子どもの不登校で「夫婦関係に危機」7割超 母親たちの葛藤と役割偏重の実態とは【調査報道】
「心理的サポートも、学校とのやりとりも“全部妻”」——家庭内に偏るケア負担と、夫婦間のすれ違いの構造を可視化。/キズキ共育塾(不登校オンライン)

子どもの不登校は、「親子関係」のみならず、「夫婦関係」にも影響を及ぼすことが多いです。
キズキ共育塾が運営するウェブメディア「不登校オンライン」は、2025年3月12日〜25日に、お子さんが不登校・行き渋りである(であった)保護者さまを対象に、「不登校の保護者の夫婦関係」についてのアンケートを実施しました。
ご協力いただいた方々には、改めて御礼申し上げます。
そしてこの度、お寄せいただいた声を公表いたします。このプレスリリースでは、定量的な結果と、不登校オンライン編集部からの簡単なコメントを紹介します。
不登校オンラインのウェブサイトには、定量的な項目に関連する自由記述(エピソード)、自由記述項目、キズキ不登校相談員・伊藤真依のコメントも掲載しております。併せてご覧ください。
はじめに〜回答は全て「妻(母親)」から〜
今回のアンケートには、66名の方からご回答をいただきました。そして、回答者の全てが「妻(不登校の子どもにとっての母親)」に当たる方々でした。
不登校オンラインがこれまでに実施したアンケートでも、母親からの回答が父親よりも多い傾向はありましたが、全員が母親という結果は今回が初めてです。
もちろん、これは単なる偶然かもしれません。
しかし、もしかすると「子どもの不登校に関連して、特に夫婦関係について語りたい」という思いは、他のテーマ以上に妻(母親)に強く、夫(父親)には届きにくい傾向があるのかもしれません。
1.「お子さんの不登校が始まったとき」と「現在」の、配偶者との関係を教えてください。
回答66名
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子どもの不登校が始まったときと同じ配偶者との結婚が続いている:61名(92.42%)
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子どもの不登校が始まった後、離婚して、いま配偶者はいない:2名(3.03%)
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子どもの不登校が始まったとき、すでに離婚していて、いま配偶者はいない:2名(3.03%)
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これまでに結婚したことはない(ずっとシングルマザー・ファザーである):1名(1.52%)
ご回答いただいた方々は、子どもの不登校が始まる前からの婚姻関係を継続している方が大多数となりました。
ここから先は、「子どもの不登校が始まったときと同じ配偶者との結婚が続いている」「子どもの不登校が始まった後、離婚して、いま配偶者はいない」と回答された方のものをお伝えします。
2.お子さんの不登校が始まってから、夫婦関係は変化しましたか?
回答62名
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悪くなった:33名(53.23%)
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変わらない:21名(33.87%)
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よくなった:8名(12.90%)

半数以上が「悪くなった」と回答しており、不登校が夫婦関係に与える影響の大きさがうかがえます。話し合いの不足や対応方針のずれが、関係の悪化につながる場合もあるようです。
一方で、変わらない・よくなったという回答も、5割近くあります。「子どもの不登校は、夫婦関係に必ず悪影響がある」とは言えないことがわかります。
3.夫婦の間で、不登校の対応について話し合う機会はありますか?
回答62名
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たまにある:21名(33.87%)
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よくある:18名(29.03%)
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ほとんどない:17名(27.42%)
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まったくない:6名(9.68%)

「よくある」「たまにある」と答えた方が6割を超えており、一定のコミュニケーションは保たれている様子が見て取れます。
しかし一方で、「ほとんどない」「まったくない」も4割近くを占めており、家庭による温度差も浮き彫りになっています。
4.不登校について、夫婦で意見が食い違うことはありますか?
回答61名
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よくある:32名(52.46%)
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たまにある:15名(24.59%)
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ほぼない:9名(14.75%)
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まったくない:5名(8.20%)

