事業継続計画(BCP)策定企業は16.6%、低水準ながらも増加傾向

事業継続におけるリスクに「感染症」を想定する企業が急増

株式会社帝国データバンク

地震や台風、豪雨などの自然災害や、新型コロナウイルスをはじめとした感染症などのリスクに直面するなか、企業には事業資産への影響を最小限にとどめ、事業の継続や早期の復旧が求められている。そのため、さまざまなリスクに対する企業活動への影響を想定し、発生後の対応措置などを事前に準備しておくことは、事業の継続のみならず企業価値の維持・向上の観点からも重要となっている。

そこで、帝国データバンクは、事業継続計画(BCP)に対する企業の見解について調査を実施した。本調査は、TDB景気動向調査2020年5月調査とともに行った。
<調査結果(要旨)>
  1. 事業継続計画(BCP)の策定状況において、「策定している」と回答した企業は16.6%(前年度比1.6ポイント増)となった。「現在、策定中」(9.7%)、「策定を検討している」(26.6%)もそれぞれ増加し調査開始以降で最も高くなり、BCPの策定に対する意識は高まっている。一方で、大企業は30.8%、中小企業は13.6%となり企業規模で大きく差が表れている
  2. 事業継続計画(BCP)の策定状況において、「策定している」と回答した企業は16.6%(前年度比1.6ポイント増)となった。「現在、策定中」(9.7%)、「策定を検討している」(26.6%)もそれぞれ増加し調査開始以降で最も高くなり、BCPの策定に対する意識は高まっている。一方で、大企業は30.8%、中小企業は13.6%となり企業規模で大きく差が表れている
  3. BCP策定の効果について、既に策定している企業では「従業員のリスクに対する意識が向上した」が57.4%でトップとなり、「事業の優先順位が明確になった」(37.7%)、「業務の定型化・マニュアル化が進んだ」(35.5%)が続いた。また、BCPの策定が株主からの信頼獲得や国からの補助金の加点材料につながったという意見もみられた
  4. BCPを策定していない理由は、「策定に必要なスキル・ノウハウがない」(41.9%)がトップ。「策定する人材を確保できない」(28.7%)、「書類作りでおわってしまい、実践的に使える計画にすることが難しい」(28.6%)など、前年と同様の理由が上位となった。特に中小企業からは、BCPの必要性を感じながらも策定に難しさを感じているという声が多くあがっている
  5. 今回の新型コロナウイルスにともない企業活動が大幅に制約されたことによる危機感を契機として、今後は企業をはじめとしたさまざまな組織においてBCPの策定が従来以上に進むものと見込まれる

1. 事業継続計画(BCP)を策定している企業は 16.6%、低位にとどまるも増加傾向

事業継続計画(BCP)の策定状況事業継続計画(BCP)の策定状況


自社における事業継続計画(以下、BCP)の策定状況について尋ねたところ、「策定している」企 業は 16.6%となり、前回調査(2019 年 5 月)から 1.6 ポイント増加した。また、「現在、策定中」 (9.7%)、「策定を検討している」(26.6%)もそれぞれ増加となった。BCP を『策定意向あり』(「策 定している」「現在、策定中」「策定を検討している」の合計)とする企業は 52.9%(同 7.4 ポイ ント増)で調査開始以降最も高くなり、BCP に対する意識は高まりをみせている。 規模別でみると、「大企業」は 30.8%が BCP を策定しており、全体(16.6%)を大きく上回って いる。しかし、「中小企業」では 13.6%、とりわけ「小規模企業」では 7.9%で低位にとどまって おり、BCP の策定状況は企業規模で大きく差が表れる結果となった。

 


業界別では、『金融』(42.1%)が 4 割超と突出して高く、「社会の安定を維持するための不可欠 なサービスという観点から事業継続を実施しなければならない」(クレジットカード、福岡県)と いった、社会的な責任から BCP を策定しているという意見がみられた。 次いで、『農・林・水産』(28.6%)、『製造』(19.6%)、『サービス』(18.6%)が続いた。企業か らは、「2019 年に自然災害が多発したことで、ユーザーからの要求で作成した」(鉄鋼・非鉄・鉱 業、埼玉県)や、「今回の新型コロナウイルスの感染拡大で、改めて平時において検討しておくこ との重要性を認識した」(電気メッキ、山形県)といった声があがっている。
 

