TXP Medical、広島県の新たな"救急搬送支援システム"構築事業者に選定
国が主導する「救急医療情報連携プラットフォーム」(新しい地方経済・生活環境創生交付金デジタル実装型 TYPES)全国展開の先行モデル事業として、先進的システムを開発・実証
TXP Medical株式会社(本社:東京都文京区、代表取締役:園生智弘)は、5月12日に公告の「広島県救急搬送支援システム構築業務」において事業者として選定されました。本事業は、国(厚生労働省・消防庁)が主導する「救急医療情報連携プラットフォーム」の将来的な国や地方の統一的・標準的な基盤として、全国に先駆けて広島県で実施される先行モデル事業です。

本事業の特徴
本プロジェクトは広島県全域で、全国の救急搬送のDX(デジタル・トランスフォーメーション)を牽引する、将来的な国や地方の統一的・標準的な基盤となる先行モデル的な取り組みとして、国の交付金制度(TYPES)を活用して行われる実証プロジェクトです。搬送時間の短縮、業務効率化、医療の質の向上を目的に、全国展開を視野に入れた大規模実証の第一歩です。
社会的意義:救急搬送を支える公共インフラの再設計
本事業は、単なるシステム導入ではなく、命を支える救急搬送を社会インフラとして再設計する取り組みです。 広島県での取り組みは、全国標準の構築を見据えた政策モデル実証の第一歩であり、TXP Medicalがその設計と実装を担うことで、現場で得られた知見を制度設計へと反映する仕組みが形成されます。
背景と課題:救急搬送を取り巻く深刻な問題
高齢化の進行や自然災害の激甚化といった社会変化を背景に、全国で救急搬送件数が増加し続けています。その一方で、搬送調整の多くはいまだに電話照会に依存しており、救急隊の現場滞在時間の長期化、医療機関とのミスマッチ、業務負担の増大といった課題が慢性化しています。
個別システム導入による新たな問題
このような現状から、複数の自治体が個別にシステムを導入し、搬送を効率化しようという取組がなされていますが、以下のような課題が発生しています。
1. 相互運用性の欠如による現場混乱
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広域搬送時の問題: 自治体が個別にシステムを導入しているため、救急隊は広域搬送時にはシステムを活用できず、従来の電話照会に逆戻り
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医療機関の負担増: 病院は複数システムへの対応が必要となり、操作方法の違いや情報フォーマットの違いにより現場に混乱を起こしうる
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災害時の連携阻害: 大規模災害時の広域連携において、システム間の非互換性が情報共有の障壁となる
2. 財政格差による地域間デジタル格差
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導入コストの障壁: 財政事情の厳しい自治体では、独自システムの導入が難しく、業務のDXが進まない
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維持管理費用: システム導入後の継続的な維持管理費用も自治体の財政を圧迫
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人材不足: システム運用に必要な技術的知識を持つ人材の確保が困難
3. 実用性と普及の課題
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習熟期間の長期化: 新しいシステムの習熟に時間がかかり、結果的に利用されない
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トレーニング負担: 救急隊員や医療スタッフへの継続的な教育・訓練が必要
こうした課題を踏まえ、国(厚生労働省・消防庁)において、救急搬送の効率化による搬送時間の短縮や、救急医療の質の向上を図るため、救急隊が傷病者情報を一斉に複数の搬送先候補医療機関と迅速かつ安全に共有できる仕組みを全国に展開していきたい考えが示されており、今回のTYPES実証事業は、その重要な第一歩として位置づけられています。
TYPES制度の意義と本事業の特色
TYPES制度について
TYPES(デジタル行財政改革特化型)は、令和6年度補正予算の新しい地方経済・生活環境創成交付金(予算額1,000億円規模)に設けられた制度の1つで、デジタル行財政改革が示す規制改革・制度改革の方向性に合致し、地域の暮らしや行政を改革する先行モデルの形成、将来的に国や地方の統一的・標準的なデジタル基盤の全国展開を見据えた実装支援を目的としています。