「よくある」と答えた方が過半数を超え、対応における夫婦間の考え方の違いがストレス源となる可能性が伺えます。「たまにある」を加えると、意見の食い違いがあるのは約8割(77.05%)です。
ただし前述の通り、子どもの不登校に関連して夫婦関係が悪化したのは約5割。「食い違いがあるからといって、夫婦関係が悪化するとは限らない」ということも言えるでしょう。
5.不登校の対応に関して、夫婦の役割分担はありますか?
回答62名
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ある:36名(58.06%)
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ない:26名(41.94%)

約6割が「役割分担がある」、4割が「ない」となりました。役割の有無がコミュニケーションやストレスの度合いにも影響している可能性があります。
5-1.どのような役割分担がありますか?妻の役割
回答211件
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学校との調整:49件(23.22%)
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日常の食事や生活の世話など:49件(23.22%)
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特に不登校に関連した心理的サポートや話し相手など:47件(22.27%)
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学校以外のサポート機関との調整:44件(20.85%)
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仕事への注力:22件(10.43%)

学校とのやり取り、子どもの心理的ケア、生活の世話など、家庭内外を問わず多くの領域を妻が担っていることがわかります。責任の集中が、妻(母親)の心身の負担に直結していると考えられます。
5-2.どのような役割分担がありますか?夫の役割
回答46件
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仕事への注力:32件(69.57%)
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特に不登校に関連した心理的サポートや話し相手など:6件(13.04%)
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日常の食事や生活の世話など:4件(8.70%)
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学校との調整:2件(4.35%)
-
学校以外のサポート機関との調整:2件(4.35%)

「仕事への注力」が大半を占め、子どもの不登校に直接関与する役割が少ないことが浮き彫りになっています。心理的サポートなどに関わる夫は一部にとどまっています。
仕事(=お金を家庭に入れること)はもちろん大切ですし、それも子育ての一つではあります。ただしそれが「直接的な子育ての、妻(母親)への押し付け」になると、妻(母親)のストレスや負荷は高まると考えられます。
6.子どもの不登校に関連して、夫婦どちらか、または両方にストレスが増えましたか?
回答63名
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とても増えた:52名(82.54%)
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少し増えた:10名(15.87%)
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変わらない:1名(1.59%)
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少し減った:0名
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とても減った:0名

8割以上が「とても増えた」と回答しており、不登校は夫婦にとっても精神的な負荷の大きい出来事であることが明らかです。また、当然かもしれませんが、「ストレスが減った」という回答は0名でした。
ただし繰り返す通り、夫婦関係が悪化したのは約5割。ストレスが増えたからといって、夫婦関係が必ず悪化するとは限りません。
7.子どもの不登校に関連して、夫婦関係の危機を感じたことはありますか?
回答63名
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はい:46名(73.02%)
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いいえ:17名(26.98%)

7割以上が「感じたことがある」と答えており、不登校が夫婦関係の基盤を揺るがす深刻な問題であることがうかがえます。無意識のうちに互いを責める構図が生まれていることもあるでしょう。
ただし、「ご回答時点では」という話ではありますが、子どもの不登校が始まった後に離婚した方は66名中2名(3.03%)です。危機はあっても、離婚していない方が多いということになります。
8.子どもの不登校に関連して、夫婦の会話は増えましたか?減りましたか?
回答62名
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変わらない:27名(43.55%)
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減った:24名(38.71%)
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増えた:11名(17.74%)