事業継続計画(BCP)を策定する意向のある割合 ~都道府県別~事業継続計画(BCP)を策定する意向のある割合 ~都道府県別~


BCP を『策定意向あり』とした企業を都道府県別にみると、「高知」が 79.2%でトップだっ た。その他、大地震の発生が予想される地域で BCP の策定に積極的である傾向が高い。


2. 想定リスクは「自然災害」がトップ、新型コロナウイルスなど「感染症」は 69.2%に急増

事業の継続が困難になると 想定しているリスク(複数回答)事業の継続が困難になると 想定しているリスク(複数回答)


BCP を『策定意向あり』(「策定している」「現在、 策定中」「策定を検討している」の合計)とする企 業に対して、どのようなリスクによって事業の継 続が困難になると想定しているか尋ねたところ、 地震や風水害、噴火などの「自然災害」が 70.9% となり、前年に続いて最も高かった(複数回答、 以下同)。次いで、新型コロナウイルスの影響が広 がるなか「感染症」(69.2%)が続き、前年より 44.3 ポイント増と大幅に高まっている。また、「取引先 の倒産」(39.0%)も同 8.7 ポイント増で高まりを みせている。新型コロナウイルス関連倒産が増加 するなかで、事業継続リスクとして上位にあがっ ているとみられる。

想定するリスクに関する上位 3 項目を規模別でみると、「自然災害」では大企業が中小企業より もおよそ 10 ポイント高くなっている。「感染症」は企業規模を問わずリスクと想定している一方 で、「取引先の倒産」は小規模企業でその割合が高く、「新型 コロナウイルスの影響が長引き産業界に激震があった場合、 どこが倒産するか予測できず、中小企業は大混乱になりかね ない」(プラスチック製品加工、長崎県)といった懸念がみら れる。

想定しているリスク ~規模・業界別~(上位 3 項目)想定しているリスク ~規模・業界別~(上位 3 項目)


業界別では、「感染症」ではトップとなった『運輸・倉庫』 をはじめとして、幅広い業界で割合が高くなっている。企業 からは、「相次ぐ自然災害や新型コロナウイルスの影響で改め て BCP の必要性を感じている」(飲食料品小売、長野県)や、 「今回の新型コロナウイルス感染拡大を機に、在宅勤務体制 の整備を含め、より踏み込んだ BCP の策定が必要と実感した」 (情報提供サービス、東京都)など、BCP の必要性を再確認し たという声が多数みられる。










3. 事業中断リスクへの備え、「従業員の安否確認手段の整備」が 67.3%でトップ

事業中断リスクに備えた 実施・検討内容(複数回答) 事業中断リスクに備えた 実施・検討内容(複数回答)


BCP を『策定意向あり』(「策定している」「現在、策定中」「策定を検討している」の合計)とす る企業に対して、事業が中断するリスクに備えて実施あるいは検討している内容を尋ねたところ、 「従業員の安否確認手段の整備」が 67.3% でトップとなった(複数回答、以下同)。次 いで「情報システムのバックアップ」 (52.6%)が続いた。また、在宅勤務など の「多様な働き方の計画」(40.4%)は、企 業の 4 割が実施・検討している結果となっ た。

 


一方、「事業中断時の資金計画策定」 (27.3%)は前回調査から 10 ポイント以 上増加している。「毎年『想定外』という言 葉が繰り返し叫ばれるなかにあって、資金 的な裏付けが特に重要であることを再認 識させられた」(土木建築サービス、東京 都)などの意見があがっている。


4. BCP 策定の効果、「従業員のリスクに対する意識の向上」がトップ

 

