 終演
形態:Zoomウェビナー(アーカイブ配信あり) ※質問を事前募集
参加費:無料
主催:東洋館出版社
申し込みはこちら:https://www.toyokan.co.jp/products/seminar_20240607
【著者紹介】
福嶋尚子
千葉工業大学工学部教育センター准教授/「隠れ教育費」研究室チーフアナリスト
新潟大学教育人間科学部(当時)で教育行政学、教育法学、教育政策学を学び、修士課程を経て、2011年東京大学大学院教育学研究科の博士課程に進学。2015年度より千葉工業大学にて教職課程に助教として勤務し、2021年より准教授(現職)、教育行政学を担当。2016年12月に博士号(教育学)取得。モットーは「子どもを排除しない学校」「学校の自治」「公教育の無償性」の実現、「教職員の専門職性」の確立。研究関心は、教材整備、学校財務、学校評価、校則、給食、PTA、不登校など。
栁澤靖明
埼玉県川口市立青木中学校事務主幹/「隠れ教育費」研究室チーフディレクター
県内の小・中学校に事務職員として勤務。「事務職員の仕事を事務室の外へ開き、教育社会問題の解決に教育事務領域から寄与する」をモットーに、教職員・保護者・子ども・地域、そして現代社会へ情報を発信。研究関心は、家庭の教育費負担・就学支援制度。具体的には、「教育の機会均等と無償性」「子どもの権利」「PTA活動」などを研究している。勤務と並行し、中央大学法学部通信教育課程で学び、校内でリーガルサポートにも取り組む。日本教育事務学会理事(研究推進委員会副委員長)、学校事務法令研究会会長、川口市立労働安全衛生委員、川口市教育研究会事務局長などをつとめる。
古殿真大
名古屋大学大学院教育発達科学研究科博士後期課程院生/日本学術振興会特別研究員(DC2)
筑波大学人間学群教育学類で教育社会学を学び、名古屋大学大学院教育発達科学研究科の博士課程に進学。専門は教育社会学、障害児教育。教育に医療の知識が持ち込まれることに関心を寄せ、とりわけ情緒障害に着目し、歴史的な観点から研究をしている。主要業績として「普通学級における精神衛生的処置と『性格異常』」(『保健医療社会学論集』近刊)などがある。
*著者の栁澤は「柳」ではなく「木」偏に「夘」が正式です
書名:教師の自腹
著者:福嶋尚子/栁澤靖明/古殿真大/著
判型:四六判
頁数:328
発売日:5月28日(火)
価 格:2,310円(税10%)
ISBN:9784491054469
発行元:東洋館出版社
URL:https://www.toyokan.co.jp/products/5446
Amazon:https://www.amazon.co.jp/dp/4491054460
東洋館出版社
教育書の専門出版社として教科教育の分野に注力して出版活動を続けています。シリーズ累計110万部を突破した『板書シリーズ』、文部科学省刊行物など、約1800点の書籍が稼働しています。『初等教育資料』や『新しい算数研究』ほか専門誌、児童書「学校がもっとすきになるシリーズ」も刊行。また、一般書レーベル「TOYOKAN BOOKS」では、スポーツ、ビジネス、子育てなど様々なジャンルにて展開しています。
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