「変わらない」が最多ではあるものの、「減った」「増えた」の合計は56.45%と半数を超えており、夫婦間のコミュニケーションに何らかの影響が出ているケースの方がやや多いです。
会話の減少は、子どもへの対応を話し合う機会の減少とも言えるでしょう。そしてそれは、「子どもへの対応を妻(母親)だけで考えざるを得なくなる」という状況にもつながります。
まとめに代えて
子どもの不登校は、親自身のストレスを増加させるだけでなく、夫婦関係にも深刻な影響を及ぼしています。とりわけ対応方針の違いや役割の偏りが、関係の悪化や会話の減少を招いているようです。
一方で、話し合いや役割分担を通じて関係を維持・改善できている夫婦も存在します。
お互いの立場や気持ちを尊重しながら、子どもへの対応と夫婦関係の両立をどう築いていくかが課題だといえるでしょう。
不登校オンライン(キズキ)では、「不登校さんのお子さんのこと(お子さんの不登校のこと)は、親だけで抱え込まず、サポート団体に相談しましょう。そうすることで、具体的な対応策が見つかっています」と常にお伝えしています。
これは、お子さんのことだけに限らず、夫婦関係についても同じです。「不登校に関連した、夫婦関係のお悩み」がある方々には、ぜひ専門家・サポート団体を利用していただきたいと思います。
不登校オンラインでは、これからも「不登校の親」を取り巻く諸課題を明らかにし、社会に伝えてまいります。
自由記述の項目などはこちら
定量的な項目に関連する自由記述(エピソード)、自由記述項目、キズキ不登校相談員・伊藤真依のコメントを、不登校オンラインの下記ページに掲載しております。併せてご覧ください。
■【不登校と夫婦関係】「関係が悪化した」「会話が減った」「危機を感じた」…母親たちのリアルな声〜
https://futoko-online.jp/news-article/14815/
■子どもの不登校が始まってからの、夫婦関係の変化【不登校と夫婦関係のアンケートから(2)】
https://futoko-online.jp/news-article/14816/
■子どもの不登校、夫婦での対応の話し合い【不登校と夫婦関係のアンケートから(3-1)】
https://futoko-online.jp/news-article/14818/
■子どもの不登校、夫婦で話し合えない理由【不登校と夫婦関係のアンケートから(3-2)】
https://futoko-online.jp/news-article/14817/
■子どもの不登校、夫との意見の違い【不登校と夫婦関係のアンケートから(4)】
https://futoko-online.jp/news-article/14819/
■子どもの不登校、夫婦の役割分担【不登校と夫婦関係のアンケートから(5-1)】
https://futoko-online.jp/news-article/14820/
■子どもの不登校、夫婦の役割分担についての夫への感謝・要望・伝えたいこと【不登校と夫婦関係のアンケートから(5-2)】
https://futoko-online.jp/news-article/14821/
■子どもの不登校、夫婦に増えたストレス【不登校と夫婦関係のアンケートから(6)】
https://futoko-online.jp/news-article/14822/
■子どもの不登校と、夫婦関係の危機【不登校と夫婦関係のアンケートから(7)】
https://futoko-online.jp/news-article/14823/
■子どもの不登校と、夫婦の会話の増減【不登校と夫婦関係のアンケートから(8)】
https://futoko-online.jp/news-article/14824/
■「子どもの不登校と夫婦関係」についての、社会・法律・職場への支援や理解に関する要望【不登校と夫婦関係のアンケートから(9)】
https://futoko-online.jp/news-article/14825/
■「子どもの不登校と夫婦関係」、妻たちの「こうしておけばよかった」【不登校と夫婦関係のアンケートから(10)】
https://futoko-online.jp/news-article/14826/
■子どもの不登校、妻が夫に思うこと【不登校と夫婦関係のアンケートから(11)】
https://futoko-online.jp/news-article/14827/
■「子どもの不登校と夫婦関係」、現在悩んでいる方への妻(母親)たちからのメッセージ【不登校と夫婦関係のアンケートから(12)】
https://futoko-online.jp/news-article/14828/
■「子どもの不登校と夫婦関係」についての自由記述【不登校と夫婦関係のアンケートから(13)】