事業継続計画(BCP)策定の効果(複数回答事業継続計画(BCP)策定の効果(複数回答


BCP を「策定している」企業に対して策 定による効果を尋ねたところ、「従業員の リスクに対する意識が向上した」が 57.4% でトップとなった(複数回答、以下同)。次 いで、「事業の優先順位が明確になった」 (37.7%)や「業務の定型化・マニュアル 化が進んだ」(35.5%)が続いた。また、「業 務の改善・効率化につながった」(29.3%) は前年から 6.3 ポイント増加した。 さらに、「BCP を策定したことで、国から 『事業継続力強化計画』の認定を得てお り、補助金等の加点材料としても役に立っている」(工業用プラスチック製品製造、山形県)や「株 主からの信頼が高まった」(印刷インク製造、大阪府)といった効果もあげられた。


5.BCP を策定していない理由、策定の難しさや人材、時間、費用の問題も

 

BCP を策定していない理由(複数回答)BCP を策定していない理由(複数回答)


BCP について「策定していない」企業にその理由を尋ねたところ、「策定に必要なスキル・ノウ ハウがない」が 41.9%で最も高かった(複数回答、以下同)。次いで、「策定する人材を確保でき ない」(28.7%)や「書類作りでおわってしまい、実践的に使える計画にすることが難しい」(28.6%)、 「自社のみ策定しても効果が期待できない」(23.6%)が続いた。前年と同様の理由が上位にあげ られており、BCP 策定に向けた課題の解決が進んでいない実態がうかがえた。 特に中小企業からは「BCP の重要性は 十分理解できるが、日々の稼働が大切 で策定する余裕がない」(一般貨物自動 車運送、茨城県)や、「あればよいと思 うが、様々な場合を想定し予め策定す る余力がなく、発生後状況に合わせ可 能な対応をせざるをえない状況」(貸事 務所、京都府)、「必要とは考えているが 作成のノウハウがない」(医療用機械器 具卸売、長野県)など、BCP の必要性を 感じながらも策定の難しさを指摘する という声も多い。




地震や台風、豪雨などの自然災害は、2019 年は特に台風による被害が各地で発生した。2020 年 に入ると新型コロナウイルス感染症の影響が全国に拡大し経済活動が大きく制限されるなど、脅 威となるリスクが顕在化している。そのため、事業の継続や早期復旧を目的とした「事業継続計 画(BCP)」の策定に対する重要性は、これまで以上に高まっている。 本調査によると、既に BCP を策定している企業は 16.6%で前年より微増となった。策定中や策 定を検討している割合も緩やかながら増加しており、BCP 策定への意識は高まりをみせている。 BCP を策定するなかで想定するリスクとしては、企業の 7 割が自然災害や新型コロナウイルス などの感染症をあげている。特に感染症をリスクと捉える企業が急増するなか、取引先の倒産を 懸念する企業も増加している。このようなリスクに直面するなか、BCP を策定した効果としては従 業員のリスクに対する意識の向上がトップにあげられた。

一方、BCP を策定しない理由としては、策定に必要なスキルやノウハウの不足が最も多く指摘さ れている。前年同様の理由が上位にあげられており、人材や時間、費用の面から BCP の策定が難 しいという課題は解消されていない結果となった。 BCP を策定している企業は緩やかな増加傾向にある。特に、「これまでは BCP について考えたこ とも無かったが、今回の新型コロナウイルスの影響や今後予想される自然災害を考えると策定の 重要性を大いに感じる」(製缶板金、福島県)や「新型コロナウイルスの影響を受けて、自社の課 題が鮮明になった。非常時に事業を止めないための計画を考えていきたい」(不動産管理、東京都) といった意見が多くみられた。

今回の新型コロナウイルスにともない企業活動が大幅に制約され たことによる危機感を契機として、今後は企業をはじめとしたさまざまな組織において BCP の策 定が従来以上に進むものと見込まれる。

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会社概要

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業種
サービス業
本社所在地
東京都港区南青山2-5-20
電話番号
03-5775-3000
代表者名
後藤 信夫
上場
未上場
資本金
9000万円
設立
1987年07月