本事業の特色
マイナンバーカードや行政共通基盤などの活用が対象とされるなか、本実証は「救急医療」という命を支える重要な領域において、政策レベルのデジタル基盤構築を目指す先駆的な取り組みです。
実証の基盤:広島県全域でのNSER mobile運用実績
これまでの取り組み
広島県では、2023年10月より(東広島市を除く)県内全域で、実証実験としてTXP Medicalの救急搬送支援アプリ「NSER mobile」の広域運用を継続してきました。現在、119の救急隊と92の医療機関が参画し、現場で取得された傷病者情報(主訴、バイタル、負傷部位画像など)をリアルタイムに医療機関へ事前共有することで、従来の紙記録・電話照会に頼らない、迅速かつ効率的な搬送調整を実現しています。
TYPES実証への移行
この実証実験は2025年9月末をもって一区切りとなり、10月からTYPES実証事業へ移行いたします。TYPES実証事業では、搬送時間や業務負担、システム活用度、満足度、搬送傷病者のアウトカムといった項目について、KPIに基づいた効果検証を実施します。広島県全域で、政策モデルとしての再現性と検証性を担保していきます。
継続的な運用体制
TYPES実証へ移行後も、NSER mobileは「民間救急システム」としてプラットフォームとAPI連携し、広島県での救急隊運用が継続されます。さらに、他の民間救急システムとの相互連携とLGWANとの接続も並行して進められ、地域・事業者を越えた相互運用性の実証環境を整備します。
構築する救急医療情報連携プラットフォームの詳細
プラットフォームの全体像
本事業で構築する救急医療情報連携プラットフォームは、従来の電話照会中心の搬送調整を抜本的に改革し、デジタル技術による迅速かつ正確な情報共有を実現するプラットフォームです。従来は地域ごとに分断していた救急搬送システムを全国の消防機関と医療機関が統一的なインターフェースで連携できる基盤を目指します。

主要データと背景
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参加救急隊数:広島県内すべての消防本部 13本部・130隊(隊員数1,197人)、年間搬送件数:約13万件
参加医療機関数:92施設(予定)
システムの効果検証
① 救急医療全体に関するKPI
■ 定量指標
・救命率の向上
・患者予後の改善
・救急搬送全体の所要時間
・搬送先変更件数
・電話件数の削減
■ 定性指標
・医療連携の円滑性
・利用満足度
・救急医療体制の改善効果
② 救急隊側のKPI
■ 定量指標
・医療機関への情報伝達時間の短縮
・現場滞在時間
・搬送先決定時間
・医療機関での引継時間
■ 定性指標
・業務負担の軽減実感
・操作性・使いやすさの評価
・トリアージ補助への貢献
③ 医療機関側のKPI
■ 定量指標
・受入判断時間の短縮
・到着前準備率
・重症対応時間の短縮
・入院・ICU転帰率改善
■ 定性指標
・業務負担の軽減実感
・判断の的確性に対する満足度
・院内連携の円滑化
国家標準としての適格性検証
この事業で構築した「救急医療情報連携プラットフォーム」は、広島県全域での実証データを通じて、全国展開時の課題抽出、運用プロセスの最適化、トレーニング手法の標準化などが図られ、真に現場で機能する国家標準モデルの確立を目指しています。
政策形成へのフィードバック
収集されるエビデンスは、厚生労働省・総務省消防庁との連携により、救急医療政策の立案・改善に直接活用され、このEBPM(Evidence-Based Policy Making)アプローチにより、現場の実態に基づいた実効性の高い政策形成が期待されます。
代表コメント
TXP Medical代表取締役・救急科専門医 園生智弘
日本の救急医療の現場において、業務効率化が不十分であることと、救急医療の質評価に必要な病院前〜病院内での予後情報まで繋がったデータの不在が課題となっています。本課題の解決のため、私たちはこれまで、全国各地で、救急医療DXに取り組んでまいりました。しかしながら、現状は全国で異なるシステム規格を統一していかないとならないことなど、1企業での取り組みでは限界がありました。本事業は単なるシステム導入にとどまらず、社会インフラとしての救急搬送を支える仕組みの、全国標準の理想形を探るための取り組みです。
TXP Medicalがその設計と実装を担わせていただくことは、現場視点のシステム定義・開発力への期待と、全国各地での救急医療DXの展開実績に対する評価と受け止めております。
この取り組みが、全国の救急現場の質の可視化・改善を通じて、一人でも多くの命を救うことにつながることを願っております。

TXP Medical株式会社
TXP Medicalは「医療データで命を救う」をミッションに、現役の救急集中治療医が立ち上げた次世代の医療インフラを牽引するスタートアップ企業です。基幹システムであるNEXT Stage ERは全国の大病院84箇所(大学病院・救命救急センターでのシェア約50%)で稼働、救急隊向けのNSER mobileは全国44地域、1200万人以上の人口カバレッジでの運用実績を有しています。
代表取締役:園生智弘(救急集中治療医)
設立:2017年8月28日
HP:https://txpmedical.jp/
・医療機関・自治体向け急性期医療データプラットフォーム「NEXT Stageシリーズ」の開発と提供
・急性期医療AI技術の開発と提供、臨床研究支援事業
・900項目の検査データ・バイタルデータ等を利用した急性期領域の唯一無二のリアルワールドデータサービス
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