https://futoko-online.jp/news-article/14829/
不登校の親のコミュニティの紹介
不登校の子どもがいる親にとって、悩み事を共有したり、雑談したりできる環境は極めて重要です。その例として、キズキが運営に関わる2つのコミュニティを紹介します。
■不登校が「特別」ではない、LINEを利用したクローズな環境で親同士のコミュニケーションができる「親コミュ」
https://kizuki.or.jp/oya-community-lp/
■不登校の親が一人で抱え込まないためのLINEオープンチャットのコミュニティ「不登校の親ネット」はこちら
https://camp-fire.jp/projects/837064/view
不登校オンラインについて
株式会社キズキが運営するウェブメディア「不登校オンライン」は、不登校のお子さんがいる保護者さまのためのメディアです。
不登校オンラインでは、不登校にまつわる保護者さんの体験談、お子さんの気持ち、著名人のインタビュー、不登校からの勉強法などの記事を掲載。「地に足のついた確かな情報」でお悩みに寄り添い、 「次の一歩」に進むための方法を紹介しています。
不登校オンラインのトップページはこちらです。
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株式会社キズキについて
「何度でもやり直せる社会をつくる」というビジョンを持つキズキでは、その実現のために、様々な「困難」を経験した方向けに、様々な事業を展開中です。
本社所在地:東京都渋谷区千駄ヶ谷5-29-7 ドルミ御苑202号
会社設立日:2015年7月13日
代表:安田祐輔(代表取締役社長)
従業員数:役員3名、正社員:123名、契約社員・アルバイト:1,256名(2025年2月)
株式会社キズキウェブサイト:https://kizuki-corp.com/
◆各種事業について
○不登校オンライン(メディア事業)
不登校のお子さんがいる保護者の方向けのwebメディア。不登校にまつわる保護者さんの体験談、お子さんの気持ち、著名人のインタビュー、不登校からの勉強法などの記事を掲載。「地に足のついた確かな情報」でお悩みに寄り添い、 「次の一歩」に進むための方法を紹介しています。
○親コミュ(メディア事業)
不登校のお子さんがいる保護者さまのためのオンラインコミュニティ。
「不登校が特別ではない環境」で、チャットを通じて、不登校の親同士で、悩みを解決し合ったり、雑談したりできます。また、有識者を招いたオンライン講演会も提供しています。
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○キズキ共育塾(学習支援事業)
一人ひとりの困りごとに寄り添い、自分に合った学び方を見つけていくことをコンセプトにした学習塾。不登校や中退をはじめ、人間関係の不安、体調の心配、学習への苦手意識など、お受けするご相談の種類は多岐に渡る。埼玉県、東京都、神奈川県、愛知県、京都府、大阪府、兵庫県に、全16校舎(2025年3月)。2025年5月末開校の福岡天神校を加えて全17校。オンライン授業は全国対応。
https://kizuki.or.jp/?argument=uL7wWpKB&dmai=lqeNb-prgt-250502
○家庭教師事業(学習支援事業)
「家庭教師キズキ家学」を運営。不登校やひきこもりの方々のために、関東・関西で、勉強のみならずカウンセリングや外出同行も含めた支援を実施。
○公民連携事業
全国各地の自治体から委託を受けて、低所得世帯の子どもたちの学習支援などを実施(東京都足立区・渋谷区・八王子市、大阪府吹田市、大阪市大正区・住吉区、兵庫県西宮市、愛知県名古屋市など。(2025年1月現在、累計で42自治体等から48案件を受託)。
○ビジネスカレッジ事業(就労支援事業)
東京都、神奈川県、大阪府、兵庫県にて、就労移行支援事業所「キズキビジネスカレッジ」を運営。
うつ病などの精神疾患や発達障害のために退職した方、また、それらの疾患や障がいのために就労できずにいる方などのために、「一人ひとりに適した就職」のための支援を実施。
https://kizuki-corp.com/kbc/?argument=uL7wWpKB&dmai=lqeNb-prst-250502
今後もキズキは、創業から11年間での1万2千人を超える方々への相談・支援経験を活かし、既存事業の発展及び新規事業の積極的展開を通じ、様々な理由でつまづいた方々が「何度でもやり直せる社会」の実現に向けて邁進いたします。
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